IN FLAMES
ヘヴィメタル (Heavy Metal) の歴史において、1990年代初頭のスウェーデン、特にイェーテボリ (Gothenburg) で発生したムーブメントは、エクストリーム・ミュージックの文法を根底から覆す革命的なものであった。
Biography
イン・フレイムス (IN FLAMES)
イェーテボリ・サウンドの創出、変容、回帰
1. メロディック・デスメタルの始祖とその進化の軌跡
ヘヴィメタル (Heavy Metal) の歴史において、1990年代初頭のスウェーデン、特にイェーテボリ (Gothenburg) で発生したムーブメントは、エクストリーム・ミュージックの文法を根底から覆す革命的なものであった。その中心にいたのが、アット・ザ・ゲイツ (At The Gates)、ダーク・トランキュリティー (Dark Tranquillity)、そしてイン・フレイムス (IN FLAMES) である。これら「イェーテボリの三羽鳥 (The Gothenburg Three)」の中でも、イン・フレイムスは最も商業的な成功を収め、かつ最も音楽的な変遷を遂げたバンドとして特異な位置を占めている。
IN FLAMESが確立した「イェーテボリ・サウンド (Gothenburg Sound)」とは、英国のNWOBHM (New Wave of British Heavy Metal)、特にアイアン・メイデン (Iron Maiden) やジューダス・プリースト (Judas Priest) に由来する叙情的なツイン・リード・ギターのハーモニーと、デスメタル (Death Metal) の持つ暴虐的なリズムやグロウル(デスボイス)を融合させた様式である。創設者イェスパー・ストロムブラード (Jesper Strömblad)の「誰もやったことのない、メロディと残虐性の融合」というヴィジョンは、瞬く間に世界中のメタル・ファンを虜にし、後にアメリカで勃興するメタルコア (Metalcore) ムーブメントの直接的な源流となった。
しかし、イン・フレイムスの歴史は単なる「ジャンルの確立」に留まらない。2000年代中盤以降、IN FLAMESは自らが築き上げたスタイルを解体し、オルタナティヴ・メタル (Alternative Metal) やモダン・ヘヴィネス (Modern Heaviness) への接近を試み、多くの古参ファンからの批判に晒されながらも新たなファンベースを獲得し続けた。そして2023年、アルバム『Foregone』においてIN FLAMESは過去と現在を統合する劇的な「回帰」を果たした。
2. バンドの歴史 (Biography)
イン・フレイムスの歴史は、その音楽性の変化とメンバー構成によって、明確ないくつかの時代に区分される。
2.1 黎明期: プロジェクトとしての始動とデスメタルへの挑戦 (1990-1994)
2.1.1 結成の背景
1990年、スウェーデンのイェーテボリにて、当時デスメタルバンド、セレモニアル・オース (Ceremonial Oath) のベーシストであったイエスパー・ストロムブラード (Jesper Strömblad)が、よりメロディックな音楽を追求するためにサイドプロジェクトとしてイン・フレイムスを立ち上げた。当時のデスメタル・シーンでは「メロディ=軟弱」という風潮が強かったが、イェスパーは鍵盤楽器やアコースティック・ギターを取り入れた、哀愁美を帯びたデスメタルを構想していた。
2.1.2 デモ制作と流動的なメンバー
1993年、イェスパーはセレモニアル・オースを脱退し、イン・フレイムスを本格始動させた。初期のメンバーとして、グレン・ユングストローム (Glenn Ljungström - Guitar) とヨハン・ラーソン (Johan Larsson - Bass) が加わったが、専任のボーカリストは不在であった。同年制作された『Demo '93』は、その完成度の高さからWrong Again Recordsの目に留まり、契約に至る。
2.1.3 『Lunar Strain』 とセッション・ミュージシャン
1994年のデビューアルバム 『Lunar Strain (ルナ・ストレイン)』のレコーディングは、メンバー不足を補うために多数のゲストミュージシャンを迎えて行われた。特筆すべきは、ボーカルを担当したのがダーク・トランキュリティー (Dark Tranquillity) のミカエル・スタンネ(Mikael Stanne) であった点である。また、ヴァイオリンのイルヴァ・ワールステッド (Ylva Wåhlstedt) の参加により、北欧のフォークロア (民俗音楽)の影響が色濃く反映されたサウンドとなった。この時期の楽曲は、ブラックメタル (Black Metal) に近いトレモロ・リフやブラストビートを含みつつも、その上に乗るメロディは極めて叙情的であった。
2.2 黄金のラインナップの形成と 「The Gothenburg Sound」の確立 (1995-1999)
2.2.1 アンダース・フリーデンとビョーン・イエロッテの加入
1995年のEP 『Subterranean (サブテラニアン)』制作後(ボーカルはヘンケ・フォース (Henke Forss) が担当)、バンドは恒久的なラインナップの確立を目指した。ここで、ダーク・トランキュリティーの初代ボーカリストであったアンダース・フリーデン (Anders Fridén)が加入する。これにより、ミカエル・スタンネとアンダース・フリーデンが互いのバンドを交換した形となったことは、イェーテボリ・シーンの密接な人間関係を象徴するエピソードとして知られている。同時期に、ビョーン・イエロッテ (Björn Gelotte) がドラマー (Drums) として加入した。
2.2.2 『The Jester Race』: ジャンルの金字塔
1996年リリースの2ndアルバム 『The Jester Race (ザ・ジェスター・レース)』は、メロディック・デスメタルというジャンルを定義づけた歴史的名盤である。アンダースの深いグロウル、イェスパーとグレンによるツイン・ギターのハーモニー、そしてアコースティック・パートの巧みな挿入は、暴虐性と美旋律の対比 (Contrast) を芸術の域に高めた。タイトル曲や「Moonshield (ムーンシールド)」は、現在でもライブの定番曲として演奏されている。
2.2.3 『Whoracle』 とメンバーの離脱
1997年の3rdアルバム 『Whoracle (ホラクル)』は、「文明の衰退」をテーマにしたコンセプト・アルバム的な側面を持つ作品である。前作に比べてテンポを落とし、リズムの重厚さを強調したこの作品では、デペッシュ・モード (Depeche Mode) の「Everything Counts」をカバーするなど、後の音楽的拡張の萌芽が見られた。しかし、本作のレコーディング終了直後にグレン・ユングストロームとヨハン・ラーソンが脱退。バンドは急遽、ピーター・イワース (Peter Iwers - Bass) とニクラス・エンゲリン (Niclas Engelin - Guitar) をサポートとして迎え、ツアーを敢行した。
2.2.4 「クラシック・ラインナップ」の完成と 『Colony』
1998年、ニクラス・エンゲリンが一時脱退した後、バンドは重大な配置転換を行った。ドラマーであったビョーン・イエロッテがギタリストに転向し、空いたドラムの座にダニエル・スヴェンソン (Daniel Svensson) が着いたのである。これにより、以下の「クラシック・ラインナップ (Classic Lineup)」が完成した。
- Anders Fridén (Vocals)
- Jesper Strömblad (Guitar)
- Björn Gelotte (Guitar)
- Peter Iwers (Bass)
- Daniel Svensson (Drums)
この布陣で制作された1999年の『Colony (コロニー)』は、演奏のタイトさ、ハモンドオルガンの導入による音の厚み、そして「Zombie Inc.」 や 「Embody the Invisible」に見られる劇的な曲展開により、初期スタイルの完成形と評価されている。
2.3 絶頂と転換の予兆: 『Clayman』 から 『Reroute to Remain』へ (2000-2003)
2.3.1 『Clayman』 と日本での熱狂
2000年の『Clayman (クレイマン)』は、バンドが世界的ブレイクを果たすきっかけとなった作品である。「Only for the Weak」に代表される、縦ノリのグルーヴとキャッチーなサビの導入は、IN FLAMESがデスメタルの枠を超え始めたことを示唆していた。この時期、日本での人気は絶頂に達し、2000年11月の赤坂BLITZ公演などを収録したライブ・アルバム 『The Tokyo Showdown (ザ・トーキョー・ショーダウン)』が2001年にリリースされた。
2.3.2 『Reroute to Remain』: 論争を呼んだ進化
2002年、バンドはプロデューサーを長年の盟友フレドリック・ノルドストローム (Fredrik Nordström)からダニエル・バーグストランド (Daniel Bergstrand) に変更し、『Reroute to Remain (リルート・トゥ・リメイン)』を発表した。本作での変化は劇的であった。
- ダウン・チューニング: ギターのチューニングをドロップA#まで下げ、重低音を強調。
- シンセサイザーの前面化: エレクトロニクスを装飾ではなくリフの一部として使用。
- ボーカルスタイルの変化: アンダースがクリーン・ボーカルやスポークン・ワードを多用。
この変化は、ニュー・メタル (Nu-Metal) 全盛のアメリカ市場を意識したものと捉えられ、古参ファンからは「セルアウト (売国奴的行為)」との批判も浴びたが、結果としてバンドはアメリカでの大規模なツアー (スレイヤーやソウルフライとの共演)を成功させ、ファンベースを拡大した。
2.4 モダン・ヘヴィネスの追求とイェスパーの苦悩 (2004-2010)
2.4.1 ダークさと冷徹さ: 『Soundtrack to Your Escape』
2004年の『Soundtrack to Your Escape (サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ)』は、前作のモダン路線を継承しつつ、よりインダストリアルで閉塞感のあるサウンドスケープを描いた。「The Quiet Place」 や 「My Sweet Shadow」では、スタッカートを効かせたリフと広がり (Ambience) のあるキーボードが特徴的である。
2.4.2 融合の傑作:『Come Clarity』
2006年の『Come Clarity (カム・クラリティ)』は、初期の疾走感と近年のモダンさを融合させた「ハイブリッド」な作品として高く評価された。タイトルトラックのようなバラードから、「Take This Life」のようなアグレッシブな楽曲まで、バンドの持つ多様性が凝縮されている。本作でバンドはスウェーデンのグラミー賞を受賞した。
2.4.3 イェスパー・ストロムブラードの脱退
2008年の『A Sense of Purpose (ア・センス・オブ・パーパス)』リリース後、バンドの創設者であるイェスパー・ストロムブラードのアルコール依存症が悪化し、ツアーへの不参加が常態化した。2010年2月、イェスパーは治療に専念するため、そしてバンドにこれ以上迷惑をかけないために、自身の創ったバンドを脱退するという苦渋の決断を下した。これにより、バンドからオリジナル・メンバーが一人もいなくなるという事態となった。
2.5 ビョーン&アンダース体制による再構築 (2011-2018)
2.5.1 新たなソングライティング体制
イェスパーの後任として、かつてサポートを務めたニクラス・エンゲリン (Niclas Engelin) が正式加入した。しかし、作曲の主論はビョーン・イエロッテが一手に引き受けることとなり、アンダースが作詞とボーカル・メロディを担当する体制が確立した。
2011年の『Sounds of a Playground Fading (サウンズ・オブ・ア・プレイグラウンド・フェイディング)』は、イェスパー不在で作られた初のアルバムであり、デスメタルの要素はさらに後退し、正統派ヘヴィメタルやオルタナティヴ・ロックの色合いが濃くなった。
2.5.2 実験作『Siren Charms』 とメンバーの流出
2014年の『Siren Charms (サイレン・チャームズ)』は、デヴィッド・ボウイ (David Bowie) らが使用したベルリンの伝説的スタジオ 「ハンザ・スタジオ (Hansa Tonstudio)」で録音された。本作はバンド史上最もソフトでメランコリックな作品となり、ファンや批評家の間で賛否が大きく分かれた。この時期、長年のリズム隊であったダニエル・スヴェンソン(2015年脱退) とピーター・イワース (2016年脱退) が相次いでバンドを去った。バンドはジョー・リカード (Joe Rickard - Drums) やブライス・ポール (Bryce Paul - Bass) といったアメリカ人メンバーを迎え、多国籍バンドへと変貌していった。
2.5.3 アメリカン・プロデューサーとのタッグ
2016年の『Battles (バトルズ)』と2019年の『I, the Mask (アイ・ザ・マスク)』では、アメリカの著名プロデューサー、ハワード・ベンソン (Howard Benson)を起用。ロサンゼルスでのレコーディングにより、サウンドはよりラジオ・フレンドリーで、アリーナ・ロック的なスケール感を持つようになった。アンダースは専門的なボイストレーニングを受け、歌唱力が飛躍的に向上した。
2.6 原点回帰と「Foregone」の衝撃 (2019-現在)
2.6.1 クリス・ブロデリックとリアム・ウィルソンの加入
2019年、ニクラス・エンゲリンが個人的な事情で活動休止すると、元メガデス(Megadeth) のクリス・ブロデリック (Chris Broderick) が代役としてツアーに参加し、2022年に正式加入した。さらに2023年には、元デリンジャー・エスケイプ・プラン (The Dillinger Escape Plan) のリアム・ウィルソン (Liam Wilson) がベーシストとして加入。技術的に極めて高度な演奏力を持つメンバーが揃った。
2.6.2 『Foregone』: 過去と未来の統合
2023年にリリースされた『Foregone (フォーゴーン)』は、近年のモダンなプロダクションと、初期のメロディック・デスメタルの攻撃性を融合させた「集大成」的なアルバムとなった。特に「State of Slow Decay」や「Foregone Pt. 1」では、往年のファンが待ち望んだ高速ビートとツイン・リードが復活し、「イェーテボリ・サウンドへの回帰」として絶賛された。これは、元メンバーたちが結成したザ・ヘイロー・エフェクト (The Halo Effect) が初期イン・フレイムスのサウンドを提示したことへの、本家からの回答とも受け取れる。
3. メンバー詳細 (Band Members)
イン・フレイムスのメンバー変遷は複雑であり、それぞれの時期のサウンドに直結している。
3.1 現行メンバー (Current Members)
以下の表は、2024年時点での公式メンバーである。
| 名前(英語/カタカナ) | 担当パート | 加入年 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Anders Fridén (アンダース・フリーデン) |
Vocals | 1995 | バンドのフロントマン。初期はダーク・トランキュリティに在籍。グロウルからクリーンまで幅広い声域を持つ。作詞担当。 |
| Björn Gelotte (ビョーン・イエロッテ) |
Lead Guitar | 1995 | 1995-1998年はドラム担当。現在はメインコンポーザー。エピフォン (Epiphone) よりシグネチャーモデルのレスポール (Les Paul)を発売。 |
| Chris Broderick (クリス・ブロデリック) |
Guitar | 2019 | 元Megadeth, Jag Panzer, Nevermore。7弦ギターを駆使した超絶技巧 (Shredding) で知られる。 |
| Liam Wilson (リアム・ウィルソン) |
Bass | 2023 | 元The Dillinger Escape Plan。指弾きによる変則的かつテクニカルなプレイが特徴。 |
注: 2025年5月時点で、ドラマーのタナー・ウェイン (Tanner Wayne) が脱退し、ジョン・ライス (Jon Rice) がツアー・ドラマーとして参加している。
3.2 主要な元メンバー (Notable Past Members)
| 名前(英語/カタカナ) | 担当パート | 在籍期間 | 貢献・脱退後の活動 |
|---|---|---|---|
| Jesper Strömblad (イェスパー・ストロムブラード) |
Guitar / Drums | 1990-2010 | 創設者。イェーテボリ・サウンドの創造主。脱退後はThe Halo Effect, CyHra等で活動。 |
| Peter Iwers (ピーター・イワース) |
Bass | 1997-2016 | 黄金期のリズム隊。脱退後はビール醸造業を経てThe Halo Effectに参加。 |
| Daniel Svensson (ダニエル・スヴェンソン) |
Drums | 1998-2015 | パワフルなドラミングでバンドの屋台骨を支えた。現在はThe Halo Effect。 |
| Niclas Engelin (ニクラス・エンゲリン) |
Guitar | 1997-98 2011-19 |
Engelのリーダー。イェスパーの後任として貢献。現在はThe Halo Effect。 |
| Glenn Ljungström (グレン・ユングストローム) |
Guitar | 1993-1997 | 初期のリードギタリスト。イェスパーとのハーモニーは初期サウンドの核。 |
| Johan Larsson (ヨハン・ラーソン) |
Bass | 1993-1997 | 初期のベーシスト。『Whoracle』後に脱退。 |
| Joe Rickard (ジョー・リカード) |
Drums | 2016-2018 | 『Battles』に参加。現在はプロデューサーとしても活動。 |
| Bryce Paul (ブライス・ポール) |
Bass | 2017-2023 | ライブでのコーラスワーク (Backing Vocals) でも貢献した。 |
| Tanner Wayne (タナー・ウェイン) |
Drums | 2018-2025 | 元Chiodos等。『I, the Mask』 『Foregone』に参加。 |
4. ディスコグラフィ (Discography)
イン・フレイムスのスタジオアルバム全14作について、音楽性、制作背景、日本盤情報を含めて詳述する。
4.1 初期三部作: メロディック・デスメタルの黎明
1. Lunar Strain (ルナ・ストレイン)
- 発売年: 1994年
- レーベル: Wrong Again Records
- 日本盤: トイズファクトリー等から発売。ボーナストラックとしてEP 『Subterranean』が収録されることが多い。
- 解説: 専任ボーカル不在のため、ダーク・トランキュリティーのミカエル・スタンネがゲスト参加。イェスパー自身がドラムとキーボードも兼任している。ブラックメタルの影響を残すトレモロ・リフやブラストビートの上に、北欧民謡 (Folk Music) を思わせるヴァイオリンやアコースティック・ギターが乗るスタイルは、当時としては革新的であった。
- 重要曲: "Behind Space" (ライブ定番曲), "Lunar Strain"。
2. The Jester Race (ザ・ジェスター・レース)
- 発売年: 1996年
- レーベル: Nuclear Blast
- 解説: アンダースとビョーン加入後初のアルバム。デスメタルの攻撃性とNWOBHMの様式美が完璧に融合した歴史的名盤。ギターのハーモニーは単なる伴奏ではなく、楽曲の主旋律として機能している。プロデューサーのフレドリック・ノルドストロームと共に、スタジオ・フレッドマン (Studio Fredman) サウンドを世界に知らしめた。
- 重要曲: "Moonshield" (アコースティック・イントロ), "Artifacts of the Black Rain"。
3. Whoracle (ホラクル)
- 発売年: 1997年
- 解説: 「The Jester Race」よりもテンポを落とし、グルーヴとリフの重さを重視した作品。歌詞は世界の終末や社会の腐敗をテーマにしたコンセプト・アルバムとなっている。デペッシュ・モードのカバー「Everything Counts」は、後のエレクトロニクス導入への布石とも解釈できる。
- 邦題: 『ホラクル』
4.2 黄金期: スタイルの完成と絶頂
4. Colony (コロニー)
- 発売年: 1999年
- 解説: クラシック・ラインナップ (Anders, Jesper, Björn, Peter, Daniel) による第一弾。演奏のタイトさ、楽曲の構成力、プロダクションのクリアさにおいて飛躍的な進化を遂げた。ハモンドオルガンがサウンドに厚みを加え、アンダースのスクリームも表現力を増している。
- 邦題: 『コロニー』
- 重要曲: "Colony", "Ordinary Story", "Embody the Invisible".
5. Clayman (クレイマン)
- 発売年: 2000年
- 解説: 初期スタイルの集大成にして、最大のヒット作の一つ。「Only for the Weak」や「Pinball Map」に見られるように、よりリズミカルでキャッチーなフックが導入され、ライブでの一体感を生み出す楽曲が増えた。アートワークはレオナルド・ダ・ヴィンチの「ウィトルウィウス的人体図」をモチーフにしている。
- 邦題: 『クレイマン』
4.3 変革期: モダン・ヘヴィネスへの転換
6. Reroute to Remain (リルート・トゥ・リメイン)
- 発売年: 2002年
- 解説: プロデューサーにダニエル・バーグストランドを迎え、劇的な方向転換を図った問題作。クリーン・ボーカルの大胆な導入、シンセサイザーの多用、モダンなヘヴィネスの追求により、アメリカ市場での成功を掴んだ反面、古参ファンからは賛否両論を巻き起こした。
- 邦題: 『リルート・トゥ・リメイン』
- 重要曲: "Cloud Connected", "Trigger", "System"。
7. Soundtrack to Your Escape (サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ)
- 発売年: 2004年
- 解説: 前作のモダン路線を継承しつつ、よりダークで閉塞的な世界観を構築。キーボードによるアンビエントな音響空間と、スタッカート主体のリフが特徴。ミュージックビデオの制作にも力を入れ、視覚的なイメージ戦略も強化された。
- 邦題: 『サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ』
- 重要曲: "The Quiet Place", "My Sweet Shadow"。
8. Come Clarity (カム・クラリティ)
- 発売年: 2006年
- 解説: アメリカでの人気を不動のものとした作品。「Take This Life」のような高速ナンバーと、タイトルトラックのようなパワー・バラードが共存し、新旧のファンを納得させるバランスの良さを持つ。
- 邦題: 『カム・クラリティ』
9. A Sense of Purpose (ア・センス・オブ・パーパス)
- 発売年: 2008年
- 解説: イェスパーが参加した最後のアルバム。ミッドテンポ主体の楽曲構成で、独特の浮遊感とメランコリックなメロディが際立つ。「The Chosen Pessimist」はバンド史上最も長い楽曲の一つであり、プログレッシブな展開を見せる。
- 邦題: 『ア・センス・オブ・パーパス』
4.4 ポスト・イェスパー期: オルタナティヴへの接近
10. Sounds of a Playground Fading (サウンズ・オブ・ア・プレイグラウンド・フェイディング)
- 発売年: 2011年
- 解説: ビョーン・イエロッテが単独でギターを作曲した初の作品。デスメタルの要素はさらに希薄になり、正統派ヘヴィメタルやハードロックに近いアプローチが見られる。歌詞もより内省的かつ抽象的なものへと変化した。
- 邦題: 『サウンズ・オブ・ア・プレイグラウンド・フェイディング』
- 重要曲: "Deliver Us", "Where the Dead Ships Dwell".
11. Siren Charms (サイレン・チャームズ)
- 発売年: 2014年
- 解説: ベルリンのハンザ・スタジオ録音。エレクトロニクスとクリーントーンを多用した、バンド史上最も「ソフト」で実験的なアルバム。アンダースの歌唱も囁くようなスタイルが多く、メタルというよりはオルタナティヴ・ロックに近い。
- 邦題: 『サイレン・チャームズ』
12. Battles (バトルズ)
- 発売年: 2016年
- 解説: ハワード・ベンソンをプロデューサーに迎え、ロサンゼルスで制作。コーラスのキャッチーさを極限まで追求したアリーナ・ロック・スタイル。アンダースのボーカル・ワークが飛躍的に向上し、メロディの強度が上がった。
- 邦題: 『バトルズ』
13. I, the Mask (アイ・ザ・マスク)
- 発売年: 2019年
- 解説: 『Battles』の路線を継続しつつ、よりアグレッシブなリフや疾走曲を取り戻した作品。アンダースのハイトーン・ボイスやスクリームのキレが増し、ライブ映えする楽曲が多い。
- 邦題: 『アイ・ザ・マスク』
4.5 現在: 原点への回帰と統合
14. Foregone (フォーゴーン)
- 発売年: 2023年
- 解説: クリス・ブロデリック加入後初のアルバム。「時の流れ」をテーマに、初期のメロディック・デスメタル要素と近年のモダンなプロダクションを融合させた傑作。「State of Slow Decay」などの楽曲では、往年のファンが涙するようなアグレッシブな展開が復活している。
- 邦題: 『フォーゴーン』
5. 音楽的分析と「イェーテボリ・サウンド」の正体
5.1 和声と旋律の構造
初期イン・フレイムスの楽曲は、ハーモニック・マイナー・スケール (Harmonic Minor Scale) やフリジアン・モード (Phrygian Mode) を多用することで、クラシック音楽や民族音楽に近い哀愁を生み出している。特にツイン・ギターによる「3度ハモリ (Thirds Harmony)」は、アイアン・メイデンの影響下にあるが、より速く、より複雑なリズムの上で展開される点がデスメタルたる所以である。
5.2 チューニングの変遷
- 初期: C Standard (2音下げ)が主流。重厚だが輪郭のあるサウンド。
- 中期以降: 『Reroute to Remain』 頃からDrop A# (ドロップA#) などの変則チューニングを多用。これにより、パワーコードの重さ (Heavy Bottom) と開放弦を利用したリフ作りが可能となり、モダンなヘヴィネスを実現した。
5.3 歌詞のテーマ
初期はイェスパーによる天文学やファンタジー的なテーマ (『Lunar Strain』 『The Jester Race』)が多かったが、アンダースが作詞の主導権を握ってからは、「内面の葛藤」「社会への疎外感」「人間関係の破綻」といった個人的かつ内省的なテーマへとシフトした。『Whoracle』のような社会批判的なコンセプト・アルバムも存在する。
6. 日本市場との深い絆
イン・フレイムスと日本の関係は非常に特別である。
6.1 ボーナス・トラックの文化
日本のCD市場の慣習 (輸入盤への対策) として、ほぼ全ての日本盤アルバムに「ボーナス・トラック」が収録されている。イン・フレイムスの場合、これらの楽曲の質が非常に高く(例:「Strong and Smart」 「Discover Me Like Emptiness」など)、海外のコレクターが日本盤を求めて高値で取引する現象が起きている。
6.2 The Tokyo Showdown
2000年の日本公演を収録したライブアルバム 『The Tokyo Showdown』は、バンドのキャリアにおける重要なマイルストーンである。当時、欧米以上に熱狂的だった日本のファンベースへの感謝を示すと同時に、バンドのライブ・パフォーマンスの凄まじさを世界に証明した。
6.3 フェスティバルへの出演
LOUD PARK (ラウド・パーク) やKNOTFEST JAPAN (ノットフェス・ジャパン) といった大型メタル・フェスティバルに常連として出演しており、2024年にも単独来日公演を行っている。
7. ザ・ヘイロー・エフェクト (The Halo Effect) との関係
- 構成メンバー: Mikael Stanne (Vo), Jesper Strömblad (Gt), Niclas Engelin (Gt), Peter Iwers (Ba), Daniel Svensson (Dr)。
- 意味合い: ボーカル以外は「黄金期のイン・フレイムス楽器隊」そのものであり、IN FLAMESが『Days of the Lost』 (2022) で提示したのは、モダン化する前の純粋な「イェーテボリ・サウンド」であった。
この「分派」の登場は、皮肉にも本家イン・フレイムスに「自分たちのルーツとは何か」を再考させる契機となった可能性がある。最新作『Foregone』でのデスメタル回帰は、ザ・ヘイロー・エフェクトへの回答であり、イェーテボリ・サウンドの正統継承者が誰であるかを証明するものであったとも解釈できる。
8. 進化し続ける炎
イン・フレイムスは、常に変化を恐れずに前進してきたバンドである。その過程で多くの批判も浴びたが、結果としてIN FLAMESはデスメタルというジャンルを大衆化し、メタルコアという巨大なサブジャンルの礎を築いた。
創設者イェスパー・ストロムブラードの脱退という最大の危機を乗り越え、クリス・ブロデリックやリアム・ウィルソンという新たな才能を迎えた現在のIN FLAMESは、過去30年のキャリアの中で最も技術的に充実した状態にある。アルバム 『Foregone』で示された「過去と現在の統合」は、IN FLAMESが依然としてヘヴィメタル・シーンの最前線を走るイノベーターであることを証明している。
イン・フレイムス スタジオ・アルバム一覧
| 発売年 | 原題 (Original Title) | 邦題 (Japanese Title) | 主要プロデューサー | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1994 | Lunar Strain | ルナ・ストレイン | IN FLAMES | VoはMikael Stanne |
| 1996 | The Jester Race | ザ・ジェスター・レース | Fredrik Nordström | Anders & Björn加入 |
| 1997 | Whoracle | ホラクル | Fredrik Nordström | コンセプト作 |
| 1999 | Colony | コロニー | Fredrik Nordström | クラシック編成始動 |
| 2000 | Clayman | クレイマン | Fredrik Nordström | 初期路線の集大成 |
| 2002 | Reroute to Remain | リルート・トゥ・リメイン | Daniel Bergstrand | スタイル転換作 |
| 2004 | Soundtrack to Your Escape | サウンドトラック・トゥ・ユア・エスケイプ | Daniel Bergstrand | ダーク & モダン |
| 2006 | Come Clarity | カム・クラリティ | IN FLAMES & Daniel Bergstrand | ハイブリッド作 |
| 2008 | A Sense of Purpose | ア・センス・オブ・パーパス | Roberto Laghi | Jesper最終作 |
| 2011 | Sounds of a Playground Fading | サウンズ・オブ・ア・プレイグラウンド・フェイディング | Roberto Laghi | Björn単独作曲開始 |
| 2014 | Siren Charms | サイレン・チャームズ | IN FLAMES, Roberto Laghi | ベルリン録音、実験作 |
| 2016 | Battles | バトルズ | Howard Benson | アリーナ・ロック化 |
| 2019 | I, the Mask | アイ・ザ・マスク | Howard Benson | アグレッシブさの復権 |
| 2023 | Foregone | フォーゴーン | Howard Benson | 原点回帰と統合 |
News
IN FLAMESとTRIVIUM、2027年春に欧州共同ヘッドライン・ツアー — PALEFACE SWISSとVOLAが全公演サポート
2027年3月29日のダブリン3Arenaから5月7日のカトヴィツェSpodekまで全26公演。英国とアイルランドはTRIVIUMがヘッドライナーでIN FLAMESがスペシャル・ゲスト、北欧では逆にIN FLAMESがヘッドライナーを務め、それ以外の欧州本土では両者が共同ヘッドライナーとして出演する。アーティスト先行は8月26日10時CEST、一般発売は8月28日10時CEST。
IN FLAMESの地元ヨーテボリ公演に、DARK TRANQUILLITYのミカエル・スタンネとTRIVIUMのマット・ヒーフィーが客演
8月22日の<Göteborg Brinner>にて。ヒーフィーは1996年の『The Jester Race』収録の「Artifacts Of The Black Rain」で、スタンネは自身がヴォーカルを務めた1994年のデビュー作『Lunar Strain』収録の「Behind Space」で共演した。
DARK TRANQUILLITY、故トーマス・リンドベリを追悼しAT THE GATES「Blinded By Fear」をカバー
同じ8月22日の<Göteborg Brinner>で、IN FLAMESのアンダース・フリーデンを迎え、セットの最後に1995年のAT THE GATES曲を演奏した。
STEELHEARTのMiljenko Matijevic、元IN FLAMESのNiclas Engelinと新プロジェクトDEATH TO LOVEを始動
既に10曲が完成しており、1stシングルは10月リリース予定。ヨーテボリ・サウンド寄りの「非常にヘヴィ」な内容だとMatijevicが語った。