YNGWIE MALMSTEEN
YNGWIE MALMSTEENの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。
Biography
イングヴェイ・マルムスティーン (Yngwie Malmsteen)
現代ギター奏法における革命とネオクラシカル・メタルの系譜
1. ギター・ヴィルトゥオーソの定義と再構築
ロック・ミュージックの歴史において、エレクトリック・ギターという楽器の可能性を根本から再定義した人物はごくわずかである。1960年代のジミ・ヘンドリックス (Jimi Hendrix)、1970年代のエドワード・ヴァン・ヘイレン (Edward Van Halen) に続き、1980年代においてその役割を担ったのがイングヴェイ・マルムスティーン (Yngwie Malmsteen) である。Yngwie Malmsteenは、ブルース (Blues) を基礎とする従来のロック・ギターの語法に、バッハ (Bach) やパガニーニ (Paganini) に代表されるバロック音楽および古典派音楽の厳格な構成美と超絶技巧 (Virtuosity) を融合させ、「ネオクラシカル・メタル (Neoclassical Metal)」という新たなジャンルを確立した。
2. 形成期:ストックホルムでの黎明 (1963-1982)
2.1 生い立ちと音楽的覚醒
イングヴェイ・マルムスティーン、本名ラーシュ・ヨハン・イングヴェ・ランネルベック (Lars Johan Yngve Lannerbäck)は、1963年6月30日、スウェーデンの首都ストックホルムにて、芸術的な家庭環境のもとに生まれた。母リグモール (Rigmor)、姉アン・ルイーズ (Ann Louise)、兄ビョルン (Bjorn) という家族構成であったが、幼少期のイングヴェイは当初、音楽に対して受動的であり、特別な情熱を示してはいなかった。
Yngwie Malmsteenの運命が劇的に転換したのは、1970年9月18日、Yngwie Malmsteenがわずか7歳の時である。この日、ロック界の巨星ジミ・ヘンドリックスがロンドンで死去し、その追悼特別番組がテレビで放映された。画面の中でヘンドリックスがフィードバック・ノイズを操り、ギターを破壊し、炎に包む姿を目撃した少年イングヴェイは、その「視覚的衝撃と破壊的なエネルギー」に圧倒された。Yngwie Malmsteenが後に繰り返し語る「ジミ・ヘンドリックスが死んだその日、ギタリストとしてのイングヴェイが生まれた」という言葉は、Yngwie Malmsteenのキャリアにおける最大のパラドックスを示唆している。すなわち、Yngwie Malmsteenの音楽的スタイル自体はヘンドリックスのブルース・フィーリングを直接継承したものではなく、その「アティテュード (姿勢)」 と 「カリスマ性」に触発されたものであった。
2.2 独自の音楽的ルーツの探求: ディープ・パープルからバロックへ
ギターを手にしたイングヴェイは、当初モズライト (Mosrite) の古いギター、次いで安価なストラトキャスター (Stratocaster) を使用し、猛烈な好奇心と執念で練習に没頭した。初期のYngwie Malmsteenはディープ・パープル (Deep Purple) に傾倒し、特にリッチー・ブラックモア (Ritchie Blackmore) のクラシック音楽を取り入れたフレージングに強い影響を受けた。しかし、イングヴェイの特異性は、ブラックモアの影響だけに留まらず、彼が参照していた「源流」へと遡った点にある。
Yngwie Malmsteenはヨハン・セバスティアン・バッハ (Johann Sebastian Bach)、アントニオ・ヴィヴァルディ (Antonio Vivaldi)、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン (Ludwig van Beethoven)、ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト (Wolfgang Amadeus Mozart) といったクラシックの巨匠たちの構造美をギターに応用することを試み始めた。
2.3 パガニーニとの遭遇と技巧の革新
10代前半、イングヴェイはテレビでロシアのヴァイオリニスト、ギドン・クレーメル (Gideon Kremer) がニコロ・パガニーニ (Niccolò Paganini) の難曲 『24の奇想曲(24 Caprices)』を演奏する姿を目撃した。これが第二の覚醒となった。パガニーニの「悪魔的」と称される超絶技巧と劇的な表現力は、イングヴェイに「ロック・ギターの音色でヴァイオリンの技巧を再現する」という明確なヴィジョンを与えた。Yngwie Malmsteenは、自身のスタイルが「クラシック・ギター」の伝統ではなく、「クラシック・ヴァイオリン」の技巧、特にアルペジオ (Arpeggio) やリニアな高速パッセージに由来していると分析している。
2.4 スキャロップド・フレットボードの発明
イングヴェイのサウンドを物理的に支えているのが、「スキャロップド・フレットボード (Scalloped Fretboard)」である。10代の頃、Yngwie Malmsteenはギター修理工房(Luthier shop) で働いており、ある日修理に持ち込まれた17世紀のリュート (Lute) のネックが、フレット間の木材をえぐるように加工されていることに気づいた。
好奇心から自身の古いギターのネックを同様に加工したところ、指板に指が触れることなく、弦のみを押さえることが可能となり、驚異的なヴィブラート (Vibrato) のコントロールと軽いタッチでの高速演奏が可能になることを発見した。この改造は、後のYngwie Malmsteenのシグネチャー・サウンドである「正確無比かつ流麗なレガート」を実現する物理的基盤となった。
3. 渡米と初期キャリア: 衝撃のデビュー (1982-1984)
3.1 マイク・ヴァーニーによる発掘
スウェーデン国内で活動し、「Rising Force」 という名のバンドでデモテープを制作していた19歳のイングヴェイは、そのテープをアメリカのシュラプネル・レコード (Shrapnel Records) に送付した。同レーベルの創設者であり、速弾きギタリスト発掘の第一人者であるマイク・ヴァーニー (Mike Varney)は、その演奏に衝撃を受け、1983年2月に彼をロサンゼルス (Los Angeles) へと招聘した。
3.2 スティーラー (Steeler) への参加と伝説のレコーディング
渡米直後、イングヴェイはロン・キール (Ron Keel) 率いるヘヴィ・メタル・バンド、スティーラー (Steeler) に参加した。この時期のエピソードは、Yngwie Malmsteenの規格外の才能を物語っている。
スティーラーのラインナップ (1983):
- Ron Keel (ロン・キール): ボーカル、ギター
- Yngwie Malmsteen (イングヴェイ・マルムスティーン): リードギター
- Rik Fox (リック・フォックス): ベース
- Mark Edwards (マーク・エドワーズ): ドラムス
彼らの同名デビューアルバム 『Steeler』のレコーディングにおいて、イングヴェイは労働許可証(Work Permit) の到着を待たねばならず、他のパートの録音が終了した後、自身のギター・ソロ等のパートをわずか1日で録音し終えたという。使用されたギターは、Yngwie Malmsteenが「ザ・ダック (The Duck)」と呼ぶ1971年製ストラトキャスターであった。特に楽曲「Hot on Your Heels」のイントロにおける独奏は、後のYngwie Malmsteenのスタイルの萌芽が完全な形で記録されており、当時のメタル・シーンに衝撃を与えた。しかし、音楽性の相違から、アルバムが発売される頃には既にYngwie Malmsteenはバンドを脱退していた。
3.3 アルカトラス (Alcatrazz) とグラハム・ボネット
スティーラーを離れたイングヴェイは、元レインボー (Rainbow)、マイケル・シェンカー・グループ (Michael Schenker Group) の著名なボーカリスト、グラハム・ボネット (Graham Bonnet) が結成した新バンド、アルカトラス (Alcatrazz) に加入した。
アルカトラス初期ラインナップ (1983-1984):
- Graham Bonnet (グラハム・ボネット): ボーカル
- Yngwie Malmsteen (イングヴェイ・マルムスティーン): ギター
- Gary Shea (ゲイリー・シェー): ベース
- Jimmy Waldo (ジミー・ウォルドー): キーボード
- Jan Uvena (ヤン・ウヴェナ): ドラムス
1983年のデビュー・アルバム 『No Parole from Rock 'n' Roll』 (邦題: アルカトラス)は、ビルボードチャートに18週間ランクインし、特に日本で爆発的な人気を博した。バッハの影響を色濃く反映した 「Jet to Jet」や、哀愁を帯びた 「Hiroshima Mon Amour」 などの楽曲は、ネオクラシカル・メタルの原点として評価されている。
しかし、バンド内部では緊張が高まっていた。観衆の注目がボネットではなく若きギタリストのイングヴェイに集まることに対し、ボネットが不満を抱いたとされる。決定的な亀裂は、オクラホマ (Oklahoma) での公演中に生じた。ボネットがイングヴェイのギターソロ中にアンプを操作 (tampering) したことに激昂したイングヴェイが、ステージ上でボネットと口論になり、結果としてバンドを去ることとなった。後任にはスティーヴ・ヴァイ (Steve Vai)が加入することとなる。
4. ソロ・キャリアの確立: ライジング・フォースの栄光 (1984-1989)
4.1 『Rising Force』: ジャンルの確立
アルカトラス脱退後、イングヴェイはポリドール・レコード (Polydor Records) と契約し、1984年にソロ・デビュー・アルバム 『Rising Force』 (ライジング・フォース)を発表した。当初はサイド・プロジェクトとしてのインストゥルメンタル・アルバムとして企画されたが、ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto) のボーカル曲も収録された。
『Rising Force』 レコーディング・メンバー:
- Yngwie Malmsteen (イングヴェイ・マルムスティーン): ギター、ベース
- Jeff Scott Soto (ジェフ・スコット・ソート): ボーカル
- Jens Johansson (イェンス・ヨハンソン): キーボード
- Barriemore Barlow (バリモア・バーロウ): ドラムス (元ジェスロ・タル)
このアルバムは、ロック・ギターの歴史における金字塔となった。ビルボード・アルバムチャートで60位を記録し、グラミー賞 (Grammy Award) の「ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス」部門にノミネートされた。ハーモニック・マイナー・スケールを多用した高速ユニゾン、劇的な曲展開は、その後のヘヴィ・メタルの様式美を決定づけた。
4.2 『Marching Out』 と 『Trilogy』
1985年のセカンド・アルバム『Marching Out』 (マーチング・アウト)では、アンダース・ヨハンソン (Anders Johansson) がドラムに、マルセル・ヤコブ (Marcel Jacob) がベース(ツアー・メンバー) として参加し、「Yngwie J. Malmsteen's Rising Force」 というバンド形態が固まった。
続く1986年の『Trilogy』 (トリロジー)では、驚異的なハイトーン・ボイスを持つマーク・ボールズ (Mark Boals) をボーカルに起用。タイトル曲 「Trilogy Suite Op: 5」に見られるような、より洗練されたクラシカルな構成と、キャッチーなメロディの融合を果たした。
4.3 1987年の悲劇と復活
キャリアの絶頂にあった1987年6月22日、イングヴェイを悲劇が襲った。愛車のジャガー・Eタイプ (Jaguar E-Type V12) を運転中にコントロールを失い、木に激突。Yngwie Malmsteenは1週間の昏睡状態に陥り、ギタリストの生命線である右手に深刻な神経損傷を負った。さらに、リハビリテーションの最中に最愛の母リグモールが癌で死去するという二重の苦難に見舞われた。
医師からは「二度とギターは弾けないかもしれない」と宣告されたが、Yngwie Malmsteenは不屈の精神でリハビリを続け、驚異的な回復力でシーンへの復帰を果たした。
4.4 『Odyssey』 と最大の商業的成功
復帰作となった1988年の『Odyssey』 (オデッセイ)では、元レインボーのジョー・リン・ターナー (Joe Lynn Turner) をボーカルに迎えた。ターナーのポップ・センスとイングヴェイの技巧が融合したシングル「Heaven Tonight」 はラジオ・ヒットとなり、アルバムはYngwie Malmsteenのキャリアで最大の商業的成功を収めた。
このツアーの一環として行われたソビエト連邦 (当時)のレニングラード (Leningrad)公演は、西側のロック・アーティストとしては異例の大規模なものであり、その模様はライブ・アルバム『Trial by Fire: Live in Leningrad』として記録されている。
5. 90年代の苦闘と深化 (1990-1997)
5.1 『Eclipse』と『Fire & Ice』
1990年の『Eclipse』 (エクリプス)では、スウェーデン人ボーカリストのヨラン・エドマン (Göran Edman)を起用。より洗練されたAOR的なアプローチを見せたが、アメリカではグランジ (Grunge) ブームの台頭によりメタルの人気が後退しており、ポリドールとの契約終了を迎えた。
揚句、日本や欧州での人気は揺るぎないものであった。1992年の『Fire & Ice』 (ファイア・アンド・アイス)は、バッハの管弦楽組曲第2番 「バディネリ (Badinerie)」を引用した「No Mercy」などを収録し、日本のオリコン・アルバムチャートで洋楽アーティストとして1位を獲得する快挙を成し遂げた。
5.2 マイク・ヴェセーラ期と 『The Seventh Sign』
1994年、ポニーキャニオン (Pony Canyon) へ移籍し、『The Seventh Sign』 (セブンス・サイン)を発表。元ラウドネス (Loudness) のマイク・ヴェセーラ (Michael Vescera)をボーカルに迎え、よりアグレッシブでヘヴィなサウンドへと回帰した。「Never Die」 やバラードの「Prisoner of Your Love」 を含むこのアルバムは、90年代の代表作の一つと見なされている。
5.3 『Facing the Animal』 とコージー・パウエル
1997年の『Facing the Animal』 (フェイシング・ジ・アニマル)は、ドラム界のレジェンド、コージー・パウエル (Cozy Powell) を迎えて制作された。
『Facing the Animal』 主要メンバー:
- Yngwie Malmsteen: ギター
- Mats Levén (マッツ・レヴィン): ボーカル
- Mats Olausson (マッツ・オラウソン): キーボード
- Cozy Powell (コージー・パウエル): ドラムス
- Barry Dunaway (バリー・ダナウェイ): ベース
マッツ・レヴィンのパワフルなボーカルとコージーの重厚なドラミングが融合した本作は批評家から高く評価されたが、コージー・パウエルは翌1998年に事故死し、これが彼の遺作の一つとなった。
6. オーケストラとの融合と2000年代(1998-2010)
6.1 オーケストラとの共演
1998年、イングヴェイは長年の悲願であったフル・オーケストラとの共演アルバム『Concerto Suite for Electric Guitar and Orchestra in E Flat Minor Op. 1』を発表した。チェコのフィルハーモニー管弦楽団と録音されたこの作品は、ロック・バンドとオーケストラの「共演」ではなく、エレキギターをクラシックの独奏楽器としてオーケストラの中に位置づけた画期的な試みであった。2001年には新日本フィルハーモニー交響楽団 (New Japan Philharmonic) との共演ライブも東京で行われた。
6.2 マーク・ボールズの復帰とドゥギー・ホワイト期
1999年の『Alchemy』 (アルケミー) と2000年の『War to End All Wars』 (ウォー・トゥ・エンド・オール・ウォーズ)ではマーク・ボールズが復帰。特に『Alchemy』はネオクラシカル・メタルの純度を極限まで高めた作品としてファンに支持された。
2002年の『Attack!!』 (アタック!!) からは、元レインボーのドゥギー・ホワイト (Doogie White) がボーカルを務めた。2005年のアルバム 『Unleash the Fury』 (アンリーシュ・ザ・フューリー)のタイトルは、かつて日本へ向かう航空機内で泥酔したイングヴェイが、客室乗務員や乗客に対して発したとされる悪名高い言葉「You've unleashed the fucking fury! (お前は怒りを解き放ってしまった!)」に由来しているという、Yngwie Malmsteenの破天荒なエピソードを象徴するものである。
6.3 ティム"リッパー" オーウェンズと自主レーベル
2008年、元ジューダス・プリースト (Judas Priest) のティム"リッパー" オーウェンズ (Tim "Ripper" Owens)が加入し、『Perpetual Flame』 (パーペチュアル・フレイム)をリリースした。このアルバムからYngwie Malmsteenは自身のレーベル 「Rising Force Records」を立ち上げ、ビジネス面でも完全な独立を果たした。
7. 現在の活動: 絶対王者としての独裁 (2011-Present)
7.1 ボーカル兼任への移行
2012年の『Spellbound』 (スペルバウンド)以降、イングヴェイは専任のボーカリストを置かず、自身でリード・ボーカルを担当するスタイルへと移行した。2019年の『Blue Lightning』(ブルー・ライトニング)では、自身のルーツであるブルース・ロックに回帰し、ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) やディープ・パープルなどのカバーを含む意欲作を発表した。最新作『Parabellum』 (パラベラム、2021年) においても、全ての楽器とボーカルをコントロール下に置き、自身の芸術的ヴィジョンを一切の妥協なく具現化し続けている。
8. ディスコグラフィ (Discography)
イングヴェイ・マルムスティーンの作品群を、スタジオ・アルバム、重要なライブ盤、初期参加作品に分類し、その詳細を記述する。
8.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
以下の表は、主要なスタジオ・アルバムとその当時のメイン・ボーカリスト、および特記事項をまとめたものである。
| 発表年 | タイトル(英語/カタカナ) | ボーカル (Vocalist) | 特記事項・主要曲 |
|---|---|---|---|
| 1984 | Rising Force (ライジング・フォース) | Jeff Scott Soto | グラミー賞ノミネート。「Black Star」 「Far Beyond the Sun」収録。 |
| 1985 | Marching Out (マーチング・アウト) | Jeff Scott Soto | 「I'll See the Light, Tonight」収録。バンド名義での発表 |
| 1986 | Trilogy (トリロジー) | Mark Boals | 「You Don't Remember, I'll Never Forget」 「Trilogy Suite Op: 5」。 |
| 1988 | Odyssey (オデッセイ) | Joe Lynn Turner | 最大のヒット作。「Heaven Tonight」 「Rising Force」収録。 |
| 1990 | Eclipse (エクリプス) | Göran Edman | ポップかつ洗練されたサウンド。「Making Love」収録。 |
| 1992 | Fire & Ice (ファイアー・アンド・アイス) | Göran Edman | 日本オリコン1位。「No Mercy」「Teaser」 |
| 1994 | The Seventh Sign (セブンス・サイン) | Michael Vescera | ヘヴィ路線への回帰。「Never Die」 「Seventh Sign」 |
| 1995 | Magnum Opus (マグナム・オーパス) | Michael Vescera | ヴェセーラ期2作目。「Vengeance」収録 |
| 1996 | Inspiration (インスピレーション) | M. Boals, J.S. Soto, J.L. Turner | 影響を受けた曲のカバー集(Deep Purple, Hendrix, Kansas等)。 |
| 1997 | Facing the Animal (フェイシング・ジ・アニマル) | Mats Levén | コージー・パウエル参加。「Braveheart」収録。 |
| 1998 | Concerto Suite for Electric Guitar... | (Instrumental) | フルオーケストラとの書き下ろし協奏曲。 |
| 1999 | Alchemy (アルケミー) | Mark Boals | ネオクラシカルへの原点回帰。「Leonardo」。 |
| 2000 | War to End All Wars (ウォー・トゥ・エンド・オール・ウォーズ) | Mark Boals | 「Crucify」収録。ミックスに関する論争あり。 |
| 2002 | Attack!! (アタック!!) | Doogie White | ドゥギー・ホワイト加入。「Valhalla」。 |
| 2005 | Unleash the Fury (アンリーシュ・ザ・フューリー) | Doogie White | バッハ「G線上のアリア」 引用曲などを収録。 |
| 2008 | Perpetual Flame (パーペチュアル・フレイム) | Tim "Ripper" Owens | 自主レーベル第1弾。「Red Devil」。 |
| 2009 | Angels of Love (エンジェルス・オブ・ラヴ) | (Instrumental) | 過去のバラード曲のアコースティック・インスト・アレンジ集。 |
| 2010 | Relentless (リレントレス) | Tim "Ripper" Owens | 「Relentless」収録。 |
| 2012 | Spellbound (スペルバウンド) | Yngwie Malmsteen | 自身でのボーカル兼任を開始 |
| 2016 | World on Fire (ワールド・オン・ファイア) | Yngwie Malmsteen | ほぼ全ての楽器を自身で演奏。 |
| 2019 | Blue Lightning (ブルー・ライトニング) | Yngwie Malmsteen | ブルース・ロックへのアプローチ。 |
| 2021 | Parabellum (パラベラム) | Yngwie Malmsteen | ネオクラシカル・スタイルの純粋化。 |
8.2 ・初期参加アルバム・ライブ盤 (Key Early Works & Live Albums)
- Steeler - Steeler (スティーラー): イングヴェイのアメリカでの第一歩。
- Alcatrazz - No Parole from Rock 'n' Roll (アルカトラス): グラハム・ボネットとの化学反応が生んだ名盤。
- Alcatrazz - Live Sentence (ライブ・センテンス): 鬼気迫る初期のライブ演奏を記録。
- Trial by Fire: Live in Leningrad (トライアル・バイ・ファイアー: ライブ・イン・レニングラード): ソ連公演の記録。「Spanish Castle Magic」 のカバーにおけるギター・ソロは圧巻。
- Live!! (ライブ!!): ブラジル公演を収録。「Resurrection」などの90年代の楽曲のライブ・バージョンが聴ける貴重な盤。
9. 音楽的スタイルと使用機材の分析
9.1 ネオクラシカル・スタイルの解剖
イングヴェイの演奏スタイルの核心は、「ハーモニック・マイナー・スケール (Harmonic Minor Scale)」と「フリジアン・モード (Phrygian Mode)」の徹底的な使用にある。Yngwie Malmsteenはこれらを、エコノミー・ピッキング (Economy Picking) やスウィープ・ピッキング (Sweep Picking) といった高度な右手の技術と組み合わせることで、ヴァイオリンのような流麗なフレージングを実現した。また、減七の和音 (Diminished 7th Arpeggios) の高速展開は、Yngwie Malmsteenの楽曲に独特の緊張感と劇的な効果 (ドラマチック・マイナー) を与えている。
9.2 使用機材(Equipment)
- ギター: 1971年製のフェンダー・ストラトキャスター (Fender Stratocaster)、通称「The Duck (ザ・ダック)」が最も有名である。クリーム色で、指板は深くスキャロップド加工され、ピックアップにはディマジオ (DiMarzio) のHS-3 (現在はSeymour DuncanのYJM Fury) が搭載されている。ラージヘッドとブラスナットも特徴的である
- アンプ: マーシャル (Marshall) の1987や1959といったヴィンテージ・モデルを愛用し、ステージ上には数十台のマーシャル・キャビネットを「壁」のように積み上げるのがYngwie Malmsteenのトレードマークである。
- フェラーリ: 音楽機材ではないが、Yngwie Malmsteenは熱烈なフェラーリ (Ferrari) 愛好家として知られ、1983年製308 GTSや1962年製250 GTOなどを所有していた。この嗜好はYngwie Malmsteenの「速さ」と「美学」への執着を象徴している。
10. バンド・メンバーの変遷と人間模様
イングヴェイのバンド 「Rising Force」は、メンバーの入れ替わりが極めて激しいことで知られる。これはYngwie Malmsteenが自身の音楽に対して一切の妥協を許さない完璧主義者であり、バンドを民主的な集団ではなく、自身のヴィジョンを実現するための「オーケストラ」として捉えていることに起因する。
10.1 歴代主要ボーカリスト (Vocalists)
イングヴェイのキャリアは、起用されたボーカリストによって時代区分が可能である。
- Jeff Scott Soto (1984-1985): 若々しくパワフルな歌声で初期を支えた。
- Mark Boals (1986, 1999-2001): 驚異的な音域を持ち、技術的に最も高度な楽曲を歌いこなした。
- Joe Lynn Turner (1987-1989): メロディアスで一般受けする声質により、最大の商業的成功をもたらした。
- Doogie White (2002-2007): 安定した実力で2000年代の活動を支えた。
- Tim "Ripper" Owens (2008-2010): ヘヴィ・メタル色の強いパワフルな歌唱で新境地を開いた。
10.2 イングヴェイを支えた名手たち
- Jens Johansson (Keyboards, 1984-1989): イングヴェイの超高速ギターに対抗できる唯一無二のキーボーディストとして、初期黄金期のサウンド形成に貢献した。
- Anders Johansson (Drums, 1985-1989): イェンスの兄であり、重厚なドラミングでボトムを支えた。
- Mats Olausson (Keyboards, 1990-2001): 長きにわたりバンドを支えたが、2015年にタイのホテルで死去したことが報じられた
11. 唯一無二の遺産
イングヴェイ・マルムスティーンは、単なる「速弾きギタリスト」という枠を超え、ロック・ミュージックにクラシック音楽の構造美と技巧を体系的に導入した先駆者である。
「Less is more(少ないことは豊かである)」というミニマリズムの美学に対し、Yngwie Malmsteenは 「More is more (多いことはさらに豊かである)」 と公言し、音数の多さ、機材の量、精度、そして表現の過剰さを恐れずに追求し続けてきた。
Yngwie Malmsteenの登場以降、ポール・ギルバート (Paul Gilbert)、トニー・マカパイン (Tony MacAlpine)、マイケル・ロメオ (Michael Romeo)など、数多くの追随者が現れたが、Yngwie Malmsteenの持つ独特のトーン、ヴィブラート、そして圧倒的なカリスマ性を完全に模倣できた者は存在しない。度重なるメンバーチェンジ、事故、流行の変化を乗り越え、自身のスタイルを頑なに貫き通すその姿勢こそが、Yngwie Malmsteenを「王者」たらしめている所以である。
Trivia
『Fire & Ice』は日本で初登場1位を記録している。日本のレーベルの公式バイオによれば、この作品は発売当日に10万枚以上を売り上げ、ヨーロッパとアジア諸国でもゴールドおよびプラチナ・ディスクを獲得した。
エレクトラを離れた彼を引き受けたのは、日本のレコード会社だった。公式バイオによれば、彼は1993年にポニーキャニオンと契約し、新しいシンガーには元ラウドネスのマイク・ヴェセーラ、ドラマーには元トニー・マカパインのマイク・テラーナ、キーボードにはマッツ・オラウソンが入り、ベースはイングヴェイ自身が弾いた。ツアー用のベーシストにはバリー・スパークスが選ばれている。
『The Seventh Sign』は、まず日本で発売された。公式バイオによれば、発売日は1994年2月18日。生々しくアグレッシヴなこの作品はすぐに初期作『Marching Out』と比較され、日本ではトリプル・プラチナに認定された。ヨーロッパとアメリカの流通権はCMCインターナショナル・レコードが取得している。日本ツアーはソールドアウトとなり、アメリカがグランジ全盛でなお難しい市場だった一方、日本とアジア諸国ではこの作品が彼の他の全アルバムの売り上げを上回った。
日本でだけ出たミニ・アルバムに、彼がプロレスラーのために書いたテーマ曲が入っている。公式バイオによれば、1994年の9月と10月にポニーキャニオンは『パワー・アンド・グローリー』と『アイ・キャント・ウェイト』という2枚のミニ・アルバムを出した。前者には高田のテーマが収められ、後者には未発表2曲と武道館公演からのライブ音源がいくつか入っている。武道館のライブは日本版がコンサート・ビデオとして発売され、その世界流通はCMCが担当した。
この協奏曲を彼が初めて生で演奏したのは、東京だった。公式バイオによれば、2001年後半、新日本フィルハーモニー交響楽団との共演という形で初演の機会が与えられ、その模様を収めたDVD/CD/VHSのパッケージが2002年1月に発売された。これがその年の彼の最初のリリースとなり、以後、世界各地のオーケストラから共演のオファーが舞い込むことになる。
彼のソロ契約は、日本から始まっている。Classic Rockの記事によれば、アルカトラスが日本で成功したことがきっかけとなって、イングヴェイは日本でソロ契約を結んだ。本人の言葉では、『Rising Force』はアメリカに来てから1年後にレコーディングされ、全米60位に入った。
彼の初期を代表するライブ映像は、東京で撮られている。BLABBERMOUTH.NETによれば『Live '85』は1985年1月24日、中野サンプラザで『Rising Force』ワールド・ツアー中に撮影された85分の作品で、イングヴェイ(ギター)、ジェフ・スコット・ソート(ヴォーカル)、マルセル・ヤコブ(ベース)、イェンス・ヨハンソン(キーボード)、アンダース・ヨハンソン(ドラムス)というラインナップが収められている。
『Unleash the Fury』は、まず日本だけで発売された。BLABBERMOUTH.NETが2005年3月に伝えた時点で、アメリカとヨーロッパの発売日はまだ決まっていなかった。参加メンバーはイングヴェイ(全ギター)、ドゥギー・ホワイト(ヴォーカル)、パトリック・ヨハンソン(ドラムス)、ヨアキム・スヴァルベリ(キーボード)である。
News
YNGWIE MALMSTEEN、新スタジオ・アルバム『Hell Or High Water』を11月13日にリリース — 先行曲「Now Or Never」公開
Music Theories Recordings/Artone Label Groupからの発売。
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