SLIPKNOT DISCOGRAPHY

現代へヴィミュージックの歴史において、Slipknot (スリップノット) ほど視覚的な衝撃と音楽的な暴虐性を高度に融合させ、商業的な成功を収めたバンドは他に類を見ない。

Albums

ディスコグラフィ (Discography)

Slipknotの作品群は、その時々のバンドの精神状態を色濃く反映している。以下に主要なスタジオ・アルバム及び関連作品を詳述する。

スタジオ・アルバム (Studio Albums)

タイトル リリース日 レーベル 全米/全英 順位 特記事項
Slipknot (スリップノット) 1999年6月29日 Roadrunner 51 / 37 ダブル・プラチナ認定(US)。
ニュー・メタルの金字塔。
Iowa (アイオワ) 2001年8月28日 Roadrunner 3 / 1 最もヘヴィで暗黒的な作品。
プラチナ認定(US)。
Vol. 3: (The Subliminal Verses) (Vol. 3: ザ・サブリミナル・ヴァーシズ) 2004年5月25日 Roadrunner 2 / 5 音楽性の拡張。「Before I Forget」収録。
プラチナ認定(US)。
All Hope Is Gone (オール・ホープ・イズ・ゴーン) 2008年8月20日(日本)
2008年8月26日(米国)
Roadrunner 1 / 2 初の全米1位。グルーヴ・メタルへの接近。
プラチナ認定(US)。
.5: The Gray Chapter (.5: ザ・グレイ・チャプター) 2014年10月21日 Roadrunner 1 / 2 Paul Grayへの追悼作。
ゴールド認定(US)。
We Are Not Your Kind (ウィ・アー・ノット・ユア・カインド) 2019年8月9日 Roadrunner 1 / 1 実験的な構成と原点回帰の融合。
The End, So Far (ジ・エンド、ソー・ファー) 2022年9月30日 Roadrunner 2 / 1 Roadrunner契約満了作。
プログレッシブな展開。
アルバム別詳細分析

1. Slipknot (1999)

  • 概要: 怒り、疎外感、そしてデモインという土地の閉塞感が生々しくパッケージされている。Ross Robinsonのプロデュースにより、楽器の分離感よりも「塊」としての音圧が重視された。
  • 主要曲:
    • (sic): バンドの攻撃性を象徴するオープニングトラック。以前のデモ曲 「Slipknot」を改作したもの。
    • Wait and Bleed: クリーンボイスとスクリームを織り交ぜたヒットシングル。ラジオでのエアプレイを獲得し、バンドをメインストリームに押し上げた。
    • Spit It Out: ライブでの 「Jump the fuck up (座らせてから一斉にジャンプさせる)」パフォーマンスで有名な曲。ラップメタルの要素が強い。
    • Surfacing: 「FUCK IT ALL!」のコーラスで知られる、バンドの絶対的なアンセム。

2. Iowa (2001)

  • 概要: 商業的成功へのアンチテーゼとして制作された。「業界で最も重いアルバムを作る」という意志のもと、極端なダウンチューニングと複雑な構成が採用された。Corey Taylorはボーカル録音中に自身の体をガラスで傷つけ、嘔吐しながら絶叫したと伝えられる。
  • 主要曲:
    • People = Shit: ライブの定番曲。極限の怒りと人間嫌悪を表現。
    • The Heretic Anthem: 「555 to the 666」 というフレーズが有名。レコード会社や業界への批判が込められている。
    • Left Behind: アルバムの中では比較的メロディアスなシングルだが、歌詞は陰鬱である。
    • Disasterpiece: 数学的で変則的なリフと、残酷な歌詞が特徴。

3. Vol. 3: (The Subliminal Verses) (2004)

  • 概要: Rick Rubinプロデュース。Coreyの声帯回復手術の影響もあり、スクリームの質感と変化し、歌唱パートが増加した。アコースティックバラードの導入は賛否両論を呼んだが、バンドの寿命を延ばす結果となった。
  • 主要曲:
    • Duality: バットで金属樽を叩く音が特徴的な大ヒット曲。MVはファンの家を破壊しながら撮影された。
    • Vermilion / Vermilion Pt. 2: ゴシックで哀愁漂う連作。ストーカー的な執着愛を描く。

4. All Hope Is Gone (2008)

  • 概要: 地元アイオワで録音されたが、メンバー間の断絶が深かった時期。しかし、Joey Jordison と Paul Grayが中心となって書かれた楽曲は、スラッシュメタルとしての完成度が高い。
  • 主要曲:
    • Psychosocial: 重厚なリフと行進曲のようなスネアドラムが特徴。
    • Snuff: Coreyのアコースティック弾き語りによるバラード。Paul Grayのお気に入りの曲であり、彼の死後は追悼曲として演奏されることが多い。

5. .5: The Gray Chapter (2014)

  • 概要: 喪失、否認、怒り、受容というグリーフプロセス (悲嘆の過程)を描くコンセプトアルバム的な側面を持つ。
  • 主要曲:
    • The Devil in I: 過去の自分(古いマスクを被ったメンバー) を自ら葬り去るMVが制作された。
    • Custer: 「Cut, cut, cut me up」のチャントがライブで強烈な一体感を生む。

6. We Are Not Your Kind (2019)

  • 概要: インタールードを多用し、アルバム全体を一つの旅のように構成した作品。批評家からの評価が極めて高い。
  • 主要曲:
    • Unsainted: 聖歌隊のコーラスを取り入れたオープニングトラック。メロディとヘヴィネスの完璧な均衡。
    • Nero Forte: 高速なリズムとキャッチーなサビの対比。
    • Solway Firth: 英国の実際の地名から取られたタイトル。重苦しく、救いのない歌詞が特徴。

7. The End, So Far (2022)

  • 概要: 実験的なサウンドスケープと、バンドのルーツである激しさが同居する。オープニングの「Adderall」など、従来のSlipknot像を裏切るアプローチも見られる。
  • 主要曲:
    • The Dying Song (Time To Sing): スピード感のあるシングル。
    • Yen: 独特の雰囲気を持つミドルテンポの楽曲。

その他の重要な作品 (EP, Live Albums, Rare Releases)

  • Mate. Feed. Kill. Repeat. (1996): デモ・アルバム。ファンク/ジャズ要素が強く、現在のサウンドとは異なる。
  • 9.0: Live (2005): 『Vol.3』 ツアーの模様を収録した初の2枚組ライブアルバム。世界各国の公演からベストテイクを収録。
  • Day of the Gusano: Live in Mexico (2017): メキシコでのKnotfest初開催を記録したライブ盤。熱狂的な観衆の反応が記録されている。
  • Adderall EP (2023): アルバム 『The End, So Far』のオープニングトラック 「Adderall」のリミックス、デモバージョン、及び未発表曲「Death March」 「Red or Redder」「Hard to Be Here」を収録したEP。バンドの実験的な側面(エレクトロニカやアンビエント)が強調されている。
  • Live at MSG (2023): 2009年2月5日にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われた伝説的な公演を収録。オリジナルラインナップ (Paul GrayとJoey Jordisonを含む)による全盛期のパフォーマンスを捉えた貴重な記録。