KORN

KORNの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。

Biography

KORN
歴史的変遷、音楽的革新、ディスコグラフィ

1. ニュー・メタル (Nu-Metal) の始祖としての文化的意義

コーン (KORN、様式化された表記はKORN) は、1993年にアメリカ合衆国カリフォルニア州ベーカーズフィールド (Bakersfield, California) で結成されたロックバンドであり、1990年代後半から2000年代初頭にかけて世界の音楽シーンを席巻した「ニュー・メタル (Nu-Metal)」というジャンルの事実上の創始者として広く認識されている。

KORNの出現は、1990年代初頭のグランジ (Grunge) ムーブメントが終焉を迎える中で、ヘヴィメタル (Heavy Metal) の攻撃性、ヒップホップ (Hip-Hop) のリズムと美学、オルタナティヴ・ロック (Alternative Rock) の陰鬱さ、部署ファンク (Funk) のグルーヴをかつてない比率で融合させたことにある。ダウンチューニングされた7弦ギター (7-string guitars) が生み出す不協和音の壁、スラップ奏法を多用したパーカッシブなベースライン、そしてフロントマンであるジョナサン・デイヴィス (Jonathan Davis) による、児童虐待や疎外感といったトラウマを赤裸々に吐露する歌詞と変幻自在のボーカルスタイルは、当時の閉塞感を抱えた若者世代 ("Lost Kids") に強烈なカタルシスを与えた。

2. 第1章: 結成前夜と胎動 (1989-1993)

2.1 ベーカーズフィールド (Bakersfield) の土壌と L.A.P.D.

コーンの物語は、ロサンゼルス (Los Angeles) から北へ約100マイル、農業と石油産業が中心の保守的な都市ベーカーズフィールド (Bakersfield) で幕を開けた。この都市の閉鎖的な環境は、後のコーンの音楽性が持つ「抑圧への怒り」や「逃避願望」を育む土壌となった。

結成の中心人物となるジェームズ・"マンキー"・シェイファー (James "Munky" Shaffer / ギター)、レジナルド・"フィールディ"・アーヴィツ (Reginald "Fieldy" Arvizu / ベース)、デヴィッド・シルヴェリア (David Silveria / ドラムス) の3人は、元々「L.A.P.D. (Love and Peace Dude)」というファンク・メタル・バンドで活動していた。L.A.P.D.はレッド・ホット・チリ・ペッパーズ (Red Hot Chili Peppers) やフェイス・ノー・モア (Faith No More) の影響を強く受けており、1989年にEP『Love and Peace Dude』、1991年にフルアルバム『Who's Laughing Now』をトリプルX・レコード (Triple X Records) からリリースしている。しかし、ボーカリストのリチャード・モリル (Richard Morrill) の薬物依存による脱退に伴い、バンドは活動停止を余儀なくされた。

残された3人は新たなプロジェクト「クリープ (Creep)」を立ち上げ、新しいシンガーを探していた。一方、ブライアン・"ヘッド"・ウェルチ (Brian "Head" Welch / ギター) は、当時マンキーと同じ高校に通っていた友人であり、L.A.P.D.のツアーにローディーとして同行するなど彼らと親交があった。ヘッドはやがてマンキーと共にギターを弾くようになり、バンドはツインギター体制へと移行していった。

2.2 ジョナサン・デイヴィス (Jonathan Davis) の発見

運命的な転機は1993年に訪れた。マンキーとヘッドは、ベーカーズフィールドのバーで活動していたバンド「セックスアート (Sexart)」のライブを目撃する。そのバンドのボーカリストこそ、当時検死局で死体防腐処理のアシスタントとして働いていたジョナサン・デイヴィス (Jonathan Davis) であった。ジョナサンはデュラン・デュラン (Duran Duran) やデペッシュ・モード (Depeche Mode) といったニュー・ウェーヴ (New Wave) を好むゴス (Goth) 少年であり、メタル的な背景は薄かったが、そのステージでの鬼気迫るパフォーマンスと、感情を爆発させる歌唱スタイルに二人は衝撃を受けた。

彼らはすぐさまジョナサンを勧誘したが、当初ジョナサンは自身のバンドに愛着があり、加入を躊躇していた。しかし、彼は超能力者(サイキック)に相談した際、「そのバンドに入らなければあなたは死ぬだろう」という助言を受け、加入を決意したという逸話が残されている。

2.3 バンド名「KORN」の誕生と視覚的アイデンティティ

バンド名の由来については、メンバー全員でのブレインストーミング中に誰かが「コーン (Corn)」という単語を提案したことに端を発する。当初はこの平凡な単語に対する反応は芳しくなかったが、シェイファー(マンキー)が「C」を「K」に書き換え、さらに「R」を鏡文字(裏返し)の「Я」として表記するアイデアを出したことで、独特の不穏さと視覚的インパクトを持つ「KoЯn」というロゴが誕生した。この「Я」の表記は、トイザらス (Toys "R" Us) のロゴからインスピレーションを得たものであり、子供の無邪気さとそれが歪められた狂気を象徴するバンドのイメージに合致していた。ジョナサン・デイヴィスは自らクレヨンを使ってこのロゴを描き、それが現在まで使用される公式ロゴとなった。

2.4 デモテープ 『Neidermayer's Mind』 とロス・ロビンソン (Ross Robinson)

1993年、バンドはプロデューサーのロス・ロビンソン (Ross Robinson) と出会い、カリフォルニア州ハンティントンビーチ (Huntington Beach) のスタジオで伝説的なデモテープ『ナイダーマイヤーズ・マインド (Neidermayer's Mind)』を制作した。このデモには、「Blind」、「Daddy」、「Pradictable」、「Alive」といった初期の名曲が収録されていた。

特筆すべきは、ロス・ロビンソンのプロデュース手法である。彼は技術的な完璧さよりも、メンバーの精神を極限まで追い詰め、生々しい感情を引き出すことに注力した。「Daddy」のレコーディングにおいて、ジョナサンが過去の虐待の記憶と向き合い、曲の終盤で完全に泣き崩れる様子がそのまま収録されているのはその象徴的な例である。このデモテープは、グランジ以降の新しいヘヴィ・ミュージックを模索していたレコード会社の注目を集め、最終的にイモータル・レコード (Immortal Records) との契約に至った。

3. 第2章: 衝撃のデビューとニュー・メタルの幕開け (1994-1997)

3.1 デビューアルバム 『KORN』 (1994)

1994年10月11日、セルフタイトルのデビューアルバム『KORN』がリリースされた。このアルバムは、ロックの歴史における重要な転換点と見なされている。

  • 音楽的革新: 冒頭のトラック「Blind」のイントロにおける、フィールディのベースによる不穏なリフと、「Are you ready?!」というジョナサンの叫びは、新しい時代の幕開けを告げるファンファーレとなった。重低音を強調したリズム、ヒップホップ的なグルーヴ、不協和音を奏でるツインギター、指示バグパイプ (Bagpipes) の導入 ("Shoots and Ladders") は、既存のメタルの枠組みを完全に破壊した。
  • 歌詞のテーマ: いじめ ("Faget")、薬物依存 ("Helmet in the Bush")、幼児虐待 ("Daddy") といったタブー視されがちなテーマを赤裸々に扱ったことで、社会に居場所を見つけられない若者たちから熱狂的な支持を得た。
  • 商業的成功: 当初はラジオでのエアプレイも少なかったが、バイオハザード (Biohazard) やハウス・オブ・ペイン (House of Pain)、ダンジグ (Danzig)、メガデス (Megadeth) といったバンドとの過酷なツアー活動を通じてファンベースを拡大。口コミで徐々にセールスを伸ばし、ビルボード200チャートにランクイン、最終的に全米で200万枚(ダブル・プラチナム)を売り上げた。

3.2 『Life Is Peachy』 (1996) とアディダス現象

デビュー作の成功を受け、バンドは休む間もなくスタジオに戻り、1996年10月15日に2ndアルバム『ライフ・イズ・ピーチー (Life Is Peachy)』をリリースした。このアルバムはより衝動的で、ファンクやパンクの要素が色濃く反映されている。制作期間が短かったこともあり、前作のような練り込まれた構成よりも、ライブ感や荒々しさが強調された作品となった。

  • チャートアクション: ビルボード200で初登場3位を記録し、バンドの人気がアンダーグラウンドからメインストリームへと移行したことを証明した。
  • A.D.I.D.A.S.: シングル「A.D.I.D.A.S.」(All Day I Dream About Sexの頭文字) は、KORNのユーモアと倒錯性を象徴する楽曲となった。また、メンバー全員がアディダス (Adidas) のトラックスーツ(ジャージ)を着用してステージに立つスタイルは、メタルファンのファッションを一変させ、スポーツウェアとロックの融合という新しいトレンドを生み出した。
  • 評価: シングル「No Place to Hide」により、バンドは初のグラミー賞 (Grammy Award)「ベスト・メタル・パフォーマンス」部門にノミネートされた。

4. 第3章: メインストリームの頂点とファミリー・ヴァリューズ (1998-2001)

4.1 『Follow the Leader』 (1998)

1998年8月18日、3rdアルバム『フォロウ・ザ・リーダー (Follow the Leader)』がリリースされた。このアルバムにより、コーンは世界的なスーパースターの地位を確立した。

  • 制作とゲスト: 制作はノース・ハリウッドのNRGレコーディング・スタジオ (NRG Recording Studios) で行われ、アイス・キューブ (Ice Cube) やリンプ・ビズキット (Limp Bizkit) のフレッド・ダースト (Fred Durst) など、ヒップホップやラップ・ロック界のゲストが多数参加した。これはコーンがメタルバンドの枠を超え、ヒップホップ・カルチャーとも深く結びついていることを示した。
  • マーケティング: アルバムリリースに合わせて、バンドは「KORN TV」というインターネット番組を配信したり、ファンと直接交流するキャンペーンを展開したりするなど、当時としては画期的なプロモーションを行った。
  • 商業的爆発: アルバムはビルボード200で初登場1位を獲得し、全米だけで500万枚(5×プラチナム)以上を売り上げた。シングル「Freak on a Leash」と「Got the Life」のミュージックビデオは、MTVの『トータル・リクエスト・ライブ (Total Request Live - TRL)』で連日1位を獲得し、ポップアイドルと並んで紹介されるほどの社会現象となった。
  • ビデオ: 「Freak on a Leash」のビデオはトッド・マクファーレン (Todd McFarlane) が監督し、アニメーションと実写を融合させた革新的な映像でグラミー賞の「ベスト・ショート・フォーム・ミュージック・ビデオ」を受賞した。

4.2 ファミリー・ヴァリューズ・ツアー (Family Values Tour)

1998年、コーンは自らがヘッドライナーを務めるフェスティバル・ツアー「ファミリー・ヴァリューズ・ツアー (Family Values Tour)」を立ち上げた。このツアーには、リンプ・ビズキット、アイス・キューブ、ラムシュタイン (Rammstein)、オージー (Orgy) などが参加し、ロック、ヒップホップ、インダストリアルをクロスオーバーさせたラインナップは、ニュー・メタル・ムーブメントの頂点を象徴するイベントとなった。

4.3 『Issues』 (1999) とウッドストック '99

1999年、ウッドストック '99 (Woodstock '99) での圧倒的なパフォーマンスを経て、バンドは同年11月16日に4thアルバム『イシュー (Issues)』をリリースした。

  • チャート対決: このアルバムは、同日発売されたドクター・ドレー (Dr. Dre) の『2001』やセリーヌ・ディオン (Celine Dion) のベストアルバムを抑えてビルボード初登場1位を獲得した。これはロックバンドがポップスやヒップホップの巨人をセールスで圧倒した象徴的な瞬間であった。
  • 音楽性: 前作のヒップホップ色はやや後退し、よりダークでインダストリアル、かつメロディアスな側面が強調された。「Falling Away from Me」や「Make Me Bad」などのシングルがヒットした。
  • アポロ・シアター: リリース記念ライブはニューヨークの伝統あるアポロ・シアター (Apollo Theater) で行われ、ロックバンドとしては異例の全編演奏が行われた。

5. 第4章: 進化、葛藤、 Redmond分裂 (2002-2006)

5.1 『Untouchables』 (2002) の野心と苦悩

2002年6月11日、5thアルバム『アンタッチャブルズ (Untouchables)』がリリースされた。

  • 制作背景: 制作費に推定400万ドル(約5億円相当)という巨額が投じられたと言われている。プロデューサーのマイケル・バインホーン (Michael Beinhorn) と共に、音響的な完璧さを追求し、最高級の機材と時間を費やして録音された。ジョナサンのボーカル録音だけでも数ヶ月を要したとされる。
  • 成果と課題: サウンドのクオリティは極めて高く、ヘヴィネスと美しさが同居する「Here to Stay」(グラミー賞受賞) などの名曲を生んだ。しかし、リリースの数ヶ月前にアルバム全曲がインターネット上に流出するという大規模なリーク被害に遭い、セールスに深刻な打撃を与えた。ビルボード最高位は2位となり、前2作の1位記録が途絶えた。

5.2 『Take a Look in the Mirror』 (2003) と原点回帰

前作の過剰な制作プロセスへの反動として、2003年11月21日にリリースされた6thアルバム『テイク・ア・ルック・イン・ザ・ミラー (Take a Look in the Mirror)』は、ジョナサン・デイヴィス自身のプロデュースにより、初期の荒々しさと攻撃性を取り戻すことを意図して制作された。

  • 特徴: 「Right Now」や「Did My Time」(映画『トゥームレイダー2』主題歌)など、シンプルで破壊的なリフが主体となっている。
  • 終わりの始まり: このアルバムは、オリジナル・ギタリストであるブライアン・"ヘッド"・ウェルチが全編に参加した最後のアルバム (2013年の復帰まで) となった。

5.3 ヘッドの脱退 (2005)

2005年2月、バンドに衝撃が走った。結成メンバーであり、サウンドの要であったヘッドがバンドを脱退したのである。彼は長年のメタンフェタミン(覚醒剤)中毒から抜け出すため、キリスト教に回心し、自身の生活を根本から変えることを選んだ。彼は自身の信仰生活と、娘の養育に専念するため、音楽業界の喧騒から距離を置くこととなった。

5.4 『See You on the Other Side』 (2005) と音楽的転換

ヘッドを失った4人体制のコーンは、ヴァージン・レコード (Virgin Records) と巨額の契約を結び、プロデューサー・チームのザ・マトリックス (The Matrix) やアッティカス・ロス (Atticus Ross) を迎えて7thアルバム『シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド (See You on the Other Side)』を2005年12月6日にリリースした。

  • スタイル: これまでのサウンドとは一線を画し、インダストリアル、シンセサイザー、ポップな要素を大胆に取り入れた。「Twisted Transistor」や「Coming Undone」はキャッチーなリズムとメロディを持ち、既存のファンからは賛否両論があったものの、新たなファン層を獲得し、ビルボード3位、プラチナム認定を受けるヒットとなった。

5.5 デヴィッド・シルヴェリアの離脱 (2006)

2006年、オリジナル・ドラマーのデヴィッド・シルヴェリアが「個人的な理由」で無期限の活動休止を発表した。当初は一時的なものとされていたが、後に彼はバンドに戻ることはなく、事実上の脱退となった。後にデヴィッドはバンドに対してロイヤリティを巡る訴訟を起こすなど、両者の関係は悪化した (2025年現在も復帰の兆しはない)。

6. 第5章: 迷走と実験の時代 (2007-2011)

6.1 『Untitled』 (2007)

デヴィッド不在の中、テリー・ボジオ (Terry Bozzio) やバッド・レリジョン (Bad Religion) のブルックス・ワッカーマン (Brooks Wackerman) をサポートドラマーに迎えて制作された8thアルバム『無題 (Untitled)』は、2007年にリリースされた。この作品はアトモスフェリックでダークな実験作であり、コーンのディスコグラフィの中で最も異質な作品の一つとされる。商業的にはビルボード200で2位を記録したものの、セールスの初動は低下傾向にあった。

6.2 レイ・ルジアー (Ray Luzier) の加入と 『KORN III』 (2010)

2007年よりサポートドラマーとして参加していたレイ・ルジアー (Ray Luzier) が、2009年に正式メンバーとして加入した。デヴィッド・リー・ロス (David Lee Roth) バンドやアーミー・オブ・エニワン (Army of Anyone) での実績を持つ彼の加入により、バンドは強固なリズム隊を取り戻した。

2010年、初期のプロデューサーであるロス・ロビンソンを再び迎え、原点回帰を目指した9thアルバム『コーン・スリー: リメンバー・フー・ユー・アー (KORN III: Remember Who You Are)』をリリースした。アナログ録音にこだわり、初期の粗削りなサウンドを再現しようと試みたが、批評家の反応は分かれた。

6.3 ダブステップへの挑戦: 『The Path of Totality』 (2011)

2011年、バンドは驚くべき方向転換を行った。スクリレックス (Skrillex)、ノイジア (Noisia)、エクシジョン (Excision) といった当時のEDM/ダブステップ (Dubstep) シーンを牽引するプロデューサーたちとコラボレーションし、10thアルバム『ザ・パス・オブ・トータリティ (The Path of Totality)』を制作した。

  • 融合: メタルの重厚なリフとダブステップの攻撃的な「ワブルベース (Wobble Bass)」を融合させたこのスタイルは、ジョナサン・デイヴィスが「フューチャー・メタル」と呼ぶほど革新的であった。
  • 反応: シングル「Get Up!」や「Narcissistic Cannibal」はクラブシーンでもヒットし、ビルボード10位にランクインした。保守的なメタルファンからは反発もあったが、バンドが常に進化を恐れない姿勢を示す記念碑的作品となった。

7. 第6章: ヘッドの帰還と再生 (2012-2019)

7.1 『The Paradigm Shift』 (2013)

2012年、フェスティバルでの共演を経て、ブライアン・"ヘッド"・ウェルチが正式にバンドに復帰することが発表された。8年ぶりのオリジナル・ギター・デュオの復活はファンを熱狂させた。

2013年10月8日にリリースされた11thアルバム『ザ・パラダイム・シフト (The Paradigm Shift)』は、ヘッドの復帰により、初期のヘヴィネスと近年のメロディックな要素が見事に融合した作品となった。シングル「Never Never」はポップなアプローチを見せつつも、アルバム全体としてはバンドの復活を強く印象付けた。

7.2 『The Serenity of Suffering』 (2016)

2016年の12thアルバム『ザ・セレニティー・オブ・サファリング (The Serenity of Suffering)』では、プロデューサーにニック・ラスクリネクズ (Nick Raskulinecz) を迎え、よりヘヴィでダークなサウンドへと回帰した。スリップノット (Slipknot) のコリィ・テイラー (Corey Taylor) がゲスト参加した「A Different World」や、強烈なリフを持つ「Rotting in Vain」が収録され、ビルボード4位を記録するなど高い評価を得た。

7.3 『The Nothing』 (2019) と悲劇

2018年、ジョナサン・デイヴィスの妻デヴェン (Deven) が薬物の過剰摂取により死去するという悲劇が襲った。さらにジョナサンの母も亡くなるという喪失の中で制作された13thアルバム『ザ・ナッシング (The Nothing)』は、2019年9月13日にリリースされた。

このアルバムは、ジョナサンの深い悲しみと苦悩が刻み込まれた、極めて感情的でダークな作品となった。オープニングトラック「The End Begins」での嗚咽や、楽曲全体を覆う陰鬱な空気は、初期のコーンが持っていたカタルシスを現代に蘇らせたものとして、批評家・ファン双方から絶賛された。

8. 第7章: 現代のKORNと未来 (2020-2025)

8.1 フィールディの活動休止 (2021)

2021年、長年のベーシストであるフィールディが、「個人的な悪癖 (bad habits)」に対処し回復に専念するため、バンド活動を一時休止することを発表した。ツアーにはスイサイダル・テンデンシーズ (Suicidal Tendencies) のラ・ディアス (Ra Díaz) が代役として参加している。

2024年から2025年にかけてのインタビューで、フィールディは2019年以降バンドメンバーと直接会話をしていないことを明かしており、関係性が断絶状態にあることが示唆されている。彼は現在、別バンド「スティルウェル (Stillwell)」での活動に注力しており、コーンへの復帰時期は未定である ("Never say never" としつつも具体的な計画はない)。

8.2 『Requiem』 (2022)

パンデミックによるロックダウンの最中に制作された14thアルバム『レクイエム (Requiem)』は、2022年2月4日にロマ・ヴィスタ (Loma Vista) からリリースされた。

  • 特徴: 時間的制約がなかったため、アナログテープを使用した録音を行い、これまでになくダイナミックで分離の良いサウンドを実現した。アルバムは32分と短尺だが、「Start the Healing」や「Forgotten」など、メランコリックでありながら希望を感じさせる楽曲が並ぶ。
  • チャート: ビルボード200で14位を記録。

8.3 15枚目のアルバムに向けて (2025)

2024年、ヘッドはバンドが新しい音楽の制作に「情熱的かつ集中的に」取り組んでいることを明かした。彼は次のアルバムについて、「ここ数年で最もヘヴィなコーンの作品になる」と語っており、特定のレコードレーベルの契約下にないため、自由な制作環境にあるとしている。2025年後半から2026年にかけてのリリースが期待されている。

9. ディスコグラフィ (Discography)

以下にコーンの全公式リリース作品を詳細に記載する。チャート順位は主に米ビルボード200 (US Billboard 200) の最高位、認定はRIAA (全米レコード協会) に基づくデータである。

9.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)

発売日 (Release Date) タイトル (Title) US Chart RIAA認定 概要と主な収録曲 (Key Tracks)
1994年10月11日 KORN 72 2× Platinum デビュー作。ニュー・メタルの原点。
シングル: "Blind", "Shoots and Ladders", "Clown", "Need To"
1996年10月15日 Life Is Peachy
(ライフ・イズ・ピーチー)
3 2× Platinum 荒々しくファンキーな2作目。
シングル: "A.D.I.D.A.S.", "No Place to Hide", "Good God"
1998年8月18日 Follow the Leader
(フォロウ・ザ・リーダー)
1 5× Platinum 商業的最大ヒット作。ヒップホップ要素の融合
シングル: "Freak on a Leash", "Got the Life"
1999年11月16日 Issues
(イシュー)
1 3× Platinum インダストリアルでメロディックな作風。
シングル: "Falling Away from Me", "Make Me Bad", "Somebody Someone"
2002年6月11日 Untouchables
(アンタッチャブルズ)
2 Platinum 高音質を追求した重厚な作品。
シングル: "Here to Stay", "Thoughtless", "Alone I Break"
2003年11月21日 Take a Look in the Mirror
(テイク・ア・ルック・イン・ザ・ミラー)
9 Platinum セルフプロデュースによる原点回帰。
シングル: "Did My Time", "Right Now", "Y'All Want a Single"
2005年12月6日 See You on the Other Side
(シー・ユー・オン・ジ・アザー・サイド)
3 Platinum ヘッド脱退後初。ポップ/実験的要素。
シングル: "Twisted Transistor", "Coming Undone", "Politics"
2007年7月31日 Untitled
(無題)
2 Gold デヴィッド不在。テリー・ボジオらが参加。
シングル: "Evolution", "Hold On"
2010年7月13日 KORN III: Remember Who You Are
(コーン・スリー: リメンバー・フー・ユー・アー)
2 - ロス・ロビンソンと共に初期サウンドを模索。
シングル: "Oildale (Leave Me Alone)", "Let the Guilt Go"
2011年12月6日 The Path of Totality
(ザ・パス・オブ・トータリティ)
10 - ダブステップとの融合。
シングル: "Get Up!", "Narcissistic Cannibal", "Way Too Far"
2013年10月8日 The Paradigm Shift
(ザ・パラダイム・シフト)
8 - ヘッド復帰作。
シングル: "Never Never", "Love & Meth", "Spike in My Veins"
2016年10月21日 The Serenity of Suffering
(ザ・セレニティー・オブ・サファリング)
4 - ヘヴィネスへの回帰。
シングル: "Rotting in Vain", "Insane", "Black Is the Soul"
2019年9月13日 The Nothing
(ザ・ナッシング)
8 - 深い喪失感と悲哀を描いた作品。
シングル: "You'll Never Find Me", "Cold", "Can You Hear Me"
2022年2月4日 Requiem
(レクイエム)
14 - アナログ録音による有機的なサウンド。
シングル: "Start the Healing", "Forgotten", "Lost in the Grandeur"

9.2 ライブアルバム・コンピレーション (Live Albums & Compilations)

発売年 タイトル (Title) 種類 備考
2004 Greatest Hits Vol. 1
(グレイテスト・ヒッツ Vol.1)
Best エピック/イモータル時代のベスト盤。ピンク・フロイド (Pink Floyd) の「Another Brick in the Wall」カバー収録。
2006 Live & Rare
(ライブ・アンド・レア)
Live/Comp CBGBでのライブ音源や未発表トラック集。
2006 Chopped, Screwed, Live and Unglued Remix/Live ヒューストンのDJによるリミックスとライブ音源。
2007 MTV Unplugged: KORN
(MTV アンプラグド)
Live アコースティックライブ。ザ・キュアー (The Cure) やエイミー・リー (Amy Lee) と共演。
2011 The Essential KORN
(エッセンシャル・コーン)
Best 2枚組ベストアルバム。

9.3 主なEP (Extended Plays)

発売年 タイトル (Title) 備考
1993 Neidermayer's Mind
(ナイダーマイヤーズ・マインド)
デビュー前の伝説的デモテープ。ロス・ロビンソンプロデュース。
1999 All Mixed Up
(オール・ミックスド・アップ)
アルバム『Issues』のボーナスディスクとして配布された後、単体発売されたリミックスEP。
2023 Requiem Mass 『Requiem』収録曲のライブ音源を収録したEP。

10. 第8章: 音楽的解剖 - サウンドと機材

10.1 7弦ギターの革命

コーンのサウンドの根幹は、アイバニーズ (Ibanez) 製の7弦ギター「Universe」の使用にある。マンキーとヘッドは、スティーヴ・ヴァイ (Steve Vai) 用に開発されたこのギターを、全弦を1音下げ (A-D-G-C-F-A-D) にチューニングすることで、従来の6弦ギターでは不可能な重低音リフを生み出した。KORNはギターソロを「時代遅れ」として排除し、代わりに不協和音やエフェクターを駆使して、DJのスクラッチ音や機械的なノイズをギターで再現するアプローチをとった。

10.2 "Fieldy" のベース・サウンド

フィールディのベースは「クリッキー (Clicky)」と称される独特のサウンドを持つ。彼は5弦ベース (Ibanez K5) を使用し、中音域(ミッドレンジ)を極端にカットし、低音と高音をブーストする設定(ドンシャリ)を行っている。さらに、弦高を下げてフレットに当たる音を強調し、指弾きではなく親指でのスラップと掌底打ちを組み合わせることで、ベースを旋律楽器ではなくパーカッションのように扱っている。

10.3 ジョナサン・デイヴィスのボーカル

ジョナサン・デイヴィスのボーカルは、囁き、メロディアスな歌唱、ラップ、デスボイス、そして感情が極まった際の泣き声や過呼吸音まで多岐にわたる。特に「Twist」や「Freak on a Leash」で見られる、意味のない音節を高速で発するスキャット (Scat singing) は彼のトレードマークである。また、彼はライブでバグパイプ (Bagpipes) を演奏することでも知られ、自身のスコットランド系のルーツを音楽に取り入れている。

11. 第9章: メンバー・プロフィール (Member Profiles)

11.1 現在のメンバー (Current Members)

  • ジョナサン・デイヴィス (Jonathan Davis)
    • 担当: ボーカル (Vocals)、バグパイプ (Bagpipes)
    • 在籍: 1993年 - 現在
    • 背景: 検死局での勤務経験や幼少期の虐待被害などのトラウマを創作の原動力とする。ソロ活動では「Jonathan Davis and the SFA」や、自身の名を冠したソロアルバムもリリース。H.R.ギーガー (H.R. Giger) がデザインした特注のマイクスタンドを使用。
  • ジェームズ・"マンキー"・シェイファー (James "Munky" Shaffer)
    • 担当: ギター (Guitar)
    • 在籍: 1993年 - 現在
    • 背景: 指の怪我のリハビリとしてギターを始めた。ヘッドと共に「Fear and the Nervous System」というサイドプロジェクトでも活動した経験がある。
  • ブライアン・"ヘッド"・ウェルチ (Brian "Head" Welch)
    • 担当: ギター (Guitar)、バックボーカル
    • 在籍: 1993年 - 2005年、2013年 - 現在
    • 背景: 薬物中毒からの回復過程でキリスト教に目覚め脱退。ソロプロジェクト「Love and Death」でも活動。2013年の復帰はバンドに創造的な再生をもたらした。
  • レイ・ルジアー (Ray Luzier)
    • 担当: ドラムス (Drums)
    • 在籍: 2007年 - 現在 (正式加入は2009年)
    • 背景: ペンシルベニア州出身。正確無比なテクニックとパワーを兼ね備え、バンドのライブパフォーマンスを一段階引き上げた。リンチ・モブ (Lynch Mob) や KXM での活動でも知られる。

11.2 休止中・サポートメンバー

  • レジナルド・"フィールディ"・アーヴィツ (Reginald "Fieldy" Arvizu)
    • 担当: ベース (Bass)
    • 在籍: 1993年 - 現在 (2021年より休止中)
    • 現状: バンドとは疎遠な状態にあるが、サイドプロジェクト「スティルウェル (Stillwell)」では活動を継続中。
  • ラ・ディアス (Ra Díaz)
    • 担当: ベース (Bass / Touring)
    • 期間: 2021年 - 現在
    • 背景: チリ出身。スイサイダル・テンデンシーズのメンバー。フィールディの代役としてツアーに参加し、その技術とステージングで評価されている。

11.3 旧メンバー (Former Members)

  • デヴィッド・シルヴェリア (David Silveria)
    • 担当: ドラムス (Drums)
    • 在籍: 1993年 - 2006年
    • 背景: オリジナル・ドラマー。ファンク色の強いグルーヴが初期コーンの要だった。脱退後はバンドとの確執が続き、自身のバンド「BIAS」などで活動したが、コーンへの復帰は絶望的と見られている。

12. Conclusion

コーンは単なるヘヴィメタル・バンドではなく、1990年代の若者の不安と怒りを代弁する文化的アイコンであった。KORNはニュー・メタルというジャンルを発明し、リンキン・パーク (Linkin Park) やスリップノット (Slipknot) といった後続に道を切り開いた。メンバーの脱退、悲劇的な死、薬物問題といった幾多の危機を乗り越え、結成から30年以上経った現在もスタジアム級の動員を誇るKORNの影響力は計り知れない。2025年現在、KORNは新たなアルバムの制作を通じて、その「痛み」と「癒し」の物語を更新し続けている。

News

NICK RASKULINECZ、シングル専門レーベル「Hiss Recordings」を設立

FOO FIGHTERS、DEFTONES、KORN、EVANESCENCEらの作品を手がけたグラミー受賞プロデューサーが、新人を2曲ずつのシングルで紹介するレーベルを始動した。第1弾はナッシュヴィルのデュオDOOM MUTUALの「Static Planet」/「Crowbar」。

出典: Blabbermouth(2026年8月19日)

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VENERA(KORNのMunky)、JESSE DRAXLERの新作に「Asbestos」で参加

VENERAはJames "Munky" Shaffer(KORN)とChris Huntによるユニット。Jesse Draxlerのアルバム『Tongue Of Angels』は8月24日にFederal Prisonerから発売され、Iggor Cavalera(ex-SEPULTURA)、Ian Astbury(THE CULT)らも参加している。

出典: ThePRP(2026年8月17日)

ACCEPT、結成50周年記念作『Teutonic Titans 1976-2026』から新録「Save Us」を公開 — GHOST/ANTHRAX/KORNのメンバーが参加

1980年作『I’m A Rebel』収録曲の新バージョン。Tobias Forge(vo)、Frank Bello(b)、Ray Luzier(dr)が参加し、アルバムは9月4日にNapalm Recordsから発売。

出典: Blabbermouth(2026年8月5日)

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Albums

Requiem CD
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短く凝縮された構成で、KORNが不安と重量感を刻み込むダークな一枚。

The Nothing CD
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不穏なグルーヴと深い喪失感を、極めて重い音像へ封じ込めたKORNの暗い力作。

The Serenity of Suffering CD
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重く沈むリフと痛みを帯びた歌で、KORNのダークな核を強く打ち出した作品。

The Paradigm Shift CD
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低くうねるグルーヴと不穏な旋律で、KORNの重い原点とモダンな音像を結ぶ作品。

The Path of Totality CD
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ダブステップとニューメタルを正面から衝突させた、KORNの大胆な実験作。

Korn III: Remember Who You Are CD
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初期衝動を思わせる荒々しいリフで、KORNが原点回帰を試みた一作。

Untitled CD
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不穏な音響とむき出しの感情で、KORNが陰鬱な実験性へ踏み込んだ第8作。

See You on the Other Side CD
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電子的な質感と重いリフを交差させ、KORNが不穏なモダン・メタルを描いた第七作。

Take a Look in the Mirror CD
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生々しいリフと切実な歌を前面に出し、KORNが初期の攻撃性を呼び戻した第六作。

Untouchables CD
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重低音と不穏なテクスチャーを磨き上げ、KORNが陰鬱で巨大な音像を築いた一作。

Issues CD
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不穏な低音と内省的な歌を重ね、KORNがニューメタルの感情表現を深めた一作。

Follow the Leader CD
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重低音のグルーヴと不穏な感情を前面に出し、KORNがニュー・メタルの存在感を決定づけた一作。

Life Is Peachy CD
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7弦の低音リフ、跳ねるベース、剥き出しの感情でニュー・メタルを押し進めたKORNの2作目。

Korn CD
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ダウンチューン、重いグルーヴ、痛切なヴォーカルで、ニューメタルの原型を刻んだKORNのデビュー作。