GODSMACK
GODSMACKの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。
Biography
ゴッドスマック (GODSMACK)
現代アメリカン・ハードロックの覇者
ポスト・グランジの荒野に築かれた要塞
1990年代半ば、アメリカのロックシーンは大きな転換期を迎えていた。シアトル (Seattle) を中心に勃興したグランジ (Grunge) ムーブメントが、ニルヴァーナ (Nirvana) のカート・コバーン(Kurt Cobain) の死とともに精神的な終焉を迎え、一方でコーン (Korn) やデフトーンズ(Deftones) といったバンドが牽引するニュー・メタル (Nu Metal) という新たな潮流が胎動し始めていた時期である。この混沌とした音楽的空白地帯において、マサチューセッツ州ローレンス (Lawrence, Massachusetts) という労働者階級の街から一つのバンドが産声を上げた。それがゴッドスマック (Godsmack)である。
GODSMACKは単なる一過性の流行バンドではなかった。結成から30年近くにわたり、全世界で2,000万枚以上のアルバムセールスを記録し、ビルボード200 (Billboard 200) アルバムチャートにおいて『Faceless』、『IV』、『The Oracle』 という3作連続の初登場1位を達成するという、ヴァン・ヘイレン (Van Halen)、U2、メタリカ (Metallica)、リンキン・パーク (Linkin Park) など、ロック史に名を残す極少数のアーティストのみが成し遂げた偉業を達成している。
ゴッドスマックの音楽的本質は、アリス・イン・チェインズ (Alice in Chains) やメタリカ (Metallica) といった先達から受け継いだ重厚なリフとグルーヴ、 velvetフロントマンであるサリー・エルナ (Sully Erna) のカリスマ的なボーカルと打楽器的なリズムアプローチにある。GODSMACKは「ポスト・グランジ」や「ニュー・メタル」といったレッテルを貼られながらも、その枠組みを超え、伝統的なアメリカン・ハードロックの継承者としての地位を確立した。
第1章: 創世記 - ボストンの地下室からの胎動 (1995-1997)
1.1 サリー・エルナの転身と「ザ・スキャム (The Scam)」の結成
ゴッドスマックの物語の中核には、常にサルヴァトーレ・"サリー"・エルナ (Salvatore "Sully" Erna) という人物が存在する。1968年2月7日、マサチューセッツ州ローレンス (Lawrence)に生まれたエルナは、トランペット奏者の父を持つ音楽一家に育ち、わずか3歳でドラムを叩き始めた。彼は23年以上にわたりドラマーとして活動し、ストリップ・マインド (Strip Mind) というバンドでは一定の成功を収めかけたが、バンドは1994年に解散。エルナはボストン (Boston) の音楽シーンから一時的に距離を置き、1年間の「冬眠」生活を送っていた。
1995年2月、再び音楽への情熱を取り戻したエルナは、ドラムセットの後ろに座る役割から、ステージの最前線に立つフロントマンへの転身を決意する。彼はジャムセッションを通じて知り合った友人でベーシストのロビー・メリル (Robbie Merrill)、地元ノース・アンドーバー (North Andover) 出身のギタリストであるリー・リチャーズ (Lee Richards)、そしてドラマーのトミー・スチュワート (Tommy Stewart) を招集し、新たなバンドを結成した。当初、彼らは「ザ・スキャム (The Scam)」 と名乗っていた。
1.2 「ゴッドスマック (Godsmack)」 という名の啓示とカルマ
バンドは最初のデモテープを録音した後、すぐにバンド名を「ゴッドスマック (Godsmack)」に変更した。この名前の由来については、長年にわたりファンの間やメディアで議論の対象となってきた。最も有力な説の一つは、彼らが音楽的に多大な影響を受けているアリス・イン・チェインズ (Alice in Chains) の楽曲「God Smack」 (アルバム『Dirt』収録)から取られたというものである。実際、ベーシストのロビー・メリルはDVD 『Smack This!』の中でこの説を認める発言をしている。
しかし、サリー・エルナは1999年のインタビューで、より個人的かつ運命論的なエピソードを披露している。彼によれば、口唇ヘルペス (cold sore) ができている人物をからかった翌日、自分自身の唇にも同じヘルペスができてしまい、それを見た知人が「神が制裁を加えたようだ (It looks like God smacked your face for making fun.)」と発言したことが由来であるとしている。エルナはこの言葉の響きと意味(即座の報い、カルマ)を気に入り、バンド名として採用したと語っている。アリス・イン・チェインズの曲については「知ってはいたが、それほど意識していなかった」としつつも、名前が持つ意味合いがバンドにフィットしたことを認めている。
1.3 自主制作の奇跡: 『All Wound Up...』
結成初期のラインナップは流動的であった。ギタリストのリー・リチャーズとドラマーのトミー・スチュワートは数ヶ月で脱退し、後任としてギタリストにはトニー・ランボーラ(Tony Rombola)、ドラマーにはジョー・ダルコ (Joe D'Arco) が加入した。特にトニー・ランボーラの加入は、後のゴッドスマックのサウンド (ダウンチューニングされた重厚なリフとブルージーなソロ)を決定づける重要な要素となった。
1996年、バンドは友人から借りたわずか2,500ドル (約30万円相当) という低予算で、週末を利用して初のスタジオ・レコーディングを敢行した。ボストンのニュー・アライアンス・スタジオ (New Alliance Studios) で行われたこのセッションでは、エルナ自身がドラムを演奏する場面もあったと言われている。こうして完成したのが、自主制作アルバム『All Wound Up...』である。
1997年にバンド自身のレーベル 「E.K. Records Company」からリリースされたこのアルバムを携え、GODSMACKはボストン周辺の小さなクラブやバーを巡る過酷なドサ回りツアーを開始した。当初、CDの手売り販売数は月間50枚程度に過ぎず、成功への道のりは険しいものであった。
1.4 WAAF ラジオと 「Whatever」 のブレイク
転機は、マサチューセッツ州ウースター (Worcester) を拠点とするロックラジオ局WAAF(FM)の夜間DJ、ロッコ (Rocko) がGODSMACKのCDを手に取ったことで訪れた。ロッコはアルバム収録曲の「Keep Away」 と 「Whatever」に可能性を感じ、自身の番組の深夜枠でこれらの曲をプレイし始めた。
この露出は即座に反応を引き起こした。ボストンおよびニューイングランド (New England) 地域のリスナーからのリクエストが殺到し、バンドのCD売上は週に1,000枚を超えるレベルへと急上昇した。この現象は、地元レコード店であるニューベリー・コミックス (Newbury Comics) の販売チャートにも影響を与え、メジャーレーベルのA&R (新人発掘担当者)たちの注目を集めることとなった。
第2章: 爆発的成功とメジャーシーンの制圧 (1998-1999)
2.1 メジャー契約と再構築されたデビューアルバム
地元の英雄となったゴッドスマックに対し、複数のレーベルが争奪戦を繰り広げたが、最終的にバンドは1998年6月にリパブリック・レコード/ユニバーサル・レコード (Republic/Universal Records) と複数枚のアルバム契約を締結した。
レーベルは、自主制作盤『All Wound Up...』 のポテンシャルを最大限に引き出すため、ジョー・バルレシ (Joe Barresi) などの手によるリミックスと、スターリング・サウンド (Sterling Sound) でのリマスターを施した。さらに、アートワークを一新し、曲順や構成にも微調整が加えられた。例えば、「Get Up, Get Out!」 という楽曲は分割され、イントロ部分が「Someone in London」 という独立したインストゥルメンタル曲としてトラックリストに加えられた。また、当初のプレスには含まれていなかった「Whatever」が正式に収録された。
こうして完成したメジャーデビューアルバム 『Godsmack』(邦題: 『ゴッドスマック』)は、1998年8月25日にリリースされた。
2.2 検閲論争とプラチナム・ステータス
アルバムのリリース直後、バンドは予期せぬ障壁に直面した。アルバムに含まれる歌詞の内容が過激であるとして、ウォルマート (Walmart) やKマート (Kmart) といった全米規模の大手小売チェーンが、店頭からの撤去を決定したのである。歌詞にはFワードなどの冒涜的な表現が含まれており、保守的な層からの反発を招いた。
これに対し、バンドとレーベルは 「Parental Advisory (ペアレンタル・アドバイザリー: 未成年者の聴取に不適切な内容が含まれていることを示す警告)」のステッカーをジャケットに貼付することで対応し、販売網を回復させた。結果として、この「発禁騒動」はバンドにとって絶好の宣伝材料となり、反骨精神を持つ若者層の支持をより強固なものにした。
シングルカットされた 「Whatever」、「Keep Away」、「Voodoo」、「Bad Religion」はロックラジオを席巻した。特に「Voodoo」は、その呪術的なリズムとミステリアスな雰囲気で、バンドの多様性を示す重要な楽曲となった。アルバムはビルボード200で最高22位を記録し、ロングセラーを続け、最終的には米国内だけで500万枚 (5x Platinum) を売り上げる驚異的なヒットとなった。
2.3 終わらないツアーとオズフェスト
この時期、ドラマーの座は再びトミー・スチュワート (Tommy Stewart) に戻っていた(ジョー・ダルコは1998年に脱退)。安定したラインナップ (エルナ、メリル、ランボーラ、スチュワート)を得たバンドは、オズフェスト (Ozzfest) への参加や、ブラック・サバス (Black Sabbath) の再結成ツアーのサポートアクトに抜擢されるなど、世界規模での露出を増やしていった。GODSMACKのライブパフォーマンスは、CD以上の音圧とエネルギーを持ち、観客を圧倒する「ライブバンド」としての評価を確立した。
第3章: 『Awake』による自己証明と進化 (2000-2001)
3.1 2ndアルバムのプレッシャーと回答
デビューアルバムの大成功は、バンドに「一発屋(One-hit wonder) で終わるのではないか」というプレッシャーを与えた。しかし、2000年10月31日にリリースされた2ndアルバム『Awake』(邦題: 『アウェイク』)は、その懸念を完全に払拭する強力な回答となった。
『Awake』はビルボード200で初登場5位を記録し、発売初週だけで25万枚以上を売り上げた。サウンドは前作の延長線上にありつつも、より洗練され、プロダクションの質が向上していた。
3.2 「Awake」と米軍リクルートキャンペーン
タイトルトラックである 「Awake」は、バンドのキャリアにおいて最も認知度の高い楽曲の一つとなった。この曲のリフと 「Get back!」 という叫びは、アメリカ海軍 (U.S. Navy)の「Accelerate Your Life」 というリクルートキャンペーン of CMソングとして数年間にわたりテレビで大量に放送された。これにより、ゴッドスマックの音楽はハードロックファンのみならず、一般的なテレビ視聴者の耳にも届くこととなり、バンドの国民的な知名度を一気に押し上げた。
その他、「Greed」 や 「Bad Magick」 といったシングルもヒットし、アルバムは200万枚以上(2x Platinum) のセールスを記録した。
3.3 受賞ラッシュと業界の評価
- ビルボード・ミュージック・アワード (Billboard Music Awards): 2001年に「ロック・アーティスト・オブ・ザ・イヤー (Rock Artist of the Year)」を受賞。これは、当時人気絶頂だったリンキン・パークやクリード (Creed) といった競合を抑えての快挙であった。
- グラミー賞(Grammy Awards): インストゥルメンタル曲 「Vampires」が2001年の「ベスト・ロック・インストゥルメンタル・パフォーマンス (Best Rock Instrumental Performance)」 にノミネートされた。これにより、GODSMACKが単なる歌モノのバンドではなく、高い演奏技術を持つミュージシャン集団であることが証明された。
第4章: 黄金期の到来 - 『Faceless』 とナンバーワンの時代 (2002-2004)
4.1 シャノン・ラーキンの加入とリズムの革命
2002年、ドラマーのトミー・スチュワートが「個人的な理由」により再びバンドを脱退した。友好的な別れではあったが、バンドは新たなエンジンの核となるドラマーを必要としていた。そこで白羽の矢が立ったのが、アグリー・キッド・ジョー (Ugly Kid Joe) やアーメン(Amen)で活動し、サリー・エルナの長年の友人でもあったシャノン・ラーキン(Shannon Larkin)である。
ラーキンの加入は、ゴッドスマックの歴史における最大の転換点の一つと言える。エルナ自身がドラマーであるため、ドラムに対する要求は極めて高かったが、ラーキンの野性味あふれるパフォーマンスと精密な技術はエルナを納得させるに十分だった。特にライブにおいて、二つのドラムセットをステージに並べ、エルナとラーキンが激しいドラムバトル(Batalla de los Tambores) を繰り広げる演出は、これ以降のゴッドスマックのコンサートにおける名物となった。
4.2 『スコーピオン・キング』と「I Stand Alone」
ラーキン加入後の最初の大きな仕事は、映画『スコーピオン・キング (The Scorpion King)』のサウンドトラックへの楽曲提供であった。提供された新曲 「I Stand Alone」は、映画のヒットと共に爆発的な人気を博し、全米メインストリーム・ロック・チャートで長期間にわたり1位を独走した。この曲は、バンドにとって最大のアンセムとなり、現在でもSpotifyなどで圧倒的な再生数を誇っている。
4.3 全米1位の衝撃: アルバム 『Faceless』
2003年4月8日、3rdアルバム『Faceless』(邦題: 『フェイスレス』) がリリースされた。このアルバムは、バンド史上初となるビルボード200チャートでの初登場1位を獲得した。初週売上は約26万9,000枚を記録した。
『Faceless』は、ラーキンのドラミングによってリズムの切れ味が増し、メロディとヘヴィネスのバランスが極まった作品と評価された。「Straight Out of Line」や「Re-Align」、「Serenity」といったシングルが次々とヒットし、アルバムは短期間でプラチナム認定を受けた。このアルバムの成功により、ゴッドスマックは「中堅バンド」から「アリーナ・ヘッドライナー」へと完全に昇格した。
4.4 アコースティックへの挑戦:『The Other Side』
2004年、バンドは音楽的な幅を広げる試みとして、アコースティックEP 『The Other Side』をリリースした。これはアリス・イン・チェインズの『Jar of Flies』に倣ったもので、既存曲のアコースティック・アレンジに加え、「Running Blind」や「Touché」 といった新曲が収録された。このEPもビルボード200で5位を記録し、ヘヴィなディストーション・ギターがなくともGODSMACKの楽曲が成立することを証明した。
第5章: 成熟とブルースへの回帰 (2006-2009)
5.1 『IV』とアンディ・ジョーンズ
2006年4月、4thアルバム『IV』(邦題:『IV』) がリリースされた。タイトルトラックの「IV」は4枚目のアルバムであることだけでなく、レッド・ツェッペリンの『Led Zeppelin IV』へのオマージュも込められているとされる。プロデュースには、そのツェッペリンやローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) を手掛けた伝説的エンジニア、アンディ・ジョーンズ (Andy Johns) が迎えられた。
このアルバムでバンドは、よりクラシックなロックやブルースのルーツを探求した。「Speak」や「Shine Down」といった楽曲には、グルーヴ重視のオールドスクールなロックのフィーリングが色濃く反映されている。『IV』はビルボード200で初登場1位を記録し、これで2作連続の全米No.1となった。
5.2 10周年とベストアルバム
2007年、バンド結成10周年を記念して初のベストアルバム『Good Times, Bad Times... Ten Years of Godsmack』 がリリースされた。このアルバムには、これまでのヒットシングルに加え、レッド・ツェッペリンの名曲 「Good Times Bad Times」のカバーが収録された。ビルボードチャートでは35位を記録した。
その後、バンドは一時的な休息期間に入り、各メンバーはサイドプロジェクトや個人的な活動に時間を費やした。
第6章: ヘヴィネスの復権と1000馬力の加速 (2010-2017)
6.1 『The Oracle』: 3作連続の全米1位
2010年5月、5thアルバム 『The Oracle』(邦題: 『ジ・オラクル』)をリリースし、バンドはシーンに復帰した。前作『IV』でのブルージーな実験から一転し、今作では「Cryin' Like a Bitch」や「War and Peace」 に見られるような、初期の攻撃的でメタリックなサウンドへと回帰した。
『The Oracle』は、初週に11万7,000枚を売り上げ、ビルボード200で初登場1位を獲得した。これによりゴッドスマックは、『Faceless』、『IV』、『The Oracle』と、オリジナル・スタジオ・アルバム3作連続で全米1位を獲得するという快挙を達成した。当時、これを達成していたロックバンドは、リンキン・パーク、ディスターブド (Disturbed), メタリカ、ステインド(Staind) などごく僅かであった。
6.2 『1000hp』 とボストンの「ゴッドスマック・デー」
2014年、6thアルバム 『1000hp』(邦題:『1000hp』) がリリースされた。タイトルトラックの「1000hp」は、バンドの初期の苦闘と成功への軌跡を歌った自伝的な楽曲であり、パンキッシュな疾走感が特徴である。エルナによれば、この曲はスタジオで「ものの1時間程度」で書き上げられたという。
アルバムはビルボード200で初登場3位を記録した。初週売上は約5万8,000枚と、音楽業界全体のCD不況の影響を受けて数字は減少したが、ロックチャートでは依然として圧倒的な強さを見せた。
このアルバムのリリースに合わせ、ボストン市長のマーティ・ウォルシュ (Marty Walsh) は、2014年8月6日をボストン市における「ゴッドスマック・デー (Godsmack Day)」と制定することを宣言した。これは、ローレンスの路上から始まったGODSMACKの功績が、地元社会に深く認められた瞬間であった。
第7章: 伝説の再定義 - メロディックな進化 (2018-2020)
7.1 『When Legends Rise』 と外部ライターの導入
2018年4月、7thアルバム 『When Legends Rise』(邦題: 『ホエン・レジェンズ・ライズ』)がリリースされた。このアルバムでサリー・エルナは大きな賭けに出た。これまでの「バンド内でのジャムセッションによる作曲」というスタイルを一部変更し、エリック・ロン(Erik Ron) ら外部のプロデューサーやソングライターを積極的に起用したのである。
目的は、サウンドを現代化し、よりメロディックで普遍的な「ロック・アンセム」を作ることだった。その結果、シングル 「Bulletproof」は2018年に全米ロックラジオで最も再生された楽曲となり、プラチナム認定を受ける大ヒットとなった。アルバム自体もゴールド認定を受け、ビルボードのハードロック・アルバムチャート、ロック・アルバムチャートなどで1位を独占した。
7.2 「Scars Foundation」の設立
この時期の特筆すべき活動として、非営利団体「Scars Foundation (スカーズ・ファウンデーション)」の設立が挙げられる。アルバム収録曲 「Under Your Scars」に触発されて設立されたこの財団は、メンタルヘルスの問題に苦しむ人々を支援し、自殺予防や精神的ケアの重要性を啓蒙することを目的としている。エルナやバンドメンバーは、自身の過去の苦悩や経験を共有し、音楽を通じて社会貢献活動に深く関与するようになった。
第8章: 『Lighting Up the Sky』とスタジオ作品からの卒業 (2021-2023)
8.1 最後のスタジオ・アルバム宣言
2023年2月24日、バンドは8枚目となるスタジオ・アルバム 『Lighting Up the Sky』(邦題:『ライティング・アップ・ザ・スカイ』)をリリースした。制作段階から、サリー・エルナはこの作品が「ゴッドスマックにとって最後のオリジナル・スタジオ・アルバムになる」と公言していた。
エルナはその理由について、「バンドが解散するわけではない」と前置きした上で、「ファンがライブで聴きたいのは『I Stand Alone』 や 『Voodoo』 といったクラシックなヒット曲だ。これ以上新しいアルバムを作り続けて、セットリストから名曲を外すようなことはしたくない」と語っている。GODSMACKは「レガシー・アクト (Legacy Act)」として、過去の膨大なヒット曲を祝うキャリアのフェーズに移行することを選択したのである。
8.2 「Surrender」 とチャートでの有終の美
先行シングル「Surrender」は、人間関係における争いの疲弊と降伏をテーマにした楽曲で、ビルボード・メインストリーム・ロック・チャートで1位を獲得した。これにより、GODSMACKはチャート史上最も多くのトップ10ヒットを持つアーティストの一つとしての記録を更新した。アルバムはビルボード200で19位を記録し、有終の美を飾った。
第9章: 大分裂と新時代の幕開け (2024-Present)
9.1 トニー・ランボーラとシャノン・ラーキンの引退
2024年、バンドは結成以来最大の激震に見舞われた。長年サウンドの中核を担ってきたギタリストのトニー・ランボーラと、ドラマーのシャノン・ラーキンがバンドを脱退したことが公式に発表されたのである。
彼らの脱退理由は、音楽的な不和や人間関係のもつれではなく、「ツアー生活からの引退」であった。公式声明やラーキンのコメントによれば、2024年の時点で二人はエルナとメリルに対し、これ以上過酷なツアーを続ける意思がないことを伝えていた。60歳を迎える彼らは、家族との時間を優先し、静かな生活を送ることを望んだのである。エルナは彼らの決断を尊重し、「喧嘩別れではなく、彼らは名誉ある引退をした。私たちは一生の兄弟だ」と述べている。
9.2 新体制: ウィル・ハントとサム・バム・コルトンの加入
- ドラム: ウィル・ハント (Will Hunt)
エヴァネッセンス (Evanescence) の正ドラマーとして知られ、ブラック・レーベル・ソサイエティやスタティック-X (Static-X) などでも手腕を振るった実力派。ラーキンの穴を埋めるに足るパワーとテクニックを持つ。 - ギター: サム・バム・コルトン (Sam Bam Koltun)
ドロシー (Dorothy) やファスター・プッシーキャット (Faster Pussycat) で活動する新鋭ギタリスト。ヌーノ・ベッテンコート (エクストリーム) の紹介でバンドに参加したとされる。
9.3 2026年への展望と「アルバム引退」の撤回?
2025年12月、サリー・エルナはインタビューにおいて、新体制でのバンドの状態が極めて良好であることを明かした。さらに、「オリジナルメンバーでのアルバムはもうないと言ったが、新しいメンバーと共に2026年に向けてエキサイティングな計画がある」と語り、以前の「最後のアルバム」宣言を事実上撤回し、新曲の制作を示唆している。ゴッドスマックの物語は、まだ終わっていないのである。
第10章: メンバー詳細バイオグラフィー
10.1 現行メンバー (Current Members)
| 名前(英語表記) | パート | 生年月日・出身 | 在籍期間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| サリー・エルナ (Sully Erna) |
ボーカル ギター |
1968年2月7日 マサチューセッツ州ローレンス |
1995-現在 | バンドの創設者、リーダー。元々はドラマー。ソロアルバム『Avalon』(2010)、『Hometown Life』 (2016)もリリース。 |
| ロビー・メリル (Robbie Merrill) |
ベース | 1963年6月13日 マサチューセッツ州ローレンス |
1995-現在 | 創設メンバー。重厚なベースラインでバンドのボトムを支える。フィンガーピッキングの名手。 |
| ウィル・ハント (Will Hunt) |
ドラム | 1971年9月5日 フロリダ州ゲインズビル |
2025-現在 | エヴァネッセンス等で活動。2025年のツアーより参加。 |
| サム・バム・コルトン (Sam Bam Koltun) |
ギター | (詳細非公開) セントルイス出身 |
2025-現在 | ドロシー、ファスター・プッシーキャット等で活動。2025年のツアーより参加。 |
10.2 旧メンバー (Former Members)
| 名前(英語表記) | パート | 在籍期間 | 脱退理由・備考 |
|---|---|---|---|
| トニー・ランボーラ (Tony Rombola) |
ギター | 1996-2024 | ツアー生活からの引退。多くのヒット曲のリフを生み出した。サイドプロジェクト 「The Apocalypse Blues Revival」でも活動。 |
| シャノン・ラーキン (Shannon Larkin) |
ドラム | 2002-2024 | ツアー生活からの引退。エルナとのドラムバトルは伝説的。以前はアグリー・キッド・ジョー等に在籍。 |
| トミー・スチュワート (Tommy Stewart) |
ドラム | 1995-1997 1998-2002 |
『Godsmack』 『Awake』に参加。脱退後、Fuel等に参加。 |
| リー・リチャーズ (Lee Richards) |
ギター | 1995-1996 | 創設メンバー。「Keep Away」の共作者。 |
| ジョー・ダルコ (Joe D'Arco) |
ドラム | 1997-1998 | 『All Wound Up...』 リリース後のツアーに参加。2024年死去。 |
第11章: ディスコグラフィー (Discography)
ゴッドスマックの作品は、日本でもユニバーサル・ミュージック (Universal Music) 等からリリースされており、日本盤独自のボーナストラックや帯 (Obi)、解説書が付属している。
11.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
| 発売日(米国) | タイトル (邦題) | 米国順位 | RIAA認定 | 日本盤の特徴・ボーナストラック |
|---|---|---|---|---|
| 1998/08/25 | Godsmack (ゴッドスマック) |
#22 | 5x Platinum | メジャーデビュー作。日本盤にはボーナストラックとして「Whatever」 「Keep Away」等の別テイクが含まれる場合がある。 |
| 2000/10/31 | Awake (アウェイク) |
#5 | 2x Platinum | 日本盤ボーナス:「Why」、「Sweet Leaf」 (Black Sabbath cover) 等のパターンあり。品番: UICU-1004等。 |
| 2003/04/08 | Faceless (フェイスレス) |
#1 | Platinum | 日本盤(UICU-1040) ボーナス: 「Keep Away (Live)」を収録。解説・歌詞対訳付き。 |
| 2006/04/25 | IV (IV) |
#1 | Gold | 日本盤(UICU-1109) ボーナス: 「Safe & Sound」を収録。2006年4月26日発売。 |
| 2010/05/04 | The Oracle (ジ・オラクル) |
#1 | Gold | 日本盤(UICU-1200) ボーナス: 「I Blame You」を収録。 |
| 2014/08/05 | 1000hp (1000hp) |
#3 | - | 輸入盤国内仕様などが流通。タワーレコード等で取り扱い。 |
| 2018/04/27 | When Legends Rise (ホエン・レジェンズ・ライズ) |
#8 | Gold | 日本盤(UICN1093-) ボーナス: 「Let It Out」等を収録する場合あり。 |
| 2023/02/24 | Lighting Up the Sky (ライティング・アップ・ザ・スカイ) |
#19 | - | 日本盤(UICY-16145等)流通。最後のスタジオ・アルバム。 |
11.2 EP & コンピレーション (EPs & Compilations)
- The Other Side (2004) - ビルボード5位。ゴールド認定。アコースティックEP。
- Good Times, Bad Times... Ten Years of Godsmack (2007) - ビルボード35位。ベストアルバム。
11.3 映像作品(DVDs)
- Live (2001) - ライブDVD。ゴールド認定。
- Smack This! (2002) - ドキュメンタリー&ライブ。
- Changes (2004) - ゴールド認定。
11.4 主要シングルとチャート記録 (Billboard Mainstream Rock Chart)
ゴッドスマックはロックラジオ・チャートにおいて圧倒的な記録を持つ。
| 年 | タイトル | 最高位 | 収録アルバム | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1998 | Whatever | #7 | Godsmack | ブレイクのきっかけとなった曲。 |
| 1999 | Keep Away | #5 | Godsmack | |
| 1999 | Voodoo | #5 | Godsmack | 独特のトライバルリズムで人気。 |
| 2000 | Awake | #1 | Awake | 米海軍CMソング。 |
| 2002 | I Stand Alone | #1 | Faceless | 映画『スコーピオン・キング』主題歌。 |
| 2003 | Straight Out of Line | #1 | Faceless | グラミー賞ノミネート。 |
| 2006 | Speak | #1 | IV | |
| 2010 | Cryin' Like a Bitch | #1 | The Oracle | |
| 2014 | 1000hp | #1 | 1000hp | |
| 2018 | Bulletproof | #1 | When Legends Rise | プラチナム認定シングル。 |
| 2019 | Under Your Scars | #1 | When Legends Rise | ゴールド認定シングル。 |
| 2022 | Surrender | #1 | Lighting Up the Sky |
第12章: 音楽的スタイルと影響、そして遺産
12.1 アリス・イン・チェインズとの比較論
キャリアの初期において、ゴッドスマックは頻繁にアリス・イン・チェインズ (Alice in Chains) と比較され、時には「クローン」と揶揄された。その理由は明確である。サリー・エルナのボーカルスタイル(特にレイン・ステイリーを彷彿とさせる唸るような歌唱法)や、ダウンチューニングされた陰鬱なリフ、そしてバンド名やロゴ (太陽のモチーフ)の類似性などが挙げられる。
しかし、ゴッドスマックはアルバムを重ねるごとに独自性を確立していった。アリス・イン・チェインズが持つ「麻薬的な気だるさ」や「ハーモニー」に対し、ゴッドスマックはより「メタリックな攻撃性」と「パーカッシブなグルーヴ」を強調した。特にシャノン・ラーキン加入以降の複雑なリズム展開は、GODSMACKを単なるフォロワーから独立した「ゴッドスマック・サウンド」の確立者へと進化させた。
12.2 ライブバンドとしての評価
GODSMACKの真価はスタジオ・アルバム以上にライブ・パフォーマンスにあるとされる。エルナの圧倒的なカリスマ性と観客掌握術、そして前述の「ドラムバトル」に代表されるエンターテインメント性は、オズフェストやメイヘム・フェスティバル (Mayhem Festival) といった主要なロックフェスのヘッドライナーを務めるに相応しいものであった。
12.3 アメリカン・ハードロックの守護者
ゴッドスマックは、グランジの終焉とニュー・メタルの台頭という時代の狭間に生まれ、トレンドが移り変わる中でも頑なに「ヘヴィでグルーヴィなロック」を貫き通した。その一貫性が、20年以上にわたるファンの忠誠心を獲得した最大の理由である。2024年のメンバーチェンジを経てなお、GODSMACKは進化を止めようとはしていない。2026年以降の新たな章において、GODSMACKがどのような伝説を築き上げるのか、世界中のロックファンが注目している。
News
元GODSMACKのLee Richards、初アルバム『Songs From A Broken World』を10月30日に発売 先行曲「Faithless」公開
GODSMACKの初代ギタリストで、DropboxやAnother Animalの中心的なソングライターでもあるLee Richardsが、全曲を単独で作曲・プロデュース。Metalvilleからのリリースとなる。
GODSMACK、"The Rise Of Rock"ワールドツアーの2026年10月・米公演を追加発表 — DOROTHYが同行
DOROTHYがダイレクト・サポートとして参加する。