WHITESNAKE
1970年代後半から2020年代半ばに至るまで、半世紀近くにわたりハードロック・シーンの最前線を走り続けたバンド、ホワイトスネイク (WHITESNAKE)。
Biography
ホワイトスネイク (WHITESNAKE)
栄光、変容、そして終焉
1. ブリティッシュ・ハードロックの巨塔とその進化
1970年代後半から2020年代半ばに至るまで、半世紀近くにわたりハードロック・シーンの最前線を走り続けたバンド、ホワイトスネイク (WHITESNAKE)。その歴史は、リーダーであり唯一の不動のメンバーであるデイヴィッド・カヴァデール (David Coverdale) の音楽的探求と、音楽ビジネスという荒波の中での生存戦略の歴史そのものである。ディープ・パープル (Deep Purple) のブルース・ロック (Blues Rock) 的側面を継承した初期から、MTV全盛期におけるスタジアム・ロック (Stadium Rock) への劇的な転身、速度、そして晩年の円熟に至るまで、ホワイトスネイクは常にその姿を変えながら「白蛇」の如く脱皮を繰り返してきた。
2. 第1章: 胎動 - ディープ・パープルからの離脱とソロ活動 (1976–1978)
2.1 ポスト・パープルの憂鬱と税金亡命
1976年3月、イギリス (United Kingdom) のリヴァプール・エンパイア・シアター (Liverpool Empire Theatre) での公演を最後に、第4期ディープ・パープルは解散した。当時、弱冠24歳であったデイヴィッド・カヴァデールは、世界的な名声を得たものの、バンド内部の薬物乱用や人間関係の破綻に深く傷つき、精神的に疲弊していた。さらに、当時のイギリスの懲罰的な税制を逃れるため、彼はドイツ (Germany) への移住を余儀なくされる。この「税金亡命」の期間は、彼にとって孤独であると同時に、自身の音楽的ルーツであるソウル (Soul)、R&B、そしてブルースを見つめ直す重要な期間となった。
2.2 ソロ・アルバム 『White Snake』 と 『Northwinds』
バンド結成前夜、カヴァデールは2枚のソロ・アルバムを制作している。これらは後のホワイトスネイクの母体となる重要な作品群である。
- 『ホワイトスネイク (White Snake)』(1977年): ロンドン (London) のキングスウェイ・レコーディング・スタジオ (Kingsway Recorders) で録音された本作は、ハードロック色は薄く、カヴァデールが好むバラードやファンキーな要素が強い。プロデュースは元ディープ・パープルのロジャー・グローヴァー (Roger Glover) が務めた。特筆すべきは、後のホワイトスネイクの中心メンバーとなるギタリスト、ミッキー・ムーディ (Micky Moody) が既に参加している点である。タイトル曲 「WHITESNAKE」は、あくまでアルバム名であったが、後にバンド名へと転用されることになる。
- 『ノースウィンド (Northwinds)』 (1978年): 前作の延長線上にありつつも、よりバンド・サウンドに近づいた作品。ここでもロジャー・グローヴァーがプロデュースを担当した。このアルバムのレコーディング・セッションを通じて、カヴァデールは「自分のバンドを持ちたい」という欲求を明確にしていく。彼は、単なるバック・バンドではなく、自身のヴィジョンを共有できる「同志」を求めていた。
3. 第2章: 初期ホワイトスネイク - ブルース・ロックの復権 (1978-1982)
3.1 バンドの結成とデビューEP 『Snakebite』
1978年、カヴァデールはツアーのためにバンドを結成する。当初は「デイヴィッド・カヴァデールズ・ホワイトスネイク (David Coverdale's WHITESNAKE)」 と名乗っていたが、すぐに「ホワイトスネイク (WHITESNAKE)」 へと短縮された。
オリジナル・ラインナップ (The Original Lineup):
- デイヴィッド・カヴァデール (David Coverdale): ボーカル
- ミッキー・ムーディ (Micky Moody): ギター
- バーニー・マースデン (Bernie Marsden): ギター
- ニール・マレー (Neil Murray): ベース
- デイヴ・"ダック"・ドウル (Dave "Duck" Dowle): ドラムス
- ブライアン・ジョンストン (Brian Johnston): キーボード (直後にピート・ソリー (Pete Solley) へ交代)
この布陣で制作されたEP『スネイクバイト (Snakebite)』(1978年6月)には、ボビー・"ブルー"・ブランド (Bobby "Blue" Bland) のカバーである「エイント・ノー・ラヴ・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・シティ (Ain't No Love in the Heart of the City)」が収録された。この曲は、カヴァデールのソウルフルな歌声と観客とのコール・アンド・レスポンスによって、初期ホワイトスネイクのライブにおけるハイライトとなり、バンドの「アンセム」としての地位を確立した。
3.2 ジョン・ロードの加入と『Trouble』
デビュー・アルバムの制作直前、カヴァデールはかつての盟友であり、ディープ・パープルの創設メンバーであるキーボーディスト、ジョン・ロード (Jon Lord) を説得し、バンドに迎え入れた。ロードの加入は、バンドに音楽的な重厚さと「格」をもたらした。
1978年10月にリリースされた1stフルアルバム『トラブル (Trouble)』は、ツイン・ギターのハーモニーとハモンド・オルガンが絡み合う、英国式ハードロックの王道を示す作品となった。ミッキー・ムーディのスライド・ギターとバーニー・マースデンのメロディアスなソロの対比は、初期ホワイトスネイクのサウンドの核となった。
3.3 『Lovehunter』と論争、そしてイアン・ペイスの加入
1979年の2ndアルバム 『ラヴハンター (Lovehunter)』は、裸の女性が巨大な蛇に跨っているというクリス・アキレオス (Chris Achilleos) によるジャケット・アートワークが物議を醸し、一部の店舗では販売拒否の憂き目にあった。しかし、音楽的には洗練が進み、楽曲「Walking in the Shadow of the Blues」 などは現在でも名曲とされている。
このアルバムのツアー後、カヴァデールはリズム・セクションの強化を図り、デイヴ・"ダック"・ドウルを解雇。後任として、またしてもディープ・パープルのオリジナル・メンバーであるイアン・ペイス (Ian Paice)を招聘した。これにより、バンドには元ディープ・パープルのメンバーが3人 (カヴァデール、ロード、ペイス) 揃うことになり、メディアからは「ディープ・パープルの再来」とも評されたが、カヴァデールはあくまで「新しいブルース・ベースのロックバンド」であることを強調した。
3.4 黄金期:『Ready an' Willing』 から 『Come an' Get It』へ
1980年、最強のラインナップで制作されたアルバム『フール・フォー・ユア・ラヴィング (Ready an' Willing)』 がリリースされた。タイトル曲 「Fool for Your Loving」は、元々B.B. キング (B.B. King) のために書かれた曲であったが、バンド自身で録音することになり、結果として全英シングルチャート13位、アルバムは全英6位という大ヒットを記録した。
同年、ロンドン (London) のハマースミス・オデオン (Hammersmith Odeon) での公演を収録したライブ・アルバム『ライヴ・・・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・シティ (Live... in the Heart of the City)』を発表。全英5位を記録し、バンドのライブ・アクトとしての実力を世界に知らしめた。
続く1981年の『カム・アン・ゲット・イット (Come an' Get It)』は、全英アルバムチャートで2位を記録し、初期ホワイトスネイクの商業的頂点となった。「Don't Break My Heart Again」などのヒット曲を生み出し、バンドはヨーロッパ全土および日本での人気を不動のものとした。
4. 第3章: 崩壊と再構築 - アメリカ市場への挑戦 (1982-1985)
4.1 『Saints & Sinners』 とバンドの分裂
順風満帆に見えたバンドだが、内情は危機的状況にあった。マネージメントとの金銭トラブル、過酷なツアー・スケジュール、そしてカヴァデールの家庭問題 (最初の妻との離婚調停) が重なり、メンバー間の結束は崩れ去っていた。
1982年のアルバム『セインツ・アンド・シナーズ (Saints & Sinners)』のレコーディング中、ミッキー・ムーディが一時離脱。さらに、アルバム完成直後にバーニー・マースデンが解雇され、イアン・ペイスとニール・マレーもゲイリー・ムーア (Gary Moore) のバンドに参加するために脱退した。このアルバムには、後に全米1位となる「ヒア・アイ・ゴー・アゲイン (Here I Go Again)」 のオリジナル・バージョンと「クライング・イン・ザ・レイン (Crying in the Rain)」が収録されているが、当時のバンドの状態を反映してか、サウンドは荒削りであった。
4.2 コージー・パウエルの加入と 「WHITESNAKE Commandos」
カヴァデールはバンドを解散させることなく、大幅なメンバー刷新を行った。
- コージー・パウエル (Cozy Powell): ドラムス (元レインボー、ジェフ・ベック・グループ)
- メル・ギャレー (Mel Galley): ギター (元トラピーズ)
- コリン・ホッジキンソン (Colin Hodgkinson): ベース
このラインナップは、1983年のドニントン・パーク (Donington Park) で開催されたモンスターズ・オブ・ロック (Monsters of Rock) にヘッドライナーとして出演し、「ホワイトスネイク・コマンドス (WHITESNAKE Commandos)」と呼ばれる迷彩服をモチーフにした衣装で登場し、観衆を圧倒した。
4.3 『Slide It In』: UKミックスとUSミックスの相違
1984年、アルバム『スライド・イット・イン (Slide It In)』 がリリースされた。このアルバムは、バンドがブルース・ロックからよりエッジの効いたハードロック/ヘヴィ・メタルへと移行する過渡期の作品である。
ここで重要なのが、UK盤(オリジナル・ミックス) とUS盤 (リミックス) の存在である。
- UK盤: プロデュースはマーティン・バーチ (Martin Birch)。従来のブルース色が濃く、ベースはコリン・ホッジキンソン、ギターはメル・ギャレーとミッキー・ムーディによる演奏。各楽器の分離が良く、ドライなサウンド。
- US盤: アメリカでの契約先であるゲフィン・レコード (Geffen Records) のデヴィッド・ゲフィン (David Geffen) とA&Rのジョン・カロドナー (John Kalodner)は、当時のアメリカのラジオでヒットさせるためには「よりモダンで派手なサウンド」が必要だと判断した。カヴァデールはこれに同意し、キース・オルセン (Keith Olsen) をプロデューサーに迎えてリミックスを敢行した。
- 変更点: コリン・ホッジキンソンのベース・トラックは全て削除され、復帰したニール・マレーによって差し替えられた。また、ギター・パートの多くが、新たに加入したジョン・サイクス (John Sykes) によって重ね録り (オーバーダブ)された。キーボードは音量を下げられ、ドラムのゲート・リバーブが強調された。
このUS盤『Slide It In』 はアメリカでゴールド・ディスクを獲得し、MTVでの「Slow an' Easy」のビデオ放映も相まって、バンドのアメリカでの認知度を飛躍的に高めた。
4.4 ジョン・サイクスの台頭と 「Rock in Rio 1985」
元シン・リジィ (Thin Lizzy) の若きギタリスト、ジョン・サイクスの加入は、バンドに劇的な変化をもたらした。彼のプレイスタイルは、速弾き、ピッキング・ハーモニクス、工程、そしてアグレッシブなリフ・ワークを特徴としており、カヴァデールが求めていた「アメリカで通用するモダンなヘヴィ・メタル・サウンド」を具現化する存在であった。
しかし、旧来のメンバーとの軋轢は避けられなかった。ミッキー・ムーディはサイクスとの方向性の違いから脱退。メル・ギャレーは腕の怪我によりバンドを去った。ジョン・ロードも1984年に再結成ディープ・パープルに参加するために脱退し、ホワイトスネイクはカヴァデール、サイクス、マレー、パウエルという4人編成 (キーボードはサポートのリチャード・ベイリー (Richard Bailey)) となった。このラインナップによる1985年のブラジル・リオデジャネイロ (Rio de Janeiro) での「ロック・イン・リオ (Rock in Rio)」出演は、数十万人の観衆を前に行われ、バンドの歴史の中でもハイライトの一つとなった。しかし、音楽的な方向性を巡り、カヴァデールとコージー・パウエルの関係が悪化。パウエルはフェスティバル後に脱退する。
5. 第4章: 『1987』 - 世界制覇と代償 (1985-1988)
5.1 難産だったアルバム制作とカヴァデールの病
次作の制作は困難を極めた。ドラムにはエインズレー・ダンバー (Aynsley Dunbar) が起用されたが、カヴァデールとジョン・サイクスの曲作りは、互いのエゴの衝突により遅々として進まなかった。さらにカヴァデールは深刻な副鼻腔炎を患い、手術を余儀なくされる。医師からは「二度と歌えないかもしれない」と宣告されるほどの危機的状況であった。
カヴァデールが療養中、ジョン・サイクスはプロデューサーのマイク・ストーン (Mike Stone) と共にレコーディングを進めようとしたが、これを知ったカヴァデールは激怒。復帰後、アルバムが完成すると、カヴァデールはジョン・サイクス、ニール・マレー、エインズレー・ダンバーの全員を解雇した。
5.2 アルバム 『WHITESNAKE (1987)』の爆発的ヒット
1987年4月、セルフタイトル・アルバム『白蛇の紋章 (WHITESNAKE)』(欧州題:『1987』、日本題:『サーペンス・アルバス (Serpens Albus)』)がリリースされた。このアルバムは、米ビルボード・チャートで2位を記録し、全世界で1,000万枚以上を売り上げるモンスター・アルバムとなった。
主要楽曲:
- Still of the Night: レッド・ツェッペリンの「Black Dog」やジェイルハウス・ロックの要素を再構築した壮大なハードロック・オペラ。サイクスのギター・リフとカヴァデールのスクリームが炸裂する。
- Here I Go Again '87: 『Saints & Sinners』収録曲の再録音。テンポを上げ、ラジオ向けのポップなアレンジ ("Radio Mix") が施されたことで、全米シングルチャート1位を獲得した。
- Is This Love: カヴァデールがティナ・ターナー (Tina Turner) のために書いたとされるパワー・バラード。全米2位。
5.3 「ビデオ・バンド」現象とMTVの支配
アルバムの大ヒットを牽引したのは、マーティ・コールナー (Marty Callner) 監督によるミュージック・ビデオであった。カヴァデールは、解雇したメンバーの代わりに、全く新しいラインナップを招集し、ビデオに出演させた。
1987年の「ビデオ/ツアー」 ラインナップ:
- エイドリアン・ヴァンデンバーグ (Adrian Vandenberg): ギター(元ヴァンデンバーグ)
- ヴィヴィアン・キャンベル (Vivian Campbell): ギター (元ディオ)
- ルディ・サーゾ (Rudy Sarzo): ベース (元クワイエット・ライオット、オジー・オズボーン)
- トミー・アルドリッジ (Tommy Aldridge): ドラムス (元オジー・オズボーン)
ビデオには、カヴァデールの当時の恋人であり後に妻となる女優タウニー・キタン (Tawny Kitaen) が出演し、ジャガーのボンネットで踊る扇情的な姿がMTVでヘビーローテーションされた。これにより、「レコーディングしたメンバー」と「画面に映るメンバー」が異なるという状況が生まれたが、大衆は気にせず、ホワイトスネイクは「ヘア・メタル (Hair Metal)」のアイコンとして君臨した。
6. 第5章: 過剰と終焉 - 『Slip of the Tongue』 (1989-1990)
6.1 エイドリアン・ヴァンデンバーグの負傷とスティーヴ・ヴァイの加入
次作『スリップ・オブ・ザ・タン (Slip of the Tongue)』の制作にあたり、カヴァデールはエイドリアン・ヴァンデンバーグと曲作りを行っていた (ヴィヴィアン・キャンベルは音楽的相違により解雇されていた)。しかし、レコーディング直前にヴァンデンバーグが手首を負傷し、演奏が不可能となるアクシデントが発生する。
カヴァデールは代役として、元フランク・ザッパ (Frank Zappa)、デイヴィッド・リー・ロス (David Lee Roth) バンドの奇才、スティーヴ・ヴァイ (Steve Vai) を起用した。ヴァイはアルバムの全ギター・パートを演奏し、彼のトレードマークである7弦ギターや複雑なエフェクト処理を多用した。
6.2 豪華絢爛なサウンドとバンドの限界
1989年にリリースされた 『Slip of the Tongue』は、プラチナ・ディスクを獲得したものの、前作ほどの爆発的ヒットにはならなかった。ヴァイのテクニカルすぎる演奏は、ホワイトスネイク本来のブルース・ベースのロックとは異質であり、古くからのファンを戸惑わせた。また、「Fool for Your Loving」の再録音 (通称: Vai Version) も行われたが、オリジナルほどの評価は得られなかった。
1990年のドニントン・モンスターズ・オブ・ロックでのヘッドライナー公演を最後に、カヴァデールは「情熱の喪失」を理由にバンドの無期限活動休止を宣言する。彼は音楽ビジネスの巨大化と、自身のパブリック・イメージ(セックス・シンボルとしての扱い) に疲弊しきっていた。
7. 第6章: 彷徨と再起 - カヴァデール・ペイジと 『Restless Heart』 (1991-2002)
7.1 カヴァデール・ペイジ (Coverdale/Page) プロジェクト
1993年、カヴァデールはレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ (Jimmy Page) と手を組み、プロジェクト「カヴァデール・ペイジ (Coverdale/Page)」を始動させる。アルバム『カヴァデール・ペイジ』は、ツェッペリンの重厚なリフとホワイトスネイクのメロディが融合した傑作として高く評価された。全英4位、全米5位を記録。しかし、予定されていた世界ツアーはチケットの売れ行き不振などの理由でキャンセルされ、日本公演など限定的な活動にとどまった後、プロジェクトは自然消滅した。
7.2 『Restless Heart』 とソロ名義問題
1997年、カヴァデールはエイドリアン・ヴァンデンバーグと共にアルバム『レストレス・ハート (Restless Heart)』を制作する。当初、カヴァデールはこれをソロ・アルバムとしてリリースする意向であったが、レコード会社 (EMI) の強い要望により 「デイヴィッド・カヴァデール&ホワイトスネイク (David Coverdale & WHITESNAKE)」 名義でのリリースとなった。
このアルバムは、80年代の派手なメタル・サウンドを完全に排除し、R&Bやソウルへの回帰を示した渋い作品であった。しかし、グランジ・ブームの最中であったアメリカではリリースが見送られ(日本や欧州のみでの発売)、商業的には成功しなかった。1997年、カヴァデールとヴァンデンバーグはプロモーションのために来日し、東芝EMIのスタジオでアコースティック・ライブを行う。この模様は後にライブ・アルバム『スターカーズ・イン・トーキョー (Starkers in Tokyo)』としてリリースされ、カヴァデールのボーカリストとしての真価を証明する名盤となった。
2000年には、名実ともにソロ名義となるアルバム『イントゥ・ザ・ライト (Into the Light)』を発表。「River Song」 などに見られるように、彼のルーツであるアーシー (土着的)なロックを展開した。
8. 第7章: 完全復活 - 21世紀のホワイトスネイク (2003-2018)
8.1 25周年記念ツアーと恒久的再結成
2003年、ホワイトスネイクのデビュー25周年を記念して、カヴァデールはバンドを再始動させる。再結成ラインナップ:
- ダグ・アルドリッチ (Doug Aldrich): ギター (ディオ、ライオン)
- レブ・ビーチ (Reb Beach): ギター (ウィンガー、ドッケン)
- マルコ・メンドーサ (Marco Mendoza): ベース
- トミー・アルドリッジ: ドラムス
- ティモシー・ドゥルーリー (Timothy Drury): キーボード
特にダグ・アルドリッチとレブ・ビーチのツイン・ギター体制は、バンドに強力なエネルギーをもたらし、過去の名曲を現代的なヘヴィネスで蘇らせた。
8.2 『Good to Be Bad』 と 『Forevermore』
2008年、ドイツのSPV/Steamhammer レーベルより、11年ぶりのスタジオ・アルバム『グッド・トゥ・ビー・バッド (Good to Be Bad)』をリリース。80年代の華やかさと70年代のブルース感を融合させたこのアルバムは、批評家から絶賛され、バンドの健在ぶりをアピールした。
2011年には、イタリアのフロンティアーズ・レコード (Frontiers Records) に移籍し、アルバム『フォーエヴァーモア (Forevermore)』を発表。タイトル曲 「Forevermore」は7分を超える大作で、アコースティックな導入部から壮大なハードロックへと展開する構成は、カヴァデールのソングライティング能力の高さを示した。
8.3 ジョエル・ホークストラの加入と 『The Purple Album』
2014年、長年バンドを支えたダグ・アルドリッチが脱退。後任としてナイト・レンジャー (Night Ranger) のジョエル・ホークストラ (Joel Hoekstra) が加入した。2015年、カヴァデールは自身のキャリアの原点であるディープ・パープル時代の楽曲(第3期・第4期)を再録音したアルバム『ザ・パープル・アルバム (The Purple Album)』をリリースした。これには「Burn」「Mistreated」 「Stormbringer」 などが収録されており、現代的なホワイトスネイクのサウンドで過去の名曲をアップデートする試みであった。
9. 第8章: 最終章 - 『Flesh & Blood』から引退へ (2019-2025)
9.1 オリジナル・スタジオ最終作『Flesh & Blood』
2019年、13枚目のスタジオ・アルバム『フレッシュ・アンド・ブラッド (Flesh & Blood)』をリリース。シングル 「Shut Up & Kiss Me」のエネルギッシュなビデオからも分かるように、70歳を目前にしたカヴァデールの意欲は衰えていなかった。
9.2 歴史的変革: 初の女性メンバーとクロアチアの天才
この時期、バンドのラインナップに歴史的な変更が加えられた。2021年、長年ベーシストを務めたマイケル・デヴィン (Michael Devin) が脱退し、後任としてアイルランド出身の女性ベーシスト、タニャ・オキャラハン (Tanya O'Callaghan) が加入した。ホワイトスネイク史上初の女性メンバーである彼女は、そのグルーヴ感とステージでの華やかな存在感で、バンドに新しい風を吹き込んだ。カヴァデールは彼女を「アイリッシュ・トルネード (The Irish Tornado)」と称賛した。
また、クロアチア出身の若きマルチ・プレイヤー、ディノ・イェルシッチ (Dino Jelusick / クロアチア語: Dino Jelusic) がキーボード兼バッキング・ボーカルとして加入。トランス・シベリアン・オーケストラ (Trans-Siberian Orchestra) での活動で知られる彼は、カヴァデールを補佐する「予備のリード・ボーカル」としての役割も期待されるほどの圧倒的な歌唱力を持っていた。
9.3 フェアウェル・ツアーの中断と引退宣言
バンドは2022年から 「フェアウェル・ツアー (Farewell Tour)」を開始したが、カヴァデールの上気道感染症や、レブ・ビーチの体調不良など、メンバーの健康問題が相次ぎ、欧州ツアーの残りと北米ツアーの全てがキャンセルされた。
2025年9月26日には、2011年の『フォーエヴァーモア (Forevermore)』をカヴァデール本人の監修による2025年リミックスと2025年リマスターで組み直した5枚組ボックス『フォーエヴァーモア:リヴィジテッド・リミックスト・アンド・リマスタード (Forevermore: Revisited, Remixed and Remastered)』がRhinoから発売され、日本盤は10月8日にワーナーミュージック・ジャパンから完全限定盤として発売された。
そして2025年11月13日、デイヴィッド・カヴァデールはビデオ・メッセージを通じて、ツアー活動からの完全引退を正式に発表した。「50年以上の素晴らしい旅路を共にしてくれた全ての人々に感謝する。しかし、私のロックンロールのプラットフォーム・シューズとスキニー・ジーンズを脱ぐ時が来た」 この声明により、ホワイトスネイクのツアー・バンドとしての歴史は幕を下ろした。
9.4 エピローグ: WHITESNAKE Experience
カヴァデールの引退後、残されたメンバー (トミー・アルドリッジ、ジョエル・ホークストラ、ミケーレ・ルッピ、ディノ・イェルシッチ、マルコ・メンドーサ)は、「ホワイトスネイク・エクスペリエンス (WHITESNAKE Experience)」 という名義で活動を継続する計画を発表した。2026年8月のセルビア (Serbia) のギター・フェスティバルへの出演計画も伝えられ、カヴァデールの遺産 (Legacy) を継承するプロジェクトとして注目された。
ボックス・セットとしては、2013年の『Little Box 'O' Snakes (The Sunburst Years 1978-1982)』(Sunburst時代の作品をまとめたCD8枚組)、2021年の『Restless Heart: Super Deluxe Edition』(『Restless Heart』の25周年記念ボックス)、2023年の『Still... Good to Be Bad: Super Deluxe Edition』(『Good to Be Bad』の15周年記念ボックス)、2024年の『Into the Light: The Solo Albums』(デイヴィッド・カヴァデールのソロ3作をまとめたCD6枚組)、2025年の『Access All Areas: Live』(2004年から2015年の6つのライヴ作品をまとめたCD8枚組)も出ている。
10. ディスコグラフィ (Discography)
10.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
| 発売年 | タイトル(英語/カナ) | 英米チャート順位 | 主要メンバー | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1978 | Trouble (トラブル) |
UK: 50 | Coverdale, Moody, Marsden, Murray, Lord, Dowle | デビュー作。ジョン・ロード加入。ブルース・ロック色が濃い。 |
| 1979 | Lovehunter (ラヴハンター) |
UK: 29 | Coverdale, Moody, Marsden, Murray, Lord, Dowle | アートワークが物議を醸す。「Walking in the Shadow of the Blues」収録。 |
| 1980 | Ready an' Willing (フール・フォー・ユア・ラヴィング) |
UK: 6 US: 90 |
Coverdale, Moody, Marsden, Murray, Lord, Paice | イアン・ペイス加入。初の全英トップ10入り。「Fool for Your Loving」収録。 |
| 1981 | Come an' Get It (カム・アン・ゲット・イット) |
UK: 2 US: 60位前後 |
Coverdale, Moody, Marsden, Murray, Lord, Paice | 初期ラインナップの最高傑作。「Don't Break My Heart Again」収録。 |
| 1982 | Saints & Sinners (セインツ・アンド・シナーズ) |
UK: 9 | Coverdale, Moody, Marsden, Murray, Lord, Paice | 制作中にバンド崩壊。「Here I Go Again」 「Crying in the Rain」 オリジナル版収録。 |
| 1984 | Slide It In (スライド・イット・イン) |
UK: 9 US: 40 |
Coverdale, Sykes, Murray, Powell (US Mix) | ジョン・サイクス加入。UK版とUS版で演奏者が異なる。米国ブレイクのきっかけ。 |
| 1987 | WHITESNAKE (白蛇の紋章/1987) |
UK: 8 US: 2 |
Coverdale, Sykes, Murray, Dunbar | 全世界で1000万枚超のメガヒット。「Still of the Night」 「Is This Love」収録。 |
| 1989 | Slip of the Tongue (スリップ・オブ・ザ・タン) |
UK: 10 US: 10 |
Coverdale, Vai, Sarzo, Aldridge | スティーヴ・ヴァイ参加。豪華だが過剰なプロダクションとも評される。 |
| 1997 | Restless Heart (レストレス・ハート) |
UK: 34 | Coverdale, Vandenberg | 「David Coverdale & WHITESNAKE」名義。R&B/ブルース回帰作。 |
| 2008 | Good to Be Bad (グッド・トゥ・ビー・バッド) |
UK: 7 US: 62 |
Coverdale, Aldrich, Beach | 本格的再結成アルバム。往年のスタイルを現代的音圧で再現。 |
| 2011 | Forevermore (フォーエヴァーモア) |
UK: 33 US: 49 |
Coverdale, Aldrich, Beach | フロンティアーズ移籍第一弾。「Love Will Set You Free」収録。 |
| 2015 | The Purple Album (ザ・パープル・アルバム) |
UK: 18 US: 87 |
Coverdale, Beach, Hoekstra | ディープ・パープル時代のセルフカバー集。ジョエル・ホークストラ初参加。 |
| 2019 | Flesh & Blood (フレッシュ・アンド・ブラッド) |
UK: 7 US: 131 |
Coverdale, Beach, Hoekstra | オリジナル楽曲による最終スタジオ作。MV「Shut Up & Kiss Me」制作。 |
10.2 主なライブ・アルバム (Selected Live Albums)
- Live... in the Heart of the City (ライブ・・・イン・ザ・ハート・オブ・ザ・シティ) (1980): 1978年と1980年のハマースミス公演を収録。初期の集大成。
- Starkers in Tokyo (スターカーズ・イン・トーキョー) (1997): 日本限定のアンプラグド・ライブ。
- Live... In the Still of the Night (ライブ・・・イン・ザ・スティル・オブ・ザ・ナイト) (2006): 再結成後のロンドン公演。DVDとしても発売され非常に評価が高い。
- Live at Donington 1990 (ライブ・アット・ドニントン 1990) (2011): スティーヴ・ヴァイ在籍時のヘッドライナー公演の発掘音源。
- Made in Japan (メイド・イン・ジャパン) (2013): 2011年のラウドパーク (Loud Park) フェスティバル (さいたまスーパーアリーナ)での公演を収録。
10.3 主なコンピレーション (Selected Compilations)
- WHITESNAKE's Greatest Hits (1994): バンド史上最も売れたベスト盤。
- The Rock Album (2020) / The Love Songs (2020) / The Blues Album (2021): 「Red, White and Blues Trilogy」と呼ばれるテーマ別リミックス・ベスト3部作。
10.4 その他の作品 (Other Releases)
- The Purple Album: Special Gold Edition (2023): 2015年の『The Purple Album』の拡張盤。本編を最新リミックス&リマスターで収め、パープル・ツアーのライヴ、オルタナティヴ・ミックス、1972年にカヴァデールがディープ・パープルのオーディション用に録音した未発表音源まで加えた2SHM-CD+Blu-rayの3枚組。日本盤はワーナーミュージック・ジャパンから2023年10月13日に発売された (WPZR-30973)。
- Forevermore: Revisited, Remixed and Remastered (フォーエヴァーモア:リヴィジテッド・リミックスト・アンド・リマスタード) (2025): 2011年の『Forevermore』を2025年リミックスと2025年リマスターで組み直した5枚組ボックス (CD4枚・全67曲+Blu-ray)。デイヴィッド・カヴァデール本人が監修。海外ではRhinoから9月26日、日本盤はワーナーミュージック・ジャパンから10月8日に完全限定盤 (WPZR-31077/81) として発売された。
10.5 ボックス・セット (Box Sets)
- Little Box 'O' Snakes (The Sunburst Years 1978-1982)(2013年): WHITESNAKEのSunburst時代、1978年から1982年の作品をまとめたCD8枚組。EP『Snakebite』、スタジオ作5作、ライヴ盤2作を収める。
- Restless Heart: Super Deluxe Edition(2021年、邦題『レストレス・ハート:スーパー・デラックス・エディション』): 1997年の『Restless Heart』の25周年記念スーパー・デラックス・エディションの日本盤。SHM-CD4枚とDVDに、2021年リミックス、リマスター、制作過程の音源を収める。
- Still... Good to Be Bad: Super Deluxe Edition(2023年、邦題『スティル・グッド・トゥ・ビー・バッド:スーパー・デラックス・エディション』): 2008年の『Good to Be Bad』の15周年記念スーパー・デラックス・エディションの日本盤。SHM-CD4枚とBlu-rayに、2023年ミックス、別ヴァージョン、未発表デモを収める。
- Into the Light: The Solo Albums(2024年、邦題『イントゥ・ザ・ライト:ザ・ソロ・アルバムズ』): デイヴィッド・カヴァデールのソロ3作『White Snake』『Northwinds』『Into the Light』を、2024年リミックスと元のミックスのリマスターで収めたCD6枚組。
- Access All Areas: Live(2025年): WHITESNAKEの2004年から2015年の6つのライヴ作品をCD8枚にまとめたボックス。2011年のLOUD PARKでの公演とサウンドチェックも収め、全曲2025年リマスター。
11. メンバー列伝 (The Snake Pit)
ホワイトスネイクには延べ40名以上のミュージシャンが在籍した。ここでは主要メンバーを詳述する。
ボーカル
- デイヴィッド・カヴァデール (David Coverdale): (1978-2025) バンドの創始者。「スネイク・チャーマー (Snake Charmer)」の異名を持つ。その声は、深みのあるバリトンから鋭いシャウトまで多彩で、ブルース・フィーリングをハードロックに持ち込んだ功績は計り知れない。
ギター
- ミッキー・ムーディ (Micky Moody): (1978-1983) 初期のサウンドを決定づけたスライド・ギターの名手。カヴァデールとは最も古い付き合いだったが、音楽性の変化に伴い脱退。
- バーニー・マースデン (Bernie Marsden): (1978-1982) メロディメイカー。「Here I Go Again」の共作者として、バンドに莫大な印税収入をもたらす遺産を残した。2023年死去。
- メル・ギャレー (Mel Galley): (1982-1984) トラピーズ出身。腕の神経損傷により演奏生命に危機が訪れ、脱退を余儀なくされた。2008年死去。
- ジョン・サイクス (John Sykes): (1984-1987) レスポール・カスタム (Les Paul Custom)を駆使したヘヴィなサウンドで、バンドをメタル・シーンの頂点に押し上げた。カヴァデールとの確執は有名だが、彼が残した『1987』のリフはロック史に残るものである。
- エイドリアン・ヴァンデンバーグ (Adrian Vandenberg): (1987-1990, 1994, 1997) オランダ (Netherlands)出身。「Here I Go Again」のギターソロ (ラジオ・ミックス)を担当。カヴァデールの良き相棒として、困難な時期 (『Restless Heart』制作など)を支えた。画家としても活動し、アルバムのアートワークも手掛けた。
- スティーヴ・ヴァイ (Steve Vai): (1989-1990) アイバニーズ (Ibanez) の7弦ギター「ユニバース」を使用。その超絶技巧はバンドの音楽性を大きく変えたが、短命に終わった。
- ダグ・アルドリッチ (Doug Aldrich): (2002-2014) 再結成後のバンドの屋台骨。レスポールを低く構える姿と、アグレッシブなプレイでファンに愛された。
- レブ・ビーチ (Reb Beach): (2002-2025) ウィンガー出身。タッピング奏法の名手であり、バンドの「ミュージカル・ディレクター」としてリハーサルを取り仕切るなど、カヴァデールの信頼が厚かった。
- ジョエル・ホークストラ (Joel Hoekstra): (2014-2025) ナイト・レンジャー、トランス・シベリアン・オーケストラ出身。確かなテクニックとステージパフォーマンスで、後期のサウンドを支えた。
ベース
- ニール・マレー (Neil Murray): (1978-1982, 1983-1987) メロディアスかつリズミカルなベースラインで、初期~中期の楽曲に独特のうねり (グルーヴ) を与えた職人。
- ルディ・サーゾ (Rudy Sarzo): (1987-1990, 1994) ステージ上でベースを振り回す派手なアクションで、MTV時代のバンドのイメージを決定づけた。
- マルコ・メンドーサ (Marco Mendoza): (2002-2005, 2026-) フレットレス・ベースも操る技巧派。ラテン・フレーバーを取り入れたプレイが特徴。
- マイケル・デヴィン (Michael Devin): (2010-2021) 長きにわたり安定したプレイとコーラスでバンドを支えた。
- タニャ・オキャラハン (Tanya O'Callaghan): (2021-2025) アイルランド出身。リッケンバッカー (Rickenbacker) やフェンダー・ジャズベース (Fender Jazz Bass) を使用。バンド初の女性メンバーとして歴史に名を刻んだ。
ドラムス
- イアン・ペイス (Ian Paice): (1979-1982) ロック界屈指のテクニシャン。スウィング感のあるドラミングは初期ホワイトスネイクの魅力の一つ。
- コージー・パウエル (Cozy Powell): (1982-1985) ツー・バス (ダブル・バス・ドラム) のパイオニア。「渡り鳥」として知られるが、ホワイトスネイク在籍時のパワーは凄まじかった。1998年、交通事故により死去。
- トミー・アルドリッジ (Tommy Aldridge): (1987-1990, 2002-2007, 2013-2025) 素手でシンバルやドラムを叩くソロ・パフォーマンスが有名。70歳を超えても衰えぬ体力で、バンドのエンジンであり続けた。
キーボード
- ジョン・ロード (Jon Lord): (1978-1984) ハモンド・オルガンをマーシャル・アンプで歪ませるスタイルを確立。バンドに英国紳士的な威厳を与えた。2012年、膵臓癌により死去。
- ミケーレ・ルッピ (Michele Luppi): (2015-2025) イタリア (Italy) 出身。卓越したハイ・トーンのコーラス・ワークで、ライブにおけるカヴァデールのボーカルを強力にサポートした。
- ディノ・イェルシッチ (Dino Jelusick): (2021-2025) クロアチア (Croatia) 出身。次世代のロックスターとして、キーボードだけでなくボーカル面でもバンドに貢献した。
Conclusion
ホワイトスネイクの物語は、単なるロックバンドの成功譚ではない。それは、変化する時代の中で、自らのアイデンティティ (ブルース・ルーツ)を守りながらも、商業的な要請に応えて姿を変え続けた、一人の男(デイヴィッド・カヴァデール) の闘いの記録である。2025年のカヴァデールの引退により、ホワイトスネイクという巨大な蛇は眠りにつくが、WHITESNAKEが残した楽曲 - 哀愁漂うブルース・ロックから、拳を突き上げるスタジアム・アンセムまで - は、ロック・ミュージックの聖典として永遠に聴き継がれるであろう。
Trivia
2013年のワールド・ツアーは、日本から始まった。BARKSのインタビューでデヴィッド・カヴァーデイルは、これまで何度もツアーをしてきたが日本が初日というのはこれが初めてだと述べている。2013年が巳年——「イヤー・オブ・ザ・スネイク」——だったこともあり、特別なツアーになる予感がするというのが彼の言葉だった。日本でプレイするのはいつも楽しみで、ステージの前には何十年も前から知っている顔があり、言葉を交わしたことがなくても音楽を通じた長年の友人なのだ、とも語っている。
『The Purple Album』は、日本で世界に先駆けて発売された。2015年4月29日の日本先行発売で、BARKSが伝えたところによれば、初日のオリコン・デイリー・チャートで総合2位を記録している。ディープ・パープルの曲を現在のWHITESNAKEで録り直したこの作品が、まず日本の店頭に並んだことになる。
WHITESNAKEという名前は、バンドより先に存在していた。もとはデヴィッド・カヴァーデイルが1977年に発表したソロ・アルバムの題『White Snake』で、バンドの公式サイトは2017年5月にこの作品の40周年を取り上げ、ここが「White Snake」の始まりであり、のちに一語に縮めてWhitesnakeになったのだと明記している。
デヴィッド・カヴァーデイルがディープ・パープルに加入したのは1973年、当時21歳の、ほぼ無名のシンガー・ソングライターだった。彼はこのバンドで3枚のアルバムを残し、数年後に自身のバンドWHITESNAKEへと歩を進める。そして加入から50年にあたる2023年、その加入を決定づけた1972年のデモそのものが、『The Purple Album』のスペシャル・ゴールド・エディションに未発表音源として収録された。この2CD+ブルーレイのセットは2023年10月13日に発売されている。
1987年のアルバムの制作中、デヴィッド・カヴァーデイルは声を失いかけている。録音はカナダで始まったが、そのあと副鼻腔の手術に至る不調に見舞われた。当時の声を彼は、鼻をつまんで喋っているようだったと表現している。それまで自分の「才能」を当たり前のものとして受け取ってきたと彼は言う。始まりは順調で、声は絶好調、どのレンジも出て、バンドを鼓舞するために吹き込んだガイド・ヴォーカルも文句なしだった。曲は自分の喉に合わせて作られていた。それが崩れたのである。この経験を彼は、ピアノを弾くのが好きな人がひどい関節炎になって弾けなくなるようなものだと喩え、自分が経験したなかで最悪の、最も混乱した感情的な時期のひとつだったと語っている。
2025年11月13日、デヴィッド・カヴァーデイルは引退を表明した。バンドの公式サイトに掲載された本人の言葉によれば、ディープ・パープル、WHITESNAKE、ジミー・ペイジらとの50年以上にわたる道のりを経て、ロックンロールのプラットフォーム・シューズとぴったりしたジーンズを吊るす時が来た、というのがその趣旨である。この数年でそれが自分にはっきり分かってきた、と彼は述べている。助けてくれたすべての人——ミュージシャン、クルー、ファン、家族——への感謝を伝えたうえで、これからは引退を楽しむ時間だと理解してほしい、と締めくくった。
「Fool For Your Lovin'」は、もともとB.B.キングのために書かれた曲だった。Songfactsが伝えるデヴィッド・カヴァーデイルの説明によれば、そのためにオリジナル版はブルース寄りの手触りを持っている。曲はカヴァーデイル、バーニー・マースデン、ミッキー・ムーディーの共作で、彼の最初の結婚の破綻が下敷きになっている。1980年の『Ready an' Willing』に収められて英国13位、全米53位を記録し、1989年の『Slip Of The Tongue』で再録音されると英国43位、全米37位で再びヒットした。1989年版にはディープ・パープルで一時期同僚だったグレン・ヒューズがヴォーカルで参加している。
「Here I Go Again」の成り立ちについては、いくつもの説明が流通してきた。共作者のバーニー・マースデンはLouderに対し、デヴィッドが離婚のあとに書いたとか、ベネズエラで船の上で書かれたといった話を読んだことがあり、いつも腑に落ちなかったと述べている。彼自身の説明はこうだ——曲はバッキンガムにあった彼の旧宅で2トラックのデモとして始まり、その時点で冒頭の一行とコーラス、そしてリフがあった。前作『Come An' Get It』のセッション(1981年)の終わり頃にはすでに存在していて、シェパートンのRock Cityで録ろうとしたこともある。曲が本当に形になったのはクリアウェル城でのセッションでのことだった。マースデンによれば、その骨組みを聴いたカヴァーデイルはカセットを持って姿を消し、歌詞は1時間ほどで仕上がったという。なおこの曲の作者クレジットは一貫してマースデンとカヴァーデイルの連名だが、カヴァーデイル自身は自分の関与について複数の異なる説明をしてきた、とLouderは書いている。
News
WHITESNAKE、『Slide It In』『Whitesnake』『Slip of the Tongue』を米国オリジナル1LP仕様で本日再発
10年以上ぶりに広く入手可能に。黒盤のほか限定カラー盤もあり(Craft Recordings)。
【国内】VANDENBERG、〈FULL METAL JAPAN 2026〉DAY1に出演決定 RAGEの代役
主催のFULL METAL JAPAN実行委員会が9月17日に発表した。9月1日に出演をキャンセルしたRAGEに代わり、10月24日のぴあアリーナMM公演に出演する。WHITESNAKEのヒット曲とVANDENBERGの代表曲を演奏するとしている。
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9月13日に公開した動画メッセージで「完全に治った。臓器や体のどこにもダメージはない」と述べた。7月に取りやめた〈My Whitesnake Years〉北米ツアーは、マネージメントと米エージェンシーParamour Groupが来年へ振り替え中で、西海岸ツアーと繋がる形で5月頃になる見込みだという。今年は10月にマルタのフェス、その後に日本のフェス、12月に南米での短いツアーを予定していると語っている。
JOHN SYKES、遺作EP『One Way』が11月6日発売
Golden Robot Recordsが発表。生前最後期の録音を収めたEPで、先に公開された「My Guitar」「Believe In Yourself」に続くリリースとなる。各配信サービスでプリセーヴを受付中。
DINO JELUSICK、WHITESNAKE EXPERIENCE 計画は David Coverdale の弁護士からのメールで終わったと明かす
Rolling Stone Brasilのインタビューで、Joel Hoekstra、Marco Mendoza、Tommy Aldridgeらによる単発公演として告知された同企画が実現しなかった経緯を語った。
FLEETWOOD MACのメタル・トリビュート盤『Steel Rumours』が11月20日に発売 DORO参加の「Go Your Own Way」を先行配信
DOROの歌う同曲にはJoel Hoekstra(WHITESNAKE/NIGHT RANGER)とGreyson Nekrutman(SEPULTURA)が参加。アルバムにはTim "Ripper" Owens、Ronnie Romero、Vinnie Appiceらも名を連ねる。
MVを再生WHITESNAKE、『Slide It In』『Whitesnake』『Slip of the Tongue』を9月18日にアナログ再発
新たなカタログ担当レーベルCraft Recordingsからの第1弾。3作ともオリジナルの米国盤1LP仕様、オリジナルのアナログ・テープからのカッティングで、通常の黒盤に加えて限定カラー盤も用意される。
ADRIAN VANDENBERG、細菌感染により8月の全米ツアーをキャンセル
8月3日マサチューセッツ州ニューベッドフォード公演から始まる予定だった“My Whitesnake Years”ツアーが中止に。
Albums
BOX
ボックス・セットや複数枚組の記念盤・拡張盤を、アルバムとは別に掲載しています。
2011年の『Forevermore』を新リミックスと新リマスターで組み直した5枚組ボックス。CD4枚で全67曲、Blu-ray1枚付き。
WHITESNAKEの2004年から2015年の6つのライヴ作品をCD8枚にまとめたボックス。2011年のLOUD PARKでの公演とサウンドチェックも収め、全曲2025年リマスター。
デイヴィッド・カヴァデールのソロ3作『White Snake』『Northwinds』『Into the Light』を、2024年リミックスと元のミックスのリマスターで収めたCD6枚組。
2015年『The Purple Album』の拡張盤。本編を最新リミックス&リマスターで収め、パープル・ツアーのライヴ、オルタナティヴ・ミックス、1972年のカヴァーデイルのオーディション音源まで加えた2SHM-CD+Blu-rayの3枚組。
2008年の『Good to Be Bad』の15周年記念スーパー・デラックス・エディションの日本盤。SHM-CD4枚とBlu-rayに、2023年ミックス、別ヴァージョン、未発表デモを収める。
1997年の『Restless Heart』の25周年記念スーパー・デラックス・エディションの日本盤。SHM-CD4枚とDVDに、2021年リミックス、リマスター、制作過程の音源を収める。
WHITESNAKEのSunburst時代、1978年から1982年の作品をまとめたCD8枚組。EP『Snakebite』、スタジオ作5作、ライヴ盤2作を収める。