1. インテレクチュアル・スラッシュメタルの極北
1983年、カリフォルニア州ロサンゼルス (Los Angeles)の混沌の中から産声を上げたMEGADETH(メガデス)は、単なるヘヴィメタル・バンドの枠を超え、現代音楽史における「怒り」と「技巧」の象徴として君臨し続けてきた。METALLICA(メタリカ)、Slayer (スレイヤー)、Anthrax (アンスラックス)と共に「スラッシュメタル四天王(The Big Four)」の一角を成すMEGADETHは、リーダーであるDave Mustaine (デイヴ・ムステイン)の強烈なカリスマ性と、冷徹なまでに構築された音楽理論、そして政治・戦争・社会問題に鋭く切り込む歌詞世界によって、唯一無二の地位を確立した。
2. 第I部: 憤怒の誕生と初期の混沌 (1983-1989)
2.1 追放と復讐の誓い: 結成前夜(1983)
MEGADETH(メガデス)の歴史は、皮肉にも別の伝説的バンド、METALLICA(メタリカ)の歴史と分かち難く結びついている。1981年から1983年にかけ、Dave Mustaine (デイヴ・ムステイン)はMETALLICAのリード・ギタリストとして、その初期楽曲の多くにリフや楽曲構成を提供していた。しかし、深刻なアルコール依存と薬物乱用、そしてJames Hetfield (ジェイムズ・ヘットフィールド) やLars Ulrich (ラーズ・ウルリッヒ)との対立が決定的となり、1983年4月、ニューヨーク(New York) でのレコーディング直前にバンドを解雇される。
ロサンゼルスへ向かう長距離バスの中で、Mustaineはアラン・クランストン上院議員(Senator Alan Cranston)による核兵器の脅威に関するパンフレットを目にする。そこに記されていた「Megadeath (メガデス=核戦争による100万人の死)」という言葉から"a"を抜き、彼は自身の新バンドの名をMEGADETHと定めた。この瞬間、彼の音楽的指針は「METALLICAよりも速く、重く、そしてテクニカルなバンドを作る」という復讐心によって決定づけられたのである。
2.2 揺籃期のラインナップと『Killing Is My Business...』 (1983-1985)
ロサンゼルスに戻ったMustaineは、当初「Fallen Angels (フォールン・エンジェルズ)」という名で活動を開始したが、すぐにMEGADETHへと改名した。初期のラインナップは流動的で、ヴォーカルのLor Kane (ロー・ケイン)、ギターのRobbie McKinney(ロビー・マッキニー)、ベースのMatt Kisselstein (マット・キッセルスタイン)などが在籍したが短命に終わった。
バンドの核が形成されたのは、ミネソタ州 (Minnesota) 出身のベーシスト、David Ellefson (デイヴィッド・エレフソン)との出会いであった。MustaineとEllefsonはアパートの階下と階上の住人という関係から意気投合し、EllefsonはMustaineの右腕として長きにわたりバンドを支えることになる。
ドラマーに関してはDijon Carruthers (ディジョン・カルザース)やLee Rauch (リー・ラウチ)らが入れ替わった後、ジャズ・フュージョンのバックグラウンドを持つGar Samuelson (ガー・サミュエルソン)が加入。さらに、彼のバンドメイトであったギタリストChris Poland (クリス・ポーランド)が加わり、第一期黄金ラインナップが完成する。
1985年、インディーズレーベルのCombat Records (コンバット・レコード)と契約したバンドは、デビュー・アルバム『Killing Is My Business... and Business Is Good!』 (キリング・イズ・マイ・ビジネス)をリリースした。8,000ドルという低予算(その半分はドラッグとアルコールに消えたとされる)で制作された本作は、プロダクションの粗さを補って余りある狂気的なスピードと複雑なリフ展開を見せつけた。特にMETALLICA時代の楽曲「The Four Horsemen」の原曲である「Mechanix」 (メカニックス)を倍速に近いテンポで演奏したことは、Mustaineの執念の表れであった。
2.3 メジャー進出と『Peace Sells...』の衝撃(1986-1987)
デビュー作のアンダーグラウンドでの成功は、大手Capitol Records (キャピトル・レコード)の関心を惹いた。契約を勝ち取ったバンドは、1986年に2ndアルバム『Peace Sells... but Who's Buying?』(ピース・セルズ... バット・フーズ・バイイング?)をリリースする。
このアルバムは、スラッシュメタルの歴史における金字塔と見なされている。ジャズの影響を受けたSamuelsonとPolandのリズム感覚は、単に速いだけのスラッシュメタルとは一線を画すグルーヴを生み出した。表題曲「Peace Sells」のベースラインはMTVニュースのオープニングテーマに使用され、バンドの知名度を一気に押し上げた。
しかし、成功の裏でメンバーの薬物依存は深刻化していた。特にPolandとSamuelsonの状態は限界に達し、Mustaineは彼らを解雇せざるを得なくなった。この時期の不安定さは、バンドが常に崩壊と隣り合わせの状態で創造性を発揮していたことを示唆している。
2.4 新体制と『So Far, So Good... So What!』 (1988-1989)
後任としてドラマーにChuck Behler (チャック・ベラー)、ギタリストにJeff Young (ジェフ・ヤング)を迎えたバンドは、1988年に3rdアルバム『So Far, So Good... So What!』 (ソー・ファー、ソー・グッド... ソー・ホワット!)を発表する。本作は前作までの洗練されたジャズ的要素よりも、パンク由来の攻撃性と暗鬱な雰囲気が色濃く出た作品となった。
特筆すべきは、Sex Pistols (セックス・ピストルズ)のカバー「Anarchy in the U.K.」 (アナーキー・イン・ザ・U.K.)の収録と、METALLICAのベーシストCliff Burton (クリフ・バートン)の事故死を悼んで書かれた名曲「In My Darkest Hour」 (イン・マイ・ダーケスト・アワー)である。しかし、このラインナップも長続きせず、人間関係の悪化によりBehlerとYoungは1989年に解雇される。
3. 第II部: 黄金期と技術的頂点(1990-1998)
3.1 究極のラインナップ完成と『Rust in Peace』 (1990)
1990年、MEGADETHの歴史、ひいてはヘヴィメタル史において最も重要とされるラインナップが完成する。ドラムにはNick Menza (ニック・メンザ)が加入。そしてリード・ギターには、Cacophony (カコフォニー)での活動で知られ、東洋的旋律と驚異的なピッキング技術を持つMarty Friedman (マーティ・フリードマン)が迎えられた。
同年発表された4thアルバム『Rust in Peace』(ラスト・イン・ピース)は、テクニカル・スラッシュメタルの最高傑作との呼び声が高い。MustaineとFriedmanのギター・デュオは、複雑怪奇な変拍子と高速リフの応酬を見事に調和させた。「Holy Wars... The Punishment Due」 (ホーリー・ウォーズ... ザ・パニッシュメント・デュー)や「Hangar 18」 (ハンガー18) における楽曲構成の緻密さは、MEGADETHを「インテレクチュアル(知的な)・スラッシュメタル」と定義づける決定打となった。
3.2 商業的成功と路線の変化(1992-1995)
1992年、METALLICAの『Black Album』の爆発的ヒットによるメタルシーンの変化を受け、MEGADETHもまた楽曲のコンパクト化とミドルテンポへの移行を試みる。その結果生まれた5thアルバム『Countdown to Extinction』(破滅へのカウントダウン)は、全米チャート (Billboard 200)で2位を記録し、バンド史上最大の商業的成功を収めた。シングル「Symphony of Destruction」 (シンフォニー・オブ・ディストラクション)は、シンプルながらも重厚なリフでラジオ・エアプレイを席巻した。
続く1994年の『Youthanasia』 (ユースアネイジア)では、さらにメロディアスな路線を推し進めた。アリゾナ州 (Arizona) フェニックスに建設した専用スタジオで録音された本作は、メンバー全員が作曲に関与し、バンドとしての結束が最も強かった時期の作品とされる。「A Tout le Monde」 (ア・トゥー・ル・モンド)のようなバラードも生まれ、バンドは成熟期を迎えた。
3.3 模索と黄金期の終焉 (1997-1998)
1997年の『Cryptic Writings』 (クリプティック・ライティングス)では、プロデューサーにDann Huff (ダン・ハフ)を迎え、ポップでラジオフレンドリーなサウンドを導入した。「Trust」(トラスト)はグラミー賞にノミネートされるヒットとなったが、初期のファンからは賛否両論が巻き起こった。
1998年、ドラマーのNick Menzaが膝の腫瘍(後に良性と判明)の手術のためにツアーを離脱。Mustaineは彼に対し、電話で解雇を通告した。これにより、約8年間続いた黄金のラインナップは崩壊し、後任にはJimmy DeGrasso (ジミー・デグラッソ)が加入した。
4. 第III部: 迷走、解散、そして復活 (1999-2009)
4.1 冒険的失敗作『Risk』とMarty Friedmanの脱退 (1999-2000)
1999年リリースの 『Risk』 (リスク)は、そのタイトル通りバンドにとって最大のリスクとなった。デジタル・ループやダンス・ビートすら取り入れたこの作品は、商業的にも批評的にも失敗に終わった。自身の音楽的ルーツである演歌やJ-POPへの傾倒を強めていたMarty Friedmanは、バンドの方向性に限界を感じ、2000年に脱退を表明する。彼はその後、活動拠点を日本に移し、独自の地位を築くこととなる。
後任ギタリストとしてAl Pitrelli (アル・ピトレリ)を迎え、2001年に原点回帰を目指した『The World Needs a Hero』(ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー)を発表するが、かつての勢いを取り戻すには至らなかった。
4.2 左腕の麻痺とバンド解散 (2002)
2002年、Dave Mustaineを悲劇が襲う。治療施設での滞在中、椅子の背もたれに左腕をかけたまま眠ってしまい、橈骨神経 (radial nerve)を圧迫。左腕が完全に麻痺し、医師からは「二度とギターは弾けない」と宣告された。MustaineはMEGADETHの解散を公式に発表し、音楽業界からの引退を示唆した。
4.3 奇跡の復活と『The System Has Failed』 (2004)
不屈の精神でリハビリテーションに取り組んだMustaineは、奇跡的に機能を回復させる。当初はソロ・アルバムとして制作が進められていたが、契約上の理由からMEGADETH名義でのリリースとなったのが、2004年の『The System Has Failed』 (ザ・システム・ハズ・フェイルド)である。
このアルバムでは、初期のギタリストChris Polandがセッション・メンバーとして復帰し、往年のファンを歓喜させた。しかし、長年の相棒であったDavid Ellefsonとは金銭的なトラブルから法廷闘争に発展しており、彼は不参加となった。ここから数年間、MEGADETHはMustaineのソロ・プロジェクト的色彩を強め、Glen Drover (グレン・ドローヴァー) やShawn Drover (ショーン・ドローヴァー) 兄弟、James MacDonough (ジェイムズ・マクドノウ)、James LoMenzo (ジェイムズ・ロメンゾ)らがメンバーとして出入りした。
4.4 新たな黄金期の予兆: 『United Abominations』から『Endgame』へ
Roadrunner Records (ロードランナー・レコード)に移籍して発表された2007年の『United Abominations』 (ユナイテッド・アボミネーションズ)は、国連批判を含んだ政治色の強い作品となり、バンドの完全復活を印象付けた。
さらに2009年の『Endgame』(エンドゲーム)では、超絶技巧派ギタリストChris Broderick (クリス・ブロデリック)が加入。彼の正確無比なプレイはMustaineを触発し、同作は「『Rust in Peace』以来の最高傑作」と多くの批評家に絶賛された。
5. 第IV部: David Ellefsonの帰還から現代へ (2010-2022)
5.1 「Junior」の帰還と『Th1rt3en』 (2010-2013)
2010年、長年の確執を乗り越え、オリジナル・ベーシストのDavid Ellefsonが電撃的に復帰する。これによりバンドの安定感は劇的に向上した。2011年の『Th1rt3en』 (サーティーン)、2013年の『Super Collider』(スーパー・コライダー)はこのラインナップで制作されたが、『Super Collider』は再びポップな路線に振れ、評価が分かれる結果となった。
5.2 Kiko Loureiroの加入とグラミー賞受賞 (2015-2017)
2015年、バンドは再び刷新される。ブラジルのメタルバンドAngra (アングラ)のギタリスト Kiko Loureiro(キコ・ルーレイロ)と、Lamb of God (ラム・オブ・ゴッド)のドラマーChris Adler (クリス・アドラー)が参加。この新体制で制作された2016年の『Dystopia』 (ディストピア)は、近未来的なディストピアと現代社会の闇を描いたダークな傑作となった。
表題曲「Dystopia」により、MEGADETHは第59回グラミー賞で「最優秀メタル・パフォーマンス賞」を受賞。ノミネート12回目にして初の快挙であり、Mustaineの執念が報われた瞬間であった。その後、ドラマーにはSoilwork (ソイルワーク)出身のDirk Verbeuren (ダーク・ヴェルビューレン)が正式加入し、鉄壁のリズム隊が完成する。
5.3 咽頭がんの克服とスキャンダル、そして『The Sick, the Dying...』 (2019-2022)
2019年、Mustaineは咽頭がん (throat cancer)と診断されたことを公表する。バンド活動は一時休止となったが、彼は過酷な治療を経て見事に完治を宣言した。
しかし2021年、再び激震が走る。David Ellefsonが性的なスキャンダルによりバンドを解雇されたのである。制作中であったニューアルバムのベース・トラックは全て削除され、Testament (テスタメント)のSteve Di Giorgio (スティーヴ・ディ・ジョルジョ)によって再録音された。
2022年にリリースされた16作目『The Sick, the Dying... and the Dead!』 (ザ・シック、ザ・ダイイング... アンド・ザ・デッド!)は、パンデミックや戦争といった暗い世相を反映しつつも、バンドの健在ぶりを示す強力なスラッシュメタル・アルバムとなった。正式ベーシストにはJames LoMenzoが再加入した。
6. 第V部: 最終章 『MEGADETH』 (2023-2026)
6.1 最後のギタリスト: Teemu Mäntysaariの抜擢
2023年後半、Kiko Loureiroが家庭の事情によりツアーを離脱、その後脱退を表明した。彼の推薦により後任として迎えられたのが、フィンランド出身のギタリストTeemu Mäntysaari (テーム・マンティサーリ)である。Wintersun (ウィンターサン)やSmackbound (スマックバウンド)での活動で知られる彼は、Kikoをも凌駕するほどの精密なプレイと、Mustaineの若き日を彷彿とさせるアグレッシブなスタイルで瞬く間にファンに受け入れられた。
6.2 スタジオ・ラストアルバム『MEGADETH』 (2026)
2026年1月23日、MEGADETHはその40年以上の歴史に終止符を打つべく、17枚目にして最後のスタジオ・アルバム『MEGADETH』 (メガデス)をリリースした。通称「ホワイト・アルバム (The White Album)」と呼ばれる本作は、Dave Mustaineの自主レーベル TradecraftとBLKIIBLK Recordsの提携により発表された。
アルバムの概要と評価
本作は、「究極にして最高に知的なスラッシュメタル作品 (ultimate and greatest intellectual thrash metal work)」と形容され、過去の集大成的な内容となっている。Teemu Mäntysaariの加入により、ギターワークは『Rust in Peace』 時代を想起させる複雑さとスピードを取り戻した。シングルカットされた「Let There Be Shred」 (レット・ゼア・ビー・シュレッド)はその象徴であり、タイトル通り壮絶なギターバトルが展開される。
商業的にも大成功を収め、全米ビルボード200 (Billboard 200)においてバンド史上初となる1位を獲得。オーストラリアのARIAチャートでも首位を記録するなど、有終の美を飾った。
日本盤の仕様とボーナストラック
日本との関係が深いMEGADETHは、最後のアルバムにおいても日本市場を特別視した。Ward Records (ワードレコーズ)から発売された日本盤には以下の特典が含まれている。
- 日本限定ボーナストラック: 最大の驚きは、METALLICAの名曲「Ride the Lightning」 (ライド・ザ・ライトニング)のカバーが収録されたことである。かつて自身が作曲に関与しながらもクレジットの問題などで確執の原因となっていたこの曲を、キャリアの最後にMEGADETHとして演奏することは、Mustaineにとって過去との完全な和解と決別を意味する歴史的事件であった。
- 仕様: 初回限定盤は三方背ケース仕様で、アルバム・アートワークをあしらった特製スリーブが付属。
- 解説: 長年バンドを見守ってきた音楽評論家、伊藤政則(Masanori Ito) による解説と歌詞対訳が封入されている。
6.3 ドキュメンタリー映画『MEGADETH: Behind the Mask』
アルバム発売前日の2026年1月22日、ドキュメンタリー映画『MEGADETH: Behind the Mask』 (メガデス: ビハインド・ザ・マスク)が世界各地の映画館で公開された(日本では限定的な上映となった)。この作品は、Dave Mustaineが40年のキャリアを振り返るインタビューと、ラストアルバムの全曲試聴、速度・戦争・社会問題に鋭く切り込む歌詞世界(※原文ママ、正しくは制作秘話)を組み合わせた内容となっており、バンドの「遺言」とも言える映像作品である。
7. メンバー (Personnel) 詳細分析
MEGADETHはDave Mustaineという絶対君主を中心とした組織であるが、その歴史を彩ったメンバーはいずれも卓越した技術を持つミュージシャンであった。
7.1 最終ラインナップ (2026)
| 氏名(英語) | 氏名(カナ) | 担当 | 在籍期間 | 特徴・役割 |
|---|---|---|---|---|
| Dave Mustaine | デイヴ・ムステイン | Vo, Gt | 1983-現在 | 創設者にして絶対的リーダー。複雑なリフを弾きながら歌うスタイルは唯一無二。 |
| James LoMenzo | ジェイムズ・ロメンゾ | Ba, Cho | 2006-2010, 2021-現在 |
White Lion出身。堅実なプレイと派手なステージアクションでバンドを支えるベテラン。 |
| Dirk Verbeuren | ダーク・ヴェルビューレン | Dr | 2016-現在 | Soilwork出身。「ダークブラスト」と呼ばれる正確無比なブラストビートでバンドを加速させた。 |
| Teemu Mäntysaari | テーム・マンティサーリ | Gt | 2023-現在 | フィンランド出身。Kikoの後任として、最終作で驚異的なテクニックを披露。 |
7.2 主要な元メンバー
| 氏名(英語) | 氏名(カナ) | 担当 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| David Ellefson | デイヴィッド・エレフソン | Ba | 「Junior」の愛称で親しまれたオリジナルメンバー。2021年に不名誉な形で解雇。 |
| Marty Friedman | マーティ・フリードマン | Gt | 黄金期(1990-2000)を支えた。演歌的旋律を持ち込み、バンドの音楽性を拡張。現在は日本でタレントとしても活躍。 |
| Nick Menza | ニック・メンザ | Dr | 黄金期のリズムを支えたパワフルなドラマー。2016年にステージ上で急逝。 |
| Kiko Loureiro | キコ・ルーレイロ | Gt | 『Dystopia』での復活に貢献。多才な音楽性でMustaineの信頼を得た。 |
| Gar Samuelson | ガー・サミュエルソン | Dr | 初期のジャズ・フュージョン・スタイルを確立。1999年に死去。 |
| Chris Poland | クリス・ポーランド | Gt | 初期および『The System Has Failed』に参加。独特のレガート奏法が特徴。 |
8. ディスコグラフィ (Studio Albums)
MEGADETHが残した全17枚のスタジオ・アルバムの詳細データは以下の通りである。
8.1 1980年代: スラッシュメタルの確立
| タイトル(原題/邦題) | 発売年 | レーベル | 概要・重要曲 |
|---|---|---|---|
| Killing Is My Business... and Business Is Good! キリング・イズ・マイ・ビジネス |
1985 | Combat | 概要: 予算不足による劣悪な音質だが、殺気とスピードはキャリア随一。 重要曲: "Mechanix", "Rattlehead" |
| Peace Sells... but Who's Buying? ピース・セルズ... バット・フーズ・バイイング? |
1986 | Capitol | 概要: スラッシュメタルの聖典。社会的歌詞と複雑な構成の融合。 重要曲: "Peace Sells", "Wake Up Dead" |
| So Far, So Good... So What! ソー・ファー、ソー・グッド... ソー・ホワット |
1988 | Capitol | 概要: 混沌とした過渡期の作品。音作りは荒々しく、ダークな雰囲気が漂う。 重要曲: "In My Darkest Hour", "Set the World Afire" |
8.2 1990年代: 黄金期と変革
| タイトル(原題/邦題) | 発売年 | レーベル | 概要・重要曲 |
|---|---|---|---|
| Rust in Peace ラスト・イン・ピース |
1990 | Capitol | 概要: テクニカル・スラッシュの最高到達点。全曲が名演。 重要曲: "Holy Wars... The Punishment Due", "Hangar 18", "Tornado of Souls" |
| Countdown to Extinction 破滅へのカウントダウン |
1992 | Capitol | 概要: 全米2位。ミドルテンポ主体の構築美で商業的成功を掴む。 重要曲: "Symphony of Destruction", "Sweating Bullets" |
| Youthanasia ユースアネイジア |
1994 | Capitol | 概要: メロディアスで重厚なサウンド。バンドの一体感が強い。 重要曲: "A Tout le Monde", "Train of Consequences" |
| Cryptic Writings クリプティック・ライティングス |
1997 | Capitol | 概要: ポップ・センスを取り入れ、ラジオヒットを狙った作品。 重要曲: "Trust", "She-Wolf" |
| Risk リスク |
1999 | Capitol | 概要: 実験的ロック作品。ファンを戸惑わせたが、メロディの質は高い。 重要曲: "Crush 'Em", "Breadline" |
8.3 2000年代: 再生への道のり
| タイトル(原題/邦題) | 発売年 | レーベル | 概要・重要曲 |
|---|---|---|---|
| The World Needs a Hero ワールド・ニーズ・ア・ヒーロー |
2001 | Sanctuary | 概要: 原点回帰を図ったが、まだ迷いが見える作品。 重要曲: "Dread and the Fugitive Mind" |
| The System Has Failed ザ・システム・ハズ・フェイルド |
2004 | Sanctuary | 概要: Mustaine復活作。Chris Polandの参加で初期の雰囲気が蘇る。 重要曲: "Blackmail the Universe", "Kick the Chair" |
| United Abominations ユナイテッド・アボミネーションズ |
2007 | Roadrunner | 概要: 完全バンド形態での復活。攻撃的なスラッシュが戻ってきた。 重要曲: "Washington Is Next!", "Sleepwalker" |
| Endgame エンドゲーム |
2009 | Roadrunner | 概要: 非常にテクニカルでアグレッシブ。批評家筋の評価が高い。 重要曲: "Head Crusher", "This Day We Fight!" |
8.4 2010年代以降: 円熟と最終章
| タイトル(原題/邦題) | 発売年 | レーベル | 概要・重要曲 |
|---|---|---|---|
| Thirteen サーティーン |
2011 | Roadrunner | 概要: Ellefson復帰作。過去の未発表曲のリメイクが多い。 重要曲: "Public Enemy No. 1" |
| Super Collider スーパー・コライダー |
2013 | Tradecraft | 概要: 再びメロディアス路線へ。評価は分かれた。 重要曲: "Kingmaker" |
| Dystopia ディストピア |
2016 | Tradecraft | 概要: Kiko加入により劇的進化。グラミー受賞の傑作。 重要曲: "Dystopia", "The Threat Is Real" |
| The Sick, the Dying... and the Dead! ザ・シック、ザ・ダイイング... アンド・ザ・デッド! |
2022 | Tradecraft | 概要: パンデミック禍で制作された高速スラッシュアルバム。 重要曲: "We'll Be Back", "Night Stalkers" |
| MEGADETH メガデス (ラストアルバム) |
2026 | Tradecraft | 概要: キャリアを総括する最終作。初の全米1位。 重要曲: "Tipping Point", "Let There Be Shred", "Ride the Lightning" (Japan Bonus) |
9. 2026年ラストアルバム『MEGADETH』 トラックリスト
最終作に関する情報は、ファンにとって極めて重要であるため、ここにトラックリスト(日本盤仕様)を記載する。
| No. | 曲名(英語) | 曲名(カナ表記) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1 | Tipping Point | ティッピング・ポイント | リードシングル |
| 2 | I Don't Care | アイ・ドント・ケア | 第2シングル。 |
| 3 | Hey, God?! | ヘイ、ゴッド?! | |
| 4 | Let There Be Shred | レット・ゼア・ビー・シュレッド | 第3シングル。ギターソロの応酬。 |
| 5 | Puppet Parade | パペット・パレード | 第4シングル |
| 6 | Another Bad Day | アナザー・バッド・デイ | |
| 7 | Made to Kill | メイド・トゥ・キル | |
| 8 | Obey the Call | オベイ・ザ・コール | |
| 9 | I Am War | アイ・アム・ウォー | |
| 10 | The Last Note | ザ・ラスト・ノート | インストゥルメンタル。アルバム本編のエンディング。 |
| 11 | Ride the Lightning | ライド・ザ・ライトニング | 日本盤ボーナス。METALLICAカバー。 |
| 12 | The Last Note (Instrumental) | ザ・ラスト・ノート(インストゥルメンタル) | 日本盤ボーナス。拡張バージョン。 |
10. MEGADETHの遺産
MEGADETHの40年余の歴史は、Dave Mustaineという一人の男の闘争の歴史であった。METALLICAへの復讐心から始まり、薬物との戦い、メンバーとの離別、身体的機能の喪失、そして咽頭がんとの闘病。その全ての苦難を、彼は怒りを燃料とした音楽へと昇華させてきた。
2026年の『MEGADETH』における全米No.1獲得と「Ride the Lightning」のカバーは、彼が過去の呪縛から完全に解き放たれ、勝利者としてキャリアを閉じたことを象徴している。MEGADETHが残した「インテレクチュアル・スラッシュ」の遺伝子は、後続のテクニカル・デスメタルやプログレッシブ・メタルのバンドの中に生き続け、Vic Rattlehead (ヴィック・ラトルヘッド)の冷笑と共に、ヘヴィメタル史に永遠に刻まれることだろう。