ATREYU

1990年代後半、カリフォルニア州 (California) オレンジカウンティ (Orange County)は、パンク・ロック (Punk Rock)、スカ (Ska)、そしてハードコア (Hardcore) が交錯する独特の音楽的土壌を形成していた。

Biography

アトレイユ (ATREYU)
メタルコアの黎明、商業的変遷、現代ロックシーンにおける不屈の軌跡

1. オレンジカウンティの土壌とメタルコアの胎動

1990年代後半、カリフォルニア州 (California) オレンジカウンティ (Orange County)は、パンク・ロック (Punk Rock)、スカ (Ska)、そしてハードコア (Hardcore) が交錯する独特の音楽的土壌を形成していた。この地から出現したアトレイユ (ATREYU)は、ヘヴィメタル (Heavy Metal) の劇的なギターワークとハードコア・パンクの疾走感、そしてエモーショナルなスクリームとキャッチーなメロディを融合させた「メタルコア (Metalcore)」 というジャンルをメインストリームへと押し上げた最重要バンドの一つである。

2. 創世記: RetributionからATREYUへ (1998-2000)

2.1 結成と初期のアイデンティティ

1998年、カリフォルニア州 (California) ヨルバリンダ (Yorba Linda)にて、高校の友人同士であったダン・ジェイコブス (Dan Jacobs) (ギター)、アレックス・ヴァルカッツァス (Alex Varkatzas) (ボーカル) らによってバンドが結成された。彼らは当初、レトリビューション (Retribution) というバンド名を名乗っていた。この時期のサウンドは、粗削りなハードコアパンクに影響を受けたものであり、彼ら自身もまだ独自の音楽的スタイルを確立する過程にあった。

結成当初、バンドにはドラマーが存在しなかったが、1998年に友人のライアン・サラー (Ryan Saller)が、彼の実弟であるブランドン・サラー (Brandon Saller) をバンドに紹介したことで、ラインナップの核が形成された。ブランドン・サラーの加入は、単にリズム隊が埋まったという以上の意味を持っていた。彼がドラマーでありながら卓越した歌唱力を持ち、アレックスのスクリーム (叫び) と対比されるクリーン・ボーカル (歌)を担当する「デュアル・ボーカル・スタイル」の基礎がここで築かれたからである。

2.2 改名と『The Neverending Story』の影響

活動初期において、彼らはカリフォルニア州 (California) ヘメット (Hemet) 出身の別のバンドが既に「Retribution」 という名前を使用していることを知る。法的および活動上の混乱を避けるため、バンドは改名を余儀なくされた。

新しいバンド名の由来となったのは、ドイツの作家ミヒャエル・エンデ (Michael Ende) によるファンタジー小説および映画『はてしない物語 (The Neverending Story)』の登場人物、少年勇者 アトレーユ (ATREYU) であった。この名称変更は、バンドの音楽性が単なる攻撃的なハードコアから、より叙情的で、英雄的なメロディや物語性を含むスタイルへと進化 (Progression) していた時期と重なっており、彼らの新たなアイデンティティを象徴するものとなった。

2.3 初期の試行錯誤とベーシストの変遷

初期のアトレイユ (ATREYU)は、ベーシストのポジションが流動的であった。1998年の結成当初はブライアン・オドネル (Brian O'Donnell) がベースを担当していたが短期間で脱退し、続いて1999年から2001年にかけてはカイル・スタンリー (Kyle Stanley) がその任に就いた。この時期にリリースされたのが、独立系レーベルであるダイ・トライング・レコード (Die Trying Records) からのEP 『Visions』 (1998) である。この作品は現在では入手困難となっているが、ATREYUの初期衝動が記録された貴重な資料である。

3. ヴィクトリー・レコード時代: メタルコアの覇権 (2001-2006)

3.1 契約とEP『Fractures in the Facade of Your Porcelain Beauty』

2001年、バンドはヴィクトリー・レコード (Victory Records) と契約を結ぶ。当時のヴィクトリー・レコードは、サースデイ (Thursday) やテイキング・バック・サンデイ (Taking Back Sunday) などのエモ (Emo) やスクリーモ (Screamo) バンドを次々とブレイクさせており、インディペンデント・シーンにおいて絶大な影響力を持っていた。

契約直前の2001年11月、トリビューナル・レコード (Tribunal Records) からEP 『Fractures in the Facade of Your Porcelain Beauty』 がリリースされた。この作品には「Living Each Day Like You're Already Dead」や「Someone's Standing on My Chest」 といった楽曲の初期バージョンが収録されており、アレックスのボーカルスタイルは後の作品よりも低音のグロウル (唸り声) が強調されていた。このEPはアンダーグラウンド・シーンでの評価を高め、ヴィクトリー・レコードからのデビュー・アルバムへの期待を醸成する役割を果たした。

3.2 『Suicide Notes and Butterfly Kisses』 (2002): ジャンルの定義

2002年6月、デビュー・スタジオ・アルバム 『Suicide Notes and Butterfly Kisses』がリリースされた。このアルバムは、メタルコアというジャンルにおける金字塔の一つと見なされている。

詳細・特徴
  • 音楽性: スウェディッシュ・デス・メタル由来のツインギター・ハーモニーと、ハードコア・パンクのビート、そしてピアノの導入(「Lip Gloss and Black」) によるゴシックな雰囲気の融合。
  • 歌詞: 失恋、絶望、そして再生をテーマにした詩的なリリック。タイトル自体が「遺書と蝶のキス」という、死と美の対比を示唆している。
  • 主要曲: 「Lip Gloss and Black」「Ain't Love Grand」

特に「Lip Gloss and Black」のミュージックビデオは、MTV2の『Headbangers Ball』や『Uranium』といった番組で頻繁に放送され、バンドの知名度を飛躍的に高めた。この時期、ベーシストとしてクリス・トムソン (Chris Thomson) が在籍していたが、アルバムリリース後のツアー生活を経て脱退し、2004年に現在のベーシストであるマーク・マクナイト (Marc McKnight) が加入することになる。

3.3 『The Curse』(2004): 商業的ブレイクスルーと吸血鬼伝説

2004年にリリースされた2ndアルバム 『The Curse』は、アトレイユ (ATREYU) をアンダーグラウンドの英雄からメインストリームのスターへと押し上げた決定的な作品である。このアルバムは全米ビルボード200 (Billboard 200) チャートで32位を記録し、インディペンデント・チャートではトップを争う成功を収めた。後にアメリカレコード協会 (RIAA) からゴールドディスク (50万枚以上のセールス) 認定を受けている。

3.3.1 コンセプトとサウンドの進化

『The Curse』は、吸血鬼 (Vampire) やゴシック・ホラーのイメージを歌詞やアートワークに大胆に取り入れたことで知られる。「Bleeding Mascara」や「The Crimson」といった楽曲では、血、愛、裏切りといったテーマが、キャッチーなサビとブルータルなブレイクダウンと共に歌われた。ブランドン・サラーのクリーン・ボーカルの比重が増し、アレックスのスクリームとの対比 (Good Cop / Bad Cop スタイル)が完成の域に達した作品でもある。

3.3.2 文化的影響

シングル 「Right Side of the Bed」 はラジオ局で広くオンエアされ、人気レースゲーム『バーンアウト3: テイクダウン (Burnout 3: Takedown)』 のサウンドトラックにも収録された。これにより、ロックファン以外の層にもATREYUの楽曲が浸透した。この時期、ATREYUはオズフェスト (Ozzfest)への参加やリンキン・パーク (Linkin Park) のプロジェクトへの関与など、シーンの最前線で活動を展開した。

3.4 『A Death-Grip on Yesterday』 (2006): チャートトップ10入り

2006年3月リリースの3rdアルバム 『A Death-Grip on Yesterday』は、ビルボード200で初登場9位を記録し、バンド史上最高の初週順位をマークした。このアルバムでは、プロデューサーにジョシュ・エイブラハム (Josh Abraham) を迎え、より洗練されたプロダクションが施された。シングル 「Ex's and Oh's」 はメインストリーム・ロック・チャートでも24位にランクインし、バンドが単なる「スクリーモ・バンド」の枠を超え、アリーナ・ロックの領域へと足を踏み入れていることを示した。歌詞の面では、アレックス・ヴァルカッツァスが自身の個人的な葛藤や過去との決別 (アルバムタイトルの「昨日の死守」が示唆するように) をテーマにしている。

4. メジャー・レーベルへの移籍と音楽的変革 (2007-2010)

4.1 『Lead Sails Paper Anchor』(2007): 80年代ロックへの回帰と賛否

2007年、アトレイユ (ATREYU) はヴィクトリー・レコードを離れ、大手メジャーレーベルであるハリウッド・レコード (Hollywood Records) (米国外ではロードランナー・レコード (Roadrunner Records)) と契約を結んだ。この移籍第一弾となる4thアルバム 『Lead Sails Paper Anchor』は、バンドのキャリアにおいて最も論争を呼び、かつ商業的に成功した作品の一つである。

4.1.1 ジョン・フェルドマンとの化学反応

プロデューサーには、ゴールドフィンガー (Goldfinger) のフロントマンであり、ザ・ユーズド(The Used) やストーリー・オブ・ザ・イヤー (Story of the Year) を手掛けたジョン・フェルドマン (John Feldmann) が起用された。フェルドマンの影響下で、バンドはメタルコア特有のブレイクダウンや絶叫を大幅に減らし、代わりにボン・ジョヴィ (Bon Jovi) やデフ・レパード (Def Leppard) を彷彿とさせる80年代アリーナ・ロックの要素を大胆に取り入れた。

4.1.2 商業的成功とマーケティング

この音楽的転換は功を奏し、アルバムはビルボード200で8位を記録したほか、ハードロック・アルバム・チャートおよびオルタナティブ・アルバム・チャートで1位を獲得した。シングル「Becoming the Bull」はスポーツ番組やCMでも使用され、バンドの知名度を一般層にまで広げた。プロモーションの一環として、シングル曲の断片を並べ替えるパズルゲームや、メンバーそれぞれを主人公にしたレトロ風ビデオゲーム (例:「Travis Makes McTreyu Burgers」)がウェブ上で公開されるなど、ユニークなマーケティング戦略も展開された。

4.2 『Congregation of the Damned』(2009): 暗黒への回帰

2009年の5thアルバム 『Congregation of the Damned』では、前作の明るいロックサウンドから一転し、よりダークでヘヴィなサウンドへの揺り戻しが見られた。プロデューサーにはボブ・マーレット (Bob Marlette)を迎え、ミキシングにはリッチ・コスティ (Rich Costey) が参加した。アレックスはこのアルバムについて「自分たちがこれまでにやってきた全ての要素のミックス」と表現しており、メロディックな要素と初期の攻撃性のバランスを模索した作品となった。歌詞は「自己疑念 (Self-doubt)」 や 「自己嫌悪 (Self-loathing)」といった内面的な闇に焦点を当てており、アルバムタイトル (呪われた者たちの集会)が示す通り、社会における集団心理への批判的な視点も含まれている。このアルバムはビルボード200で18位を記録したが、前作ほどの爆発的なセールスには至らなかった。

4.3 コラボレーションEP 『Covers of the Damned』 (2010)

『Congregation of the Damned』のツアー中、バンドはツアーメイトであるブレスザフォール (Blessthefall)、チオドス (Chiodos)、エンドレス・ホールウェイ (Endless Hallway)、アーキテクツ (Architects) と共に、カバーEP『Covers of the Damned』を制作・リリースした。エアロスミス (Aerosmith) の 「Livin' on the Edge」 やデフトーンズ (Deftones)の「My Own Summer (Shove It)」などを、バンドの垣根を超えたメンバー構成でカバーしており、当時のポスト・ハードコア・シーンの連帯感を示す資料となっている。

5. 活動休止と個々の探求 (2011-2014)

2011年、10年以上にわたるノンストップのツアーとレコーディング活動による疲弊を理由に、アトレイユ (ATREYU) は無期限の活動休止 (Hiatus) を発表した。この期間、メンバーはそれぞれ異なる音楽プロジェクトに従事し、クリエイティビティの再充電を図った。

5.1 各メンバーのサイドプロジェクト

  • ブランドン・サラー (Brandon Saller): 自身のバンド ヘル・オア・ハイウォーター (Hell or Highwater)を結成し、リード・ボーカルとして活動。アトレイユ (ATREYU) よりもさらにストレートなアメリカン・ハードロックを志向した。
  • アレックス・ヴァルカッツァス (Alex Varkatzas): ブリーディング・スルー (Bleeding Through) のブランダン・シアパッティ (Brandan Schieppati) と共に、ハードコア/グラインドコア・プロジェクト アイ・アム・ウォー (I Am War)を始動。より過激でヘヴィな音楽性を追求した。
  • トラヴィス・ミゲル (Travis Miguel): フェイク・フィギュアズ (Fake Figures) というポスト・ハードコア・バンドでギターを担当した。
  • ダン・ジェイコブス (Dan Jacobs): 自身のマーチャンダイズ・ブランドの展開などに注力した。

これらの活動は、後のアトレイユ (ATREYU) 再始動時に、各メンバーが持ち寄る音楽的アイデアの幅を広げる結果となった。

6. 再始動とスパインファーム時代 (2014-2019)

6.1 『Long Live』(2015): 原点回帰

2014年、バンドは活動再開を公式にアナウンスし、新たなレーベル スパインファーム・レコード (Spinefarm Records) と契約した。2015年9月にリリースされた6thアルバム『Long Live』は、活動休止前のロック路線とは打って変わり、初期の『Suicide Notes...』 や 『The Curse』を彷彿とさせるアグレッシブなメタルコア・サウンドへの回帰を果たした。タイトル曲「Long Live」のミュージックビデオは、バンドメンバーが棺桶から蘇るような演出がなされ、ATREYUの復活を視覚的にも強調した。このアルバムはビルボード200で26位を記録し、ファンベースが依然として強固であることを証明した。

6.2 『In Our Wake』(2018): 最後の5人体制

2018年リリースの7thアルバム 『In Our Wake』では、再びジョン・フェルドマン (John Feldmann) をプロデューサーに迎えた。この作品は、シンセサイザーの多用やスタジアム・アンセム的な楽曲 (「The Time Is Now」 など)を含み、モダンなロック・プロダクションとアトレイユ (ATREYU) のメロディセンスが融合した意欲作であった。しかし、この時期からバンド内部では音楽的・個人的な方向性の違いが表面化し始めていた。特に、よりヘヴィな音楽性を好むアレックスと、メロディアスで広範なロックを志向する他のメンバーとの間に溝が生まれていたことが、後のインタビュー等で示唆されている。

7. 分裂と新生: アレックスの脱退と新体制 (2020-2022)

7.1 アレックス・ヴァルカッツァスの脱退 (2020)

2020年9月、結成以来のフロントマンであり、バンドの「顔」であったアレックス・ヴァルカッツァス (Alex Varkatzas) の脱退が発表された。当初の声明では「友好的な別れ」とされていたが、アレックス自身の後の発言によれば、実際には解雇に近い形での脱退であったことが示唆されている。彼は「人生を失ったようだった」と語り、脱退後の精神的な苦痛を吐露している。アレックスは脱退後、アトレイユ (ATREYU) の新曲を「フェイク・ヘヴィ (Fake Heavy)」と批判するようなSNS投稿を行うなど、一時的な緊張関係が見られたが、現在は自身の新バンド デッド・イカロス (Dead Icarus) で活動している。

7.2 ブランドン・サラーのフロントマン転向とカイル・ローザの加入

アレックスの脱退を受け、バンドは外部から新しいボーカリストを招くのではなく、ドラムボーカルを担当していたブランドン・サラー (Brandon Saller) がドラムセットを離れ、専任のリード・ボーカルとなる決断を下した。空席となったドラマーのポジションには、かつてヘル・オア・ハイウォーター (Hell or Highwater) でブランドンと活動を共にしたカイル・ローザ (Kyle Rosa) が正式メンバーとして迎えられた。また、ベースのマーク・マクナイト (Marc McKnight) がスクリーム・パートの主軸を担うことになり、バンドは新たなツイン・ボーカル体制へと移行した。

7.3 『Baptize』 (2021): 新生アトレイユの船出

2021年6月、新体制初となる8thアルバム 『Baptize』 がリリースされた。プロデューサーには引き続きジョン・フェルドマン (John Feldmann)を起用。本作には豪華なゲスト陣が参加しており、ブリンク-182 (Blink-182) のトラヴィス・バーカー (Travis Barker) (「Warrior」)、パパ・ローチ (Papa Roach) のジャコビー・シャデックス (Jacoby Shaddix) (「Untouchable」)、トリヴィアム (Trivium) のマシュー・キイチ・ヒーフィー (Matt Heafy) (「Oblivion」) らが名を連ねている。音楽性はメタルコアのルーツを残しつつも、エレクトロニックな要素やポップなメロディを大胆に取り入れたモダン・ロックとなっており、ハードロック・アルバム・チャートでは21位を記録した。

8. コンセプトの探求と過去の再構築(2023-現在)

8.1 EP三部作と『The Beautiful Dark of Life』 (2023)

2023年、バンドは「人生」をテーマにした3枚のEP 『The Hope of a Spark』、『The Moment You Find Your Flame』、『A Torch in the Dark』 を立て続けにリリースし、同年12月にそれらを集約した9thアルバム 『The Beautiful Dark of Life』を発表した。このアルバム・プロジェクトでは、「絶望からの希望の発見」、「自己の確立」、そして「人生の闇を受け入れること」という一連の精神的旅路が描かれている。タイトルトラックや 「Dancing with My Demons」などの新曲も追加され、バンドの成熟したソングライティング能力が示された。

8.2 『The Pronoia Sessions』と「The Curse」20周年(2024-2025)

2024年、バンドは『The Pronoia Sessions』と題された企画アルバムをリリースした。これは「Reimagined (再構築)」をテーマに、過去のヒット曲 (「Right Side of the Bed」 「Ex's and Oh's」など) をアコースティックやアンビエント、あるいは全く異なるジャンルのアレンジで録音し直したものである。また、トム・ペティ (Tom Petty) の「Mary Jane's Last Dance」 やオーディオスレイヴ (Audioslave) の 「Like a Stone」 のカバーも収録されており、ATREYUの音楽的ルーツの深さを示している。

さらに2025年には、名盤『The Curse』のリリース20周年(正確には20+1周年)を記念し、同アルバム全曲を現在のラインナップで再録音した『The Curse (2025)』をリリース。同時に、約2年ぶりとなる完全新曲「Dead」を発表し、過去を祝いつつも未来へ進む姿勢を明確にした。

9. ディスコグラフィ (Discography)

以下に、アトレイユ (ATREYU) の主要作品の詳細データを表形式で示す。

9.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)

発売年 タイトル(原題) レーベル 全米チャート最高位 RIAA認定 備考
2002 Suicide Notes and Butterfly Kisses Victory - - デビュー作。「Lip Gloss and Black」収録。
2004 The Curse Victory 32位 Gold ブレイク作。「Right Side of the Bed」収録。
2006 A Death-Grip on Yesterday Victory 9位 - 初のトップ10入り。「Ex's and Oh's」収録。
2007 Lead Sails Paper Anchor Hollywood 8位 Gold 商業的ピーク。ハードロック路線への転換。
2009 Congregation of the Damned Hollywood 18位 - ダークな世界観への回帰。
2015 Long Live Spinefarm 26位 - 活動再開作。ヘヴィネスの復権。
2018 In Our Wake Spinefarm 72位 - アレックス在籍最後のアルバム。
2021 Baptize Spinefarm - - ブランドンVo体制初のアルバム。
2023 The Beautiful Dark of Life Spinefarm - - EP三部作の集大成。

9.2 主要EPおよびコンピレーション

発売年 タイトル 形式 概要
1998 Visions EP 最初期のデモ音源。
2001 Fractures in the Facade of Your Porcelain Beauty EP ヴィクトリー契約前の重要作。
2007 The Best Of... ATREYU Comp ヴィクトリー時代のベスト盤。DVD付き。
2010

2024
Covers of the Damned

The Pronoia Sessions
EP

Comp
ツアーメイトとのコラボ・カバーEP。
過去曲の再構築 (Reimagined) およびカバー集。
2025 The Curse (2025) Re-rec 『The Curse』全曲再録音盤。

10. 日本との深い絆: ボーナストラックと来日公演

アトレイユ (ATREYU) と日本の音楽市場には、2000年代初頭から続く密接な関係がある。日本の洋楽CD市場では、輸入盤との価格差を埋めるために「日本盤ボーナストラック (Japanese Bonus Tracks)」を収録する慣習があり、アトレイユ (ATREYU) の作品もその例に漏れない。

10.1 日本盤独自のコンテンツ

  • 『The Curse』日本盤: 米国ではBest Buy限定であったボン・ジョヴィ (Bon Jovi) のカバー「You Give Love a Bad Name」や、「Five Vicodin Chased with a Shot of Clarity」などが追加収録されている。
  • 『Lead Sails Paper Anchor』日本盤: タイトル曲 「Lead Sails (And a Paper Anchor)」のアコースティック・バージョンなどが収録された。
  • 『Congregation of the Damned』 日本盤: 「Another Night (Wishing I Wasn't Here)」という未発表曲がボーナストラックとして提供された。
  • 『In Our Wake』 デラックス・エディション: 日本のデジタル配信や輸入盤等で確認できるデラックス版には、「Generation」 「Straight to Hell」 といった楽曲に加え、既存曲のアコースティック版など計7曲ものボーナストラックが追加されている。
  • 『Baptize』の日本流通: 日本のタワーレコード (Tower Records) 等で販売されたCDには、アナログ盤限定とされていたボーナストラックが含まれていることがファンによって報告されている。

10.2 サマーソニックと日本のオーディエンス

アトレイユ (ATREYU)は、日本の主要フェスティバルであるサマーソニック (Summer Sonic) に複数回出演している。特に2006年のサマーソニック出演は、アルバム 『A Death-Grip on Yesterday』が大ヒットしていた時期と重なり、幕張メッセおよび大阪会場の巨大なオーディエンスをモッシュピットの渦に巻き込んだ。ATREYUの音楽スタイル (メロディックなサビと激しいリフの融合)は、日本のメロディック・パンクやヴィジュアル系に親しんだ層にも受け入れやすく、日本独自のファンベースを確立する要因となった。また、バンドメンバーも日本の文化や食事、ファンの熱狂的ながらも礼儀正しい態度に好感を持っており、インタビュー等で度々日本への愛着を語っている。

11. 進化し続けるメタルコアの体現者

アトレイユ (ATREYU)の歴史は、メタルコアというジャンルそのものの成熟と拡散の歴史と重なる。ATREYUは、オレンジカウンティのローカル・バンドからスタートし、インディペンデント・シーンの王者となり、メジャー・レーベルでの実験を経て、メンバーチェンジという最大の危機を乗り越え、現代のロック・シーンに確固たる地位を築いた。

アレックス・ヴァルカッツァス (Alex Varkatzas) とブランドン・サラー (Brandon Saller) という二人のカリスマの対比によって生まれた初期のケミストリーは、アレックスの脱退によって失われたかに見えた。しかし、ブランドンがフロントマンとして覚醒し、マーク・マクナイト (Marc McKnight) がその攻撃性を継承することで、バンドは「アトレイユ (ATREYU)」としてのアイデンティティを保ちながら、より洗練されたロック・バンドへと変貌を遂げた。

2026年現在、ATREYUは過去の名作『The Curse』をリスペクトしつつも、新曲「Dead」や『The Beautiful Dark of Life』を通じて、「生き続けること」 「変化すること」の重要性を体現し続けている。ATREYUの物語 (Story)は、まさに「はてしない物語 (Neverending Story)」のごとく、まだ終わる気配を見せていない。

Trivia

初来日は2004年で、東京・大阪・名古屋を回った。名古屋公演がこのツアーの最終日にあたる。この来日中、彼らはUNEARTHと合同で取材を受けており、最後の夜には何か仕掛けるつもりだと話していた。

出典: 激ロック ATREYU×UNEARTH インタビュー(2004年6月21日)

アレックス・ヴァーカッツァス、ダン・ジェイコブス、ブランドン・サラーの3人は、高校時代に組んでいたパンク・バンドが出発点だった。そこから何年かを費やし、メンバーの出入りを何度も経て、現在の形にたどり着いている。バンド名を掲げた瞬間に完成したのではなく、10代の顔ぶれが残ったまま輪郭が固まっていった格好である。

出典: 激ロック ATREYU インタビュー(2004年4月10日)

2011年、バンドは自ら決めた活動休止に入った。ステージに戻ったのは2014年9月14日、カリフォルニア州サクラメントで開かれたAftershockフェスティバルのメイン・ステージで、休止から4年近くが経っていた。この復帰は『The Curse』のリリースから10年という節目とも重なっている。

出典: BLABBERMOUTH.NET「It's Official: ATREYU Is Back」

2020年9月30日、バンドとヴォーカルのアレックス・ヴァーカッツァスは袂を分かった。彼が在籍した期間は20年に及ぶ。発表は双方の名前で出され、互いへの敬意を保った文面だった。

出典: BLABBERMOUTH.NET「ATREYU Officially Parts Ways With Singer ALEX VARKATZAS」

ヴァーカッツァスの離脱後、3人が持ち場を動いた。ドラムとクリーン・ヴォーカルを担っていたブランドン・サラーがフロントに立ち、ベースのポーター・マクナイトがスクリームを引き継ぎ、空いたドラムにはサラーの別バンドHELL OR HIGHWATERのカイル・ローサが座った。マクナイトはヴァーカッツァスが負傷した際に代わってスクリームを務めた経験があり、その役割がそのまま常設になった形である。この編成が初めて音になったのが2020年10月の「Save Us」だった。

出典: Loudwire「Atreyu Debut New Song 'Save Us' + Reveal Revamped Lineup」

2025年、バンドは『The Curse』を全曲録り直した。理由は3つある。現在のライヴで鳴っている音と音源を一致させること、技術が進んだ今なら当時よりよく作れること、そして原盤を自分たちのものにすることである。オリジナルの権利はVictory Recordsを2019年に買収したConcordが持っており、録り直す以外に手はなかった。この再録版はバンドが自ら出しており、彼らのキャリアで初めて100パーセント自分たちの所有になった録音である。

出典: BLABBERMOUTH.NET「ATREYU's BRANDON SALLER Explains Decision To Re-Record 'The Curse'」

『The End Is Not The End』の曲作りにあたって、バンドは自分たちに一つ規則を課した。制作中は10年以上前の音楽しか聴かない、というものである。おかげでHATEBREED、SOILWORK、IN FLAMESといった初期の影響源や、地元で聴いていたハードコアのバンドに立ち返ることになった。サラーはこの規則の狙いを、現代の流行から距離を取ることだと説明している。

出典: Loudwire「Atreyu's Brandon Saller Reveals the Rule Impacting Their Current Musical Direction」

『The Curse』の日本盤には、BON JOVIのカヴァーがボーナス・トラックとして収められた。バンドはこれをあくまで遊びとして録ったものだと説明しているが、歌詞そのものは思いのほか暗いのだと付け加えている。2004年の来日公演でも、この曲にまつわる仕掛けを用意していた。

出典: 激ロック ATREYU インタビュー(2004年4月10日)

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News

UNDEROATH、ロサンゼルスで『Define The Great Line』20周年記念公演を追加発表

August Burns Red、Atreyuらが出演。

出典: ThePRP(2026年7月26日)

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Albums

The End Is Not The End CD
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メタルコアの激しさとモダン・ロックの開放感を結ぶ、ATREYUの前向きな一枚。

The Beautiful Dark of Life CD
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三部作EPを束ね、新曲を加えて完成した、光と闇のメタルコア絵巻。

Baptize CD
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新たな歌唱体制で、メタルコアの重量感とアリーナ級のフックを広げた転換作。

In Our Wake CD
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メタルコアの緊迫感とロックの大きなフックを、よりストレートに打ち出したATREYUの第7作。

Long Live CD
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重いブレイクダウンと大きな歌メロで、ATREYUの復帰後の勢いを刻むアルバム。

Congregation of the Damned CD
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ダークな空気と大きなフックを重ね、ATREYUがヘヴィネスを深めたメタルコア作品。

Lead Sails Paper Anchor CD
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大きなコーラスとヘヴィなリフを結び、ATREYUがメタルコアの表現をより開かれた方向へ広げた第4作。

A Death-Grip on Yesterday CD
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切迫したリフと歌えるコーラスを研ぎ澄まし、ATREYUがメタルコアの感情表現を強めた第三作。

The Curse CD
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スクリームとクリーン歌唱、大きなコーラスを結び、ATREYUがメタルコアの感情表現を広げた第二作。

Suicide Notes and Butterfly Kisses CD
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荒々しい絶叫と感情的なメロディで、ATREYUが初期メタルコアの切迫感を描いた作品。