FM
FMの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。
Biography
英国メロディアス・ハードロックの至宝
FM (エフ・エム)
1. FMという現象と英国ロックにおける位置づけ
FMは、Steve Overland (スティーヴ・オーヴァーランド) という「英国が生んだ最もソウルフルなロック・ヴォーカリスト」の一人を擁し、洗練されたキーボード・サウンド、重厚なコーラスワーク、 tenderブルースに根差したギタープレイを融合させることで、独自のサウンドスケープを構築した。FMの登場は、1980年代中盤の英国において、Def Leppard (デフ・レパード)や Bon Jovi (ボン・ジョヴィ)といったスタジアム・ロックの隆盛と呼応するものであったが、FMの音楽性には常に英国的な哀愁と、R&Bへの深いリスペクトが根底に流れていた。
2. 黎明期: NWOBHMの残響とAORへの転換 (1980-1984)
2.1 結成前夜: Wildlife (ワイルドライフ) と Samson (サムソン)
FMの物語を理解するためには、1980年代初頭の英国ロックシーン、特にNWOBHM (New Wave of British Heavy Metal) ムーブメントの終焉と、それに続く産業ロック的アプローチへの移行期を俯瞰する必要がある。
バンドの中核となるのは、Steve Overland (スティーヴ・オーヴァーランド) [Vocals/Guitar] と Chris Overland (クリス・オーヴァーランド) [Guitar] の兄弟である。彼らはFM結成以前、Wildlife (ワイルドライフ)というバンドで活動していた。Wildlifeは単なる無名バンドではなく、後にOzzy Osbourne (オジー・オズボーン) バンドに加入するベーシスト Phil Soussan (フィル・スーザン)や、伝説的バンド Free (フリー) および Bad Company (バッド・カンパニー) のドラマーである Simon Kirke (サイモン・カーク)が在籍していたスーパーグループの側面を持っていた。Wildlifeは Chrysalis (クリサリス)から『Burning』(1980)、Swan Song (スワン・ソング) から 『Wildlife』 (1983) をリリースし、Mick Ralphs (ミック・ラルフス)のプロデュースを受けるなど、業界内での評価は高かった。しかし、商業的な大成功には至らず、バンドは解散を余儀なくされる。このWildlifeでの経験、特にSimon KirkeやMick Ralphs といったブルース・ロックの巨匠たちとの交流が、Steve Overlandのヴォーカルスタイル――ポール・ロジャース直系のソウルフルな歌唱――を決定づけたと言える。
一方、リズム隊となる Merv Goldsworthy (マーヴ・ゴールズワーシー) と Pete Jupp (ピート・ジャップ)は、NWOBHMの中核バンドであった Samson (サムソン) や Diamond Head (ダイアモンド・ヘッド)での活動経験を持っていた。Samsonは Bruce Dickinson (ブルース・ディッキンソン) [Iron Maiden] が在籍していたことでも知られるが、1980年代中盤に入ると、よりメロディアスで洗練されたサウンドへの希求がミュージシャンたちの間で高まっていた。
2.2 ロンドンでの結成とデモテープ
1984年の夏、Overland兄弟、Goldsworthy、Juppの4人はロンドンで合流し、新たなバンドFMを結成する。FMのヴィジョンは明確であった。それは、英国の伝統的なブルース・ロックの基盤の上に、当時アメリカで猛威を振るっていた Foreigner (フォリナー)、Journey (ジャーニー)、Survivor (サバイバー) といったバンドの「ラジオ・フレンドリー」なプロダクションと、煌びやかなキーボード・サウンドを融合させることであった。
このサウンドを実現するために不可欠だったのが、キーボーディストの存在である。バンドは The Invaders (インベーダーズ)というニュー・ウェイヴ・バンドで活動していた Didge Digital (ディッジ・デジタル) (本名: Philip Manchester) をリクルートする。彼の加入により、FMは当時最先端のシンセサイザー・サウンド (YAMAHA DX7等に代表されるきらびやかな音色)を手に入れ、ハードロックとポップスの境界線を自在に行き来するスタイルを確立した。
FMが制作した6曲入りのデモテープは瞬く間に業界関係者の注目を集め、結成からわずか数ヶ月後の1984年12月には、CBS傘下の Portrait Records (ポートレイト・レコード)との契約を獲得した。これは新人バンドとしては異例のスピードであり、FMの楽曲と演奏能力がいかに完成されていたかを物語っている。
3. 黄金時代:『Indiscreet』と『Tough It Out』 (1985-1989)
3.1 デビューアルバム 『Indiscreet』 (1986)
契約直後の1984年末、バンドはドイツへ渡り、Meat Loaf (ミート・ローフ)のツアーサポートとして初ライブを行う。大規模な会場でのパフォーマンス経験を積んだFMは、満を持してデビューアルバムの制作に入った。
1986年9月8日にリリースされた1stアルバム 『Indiscreet (インディスクリート)』は、AOR/メロディアス・ハードロックの歴史における金字塔の一つと見なされている。アルバムには以下の楽曲が収録された (カッコ内は特筆事項):
- That Girl (ザット・ガール): 後に Iron Maiden (アイアン・メイデン) がシングル『Stranger in a Strange Land』のB面でカバーしたことで有名。Adrian Smith (Gt) がFMのファンであったこと、あるいはAndy Barnett (後にFM加入)との交友関係が影響しているとされる。
- Other Side Of Midnight (アザー・サイド・オブ・ミッドナイト)
- Love Lies Dying (ラヴ・ライズ・ダイイング)
- I Belong To The Night (アイ・ビロング・トゥ・ザ・ナイト): 夜の都会を疾走するようなドライビング・ロック。
- American Girls (アメリカン・ガールズ)
- Hotwired (ホットワイヤード)
- Face To Face (フェイス・トゥ・フェイス)
- Frozen Heart (フローズン・ハート): 1stシングル。チャートアクションは振るわなかったが、その哀愁漂うメロディとSteveの情感豊かなヴォーカルはバンドの代表曲となった。
- Heart Of The Matter (ハート・オブ・ザ・マター)
『Indiscreet』のサウンドプロダクションは、80年代特有の深いリバーブとゲート・リバーブのかかったドラム、そしてDidge Digitalによる厚みのあるシンセサイザー・パッドが特徴である。しかし、その中心にあるのはSteve Overlandの圧倒的な歌唱力であり、これが単なる「産業ロック」の枠に収まらない人間味を与えていた。
この年、バンドはBon Jovi (ボン・ジョヴィ)の『Slippery When Wet』 ツアーのサポートアクトに抜擢され、欧州全土でアリーナ・クラスの観衆を前に演奏する機会を得た。さらに Tina Turner (ティナ・ターナー) や Gary Moore (ゲイリー・ムーア)、Foreigner (フォリナー)といった大物とのツアーも経験し、FMは「英国で最も有望な新人」としての地位を確立した。
3.2 商業的野心と『Tough It Out』 (1989)
デビュー作の成功を受け、レーベル (Portraitが閉鎖されたため親会社の Epic (エピック)に移籍)はFMに対し、アメリカ市場でのブレイクを強く求めた。1980年代後半は、Bon JoviやDef Leppard、Whitesnakeが全米チャートを席巻していた「ヘア・メタル/ポップ・メタル」の全盛期であり、レコード会社はFMにもその潮流に乗ることを期待したのである。
バンド、特にOverland兄弟は渡米し、当時「ヒット曲請負人」として飛ぶ鳥を落とす勢いだったソングライター、Desmond Child (デズモンド・チャイルド)との共作セッションを行った。Desmond ChildはBon Joviの「You Give Love a Bad Name」 やAerosmithの「Dude (Looks Like a Lady)」 などを手掛けた人物である。
プロデューサーには、Dokken (ドッケン) や Queensrÿche (クイーンズライク)を手掛けた Neil Kernon (ニール・カーノン) が起用された。こうして1989年10月にリリースされた2ndアルバム『Tough It Out (タフ・イット・アウト)』は、前作以上にハードで、かつスタジアム・アンセム的なコーラスを持った強力な作品となった。
- Tough It Out (タフ・イット・アウト)
- Bad Luck (バッド・ラック): Desmond Childとの共作。Bon Joviを彷彿とさせるキャッチーなサビとアリーナ・ロック的な構成を持つシングル曲。
- Someday (You'll Come Running) (サムデイ)
- Burning My Heart Down (バーニング・マイ・ハート・ダウン)
- Obsession (オブセッション)
バンドはこのアルバムを引っ提げ、ロンドンのハマースミス・オデオン (Hammersmith Odeon) でのヘッドライナー公演を含む42公演に及ぶ大規模な英国ツアーを敢行した。しかし、期待されたアメリカでの大ブレイクは実現しなかった。シングル「Bad Luck」は良質な楽曲であったが、全英チャートでもトップ40入りを逃すなど、商業的には「中ヒット」に留まった。この時期、音楽シーンの地下では既にグランジやオルタナティブ・ロックの胎動が始まっており、きらびやかな80年代サウンドへの飽和感も漂い始めていたことが背景にあると推測される。
4. 転換期: ブルースへの回帰とグランジの嵐 (1990-1995)
4.1 Chris Overlandの脱退とAndy Barnettの加入
『Tough It Out』リリース後、バンドの創設者の一人であり、主要ソングライターであったギタリストのChris Overland が脱退するという大きな打撃を受ける。彼の脱退理由は公式には詳細に語られることは少ないが、商業的なプレッシャーや音楽的な方向性の違いが推測される。
バンドは後任として Andy Barnett (アンディ・バーネット)を迎え入れた。Andyは Adrian Smith and Project (A.S.A.P.) や Corey Hart (コリー・ハート)のバンドでの活動実績があり、FMの初期メンバーとも交流があった人物である。彼の加入により、バンドのサウンドはキーボード主体のポップ・ロックから、よりギター・オリエンテッドでブルージーなハードロックへとシフトし始めた。これはSteve Overlandの本来の資質 (ソウル、R&B志向)とも合致する方向転換であった。
4.2 『Takin' It To The Streets』 (1991)
Sony/Epicとの契約を失ったバンドは、インディペンデント・レーベルである Music For Nations (ミュージック・フォー・ネイションズ)と契約した。メジャーレーベルの制約から解放されたFMは、1991年に3rdアルバム 『Takin' It To The Streets (テイキン・イット・トゥ・ザ・ストリーツ)』をリリースした。
このアルバムは、バンドのルーツであるクラシック・ロックへの回帰を明確に示した。特に象徴的なのが、モータウンの名曲 Marvin Gaye (マーヴィン・ゲイ)の「I Heard It Through The Grapevine (悲しいうわさ)」のカバーである。Steveのヴォーカルはこの曲で水を得た魚のように躍動し、FM版のアレンジはハードロックとソウルの見事な融合として評価された。キーボーディストのDidge Digitalはこの時期に脱退し、アルバムのクレジットには彼の名前とサポートメンバーの名前が混在する過渡期的な作品となった。
4.3 最高傑作『Aphrodisiac』 (1992)
1992年、バンドは4thアルバム『Aphrodisiac (アフロディジアック)』を発表する。多くの批評家やファンが、このアルバムをFMの最高傑作 (Masterpiece) として挙げる。キーボードには Romeo's Daughter (ロミオズ・ドーター) の Tony Mitman (トニー・ミットマン)がゲスト参加し、楽曲のクオリティは極めて高かった。
- Closer To Heaven (クローサー・トゥ・ヘヴン): 壮大なバラード。
- Blood And Gasoline (ブラッド・アンド・ガソリン): ハードなドライビング・ナンバー。
- Breathe Fire (ブリーズ・ファイア)
しかし、1992年という年は、Nirvana(ニルヴァーナ) の 『Nevermind』が世界を一変させた直後であり、FMのような「ヘア・メタル時代の生き残り」と見なされるバンドにとっては冬の時代であった。作品の質とは裏腹に、商業的な成功は限定的であった。
4.4 終焉:『Dead Man's Shoes』 と解散 (1995)
1993年、新たな正式キーボーディストとしてJem Davis (ジェム・デイヴィス)が加入した。彼は元 Tobruk (トブルク)やUFO、Midnight Blue での活動歴を持つベテランであり、バンドに新たな活力を注入した。アコースティック・ライブアルバム 『No Electricity Required』 (1993) を経て、1995年に5thスタジオアルバム 『Dead Man's Shoes (デッド・マンズ・シューズ)』をリリースする (レーベルはRaw Power)。「Ain't No Cure For Love」などの良曲を収録していたものの、時代の潮流には抗えず、バンドはこのアルバムを最後に解散を選択した。
5. 空白の12年と個々の活動 (1996-2006)
解散中もメンバーは音楽活動を継続し、メロディアス・ロックの灯を消すことはなかった。
- So! (ソー!): Steve OverlandとPete Juppが結成したユニット。アルバム『Brass Monkey』 (1998) をリリース。FMよりもさらにソウル/ポップ寄りなアプローチを見せた。
- The Ladder (ザ・ラダー): Steve Overlandが2000年代に参加したプロジェクト。FMに近いメロディアス・ハードロック路線。
- Shadowman (シャドウマン): Steve Overland と Steve Morris (スティーヴ・モリス) [Heartland] によるプロジェクト。ブルージーなハードロックを展開。
- Barnstormers: Andy Barnett とJem Davisが活動したバンド。
これらの活動を通じて、Steve Overlandの声に対する需要が依然として高いことが証明され続けていた。また、2000年代中盤からインターネットの普及により、世界中のAORファンが再結集し、かつての名バンドの復活を望む声が高まっていった。
6. 復活の狼煙: Firefestと再結成 (2007-2009)
6.1 Firefest IVでの奇跡 (2007)
FM再結成のきっかけとなったのは、英国ノッティンガムで開催されていたメロディアス・ロックの祭典「Firefest (ファイアフェスト)」である。主催者からの熱烈なオファーを受け、2007年10月27日、Firefest IVのヘッドライナーとしてFMが一夜限りの再結成を果たした。ラインナップは、Steve Overland、Merv Goldsworthy、Pete Jupp、Jem Davis、そしてAndy Barnettの解散時メンバーであった。Rock Cityを埋め尽くしたファンからの熱狂的な歓迎に感銘を受けたメンバーは、恒久的な再活動を決意する。
6.2 Jim Kirkpatrickの加入 (2008)
再始動にあたり、ギタリストのAndy Barnettは自身の活動等の理由で継続的なコミットメントが困難となり脱退した。バンドは新たなギタリストとして Jim Kirkpatrick (ジム・カークパトリック)を抜擢する。JimはSteveたちよりも若い世代のミュージシャンでありながら、ホワイトスネイクの Bernie Marsden (バーニー・マースデン) との共演歴があるなど、ブルース・ロックへの造詣が深く、テクニカルでありながら歌心のあるプレイでバンドに若返りとモダンなエッジをもたらした。
7. 第2の黄金期: 現代のFM (2010-2025)
Jim Kirkpatrickを加えた新体制は、かつての黄金期をも凌ぐ創作意欲を見せ、コンスタントに高品質なアルバムをリリースし続けている。
7.1 スタジオへの帰還: 『Metropolis』 (2010)
15年ぶりのスタジオ・アルバム 『Metropolis (メトロポリス)』は、往年のファンを歓喜させた。「Wildside (ワイルドサイド)」 や 「Hollow (ホロウ)」 といった楽曲は、FMのトレードマークである哀愁のメロディと、現代的なプロダクションが見事に融合していた。
7.2 創作の爆発:『Rockville』2部作から『Heroes and Villains』 (2013-2015)
- 2013年: 『Rockville (ロックヴィル)』 および『Rockville II (ロックヴィルII)』を立て続けにリリース。BBC Radio 2で 「Story Of My Life」 などがプレイリスト入りし、一般層へのアピールにも成功した。
- 2015年: 『Heroes and Villains (ヒーローズ・アンド・ヴィランズ)』 リリース。全英ロックチャートでの好アクションを記録。ツアーでは Foreigner や Journey、Heart といったバンドと共演し、大規模なステージに復帰した。
7.3 アニバーサリーと進化: 『Indiscreet 30』と『Atomic Generation』 (2016-2018)
- 2016年: デビュー30周年を記念し、1stアルバムを現メンバーで全曲再録音した『Indiscreet 30 (インディスクリート30)』を発表。現在のバンドの演奏力と解釈で名曲をアップデートした。
- 2018年: 『Atomic Generation (アトミック・ジェネレーション)』リリース。「Black Magic」などの楽曲で、円熟味を増したハードロック・サウンドを展開。
7.4 パンデミックを超えて: 『Synchronized』~『Old Habits Die Hard』 (2020-2024)
2020年、COVID-19パンデミックの最中に 『Synchronized (シンクロナイズド)』をリリース。ロックダウンによりツアーは制限されたが、バンドは創作の手を緩めなかった。2022年の『Thirteen (サーティーン)』を経て、結成40周年を迎えた2024年には『Old Habits Die Hard (オールド・ハビッツ・ダイ・ハード)』をリリース。このアルバム・タイトル(「三つ子の魂百まで」「古き良き習慣は消えない」の意)は、トレンドに流されることなく自らのスタイルを貫いてきたFMのキャリアを象徴している。2024年には初のラテンアメリカ・ツアーも敢行し、その活動範囲をさらに広げている。
7.5 最新作:『Brotherhood』 (2025)
2025年9月には、通算15作目となるスタジオ・アルバム 『Brotherhood (ブラザーフッド)』がリリースされている。Jem Davisがインタビューで語ったように、このタイトルは40年以上にわたり苦楽を共にしてきたメンバー間の、家族以上の絆を表している。
8. ディスコグラフィ (Discography)
ここではFM (UK)の主要作品を、アルバム、ライブ盤、コンピレーションに分類して詳述する。また、日本盤独自のボーナストラック情報も可能な限り記載する。
8.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
| 発売年 | タイトル (原題/邦題) | レーベル | 特記事項・主な収録曲 |
|---|---|---|---|
| 1986 | Indiscreet (インディスクリート) |
Portrait | デビュー作。 Tracks: Frozen Heart, That Girl, I Belong To The Night |
| 1989 | Tough It Out (タフ・イット・アウト) |
Epic | Desmond Child共作。 Tracks: Bad Luck, Burning My Heart Down, Someday |
| 1991 | Takin' It To The Streets (テイキン・イット・トゥ・ザ・ストリーツ) |
Music For Nations | Andy Barnett加入 Tracks: I Heard It Through The Grapevine, Only The Strong Survive |
| 1992 | Aphrodisiac (アフロディジアック) |
Music For Nations | バンド最高傑作との呼び声高い Tracks: Closer To Heaven, Blood And Gasoline |
| 1995 | Dead Man's Shoes (デッド・マンズ・シューズ) |
Raw Power | 解散前のラスト作。Jem Davis加入。 Tracks: Ain't No Cure For Love, Tattoo Needle |
| 2010 | Metropolis (メトロポリス) |
Riff City | 再結成・復活作。Jim Kirkpatrick加入。 Tracks: Wildside, Hollow |
| 2013 | Rockville (ロックヴィル) |
Membran | Tracks: Story Of My Life, Crosby |
| 2013 | Rockville II (ロックヴィル II) |
Membran | Tracks: High, Bad Addiction |
| 2015 | Heroes and Villains (ヒーローズ・アンド・ヴィランズ) |
Frontiers | Tracks: Digging Up The Dirt, You're The Best Thing About Me |
| 2016 | Indiscreet 30 (インディスクリート30) |
Frontiers | デビュー作の再録音盤。 Bonus: Let Love Be The Leader, Running On Empty |
| 2018 | Atomic Generation (アトミック・ジェネレーション) |
Frontiers | Tracks: Black Magic, Killed By Love |
| 2020 | Synchronized (シンクロナイズド) |
Frontiers | Tracks: Synchronized, Superstar |
| 2022 | Thirteen (サーティーン) |
Frontiers | Tracks: Waiting On Love, Shaking The Tree |
| 2024 | Old Habits Die Hard (オールド・ハビッツ・ダイ・ハード) |
Frontiers | 40周年記念作。 Tracks: Out Of The Blue, Don't Need Another Heartache |
| 2025 | Brotherhood (ブラザーフッド) |
Frontiers | (2025年9月発売予定) Tracks: Do You Mean It, Living On The Run |
8.2 ライブ・アルバム (Live Albums)
FMはライブ・パフォーマンスの評価が非常に高く、そのキャリアを通じて数多くのライブ盤を残している。
- Live at the Astoria (録音:1989年8月17日) - 『Tough It Out』 ツアーの絶頂期を捉えた音源。
- No Electricity Required (1993) - アコースティック・ライブ。『Aphrodisiac』 期の楽曲を中心に、ZZ Topの 「Tush」などのカバーも収録。
- Back in the Saddle (2008) - 2007年のFirefestでの再結成ライブを収録 (DVD/CD)。
- Live in Europe (2012)
- The Italian Job (2019) - 2018年4月29日、イタリア・ミラノでの「Frontiers Rock Festival」でのパフォーマンスを収録。映像作品 (Blu-ray/DVD) もリリースされている。
- Tough It Out Live (2021) - 2019年に行われた 『Tough It Out』 30周年記念ツアーの模様を収録。ディスク2には未発表のライブ音源が含まれる。
8.3 コンピレーション・アルバム (Compilations)
- Only The Strong - The Very Best of FM (1994) - 初期の代表曲を網羅したベスト盤。
- Long Time No See (2003) - 3枚組ベスト。
- Vintage & Rare (2003) - デモ音源やレアトラック集。
8.4 日本盤とボーナストラック (Japanese Editions)
日本市場はFMにとって特別な場所であり、多くのアルバムで日本独自のボーナストラックが追加されている。
- 『Aphrodisiac』 日本盤: プロモーション盤 (Special Sample) や通常盤には、「Chinese Whispers」、「Some Kind Of Wonderful (Live)」、「I'll Be Creepin' (Live)」などが収録された。
- 『Indiscreet 30』 日本盤: Avalon レーベルからリリース (MICP-90097)。再録音に加え、アコースティック・ヴァージョンなどのボーナスが追加されている。
- 『Tough It Out』 日本盤: 1990年にEpic/Sony (ESCA 5075) からリリースされ、現在ではコレクターズアイテムとなっている。
9. メンバー・プロフィール (Band Members)
現在のメンバー (Current Members)
- Steve Overland (スティーヴ・オーヴァーランド)
- 役割: Lead Vocals, Rhythm Guitar
- 在籍期間: 1984-1995, 2007-Present
- 人物像:「The Voice (ザ・ヴォイス)」と称される、英国ロック界屈指のヴォーカリスト。Paul Rodgers (Free, Bad Company) の影響を強く受けた、ブルージーで深みのある中音域と、力強く伸びる高音域を併せ持つ。FM以外にも Shadowman、The Ladder、Kings of Mercia (Fates WarningのJim Matheosとのプロジェクト)など多岐にわたる活動を行っている。
- Merv Goldsworthy (マーヴ・ゴールズワーシー)
- 役割: Bass, Backing Vocals
- 在籍期間: 1984-1995, 2007-Present
- 人物像: 元Diamond Head、Samson。FMの創設メンバーであり、Steveと共にバンドの屋台骨を支える。彼のベースラインはメロディアスでありながら堅実で、バンドのグルーヴを決定づけている。コーラスワークの要でもある。
- Pete Jupp (ピート・ジャップ)
- 役割: Drums, Backing Vocals
- 在籍期間: 1984-1995, 2007-Present
- 人物像: 元Wildlife、Samson。SteveとはWildlife時代からの長い付き合い。派手なドラミングよりも楽曲を活かすプレイを信条とし、ソングライティング面でも大きく貢献している。
- Jem Davis (ジェム・デイヴィス)
- 役割: Keyboards, Backing Vocals
- 在籍期間: 1993-1995, 2007-Present
- 人物像: 1993年に正式加入。元Tobruk、UFO、Midnight Blue。ライブではショルダーキーボード (Keytar) を駆使し、エネルギッシュなパフォーマンスを見せる。2021年にはソロ・プロジェクト Pepperkid2 でアルバム 『Adventures In Pepperland』をリリースした。近年がん闘病を経験したが、克服しバンド活動に復帰している。
- Jim Kirkpatrick (ジム・カークパトリック)
- 役割: Lead Guitar, Backing Vocals
- 在籍期間: 2008-Present
- 人物像: Andy Barnettの後任として加入。Steve Overlandよりも一世代若いが、ブルース、カントリー、クラシック・ロックへの造詣が深く、バンドに完璧にフィットした。スライドギターの名手でもあり、Bernie Marsden のバンドや自身のソロ活動も行っている。
過去の主要メンバー (Former Members)
- Chris Overland (クリス・オーヴァーランド)
- 役割: Lead Guitar (1984-1990)
- 詳細: 創設メンバー。Steveの実兄。初期FMのサウンド形成に貢献したが、『Tough It Out』後に音楽業界を引退した。2023年に逝去。
- Didge Digital (ディッジ・デジタル)
- 役割: Keyboards (1984-1991)
- 詳細: 本名 Philip Manchester。特徴的なステージネームと、YAMAHA DX7などを多用した80年代的サウンドで初期FMのカラーを決定づけた。
- Andy Barnett (アンディ・バーネット)
- 役割: Lead Guitar (1990-1995, 2007-2008)
- 詳細: Chrisの後任。よりロック色の強いプレイで90年代のFMを支えた。再結成時にも参加したが、短期間で離脱した。
10. 補足: 同名バンドについての曖昧性解消 (Disambiguation)
「FM」というバンド名は一般的であるため、検索時等に混同されることがありますが、英国のFMとは別に、以下のバンドが存在します。
- FM (Canadian Band): 1976年にトロントで結成されたプログレッシブ・ロック・バンド。Nash the Slash (ナッシュ・ザ・スラッシュ) [Electric Violin/Mandolin]、Cameron Hawkins (キャメロン・ホーキンス)が中心メンバー。代表曲に「Phasors on Stun」があり、アルバム 『Black Noise』 (1977) はプログレッシブ・ロックの名盤として知られる。彼らは宇宙的なテーマやSF的な歌詞を特徴としており、英国のメロディアス・ハードロックバンドFMとは音楽性が全く異なる。
11. FMの不滅の価値
FMは、1980年代の華やかなデビューから、90年代の苦難の時期を経て、2000年代以降の劇的な復活と、ロックバンドが経験しうる全ての局面を生き抜いてきた。FMが現在も支持され続ける最大の理由は、トレンドに迎合することなく、「良い曲を書き、魂を込めて演奏する」というシンプルな哲学を40年間貫いてきたことにある。
Steve Overlandの声は年齢を重ねてなおその輝きを増し、Merv Goldsworthy と Pete Juppのリズム隊は鉄壁の安定感を誇り、Jem DavisとJim Kirkpatrickが彩りを添える。最新作『Brotherhood』のタイトルが示す通り、FMの音楽はメンバー間の、そしてファンとの強固な絆(ブラザーフッド)の上に成り立っている。日本を含む世界中のファンにとって、FMは単なるノスタルジーではなく、現在進行形のレジェンドとして、これからも良質なメロディアス・ロックを提供し続けてくれるだろう。