NOCTURNAL RITES
スウェーデンのウメオ (Umeå) を起源とするノクターナル・ライツ (NOCTURNAL RITES) は、1990年代から2000年代にかけての欧州パワーメタル・シーンにおいて、極めて特異かつ重要な進化を遂げたバンドである。
Biography
ノクターナル・ライツ (NOCTURNAL RITES)
スウェーデン・パワーメタルの進化と軌跡
1. 北欧メタルの文脈における特異点
スウェーデンのウメオ (Umeå) を起源とするノクターナル・ライツ (NOCTURNAL RITES) は、1990年代から2000年代にかけての欧州パワーメタル・シーンにおいて、極めて特異かつ重要な進化を遂げたバンドである。NOCTURNAL RITESのキャリアは、デスメタル (Death Metal) の黎明期における試行錯誤から始まり、ハロウィン (Helloween) に代表されるジャーマン・メタル (German Metal) への純粋な回帰、そして最終的にはモダンでグルーヴ重視のハイブリッド・メタルサウンドへの変貌という、三つの異なるフェーズによって特徴づけられる。
2. 第1章:ウメオの地下水脈 - ネクロノミック (Necronomic) とデスメタルの時代 (1990-1991)
2.1 ウメオ・ハードコアシーンとの接点
1990年初頭、スウェーデン北部の都市ウメオ (Umeå)は、リフューズド (Refused) やメシュガー (Meshuggah) といったバンドを輩出したハードコア・パンクおよびテクニカル・メタルの震源地として知られていた。この土壌の中で、ギタリストのフレドリック・マンベリ (Fredrik Mannberg) を中心に結成されたのが、ノクターナル・ライツの前身となる「ネクロノミック (Necronomic)」である。
当時のスウェーデン国内では、ストックホルム (Stockholm) のエントゥームド (Entombed) や、ヨーテボリ (Gothenburg) のアット・ザ・ゲイツ (At The Gates) などが牽引するデスメタル・ムーブメントが爆発的な盛り上がりを見せていた。若きマンベリらもその潮流に乗り、ブルータルで重厚なサウンドを志向していた。
2.2 デモテープ 『The Obscure』 (1991)の分析
ネクロノミック (Necronomic) 名義で制作されたデモテープ 『The Obscure』は、バンドの最初期の記録である。この作品において、マンベリはギターだけでなくボーカルも担当していた。当時の音楽性は、後のメロディアスなスタイルとは対極に位置する、純然たるスウェディッシュ・デスメタル (Swedish Death Metal) であったとされる。
| 年代 | バンド名 | 作品名 | フォーマット | ジャンル |
|---|---|---|---|---|
| 1991 | Necronomic | The Obscure | Demo Tape | Death Metal |
資料によれば、このデモテープは一部のインディペンデント・レーベルの関心を引いたものの、バンド側が契約を見送ったという経緯がある。彼らは自分たちの音楽的方向性に疑問を抱き始めており、デスメタルの枠組みに留まることに限界を感じていたのである。特に、メンバーが幼少期に親しんだアイアン・メイデン (Iron Maiden) やジューダス・プリースト (Judas Priest) といった正統派ヘヴィメタル (Traditional Heavy Metal) への憧憬が、次第にデスメタルの暴虐性を上回るようになっていった。
分析的洞察: この初期のデスメタル時代は、後のノクターナル・ライツのサウンド形成において決して無駄ではなかったと考えられる。特に、フレドリック・マンベリ (Fredrik Mannberg) のリズムギターにおける「刻み」の鋭さや、ニルス・エリクソン (Nils Eriksson) のベースラインに見られるアグレッシブなアタック感は、パワーメタル転向後もバンドのサウンドに独特の「重み」と「攻撃性」を与え続けた。これは、最初からメロディック・メタルとしてスタートしたバンドにはない、彼ら独自の強み (Edge) となっている。
3. 第2章:メロディック・パワーメタルへの転換と初期三部作 (1992-1999)
3.1 劇的なスタイルチェンジとバンド名の変更
1992年、バンドは「ノクターナル・ライツ (NOCTURNAL RITES)」へと改名し、音楽性を劇的に変化させた。同年に制作された2曲入りのプロモーションテープでは、デスメタルの要素はほぼ排除され、アイアン・メイデン (Iron Maiden) 直系のツインリード・ギターとハイトーン・ボーカルをフィーチャーしたサウンドへと変貌を遂げた。
この転換期において、フレドリック・マンベリ (Fredrik Mannberg) はボーカルの座を退き、ギターに専念することを決断した。代わって迎えられたのが、アンダース・ザックリソン (Anders Zackrisson)である。ザックリソンの声質は、マイケル・キスク (Michael Kiske) やカイ・ハンセン (Kai Hansen) を彷彿とさせる典型的かつクリアなハイトーン・ボイスであり、バンドが目指す「ファンタジックなパワーメタル」には不可欠な要素であった。
3.2 1stアルバム 『In a Time of Blood and Fire』 (1995)
1995年、スウェーデンのレーベル、メガロック・レコード (Megarock Records) からデビューアルバム『In a Time of Blood and Fire』がリリースされた。
- ラインナップ:
- Anders Zackrisson (Vocals)
- Fredrik Mannberg (Guitar)
- Mikael Söderström (Guitar)
- Nils Eriksson (Bass)
- Ulf Andersson (Drums)
音楽的特徴と評価: 本作は、ハロウィン (Helloween) の『Keeper of the Seven Keys』 シリーズへのオマージュとも言える内容であった。楽曲は疾走感に溢れ、歌詞はドラゴンや剣、魔法といったハイ・ファンタジー (High Fantasy) の世界観で統一されていた。当時の音楽シーンはグランジ (Grunge) やオルタナティブ・ロック (Alternative Rock) が主流であり、正統派ヘヴィメタルは「時代遅れ」と見なされていた。しかし、ハンマーフォール (HammerFall) が登場する数年前にリリースされた本作は、地下潜伏していたメタル・ファンから熱狂的な支持を受けた。特に日本市場においては、そのあまりにも純粋なメロディへの傾倒が高く評価され、輸入盤市場で話題となった。
主要楽曲分析:
- "Sword of Steel": イントロのツインギターから疾走するツーバス連打まで、パワーメタルの様式美を完璧になぞったオープニング・ナンバー。
- "Dragonisle": 7分近い長尺曲で、プログレッシブな展開とエピックなコーラスを含み、バンドの作曲能力の高さを示した。
3.3 2ndアルバム 『Tales of Mystery and Imagination』 (1998) とニルス・ノーベリの加入
1997年、リズムギタリストのミカエル・ソーデルストロム (Mikael Söderström) が脱退し、ニルス・ノーベリ (Nils Norberg)が加入した。この交代劇はバンドにとって最大の転機の一つとなった。ニルス・ノーベリ (Nils Norberg)は、単なるリズムギタリストの枠に収まらない卓越したテクニックを持っていた。アラン・ホールズワース (Allan Holdsworth) 等のフュージョン・ギタリストからも影響を受けた彼の流麗なレガート奏法は、バンドのサウンドに洗練と独特の浮遊感をもたらした。結果として、フレドリック・マンベリ (Fredrik Mannberg) がリズムギター (リフワーク)に専念し、ニルス・ノーベリ (Nils Norberg) がリードギターを担当するという分業体制が確立された。
センチュリー・メディア (Century Media) と契約してリリースされた『Tales of Mystery and Imagination』は、前作の路線を踏襲しつつも、プロダクションの質が向上し、楽曲の構成もより緻密になった。
3.4 3rdアルバム 『The Sacred Talisman』 (1999)
初期路線の集大成となるのが、1999年リリースの『The Sacred Talisman』である。このアルバムから、ドラマーがオーヴェ・リングヴァル (Owe Lingvall) に交代している。また、これまでセッション参加だったキーボードのマティアス・ベルンハルトソン (Mattias Bernhardsson) も正式メンバーとしてクレジットされた(ただし、バンドサウンドの核はあくまでギターであった)。
アルバムの受容: 日本での人気はこの時点でピークに達し、オリコンチャート等のランキングでも好アクションを記録した。"The Iron Force" や "The Legend Lives On" といった楽曲は、今日でも初期の代表曲として語り継がれている。アンダース・ザックリソン (Anders Zackrisson) のボーカルも円熟味を増していたが、バンド内部では「よりヘヴィで、よりモダンなサウンド」への渇望が芽生え始めていた。
4. 第3章:変革の時代 - ジョニー・リンドクヴィスト (Jonny Lindkvist) の加入とモダン化 (2000-2004)
4.1 ボーカリスト交代の衝撃
2000年、バンドは大胆な決断を下す。デビュー以来のシンガーであったアンダース・ザックリソン (Anders Zackrisson) を解雇し、地元ウメオの実力派シンガー、ジョニー・リンドクヴィスト (Jonny Lindkvist) を迎え入れたのである。
ジョニー・リンドクヴィスト (Jonny Lindkvist) の声質は、ザックリソンのような「細く高い」タイプではなく、ロニー・ジェイムス・ディオ (Ronnie James Dio) やトニー・マーティン(Tony Martin)を思わせる、中低域に厚みのある「太く荒々しい」タイプであった。この交代は、単なるメンバーチェンジ以上に、バンドの音楽的方向性の完全な転換を意味していた。
4.2 4thアルバム 『Afterlife』 (2000)
ジョニー加入後第一弾となる『Afterlife』は、多くのファンを驚愕させた。
- サウンドの変化: ギターのチューニングが下げられ (ダウンチューニング)、7弦ギターを導入した重厚なリフが前面に押し出された。ドラムサウンドもよりタイトでモダンなものとなり、全体的に「ダーク」で「シリアス」な雰囲気が漂うようになった。
- 歌詞の変化: 「ドラゴン退治」のようなハイ・ファンタジーの要素は影を潜め、内面的な葛藤、宗教的な疑念、死生観といったシリアスなテーマが扱われるようになった。
評価の二分: 古くからのメロディック・スピード・メタル (メロスピ) ファンからは「裏切り」との声も上がったが、逆にそのクオリティの高さとジョニーの圧倒的な歌唱力により、新たなファン層を開拓した。特にタイトルトラック "Afterlife" や "The Sinner's Cross" で聴ける、ヘヴィなグルーヴとキャッチーなサビの融合は、バンドの新たなアイデンティティとなった。
4.3 5thアルバム 『Shadowland』 (2002)
2002年の『Shadowland』は、『Afterlife』で提示した方向性をさらに推し進め、完成度を高めた作品である。
表1: 『Shadowland』 トラックリスト詳細
| トラック | タイトル(英語) | タイトル(カタカナ/邦題) | 時間 | 特記事項 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Eyes of the Dead | アイズ・オブ・ザ・デッド | 04:53 | リードトラック |
| 2 | Shadowland | シャドウランド | 04:32 | タイトル曲 |
| 3 | Invincible | インヴィンシブル | 04:57 | |
| 4 | Revelation | レヴェレーション | 04:44 | |
| 5 | Never Die | ネヴァー・ダイ | 04:23 | |
| 6 | Underworld | アンダーワールド | 04:27 | |
| 7 | Vengeance | ヴェンジェンス | 05:19 | |
| 8 | Faceless God | フェイスレス・ゴッド | 05:14 | |
| 9 | Birth of Chaos | バース・オブ・カオス | 04:16 | |
| 10 | The Watcher | ザ・ウォッチャー | 04:00 | |
| 11 | The Iron Force (2002 ver) | ジ・アイアン・フォース | 日本盤ボーナス |
このアルバムでは、ニルス・ノーベビ (Nils Norberg) のギターソロが楽曲の中でより歌うようになり、ヘヴィなバッキングとの対比が鮮やかになった。特に"Invincible" や "Never Die" といった楽曲は、ライブでの定番曲として定着した。
4.4 6thアルバム 『New World Messiah』 (2004)
2004年リリースの 『New World Messiah』は、バンドのキャリアにおける一つの到達点(ハイライト)と見なされている。
- 音楽的完成度: ヘヴィネス、メロディ、疾走感のバランスが完璧に取れており、楽曲のフック (聴きどころ)が非常に強力である。オープニングの "New World Messiah" から "Against the World"、"Avalon" といった楽曲まで、捨て曲のない構成となっている。
- ツアー: エドガイ (Edguy) やブレインストーム (Brainstorm) との大規模なツアーを行い、ヨーロッパ全土での知名度を確固たるものにした。
5. 第4章:商業的成功と実験 - 『Grand Illusion』から『The 8th Sin』 (2005-2007)
5.1 7thアルバム 『Grand Illusion』 (2005)
2005年、バンドは 『Grand Illusion』をリリースした。本作では、これまで以上にキャッチーでメジャー感のあるサウンドプロダクションが採用された。
- ゲストミュージシャン: 本作の特筆すべき点は、豪華なゲスト陣である。
- イェンス・ヨハンソン (Jens Johansson) - ストラトヴァリウス (Stratovarius) のキーボーディスト。
- ヘンリック・ダンヘイジ (Henrik Danhage) - エヴァーグレイ (Evergrey) のギタリスト。
- ステファン・エルムグレン (Stefan Elmgren) - ハンマーフォール (HammerFall) のギタリスト。
- クリストファー・W・オリヴィウス (Kristoffer W. Olivius) - ナグルファー (Naglfar) のボーカリスト (グロウルボーカルで参加)。
"Fools Never Die" はシングルカットされ、そのポップで耳に残るコーラスは、バンドがより広い層へのアピールを意図していることを明確に示した。
5.2 8thアルバム『The 8th Sin』 (2007) と論争
2007年の『The 8th Sin』は、バンド史上最も賛否両論を巻き起こした作品である。ジャケットアートワークのモダンなデザインが示唆するように、音楽性も大幅にモダン化された。シンセサイザーやエレクトロニクスの要素が大胆に導入され、ギターのリフはスタッカート気味のグルーヴ・メタルに近いものとなった。
洞察: 既存のファンの一部は、この変化を「商業主義への迎合」と批判した。しかし、楽曲自体のクオリティは極めて高く、"Never Again" や "Call Out to the World" といった楽曲は、モダン・メロディック・メタルの傑作として再評価されるべきポテンシャルを持っていた。このアルバムでの実験は、バンドが常に進化を求めていたことの証明でもある。しかし、このアルバムを最後に、バンドは長い沈黙に入ることとなる。
6. 第5章:失われた10年とメンバーの離脱 (2008-2016)
『The 8th Sin』リリース後、バンドは活動を停止したわけではないが、表立った動きが見えなくなった。ニルス・エリクソン (Nils Eriksson) の証言によれば、1997年から2007年までの10年間、休むことなく 「アルバム制作とツアー」を繰り返してきたことに疲弊しており、当初は「計画のない休暇」を取るつもりだったという。しかし、その休暇は予期せず長期化することになった。
6.1 ニルス・ノーベリ (Nils Norberg) の脱退 (2008)
2008年6月21日、バンドのサウンドの要であったリードギタリスト、ニルス・ノーベリ (Nils Norberg) が脱退を発表した。理由は「音楽以外の私生活を優先するため」とされた。彼の独特なギタートーンと流麗なソロはノクターナル・ライツのアイデンティティそのものであり、彼の不在はバンドにとって致命的な損失と思われた。
6.2 クリストファー・ロールランド (Christoffer Rörland) の一時在籍 (2010-2012)
2010年5月、新ギタリストとしてクリストファー・ロールランド (Christoffer Rörland) が加入した。バンドは新作の準備を進めているとアナウンスし、公式サイトでもレコーディング風景などを公開していた。しかし、アルバムが完成する前に、クリストファー・ロールランドは脱退してしまう。彼は2012年に、スウェーデンの英雄的バンド、サバトン (Sabaton) に加入することを選んだのである。これにより、ノクターナル・ライツは再びリードギタリスト不在の状況に陥り、活動再開の機運は頓挫した。
7. 第6章:不死鳥の復活 - 『Phoenix』 (2017-Present)
7.1 ペル・ニルソン (Per Nilsson) の加入
長い沈黙を破り、バンドが再始動したのは2017年のことであった。空席となっていたリードギタリストの座には、スカー・シンメトリー (Scar Symmetry) やメシュガー (Meshuggah) のライブサポートで知られる名手、ペル・ニルソン (Per Nilsson) が迎えられた。ペル・ニルソン (Per Nilsson)は、ニルス・ノーベリ (Nils Norberg) と同様に高度なテクニックを持つギタリストだが、そのスタイルはより現代的でプログレッシブ・デスメタル寄りである。
7.2 9thアルバム 『Phoenix』 (2017)の全貌
2017年9月、AFM レコード (AFM Records) から10年ぶりとなるアルバム 『Phoenix』がリリースされた。タイトルは文字通りバンドの「再生」を意味している。
音楽的分析: 『Phoenix』は、『The 8th Sin』のモダンな要素を継承しつつも、『Afterlife』時代のヘヴィネスを取り戻したようなサウンドとなっています。ペル・ニルソン (Per Nilsson) のギターは、ニルス・ノーベリのような滑らかさよりも、よりアグレッシブでテクニカルなフレージングを多用しており、バンドに新たな風を吹き込んだ。一方で、"The Poisonous Seed" や "The Ghost Inside Me" といった楽曲では、往年のノクターナル・ライツらしい哀愁を帯びたメロディが健在であり、ジョニー・リンドクヴィスト (Jonny Lindkvist) のボーカルも衰えを知らない力強さを見せつけた。
表2: 『Phoenix』 トラックリスト詳細
| トラック | タイトル(英語) | タイトル(カタカナ/邦題) | 作詞/作曲 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | A Heart as Black as Coal | ア・ハート・アズ・ブラック・アズ・コール | N. Eriksson 他 | MV制作曲 |
| 2 | Before We Waste Away | ビフォア・ウィ・ウェイスト・アウェイ | N. Eriksson 他 | シングルカット |
| 3 | The Poisonous Seed | ザ・ポイズナス・シード | N. Eriksson 他 | |
| 4 | Repent My Sins | リペント・マイ・シンズ | N. Eriksson 他 | シングルカット |
| 5 | What's Killing Me | ホワッツ・キリング・ミー | N. Eriksson 他 | |
| 6 | A Song for You | ア・ソング・フォー・ユー | N. Eriksson 他 | |
| 7 | The Ghost Inside Me | ザ・ゴースト・インサイド・ミー | N. Eriksson 他 | |
| 8 | Nothing Can Break Me | ナッシング・キャン・ブレイク・ミー | N. Eriksson 他 | |
| 9 | Flames | フレイムス | N. Eriksson 他 | |
| 10 | Used to Be God | ユーズド・トゥ・ビー・ゴッド | N. Eriksson 他 | 限定盤ボーナス |
| 11 | Welcome to the End | ウェルカム・トゥ・ジ・エンド | N. Eriksson 他 |
7.3 現在の状況と 「2025年ツアー」 情報の真相
『Phoenix』リリース後、バンドは2018年のヴァッケン・オープン・エア (Wacken Open Air) などに出演したが、その後再び活動は散発的となっている。2025年初頭の時点で、一部のコンサート情報サイトに「Nornir + Halphas - NOCTURNAL RITES Tour 2025」という記載が見受けられた。
NOCTURNAL RITESの現在のステータスは、公式な解散発表はないものの、実質的な活動休止 (Hiatus) または極めてスローペースな活動状態にあると推測される。
8. メンバー (Members) 詳細プロファイル
8.1 現在のメンバー (Current Members - as of Phoenix era)
- Jonny Lindkvist (ジョニー・リンドクヴィスト)
- 担当: Vocals
- 在籍: 2000-Present
- 解説: バンドの中興の祖。その声は「深みのあるバリトンから突き刺すようなハイトーンまで」を自在に操る。彼の加入がバンドをモダン・パワーメタルへと進化させた。
- Fredrik Mannberg (フレドリック・マンベリ)
- 担当: Rhythm Guitar (初期はVocalsも兼任)
- 在籍: 1990-Present
- 解説: 唯一のオリジナルメンバーであり、バンドの創始者。彼のリズムギターにおける「刻み (Gallop)」の正確さと重さは、ノクターナル・ライツのサウンドの屋台骨である。
- Nils Eriksson (ニルス・エリクソン)
- 担当: Bass
- 在籍: 1990-Present
- 解説: 結成時からのメンバー。主なソングライターの一人であり、プロデューサー的な視点でバンドの方向性を決定してきた人物。インタビューなどでのスポークスマン的役割も担う。
- Owe Lingvall (オーヴェ・リングヴァル)
- 担当: Drums
- 在籍: 1998-Present
- 解説: 『The Sacred Talisman』から参加。映像制作会社「Village Road Film」を運営する映像作家でもあり、サバトン (Sabaton) やメシュガー (Meshuggah) のMVも手掛けている。バンドのビジュアルイメージ戦略に大きく貢献している。
- Per Nilsson (ペル・ニルソン)
- 担当: Lead Guitar
- 在籍: 2017-Present
- 解説: スカー・シンメトリー (Scar Symmetry)のギタリスト。変拍子や複雑な理論を駆使する技巧派だが、ノクターナル・ライツでは楽曲のメロディを尊重したプレイに徹している。
8.2 過去の主要メンバー (Former Members)
- Nils Norberg (ニルス・ノーベリ)
- 担当: Lead Guitar (1997-2008)
- 解説: バンドの黄金期を支えた天才ギタリスト。彼のアラン・ホールズワース的なレガート奏法と、泣きのメロディセンスは、バンドのサウンドを決定づける重要な要素であった。
- Anders Zackrisson (アンダース・ザックリソン)
- 担当: Vocals (1993-2000)
- 解説: 初期のファンタジー路線を象徴するハイトーン・シンガー。脱退後は目立ったメジャー活動は少ないが、Gotham Cityなどのカルトなバンドに関与していた記録がある。
- Christoffer Rörland (クリストファー・ロールランド)
- 担当: Lead Guitar (2010-2012)
- 解説: 正式なスタジオアルバムへの参加はないが、困難な時期にバンドを支えた。現在はサバトン (Sabaton) のギタリストとして世界的な成功を収めている。
- Ulf Andersson (ウルフ・アンダーソン) - Drums (1992-1998)
- Mikael Söderström (ミカエル・ソーデルストロム) - Rhythm Guitar (1992-1997)
- Mattias Bernhardsson (マティアス・ベルンハルトソン) - Keyboards (1999-2003)
9. ディスコグラフィ (Discography)
9.1 スタジオアルバム (Studio Albums)
| 発売年 | タイトル(英語) | タイトル(カタカナ) | レーベル | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1995 | In a Time of Blood and Fire | イン・ア・タイム・オブ・ブラッド・アンド・ファイア | Megarock | デビュー作。正統派スタイル。 |
| 1998 | Tales of Mystery and Imagination | テイルズ・オブ・ミステリー・アンド・イマジネイション | Century Media | 日本先行発売。N.ノーベリ加入。 |
| 1999 | The Sacred Talisman | ザ・セイクレッド・タリスマン | Century Media | 初期路線の完成形。 |
| 2000 | Afterlife | アフターライフ | Century Media | J.リンドクヴィスト加入。モダン化。 |
| 2002 | Shadowland | シャドウランド | Century Media | ヘヴィネスとメロディの融合。 |
| 2004 | New World Messiah | ニュー・ワールド・メサイア | Century Media | 商業的成功作。 |
| 2005 | Grand Illusion | グランド・イリュージョン | Century Media | 豪華ゲスト参加。 |
| 2007 | The 8th Sin | ジ・エイス・シン | Century Media | 最もモダンで実験的な作品。 |
| 2017 | Phoenix | フェニックス | AFM Records | 10年ぶりの復活作。 |
9.2 デモ・コンピレーション (Demos & Compilations)
| 年代 | タイトル | 形態 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1991 | The Obscure | Demo | Necronomic名義。デスメタル。 |
| 1992 | Promo 1992 | Demo | NOCTURNAL RITES名義。メロディック路線へ。 |
| 2005 | Lost in Time: The Early Years of NOCTURNAL RITES | Compilation | 初期2枚のアルバムをセットにした再発盤。 |
10. 進化し続ける「ウメオの獅子」
ノクターナル・ライツ (NOCTURNAL RITES) の歴史は、単なる一バンドの歴史を超え、90年代以降のメタルシーンの変遷を映し出す鏡である。デスメタルの喧騒から生まれ、メロディック・パワーメタルの復興に貢献し、やがてジャンルの枠を超えた独自のヘヴィ・サウンドへと到達したNOCTURNAL RITESの旅路は、常に「良いメロディとは何か」という問いに対する探求であった。
NOCTURNAL RITESが残した楽曲群、特に『Afterlife』 から 『New World Messiah』にかけての作品は、パワーメタルがいかにして「ダサい」という偏見を乗り越え、現代的で洗練された音楽となり得るかを証明した金字塔である。現在バンドは沈黙を守っているが、その音楽的遺産は色褪せることなく、またNOCTURNAL RITESが『Phoenix』 で示したように、いつの日か再び蘇る可能性を秘めている。