ALL THAT REMAINS
1998年の結成以来、All That Remainsは「ニュー・ウェーヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィ・メタル (New Wave of American Heavy Metal / NWOAHM)」と呼ばれる潮流の中で中核的な役割を果たしてきた。
Biography
オール・ザット・リメインズ (All That Remains)
現代メタルコアの興亡と再生
1. ニュー・ウェーヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィ・メタルの旗手として
1998年の結成以来、All That Remainsは「ニュー・ウェーヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィ・メタル (New Wave of American Heavy Metal / NWOAHM)」と呼ばれる潮流の中で中核的な役割を果たしてきた。初期のメロディック・デス・メタル (Melodic Death Metal) の影響が色濃いサウンドから、2000年代中盤のメタルコア (Metalcore) 黄金期における金字塔的成功、そして2010年代以降のハード・ロック (Hard Rock) およびアリーナ・ロック (Arena Rock) への接近と商業的成功、さらには創設メンバーの悲劇的な死とインディペンデント (Independent) への回帰に至るまで、そのキャリアは波乱に満ちている。
2. バンドの歴史 (Biography)
オール・ザット・リメインズ (All That Remains) の歴史は、単なるメンバーチェンジやアルバムリリースの羅列ではない。それは、変化する音楽市場への適応、個人的な悲劇との対峙、そして芸術的アイデンティティの模索の物語である。
2.1 黎明期: 結成と初期の模索 (1998年-2003年)
2.1.1 シャドウズ・フォール (Shadows Fall) からの脱却と結成
物語は1998年、マサチューセッツ州スプリングフィールド (Springfield, Massachusetts) で幕を開ける。バンドの創設者であり、現在に至るまで唯一のオリジナル・メンバーであるヴォーカリスト、フィリップ・ラボンテ (Philip Labonte) は、当時すでにこの地域のメタル・シーンで知られた存在であった。彼は「ニュー・ウェーヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィ・メタル (NWOAHM)」の重要バンドの一つであるシャドウズ・フォール (Shadows Fall) の初代ヴォーカリストを務めており、カルト的な人気を誇るアルバム 『Somber Eyes to the Sky』に参加していた。
しかし、音楽的な方向性の相違によりラボンテはシャドウズ・フォール (Shadows Fall) を解雇される(あるいは脱退を求められる)こととなる。この挫折が、新たなバンド結成の原動力となった。彼は、自身のヴィジョン――よりメロディックでありながら、デスメタルの攻撃性を維持したサウンド――を実現するためにメンバーを集めた。そうして集まったのが、ギタリストのオリー・ハーバート (Oli Herbert) とクリス・バートレット (Chris Bartlett)、ベーシストのダン・イーガン (Dan Egan)、そしてドラマーのマイケル・バートレット (Michael Bartlett) であった。
特にオリー・ハーバート (Oli Herbert) の加入は、バンドの運命を決定づける重要な要素であった。彼は後にバンドの主要ソングライターとなり、ラボンテの攻撃的なヴォーカルに対して、クラシック音楽や理論に裏打ちされた叙情的なギター・メロディを提供する役割を担うことになる。
2.1.2 デビュー・アルバム 『Behind Silence and Solitude』 の衝撃
2002年3月26日、バンドはプロスセティック・レコード (Prosthetic Records) よりデビュー・アルバム『Behind Silence and Solitude』をリリースした。この時期の音楽性は、現在知られるAll That Remainsのスタイルとは大きく異なっている。
- 純粋なメロディック・デス・メタル: このアルバムには、後のAll That Remainsのトレードマークとなる「クリーン・ヴォーカル (歌唱パート)」が一切含まれていない。ラボンテは全編を通してグロウルやスクリームを使用しており、楽曲構造もヴァース・コーラス形式よりもリフの展開を重視したデス・メタル的なアプローチが取られている。
- ツイン・リードの美学: オリー・ハーバート (Oli Herbert) とクリス・バートレット (Chris Bartlett) によるツイン・ギター・ハーモニーは、アイアン・メイデン (Iron Maiden) や初期イン・フレイムス (In Flames) の影響を感じさせるものであり、マサチューセッツ州のアンダーグラウンド・シーンで即座に注目を集めた。
- ラインナップの特異性: 本作は、オリジナル・ギタリストのクリス・バートレット (Chris Bartlett) とベーシストのダン・イーガン (Dan Egan) が参加した唯一のスタジオ・アルバムである。彼らの脱退後、バンドはよりモダンなメタルコア・サウンドへと舵を切ることになる。
2.2 転換期: サウンドの確立と進化 (2004年-2005年)
2.2.1 『This Darkened Heart』 とアダム・ドゥトキエヴィッチ (Adam Dutkiewicz) との出会い
2004年3月23日、セカンド・アルバム『This Darkened Heart』がリリースされた。この作品はバンドにとって、いくつかの重要な転換点となった。
第一に、プロデューサーとしてキルスウィッチ・エンゲイジ (Killswitch Engage) のギタリスト、アダム・ドゥトキエヴィッチ (Adam Dutkiewicz) を迎えたことである。アダム D (Adam D) は、当時のメタルコア・サウンドの立役者であり、彼のプロダクションにより、バンドのサウンドはよりタイトで洗練されたものへと進化した。ドラムの音作りはよりモダンになり、ギターの分離感も向上した。
第二に、メンバーの大幅な入れ替えである。ギタリストにはマイク・マーティン (Mike Martin) が、ベーシストにはマット・デイス (Matt Deis) (CKYへの加入で知られる) が加入した。マイク・マーティン (Mike Martin) はオリー・ハーバート (Oli Herbert) の教え子という関係にあり、二人のギター・コンビネーションは非常に強固なものとなった。また、マット・デイス (Matt Deis) はベースだけでなくピアノも担当し、楽曲に新たな深みを与えた。
2.2.2 メタルコア・スタイルの萌芽
『This Darkened Heart』において、バンドは後の成功の礎となるスタイルを確立し始めた。
- クリーン・ヴォーカルの導入: デビュー作とは異なり、ラボンテはサビ (コーラス) 部分でメロディアスなクリーン・ヴォーカルを導入し始めた。ただし、後の作品ほどポップなアプローチではなく、あくまで楽曲の悲壮感を強調するための要素として機能していた。
- ミュージック・ビデオの制作: 「This Darkened Heart」、「Tattered on My Sleeve」、「The Deepest Gray」の3曲でミュージック・ビデオが制作され、MTV2の『Headbangers Ball』などで放映されたことで、全米規模での知名度獲得に成功した。
2.3 黄金期: メタルコアの覇者へ (2006年-2009年)
この時期、オール・ザット・リメインズ (All That Remains) はジャンルの枠を超え、商業的にも批評的にも絶頂期を迎える。
2.3.1 傑作『The Fall of Ideals』(2006年)
2006年7月11日、サード・アルバム『The Fall of Ideals』がリリースされた。このアルバムは、メタルコア (Metalcore) というジャンルにおける「聖典」の一つとして広く認知されている。
- 完璧なバランス: アダム・ドゥトキエヴィッチ (Adam Dutkiewicz) のプロデュースの下、バンドは攻撃的なリフ、ブレイクダウン、そしてキャッチーでアンセム的なサビの完璧な融合を実現した。「This Calling」の冒頭におけるラボンテの強烈なスクリームから、サビでの開放感あふれる歌唱への転換は、多くのフォロワーを生んだ。
- メディア・ミックスの成功: 収録曲「Six」が音楽リズムゲーム『ギターヒーローII (Guitar Hero II)』に収録されたことは、バンドのキャリアにおいて決定的な瞬間であった。これにより、メタル・ファン以外のゲーマー層や若年層にバンド名が浸透し、セールスを大きく押し上げた。
- 鉄壁のラインナップ: この時期、ベーシストにはジーン・サガン (Jeanne Sagan) が加入し、彼女のステージ・プレゼンスとバック・ヴォーカルはバンドの新たな魅力となった。また、ドラムに関しては、『The Fall of Ideals』のレコーディングにはシャノン・ルーカス (Shannon Lucas) (後にザ・ブラック・ダリア・マーダー (The Black Dahlia Murder) へ加入) が参加したが、ツアー及びその後の活動にはジェイソン・コスタ (Jason Costa) が加入し、長きにわたる黄金のラインナップ (ラボンテ、ハーバート、マーティン、サガン、コスタ) が完成した。
2.3.2 『Overcome』とメインストリームへの進出 (2008年)
2008年9月、4枚目のアルバム『Overcome』をリリース。このアルバムでバンドは明確にメインストリーム・ロック市場への進出を図った。
- 大ヒットシングル「Two Weeks」: この楽曲は、従来のメタルコアの枠組みを超えたラジオ・ヒットとなった。ビルボードのメインストリーム・ロック・チャートで9位、モダン・ロック・チャートで38位を記録し、RIAA (アメリカレコード協会) からプラチナ認定 (100万ユニット以上のセールス) を受ける快挙を成し遂げた。
- 賛否両論: 一方で、プロダクションの洗練化や楽曲のシンプル化に対し、初期からのファンの一部からは「商業主義への迎合 (セルアウト)」との批判も上がった。しかし、バンドは「自分たちが書きたい曲を書く」というスタンスを崩さず、結果として新たなファン層の開拓に成功した。
2.4 安定と変化: ラジオ・ロックの王者として (2010年-2017年)
2010年代、バンドは「ヘヴィ・メタル」と「ラジオ・ロック」のハイブリッドなスタイルをさらに推し進め、安定した人気を獲得し続けた。
2.4.1 チャート・サクセス: 『For We Are Many』と『A War You Cannot Win』
- 『For We Are Many』(2010年): ビルボード200チャートで初登場10位を記録。これはアルバム・チャートにおけるバンドのキャリアハイの一つである。「Hold On」などのシングル・ヒットを生み出しつつ、メタルコア的なアグレッシブさも維持したバランスの取れた作品と評価された。
- 『A War You Cannot Win』(2012年): バンドはさらにメロディアスな方向性を追求した。「Stand Up」はロック・ラジオ・チャートで1位を獲得。「What If I Was Nothing」のようなパワー・バラードも収録され、ゴールド・ディスク認定を受けるヒットとなったが、デスメタル要素はさらに後退した。
2.4.2 ジーン・サガンの脱退と『The Order of Things』
2015年のアルバム『The Order of Things』リリース後の9月、約10年間にわたりバンドのアイコン的一人であったベーシストのジーン・サガン (Jeanne Sagan) が脱退を発表した。彼女の脱退は友好的なものであり、個人的な理由によるものとされたが、ファンにとっては一つの時代の終わりを感じさせる出来事であった。後任には、元ベリー・ユア・デッド (Bury Your Dead) のアーロン・パトリック (Aaron Patrick) が加入した。
2.4.3 実験作『Madness』(2017年)
2017年の『Madness』では、プロデューサーにハワード・ベンソン (Howard Benson) を迎え、これまでにない実験的なアプローチが見られた。タイトル曲「Madness」や「Safe House」ではエレクトロニックな要素やシンセサイザーが導入されたほか、カントリー界のスーパースター、ガース・ブルックス (Garth Brooks) の名曲「The Thunder Rolls」をヘヴィ・カバーするなど、ジャンルの壁を越える試みが行われた。
2.5 悲劇: オリー・ハーバートの死と『Victim of the New Disease』(2018年)
2018年は、バンドにとって最も過酷な年となった。
2.5.1 原点回帰の『Victim of the New Disease』
2018年後半、バンドは9枚目のアルバム『Victim of the New Disease』のリリースを控えていた。この作品は、前作『Madness』のソフトな路線から一転し、初期の『The Fall of Ideals』や『This Darkened Heart』を彷彿とさせる、バンド史上最もヘヴィでアグレッシブな作品の一つとして制作されていた。「Fuck Love」や「Wasteland」といった楽曲は、バンドが依然として強烈なメタルの牙を持っていることを証明するものであった。
2.5.2 オリー・ハーバートの急逝
しかし、アルバム・リリース直前の2018年10月17日、悲劇が襲う。創設メンバーであり、ラボンテと共にバンドの魂であったギタリスト、オリー・ハーバート (Oli Herbert) が44歳の若さで死去したというニュースが世界を駆け巡った。
- 発見状況: 彼はコネチカット州スタッフォード・スプリングス (Stafford Springs, Connecticut) の自宅敷地内にある池 (Hydeville Pond) のほとりで遺体となって発見された。
- 死因と捜査: 当初は事故死と見られていたが、コネチカット州検視局による毒性検査の結果、遺体からは処方されていない抗うつ薬や睡眠導入剤 (オランザピンやゾルピデム等) が検出され、死因は「溺死」と断定された。警察は死の状況を「不審 (Suspicious)」とし、殺人事件の可能性も含めて捜査を開始した。
- 疑惑と遺言書: 死のわずか1週間前にオリーの遺言書が書き換えられ、妻のエリザベス・ハーバート (Elizabeth Herbert) が唯一の相続人となっていたこと、生命保険の受取人に関する問題などが報じられ、様々な憶測を呼んだ。2025年現在においても、この事件の捜査は継続中 (未解決) とされており、多くの謎が残されたままである。
バンドは深い悲しみの中、オリーの遺作となったアルバムのリリースとツアーを敢行することを決意した。ラボンテは「オリーならばバンドを止めることを望まないだろう」と語り、前進することを選んだ。
2.6 新たなる章: ジェイソン・リチャードソンの加入と脱退 (2019年-2025年)
2.6.1 天才ギタリスト、ジェイソン・リチャードソンの加入
オリー・ハーバート (Oli Herbert) というあまりに大きな穴を埋めるため、バンドは現代メタル・シーンにおける最高峰のテクニカル・ギタリスト、ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) (元ボーン・オブ・オシリス (Born of Osiris)、チェルシー・グリン (Chelsea Grin)) をサポート・メンバーとして迎え、2019年2月に正式メンバーとして迎え入れた。
リチャードソンの加入は、バンドに新たな風を吹き込んだ。彼の超絶技巧はオリーの複雑なソロを再現するだけでなく、バンドの演奏能力をさらに引き上げた。しかし、加入直後に世界的なパンデミックが発生し、バンドの活動は停滞を余儀なくされた。
2.6.2 インディペンデントへの回帰と『Antifragile』
長い沈黙とレーベル移籍の模索期間を経て、バンドは大きな決断を下した。長年所属したレーザー・アンド・タイ (Razor & Tie) を離れ、完全なインディペンデント (自主管理) 体制で活動することを発表したのである。
2024年から連続的にシングル「Divine」、「Let You Go」、「No Tomorrow」をリリースし、2025年1月31日には待望の10枚目のスタジオ・アルバム『Antifragile』をリリースした。
- ラインナップの再編: このアルバム制作過程で、ベーシストのアーロン・パトリック (Aaron Patrick) が脱退し、かつてのメンバーであるマット・デイス (Matt Deis) が再加入した。また、長年のドラマーであるジェイソン・コスタ (Jason Costa) も2023年に「個人的な理由」で脱退し、後任としてアンソニー・バローネ (Anthony Barone) (元シャドウ・オブ・インテント (Shadow of Intent)) が加入した。
- アルバムの評価: 『Antifragile』は、オリー・ハーバート (Oli Herbert) の遺産を継承しつつ、ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) のテクニカルな要素とマット・デイス (Matt Deis) のグルーヴが融合した作品として、批評家やファンから概ね好意的に受け入れられた。
2.6.3 ジェイソン・リチャードソンの脱退
しかし、『Antifragile』リリースから半年後の2025年7月、ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) はバンドからの脱退を発表した。脱退の理由は「自身のソロ・プロジェクトへの専念」とされており、バンド側も友好的な別れであることを強調している。これにより、彼は『Antifragile』に参加した唯一のスタジオ・アルバムを残して去ることとなった。
2.7 現在と未来 (2025年-2026年)
2026年現在、オール・ザット・リメインズ (All That Remains) は新たな岐路に立っている。
- 2026年ツアー: 2026年4月から5月にかけて、アメリカ全土を回るヘッドライナー・ツアーが発表されている。サポート・アクトにはボーン・オブ・オシリス (Born of Osiris) とデッド・アイズ (Dead Eyes) が名を連ねている。皮肉にも、サポートのボーン・オブ・オシリス (Born of Osiris) は、かつてジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) が在籍し、解雇されたバンドであるため、このツアーの組み合わせはファンの間で大きな話題となっている。
- 新ギタリストの不在: 2026年初頭の時点で、ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) の後任となるリード・ギタリストは正式に発表されていない。しかし、SNS上の動画やファンの推測では、ケン・スージー (Ken Susi) (元アンアース (Unearth)、元アズ・アイ・レイ・ダイイング (As I Lay Dying)) が最有力の候補として挙げられている。
バンドは数々の困難を乗り越え、「アンチフラジャイル (Antifragile: 衝撃を受けることでより強くなる性質)」というアルバム・タイトルの通り、存続し続けている。
3. メンバー構成の詳細分析 (Members)
バンドの歴史は、そのメンバーの個性に強く依存している。ここでは、主要メンバーの背景と役割について詳述する。
3.1 現行メンバー (Current Members/2026年時点)
| 名前 (日/英) | 担当 | 活動期間 | 詳細プロフィール |
|---|---|---|---|
| フィリップ・ラボンテ (Philip Labonte) |
Lead Vocals | 1998-現在 |
バンドの顔であり、唯一のオリジナル・メンバー。 かつてShadows Fallの初代ヴォーカリストを務めた。2010年にはKillswitch Engageのハワード・ジョーンズ (Howard Jones) の代役としてツアーに参加し、Five Finger Death Punchのアイヴァン・ムーディ (Ivan Moody) の代役も務めるなど、業界内での信頼は厚い。政治的にはリバタリアン (Libertarian) を公言しており、銃規制反対や言論の自由に関する発言で度々物議を醸すが、その率直な姿勢がバンドの歌詞世界にも反映されている。 |
| マイク・マーティン (Mike Martin) |
Rhythm Guitar | 2002-現在 |
バンドの屋台骨。 2002年の加入以来、オリー・ハーバート (Oli Herbert) と共に鉄壁のギター・チームを形成した。派手なソロは弾かないが、タイトなリズム・ギターとリフ・ワークでバンドのヘヴィネスを支える。オリーの元生徒であり、師弟関係にあった。 |
| マット・デイス (Matt Deis) |
Bass, Backing Vocals | 2003-2005 2022-現在 |
出戻りの実力派ベーシスト。 初期の名盤『This Darkened Heart』に参加した後、CKYに加入するために脱退。その後、2022年にアーロン・パトリック (Aaron Patrick) の後任として約17年ぶりに復帰した。Dingwall社のベースを使用し、ピアノも演奏できるマルチ・プレイヤー。日本のBABYMETALのバックバンド「神バンド (Kami Band)」のベーシストとしても活動しており、国際的な知名度を持つ。 |
| アンソニー・バローネ (Anthony Barone) |
Drums | 2024-現在 |
新時代のドラム・マシーン。 ジェイソン・コスタ (Jason Costa) の後任として加入。Beneath the MassacreやShadow of Intentといったテクニカル・デス・メタル・バンドでの活動歴があり、その超人的なスピードと正確性はバンドに新たな推進力を与えている。 |
3.2 過去の主要メンバー (Notable Former Members)
-
オリー・ハーバート (Oli Herbert) - Lead Guitar (1998-2018)
創設メンバー。バンドの楽曲の大部分を作曲した音楽的支柱。クラシック音楽の素養があり、ネオ・クラシカルな速弾きと叙情的なメロディを融合させたスタイルは、オール・ザット・リメインズ (All That Remains) のサウンドそのものであった。彼の死はバンドにとって計り知れない損失であった。 -
ジェイソン・コスタ (Jason Costa) - Drums (2007-2023)
黄金期を支えたドラマー。伝統的なグリップ (レギュラー・グリップ) でメタルを演奏する数少ないドラマーの一人として知られ、その独特のグルーヴとブラスト・ビートはバンドのサウンドに不可欠であった。「深く個人的な理由」により脱退。 -
ジーン・サガン (Jeanne Sagan) - Bass, Backing Vocals (2006-2015)
『The Fall of Ideals』から『The Order of Things』まで在籍。男性メンバーに混じってアグレッシブに演奏する姿と、ハーモニーを支えるコーラス・ワークでファンから絶大な人気を誇った。脱退後は音楽業界から距離を置いている。 -
ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) - Lead Guitar (2019-2025)
オリー・ハーバート (Oli Herbert) の後任という重責を担った若き天才。アルバム『Antifragile』の制作に大きく貢献し、バンドのモダン化に寄与した。2025年に友好的に脱退。 -
アーロン・パトリック (Aaron Patrick) - Bass (2015-2021)
ジーン・サガン (Jeanne Sagan) の後任として加入。Bury Your Deadでの活動経験を生かし、安定したプレイでバンドを支えた。
4. ディスコグラフィ (Discography)
オール・ザット・リメインズ (All That Remains) はこれまでに10枚のスタジオ・アルバムをリリースしている。各アルバムはバンドの進化の各段階を象徴している。
4.1 Behind Silence and Solitude (2002年)
- リリース: 2002年3月26日
- レーベル: Prosthetic Records
概要: バンドの原点。現在のメタルコア・スタイルとは異なり、北欧 (特にヨーテボリ・スタイル) のメロディック・デス・メタルに強く影響を受けた作品。クリーン・ヴォーカルは一切なく、ラボンテのデス・ヴォイスが全編を支配している。
重要な楽曲:
- "Behind Silence and Solitude": タイトル・トラック。ツイン・ギターのハーモニーが美しく、初期の方向性を決定づけた曲。
- "Clarity": 複雑なリフ構成が特徴。
4.2 This Darkened Heart (2004年)
- リリース: 2004年3月23日
- レーベル: Prosthetic Records
- プロデューサー: Adam Dutkiewicz (Killswitch Engage)
概要: アダム D (Adam D) との初タッグ作品。サウンド・プロダクションが飛躍的に向上し、メタルコアとしてのアイデンティティが確立され始めた。クリーン・ヴォーカルの部分的導入が見られる。
重要な楽曲:
- "This Darkened Heart": 悲哀に満ちたメロディと攻撃的なリフが同居する。ミュージック・ビデオが制作された。
- "The Deepest Gray": ライブでの定番曲の一つ。サビのフックが強力。
- "Tattered on My Sleeve": エモーショナルな側面が強調された楽曲。
4.3 The Fall of Ideals (2006年)
- リリース: 2006年7月11日
- レーベル: Prosthetic Records
- プロデューサー: Adam Dutkiewicz
概要: バンドの最高傑作との呼び声高い名盤。攻撃性、メロディ、プロダクションの全てが最高レベルで結実した。メタルコア・ブームの頂点を象徴する一枚。
重要な楽曲:
- "This Calling": 冒頭のスクリームから伝説的な楽曲。PVは『ソウ3 (Saw III)』のサウンドトラックにも収録された。
- "Six": 『Guitar Hero II』収録により世界的な知名度を得た。高速のオルタネイト・ピッキングとブレイクダウンが特徴。
- "The Air That I Breathe": 美しいコーラス・メロディを持つ、バンドの「静」と「動」の対比が際立つ曲。
4.4 Overcome (2008年)
- リリース: 2008年9月16日
- レーベル: Prosthetic Records / Razor & Tie
- チャート: Billboard 200 最高16位
概要: より幅広い層へのアピールを狙い、キャッチーさを増した作品。商業的に大成功を収めたが、初期ファンからは賛否両論があった。
重要な楽曲:
- "Two Weeks": バンド最大のヒット曲。ラジオでヘヴィ・ローテーションされ、プラチナ認定を受けた。
- "Chiron": オリー・ハーバート (Oli Herbert) のギター・テクニックが光る、メタル・ファン向けの楽曲。
- "Forever in Your Hands": アコースティック・ギターを導入したバラード調の楽曲。
4.5 For We Are Many (2010年)
- リリース: 2010年10月12日
- レーベル: Prosthetic Records / Razor & Tie
- チャート: Billboard 200 最高10位
概要: チャート成績としてはキャリアハイを記録。前作のポップさと初期のヘヴィネスの融合を目指した作品。
重要な楽曲:
- "Hold On": ラジオ向けのキャッチーなシングル。
- "The Last Time": メロディックなリフが印象的な佳曲。
4.6 A War You Cannot Win (2012年)
- リリース: 2012年11月6日
- レーベル: Razor & Tie
概要: 最も「ラジオ・ロック」に接近したアルバム。「歌モノ」としての側面が強く、メタルコア要素は後退した。
重要な楽曲:
- "Stand Up": ロック・ラジオ・チャートで1位を獲得したアンセム。
- "What If I Was Nothing": 完全なバラード曲。ゴールド認定を受けるヒットとなった。
4.7 The Order of Things (2015年)
- リリース: 2015年2月24日
- レーベル: Razor & Tie
- プロデューサー: Josh Wilbur
概要: プロデューサーを変更し、サウンドの質感を変化させた。「批判」をテーマにした楽曲が多く、ラボンテの歌詞がより直接的になった。
重要な楽曲:
- "This Probably Won't End Well": メロディックで壮大なロック・ナンバー。
- "No Knock": バンド史上最もヘヴィな部類に入る楽曲の一つで、ライブでのモッシュ・ナンバー。
4.8 Madness (2017年)
- リリース: 2017年4月28日
- レーベル: Razor & Tie
- プロデューサー: Howard Benson
概要: 実験作。エレクトロニクスやポップスのプロダクション手法を取り入れた。
重要な楽曲:
- "Madness": シンセサイザーを大胆に使用。
- "The Thunder Rolls": Garth Brooksのカントリー曲をヘヴィ・メタル・アレンジでカバーし、大きな話題となった。
4.9 Victim of the New Disease (2018年)
- リリース: 2018年11月9日
- レーベル: Razor & Tie
概要: オリー・ハーバート (Oli Herbert) の遺作。原点回帰を掲げ、初期のようなブルータルなスクリームとリフが復活した。
重要な楽曲:
- "Fuck Love": 1曲目を飾る、非常に攻撃的なナンバー。
- "Everything's Wrong": メロディックな側面とヘヴィネスが融合した、オリーらしい楽曲。
4.10 Antifragile (2025年)
- リリース: 2025年1月31日
- レーベル: Independent
- プロデューサー: Josh Wilbur
概要: 7年ぶりの新作にして、完全自主制作アルバム。ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) のテクニカルなギターと、マット・デイス (Matt Deis) の復帰が特徴。
重要な楽曲:
- "Divine": オリー死後初のオリジナル曲として2024年に公開され、復活を印象づけた。
- "No Tomorrow": ラジオ・フレンドリーな側面を持ちつつ、現代的なサウンド・プロダクションが施されている。
- "The Piper": リチャードソンの超絶技巧ソロが堪能できる楽曲。
5. ツアー活動とライブ・パフォーマンスの歴史
オール・ザット・リメインズ (All That Remains) の名声は、過酷なツアー・スケジュールと安定したライブ・パフォーマンスによって築かれた。
5.1 主要フェスティバルへの出演
- Ozzfest (オズフェスト): 2006年のOzzfestへの出演は、All That Remainsがメインストリーム・メタル・シーンに躍り出る大きなきっかけとなった。セカンド・ステージでのパフォーマンスは、ドラゴンフォース (Dragon Force) やヘイトブリード (Hatebreed) と並んで高い評価を得た。
- Warped Tour (ワープド・ツアー): パンクやエモが中心のフェスでありながら、All That Remainsはメタルコア代表として参加し、異なるジャンルのファン層にアピールすることに成功した。
- Mayhem Festival: 2010年代には、スリップノット (Slipknot) やディスターブド (Disturbed) といった巨頭たちと共にメイン・ステージを務める地位にまで登りつめた。
5.2 2026年ツアー「Spring 2026 U.S. Tour」
2026年、バンドは大規模な北米ツアーを敢行する。
- 日程: 4月29日のニューヨーク州アルバニー (Albany, NY) を皮切りに、5月23日のマサチューセッツ州ウースター (Worcester, MA) の「The Palladium」での凱旋公演まで続く。
- サポート・アクト: ボーン・オブ・オシリス (Born of Osiris) とデッド・アイズ (Dead Eyes)。特にボーン・オブ・オシリス (Born of Osiris) は、前ギタリストのジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) が在籍していたバンドであり、因縁めいたラインナップが注目を集めている。
- 新体制: ジェイソン・リチャードソン (Jason Richardson) 脱退後の新ギタリスト (噂されるケン・スージー (Ken Susi) 等) を含めた新体制でのパフォーマンスが期待されている。
6. 不滅の遺産と未来への展望
オール・ザット・リメインズ (All That Remains) の四半世紀以上にわたる歴史は、現代アメリカン・メタルの縮図である。All That Remainsは、アンダーグラウンドのデス・メタル・バンドとして始まり、メタルコア・ブームの頂点に立ち、ラジオ・ロックへの転向による商業的成功と批判を経験し、そして創設メンバーの死という最大の悲劇に見舞われた。
しかし、2025年のアルバム『Antifragile』のリリースとインディペンデントへの移行は、バンドがまだ終わっていないことを力強く宣言している。フィル・ラボンテ (Philip Labonte) の揺るぎないリーダーシップと、マイク・マーティン (Mike Martin) という安定した基盤、そしてマット・デイス (Matt Deis) やアンソニー・バローネ (Anthony Barone) といった実力派メンバーの加入により、バンドは「アンチフラジャイル (壊れにくいだけでなく、衝撃を糧に強くなる)」な存在として、2026年以降もシーンに君臨し続けるであろう。All That Remainsの物語は、単なる音楽活動を超え、逆境における人間のレジリエンス (回復力) を体現している。