BAND-MAID
BAND-MAIDの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。
Biography
メイド服で世界を征服するハードロック・バンド
BAND-MAID(バンドメイド)の軌跡と音楽的変遷
プロフィール
| 結成 | 2013年、東京 |
|---|---|
| メンバー | SAIKI(彩姫/Vocal)/小鳩ミク(Kobato/Guitar & Vocal、創設者)/KANAMI(遠乃歌波/Lead Guitar)/MISA(Bass)/AKANE(廣瀬茜/Drums) |
| 出身 | 日本 |
| 音楽性 | Hard Rock、Rock、Progressive Rock、Metal、Funk Rock |
| ライブ呼称 | お給仕(Serving)/ファン=ご主人様・お嬢様(Masters & Princesses) |
1. 「メイド×ハードロック」というギャップの発明
BAND-MAID(バンドメイド)は、2013年に東京で結成された日本のハードロック・バンドである。メイド喫茶の給仕係を思わせる愛らしいメイド衣装と、それとは対極にある硬質で高度なハードロック/プログレッシヴ・ロックの演奏——この強烈な「ギャップ(gap)」こそが、BAND-MAIDを世界的な現象へと押し上げた最大の武器である。見た目の可憐さから受ける第一印象と、実際に鳴らされる音の重さ・速さ・複雑さとの落差が、初めて彼女たちに触れる聴き手に鮮烈な衝撃を与えてきた。
しかしBAND-MAIDの本質は、単なる話題性やコスプレ的な企画にあるのではない。5人のメンバーはいずれも卓越した演奏技術を持ち、その楽曲はファンク、メタル、プログレッシヴ・ロックの要素を貪欲に取り込みながら、緻密なアレンジと高い演奏精度で構築されている。ライブを「お給仕(Serving)」、ファンを「ご主人様・お嬢様(Masters & Princesses)」と呼ぶメイド喫茶由来の世界観を保ちながら、その中身は本格的なロック・バンドそのものである。この「様式美としてのメイド」と「実力としてのロック」の共存こそ、BAND-MAIDの唯一無二の立ち位置を形づくっている。
YouTubeを通じて海外のロック・ファンから熱狂的に発見され、日本のバンドとしては早い段階から北米・欧州・南米・アジアを巡る本格的なワールドツアーを展開してきたBAND-MAIDは、「日本発でありながら世界のロック・シーンで戦えるバンド」の代表格となった。本稿では、創設者・小鳩ミクの構想からの結成、段階的な国際的ブレイク、メンバー各人の役割、そして初の日本武道館公演を含むワールドツアー2026までを、時系列に沿って詳細にたどる。
2. 結成前夜:小鳩ミクの構想(2013)
BAND-MAIDの物語は、創設者である小鳩ミク(Kobato)の発想から始まる。秋葉原のメイド喫茶で働いた経験を持つ小鳩は、「メイドの可愛らしさ」と「ハードロックの格好良さ」という、一見交わらない二つの世界を一つのバンドで融合させるという独創的なコンセプトを思い描いた。この「ギャップ」を軸に据えるという着想が、後のBAND-MAIDのすべての出発点となる。
2013年、小鳩の構想のもとにメンバーが集められていく。圧倒的な歌唱力を持つSAIKI(彩姫)、超絶技巧のリード・ギタリストであり主要な作曲を担うKANAMI(遠乃歌波)、独創的で表現力豊かなベーシストのMISA、そしてパワフルかつ正確なドラミングのAKANE(廣瀬茜)。この5人による現在の布陣が同年のうちに固まり、BAND-MAIDは活動を本格化させる。小鳩はリズム・ギターとボーカルを担いながら、語尾に「ぽっぽ」を付ける愛嬌あるMCでバンドの世界観を体現する、いわば「顔」としての役割も果たすことになった。
3. デビューと初期の歩み(2014-2015)
2014年、BAND-MAIDはミニ・アルバム『Maid in Japan』でデビューを果たす。Gump Recordsからのこの作品は、メイド衣装というビジュアルの意外性とともに、本格的なハードロック・バンドとしての演奏力を早くも印象づけた。ライブ活動——彼女たちの言葉で言えば「お給仕」——を精力的に重ね、都内のライブハウスを中心に着実に支持を広げていく。この時期のBAND-MAIDは、まだ「珍しいコンセプトのバンド」という見られ方も残していたが、ステージ上での圧倒的な演奏が、その懐疑を一つずつ覆していった。
2015年には初のフルアルバム『New Beginning』を発表。タイトルが示すとおり、本作はBAND-MAIDが「企画」から「本物のロック・バンド」へと踏み出す新たな出発点となった。楽曲の完成度とアレンジの緻密さが増し、KANAMIの作曲家としての才能、SAIKIの表現力豊かな歌唱、リズム隊の強靭さが、より明確に前面に出るようになる。
4. YouTubeと海外ファンによる発見(2016-2017)
BAND-MAIDのキャリアを大きく変えたのが、YouTubeを通じた海外での"発見"である。彼女たちのミュージックビデオやライブ映像は、言語の壁を越えて世界中のロック・ファンに拡散し、「メイド服で本格的なハードロックを鳴らす日本のバンド」として熱狂的な注目を集めた。海外のリアクション動画やコミュニティでの話題化は、BAND-MAIDを国内より先に海外で有名にするという、日本のバンドとしては珍しい現象を生み出した。
2016年のアルバム『Brand New Maid』、2017年の『Just Bring It』は、こうした国際的な追い風の中でリリースされ、BAND-MAIDのサウンドはよりハードかつダイナミックに進化していった。この時期から彼女たちは海外公演を本格化させ、北米や欧州のライブハウス、フェスティバルに登場する。現地のファンが「お給仕」の作法——コール&レスポンスや「ご主人様・お嬢様」の呼称——を共有し、国境を越えて一体化する光景は、BAND-MAIDのライブ文化が普遍的な魅力を持つことを証明した。
5. 「世界征服」の宣言と飛躍(2018-2019)
2018年、BAND-MAIDはアルバム『World Domination(世界征服)』を発表する。このタイトルは、彼女たちの野心を象徴的に表明するものであり、以後BAND-MAIDの活動における一つのキーワードとなった。楽曲はメタル的な重さとプログレッシヴな構築性をさらに増し、SAIKIのシャウトを交えた激しいナンバーから叙情的なバラードまで、表現の幅が大きく広がった。海外ツアーの規模も拡大し、BAND-MAIDは名実ともに国際的なロック・バンドとしての地位を固めていく。
2019年にはアルバム『Conqueror』をリリース。前作の路線をさらに推し進めた本作は、演奏面・楽曲面ともに高い評価を受けた。同年には、京都・舞妓の世界観を取り入れたユニークなEP『Band-Maiko(バンドマイコ)』も発表し、和のテイストとハードロックを掛け合わせる新たな実験も見せた。国内外での公演を精力的に重ね、BAND-MAIDの「世界征服」は着実に前進していった。
6. パンデミック期と進化(2020-2022)
2021年、BAND-MAIDはアルバム『Unseen World』を発表する。新型コロナウイルス感染症の世界的流行によりライブ活動が制限される困難な状況の中でも、バンドは配信ライブや新作制作を通じて表現を止めなかった。『Unseen World』は、電子的なテクスチャーやより複雑な楽曲構成を取り込み、BAND-MAIDのサウンドが単なるハードロックの枠を超えて拡張していることを示した意欲作である。困難な時期を、音楽的な深化の機会へと転換したこの姿勢が、後の本格的な活動再開への力となった。
2022年にはEP『Unleash』を発表。タイトルどおり、抑えられていたエネルギーを解き放つような力強い作品となり、BAND-MAIDが次の飛躍へ向けて態勢を整えていることを印象づけた。パンデミックの制約が緩和されるにつれ、バンドは再び海外を含むツアー活動を活発化させていく。
7. 『Epic Narratives』とアニメ・タイアップ(2024-2025)
2024年、BAND-MAIDは8作目のスタジオ・アルバム『Epic Narratives』を発表する。長年のキャリアで培った演奏力と作曲力の到達点を示す本作は、バンドの成熟と挑戦を両立させた作品として受け止められた。2025年に入ると、BAND-MAIDはアニメとのタイアップを相次いで手がけ、その存在をより広い層へと届ける。『Zenshu』オープニング・テーマの「Zen」、『ロックは淑女の嗜みでして』オープニングの「Ready to Rock」、『桃源暗鬼』エンディングの「What is Justice?」など、複数の作品で主題歌を担当し、シングル「ENERGETIC」もリリースした。
2025年10月にはEP『Scooooop』を発表。アニメ・タイアップとEPを通じて、BAND-MAIDは自らのハードロックを、アニメ・ファンをはじめとする新たなオーディエンスへと接続していった。日本国内での知名度と、長年培ってきた海外での強固な支持基盤とが結びつき、BAND-MAIDはキャリアの新たな充実期を迎えている。
8. ワールドツアー2026と初の日本武道館(2025-2026)
2025年12月7日、東京ガーデンシアターでの公演において、BAND-MAIDは翌2026年のワールドツアー開催を発表した。アジア、ヨーロッパ、北米を巡るこのツアーは、これまでの国際的キャリアの集大成となる大規模なものである。とりわけ大きなニュースとなったのが、2026年11月に悲願の日本武道館公演を初めて実施するという発表だった。日本のロックにとって象徴的な聖地である武道館での2days公演は、「メイド×ハードロック」という前例のないコンセプトから出発したバンドが、実力によって国内最高峰の舞台へと到達したことを示す到達点である。
このワールドツアーのファイナルを日本武道館2daysで飾ったのち、BAND-MAIDは次なる飛躍に向けた「充電期間」に入ることも発表された。結成から10年以上を経て、国内外の巨大な支持を獲得したBAND-MAIDの歩みは、一度立ち止まって力を蓄えつつ、さらなる「世界征服」の続きへと向かおうとしている。
9. メンバー詳細プロフィール
SAIKI(彩姫)— Vocal
BAND-MAIDのリード・ボーカル。パワフルなシャウトから繊細で情感豊かな歌唱までを自在に操る、表現力の幅広さが最大の武器。ハードな楽曲でバンドを牽引しながら、バラードでは深い情緒を描き出す。BAND-MAIDのサウンドに揺るぎない中心軸を与える存在である。
小鳩ミク(Kobato)— Guitar & Vocal(創設者)
BAND-MAIDの発案者であり、リズム・ギターとボーカルを担当。秋葉原のメイド喫茶での経験から「メイド×ハードロック」というコンセプトを構想した。語尾に「ぽっぽ」を付ける愛嬌あるMCとキャラクターで、バンドの世界観とファンとの橋渡しを体現する"顔"としての役割も果たす。
KANAMI(遠乃歌波)— Lead Guitar
BAND-MAIDのリード・ギタリストであり、多くの楽曲の作曲を手がける音楽的中枢。超絶技巧と豊かな旋律感覚を兼ね備え、ファンク、メタル、プログレッシヴ・ロックを横断する複雑かつキャッチーな楽曲を生み出す。彼女のギターと作曲が、BAND-MAIDの音楽的信頼性を根底で支えている。
MISA — Bass
独創的で表現力に富んだプレイで知られるベーシスト。うねるようなグルーヴと確かなテクニックでバンドの低音部を支え、時に楽曲の主役級の存在感を放つ。寡黙ながらステージ上で圧倒的な存在感を示す、BAND-MAIDのリズムの要である。
AKANE(廣瀬茜)— Drums
パワフルかつ正確なドラミングでBAND-MAIDの複雑な楽曲を力強く駆動させるドラマー。速く精密なプレイと安定したグルーヴで、バンドの演奏の推進力を担う。KANAMIの緻密な作曲を、身体的な迫力とともに現実の音へと変換する重要な役割を果たしている。
10. ディスコグラフィ(スタジオ・アルバム/EP)
| 発売年 | タイトル | 区分・備考 |
|---|---|---|
| 2014 | Maid in Japan | デビュー・ミニ・アルバム |
| 2015 | New Beginning | 1stフル・アルバム |
| 2016 | Brand New Maid | スタジオ・アルバム |
| 2017 | Just Bring It | スタジオ・アルバム |
| 2018 | World Domination | 「世界征服」を宣言した作品 |
| 2019 | Conqueror | スタジオ・アルバム |
| 2019 | Band-Maiko | 舞妓の世界観を取り入れたEP |
| 2021 | Unseen World | 電子的テクスチャーと複雑な構成を拡張 |
| 2022 | Unleash | EP |
| 2024 | Epic Narratives | 8作目のスタジオ・アルバム |
| 2025 | Scooooop | EP。アニメ・タイアップ期の作品 |
主なシングル/楽曲には「YOLO」(2016)、「Daydreaming / Choose Me」(2017)、「Start Over」(2018)、「Glory」(2019)、「Sense」(2021)、「Zen」「Ready to Rock」「What is Justice?」「ENERGETIC」(2025、アニメ・タイアップ関連)などがある。
各アルバムの詳解と音楽的変遷
New Beginning(2015)——BAND-MAIDが初めてオリコン週間チャートにランクイン(64位)した重要作。ロック、ポップ、メタルを溶け合わせたこの時期、ミュージックビデオ「Thrill(スリル)」が海外で予想外の大きな反響を呼んだことが、バンドがハードロック路線を明確に打ち出す決定的な契機となった。「メイドの見た目」への好奇から入った海外リスナーが、演奏の実力に驚くという後年の構図が、すでにここで始まっている。
Brand New Maid(2016)——オリコン週間19位を記録した作品。前作で掴んだハードロックの方向性をさらに推し進め、より重く鋭いバンド・サウンドへと踏み込んだ。海外での評価が国内の認知を牽引するという、BAND-MAID特有の逆輸入的な人気拡大が加速した時期でもある。
Just Bring It(2017)——BAND-MAID初のフルレングス・アルバムであり、JPU Recordsを通じて国際的に流通した。この国際流通によってBAND-MAIDの海外ツアーは本格化し、北米・欧州の各地で現地ファンを直接つかむ足がかりとなった。
World Domination(2018)——「世界征服」を宣言したタイトルどおり、当時の最大の成功作(オリコン週間9位)。「Domination」「Daydreaming」「Dice」といったヒット曲を擁し、メタリックな重さとプログレッシヴな構築性を大きく増した。BAND-MAIDが国際的なロック・バンドとしての地位を確立した節目の一枚である。
Conqueror(2019)——前作の路線をさらに推し進めた作品。特筆すべきは、David Bowieらを手がけたグラミー受賞プロデューサーTony Visconti(トニー・ヴィスコンティ)がプロデュースした楽曲を収録している点であり、BAND-MAIDが世界的な制作者からも一目置かれる存在になったことを象徴している。
Unseen World(2021)——パンデミック下の困難な状況で制作されたアルバム。電子的なテクスチャーやより複雑な楽曲構成を取り込み、BAND-MAIDのサウンドが単なるハードロックの枠を超えて拡張していることを示した。制約の多い時期を音楽的深化の機会へと転換した意欲作である。
Epic Narratives(2024)——8作目のスタジオ・アルバム。長年のキャリアで培った演奏力と作曲力の到達点を示し、成熟と挑戦を両立させた作品として受け止められた。この充実したアルバムを土台に、BAND-MAIDはアニメ・タイアップやワールドツアー2026へと歩みを進めていく。
11. 音楽性とライブ文化
BAND-MAIDの音楽は、正統的なハードロックを土台としながら、ファンクのグルーヴ、メタルの重量感、プログレッシヴ・ロックの構築性を自在に往来する。KANAMIの作曲が生み出す複雑な曲構成を、5人が高い精度で演奏しきることで、見た目の可憐さとは裏腹の「硬派なバンド・サウンド」が成立する。この演奏力こそが、コンセプトの奇抜さを超えてBAND-MAIDが長く評価され続けてきた根拠である。
ライブ=「お給仕」の文化もまた、BAND-MAIDの魅力の核心にある。ファンを「ご主人様・お嬢様」と呼び、独自の作法やコール&レスポンスで観客と一体化するその様式は、メイド喫茶のホスピタリティをロック・ライブへ翻訳したものだ。この様式は海外でもそのまま受け入れられ、国や言語を問わずファンが同じ「お給仕」を共有するという、BAND-MAID独自のグローバルなコミュニティを生み出している。
海外での成功と国際的評価
BAND-MAIDの歩みを特徴づけるのは、その国際性の高さである。日本のロック・バンドとしては早い段階から北米・欧州・南米・アジアへと足を運び、各地のライブハウスやフェスティバルで現地のファンを直接つかんできた。海外公演では、日本語詞の楽曲であっても観客が歌詞を口ずさみ、「お給仕」の作法を共有する光景が当たり前のように見られる。言語の壁を越えて演奏そのものの力で支持を勝ち取ってきたこの実績は、BAND-MAIDが単なる国内的な人気にとどまらない、真にグローバルなバンドであることを裏づけている。
楽器演奏の水準の高さは、海外のミュージシャンや専門メディアからも繰り返し称賛されてきた。KANAMIのギター、MISAのベース、AKANEのドラムが織りなすインストゥルメンタルの応酬は、ビジュアルの先入観を持たずに聴いても十分に評価に値するものであり、「見た目のギャップ」以上に「演奏の実力」でリスペクトを獲得している点にBAND-MAIDの強さがある。こうした国際的評価の積み重ねが、2026年のワールドツアーと初の日本武道館公演という大きな到達点へと結実した。
作曲の中核とアンサンブル
BAND-MAIDの音楽的信頼性を根底で支えているのが、リード・ギタリストKANAMIを中心とする作曲と、5人のアンサンブルの緻密さである。KANAMIが生み出す楽曲は、キャッチーなサビを持ちながらも、変拍子や予測を裏切る展開、ファンクとメタルをまたぐリズムの妙を含んでおり、単純なポップ・ロックの枠には収まらない。その複雑な設計図を、SAIKIの表現力豊かなヴォーカル、小鳩ミクのリズム・ギター、MISAのうねるベース、AKANEの正確で力強いドラムが高い精度で演奏しきることで、「見た目の可憐さ」とは対照的な硬派なバンド・サウンドが成立する。
この「作曲の質」と「演奏の精度」の両立こそが、コンセプトの奇抜さを超えてBAND-MAIDが長く評価され続けてきた最大の理由である。楽曲ごとに異なる表情を見せながらも、5人が一つの生命体のように呼応するアンサンブルは、スタジオ音源以上にライブでその真価を発揮する。
ライブ・バンドとしての評価
BAND-MAIDは、録音物の完成度と同等以上に、ライブ・バンドとしての強度で評価されてきた。トラックに頼らない生演奏で、複雑な楽曲を寸分の狂いなく再現し、なおかつ「お給仕」としてのホスピタリティとエネルギーを両立させるそのステージは、国内外の観客を熱狂させてきた。海外公演では、日本語詞の楽曲でも観客が歌詞を口ずさみ、コール&レスポンスに参加する光景が当たり前のように見られる。この「演奏で観客を納得させ、様式で観客を巻き込む」二重の強さが、BAND-MAIDを世界で戦えるライブ・バンドたらしめ、初の日本武道館2days公演という到達点へと導いた。
12. 総括
BAND-MAIDは、「メイドの可愛らしさ」と「ハードロックの格好良さ」という、本来交わらないはずの二つの世界を一つのバンドの中で共存させることで、他に類を見ない存在感を確立した。しかしその成功を支えてきたのは、コンセプトの奇抜さそのものではなく、そのギャップを裏づける確かな演奏力と楽曲の質である。YouTubeを通じて海外で先に発見され、北米・欧州・南米・アジアを巡るワールドツアーを重ねてきた歩みは、日本のロック・バンドの国際的成功の一つのモデルとなった。
2026年の初の日本武道館公演は、「メイド×ハードロック」という前例なきコンセプトから出発したバンドが、実力で国内最高峰の舞台へ到達したことの証明である。その後の「充電期間」を経て、BAND-MAIDの「世界征服」の物語は、これからも続いていく。
Trivia
2024年9月25日に出た全14曲入りのアルバム『Epic Narratives』には、国外のアーティストとの共作が2曲入っている。4曲目「SHOW THEM」はメキシコの3ピース・バンドThe Warningとの共演で、公式の表記も「SHOW THEM / BAND-MAID with The Warning」。6曲目「Bestie」はINCUBUSのマイク・アインジガーとの共作である。
バンド名の由来は、ひねりが無いという意味で徹底している。発案者の小鳩ミクは高校時代からいろいろなバンドのライヴに通っていて、いずれ自分でもやりたいと考えていた。高校卒業後にメイドのアルバイトをしていたときに、バンドとメイドを掛け合わせたら面白いことができるのではないかと思いついたのがきっかけで、名前もそのまま、バンドとメイドをくっつけただけだと本人が説明している。
小鳩ミクがメイドとして働いていたのは、東京だけではない。地元の熊本で初めてやったアルバイトがメイドで、店は「コンセプト・カフェ」という名前だったという。その後、東京でも同じ仕事を続け、通算で3年ほどメイドをやっている。音楽的にはかわいい曲よりロックをやりたかったので、その二つを合わせたら面白いのではないかと考えたのがバンドの発端だった。取材で「本当にメイド喫茶で働いていたのか」と念を押されるのは、本人によればよくあることらしい。
メンバーは横のつながりで一気に決まっている。小鳩ミクが最初に声をかけたのはギターのKANAMI(当時の表記は遠乃歌波)で、彼女がシンガーソングライターとして活動していた頃にアップしていた演奏動画を見たのがきっかけだった。KANAMIは本当はバンドに入ってリードギターを弾きたいと考えていたうえ、高校時代に偶然メイド服を着てバンドをやっていたことがあったため、コンセプトにも抵抗が無かった。そこからKANAMIをサポートしていたドラムのAKANE(廣瀬茜)に、さらにAKANEと一緒に仕事をしていたベースのMISAに声がかかり、リズム隊が埋まった。
ヴォーカルのSAIKIは、メイド服を着ることを知らされないまま加入している。小鳩ミクは、KANAMIには抵抗されなかったがAKANEとMISAには少し抵抗されたという経験から、SAIKIを誘うときはまず音の面から興味を持ってもらうことにして、衣装の件を伏せたのだった。SAIKIが聞かされたのは「ちょっとかわいらしい格好でやる」ということだけで、先に渡された音源が格好よかったので加入を決めている。まさかメイド服ではないだろうと思っていた彼女が事実を知ったのは、楽屋にカチューシャとエプロンが置いてあるのを見たときだった。それでも曲が格好よかったので断ろうとは思わなかったという。
小鳩ミクは、もともとヴォーカルだけを担当していた。バンドは4人編成で始まり、その体制でのライヴは2回ほどしか行っていない。用意していた曲を演奏してみたものの、もっと重い雰囲気のサウンドにしたいと感じた小鳩が、同じ事務所にいたSAIKIの声はBAND-MAIDに合うと確信して声をかけ、結成から約1か月で5人になった。同時に編成もツイン・ヴォーカルとギター2本に変わり、小鳩がギターを持つことになる。理由は自分の声が明るいことで、低めの声のSAIKIと組めばもっとハードにできると考えたからだった。ギターを2本にしたのは、結成時から「メイド姿でかわいい曲では見た目と音がそのままになってしまう」という問題意識がメンバーの間にあったためである。
BAND-MAIDのサウンド像を決めたのは、シングルのカップリング曲だった。自分たちの求める音を模索していた時期に「Thrill(スリル)」ができ、メンバー全員が「この感じだ」と一致したことで、以降はこの曲寄りの楽曲をやっていこうと方向が定まった。それまでのサウンドはハードというよりポップ・ロック寄りで、ドラムのAKANEもこの曲まではツイン・ペダルを使っていなかった。
海外に出るきっかけになったのも同じ「Thrill(スリル)」だった。海外のWebサイト「Jrock Radio」でこの曲のミュージック・ビデオが紹介され、それを気に入ったアメリカのイベント主催者から声がかかった結果、2016年3月にシアトルで開かれた日本文化のコンベンション「SAKURA-CON」への出演が実現し、約3000人の前で演奏している。この紹介の影響は数字にも表れ、Twitterのフォロワーが一気に増え、YouTubeのMVの再生回数も跳ね上がった。小鳩ミクは、この曲がバンドの方向性を決める転機になっただけでなく、そこまでの影響を持つとは思ってもみなかったと振り返っている。
News
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8月14〜16日開催。東京会場(ZOZOマリンスタジアム/幕張メッセ)のMARINE、MOUNTAIN、SONIC、PACIFICの各ステージから配信される。
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新曲を携えた北米ツアー7都市の日程を発表。ワールドツアー・ファイナルとなる日本武道館2デイズのオープニングアクトはNEK!に決定した。
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