TOOL
アメリカのオルタナティヴ・メタル/プログレッシヴ・メタル・バンド、TOOL(トゥール)のバイオグラフィとディスコグラフィー。1992年のEP『Opiate』から2019年の『Fear Inoculum』までの6作に個別ページを用意し、収録曲、CD情報、ライナーノーツ、公式音源と映像、来日公演の記録をまとめている。
Biography
TOOL
バイオグラフィー
TOOL(トゥール)は、1990年にロサンゼルスで結成されたアメリカのバンドである。歌のメイナード・ジェームス・キーナン、ギターのアダム・ジョーンズ、ドラムのダニー・ケアリー、ベースのポール・ダムールの4人で始まり、1995年からはジャスティン・チャンセラーがベースを弾いている。1992年のEP『Opiate』に続いて、1993年の『Undertow』、1996年の『Ænima』、2001年の『Lateralus』、2006年の『10,000 Days』とアルバムを重ね、13年の間をおいて2019年に『Fear Inoculum』を出した。『Lateralus』『10,000 Days』『Fear Inoculum』はいずれもアメリカのBillboard 200で1位になり、グラミー賞はバンドとして3度、アート・ディレクターとしてのアダム・ジョーンズが1度受けている。2026年10月の時点で、バンドは6作目のアルバムに取り組んでおり、ダニー・ケアリーは2027年の発表を目標に挙げている。
メンバーと結成(1990〜1991年)
メイナード・ジェームス・キーナンの公認伝記の紹介文によれば、キーナンはアメリカ中西部で育ち、陸軍で数年を過ごしたのち美術学校に学び、ボストンのペットショップで働いたこともあった(ブラバマウス、2016年)。TOOLを始めたころはハリウッドで映画のセットを作る仕事で暮らしを立てており、キーナンは2015年の取材で、映画と音楽の業界で目にした偽善への反発が初期の曲の原動力になったと振り返っている(ローリング・ストーン誌、2018年)。アダム・ジョーンズは高校時代、のちにRAGE AGAINST THE MACHINEのギタリストになるトム・モレロと、ELECTRIC SHEEPというバンドを組んでいた(Louder、2026年)。美術学校を出たジョーンズは映画の特殊効果の世界に進み、『A Nightmare on Elm Street 5: The Dream Child』の特殊メイクのほか、『Terminator 2: Judgment Day』や『Jurassic Park』などの仕事を手がけた(プラネット・ロック、2022年)。ダニー・ケアリーはカンザス州パオラで育ち、ミズーリ大学カンザスシティ校で打楽器を学んだのちロサンゼルスに移って、Carole Kingらの録音にスタジオ・ドラマーとして加わり、PIGMY LOVE CIRCUSでも叩いていた(Sonor)。1980年代の終わりからは、冗談めいた作風のGREEN JELLŸでもドラムを務めた(Louder、2016年)。
キーナンの公認伝記『A Perfect Union of Contrary Things』の一節によれば、ジョーンズは、キーナンが以前のバンドC.A.D.で作ったカセットを聴き、GREEN JELLŸのステージに立つキーナンも見ていて、何か月も前から一緒にやろうと誘っていた。乗り気でなかったキーナンも、試しに合わせてみてジョーンズのリズムの確かさを認めた。やがてジョーンズは、Stan Winstonの特殊効果スタジオで働いていた同僚で、ワシントン州スポーケンから来ていたポール・ダムールを、ケアリーのリハーサル・スタジオに連れてきた。キーナンは、正式なベーシストが見つかるまでのつなぎとして、ダムールがうってつけだと考えたという(メタル・インジェクション、2016年)。一方ケアリーは、路地越しに聞こえたキーナンの声に歌い手の資質を感じ、バンドを組もうとしていたジョーンズにキーナンを引き合わせたのは自分だと語っている(Songfacts)。
バンドは1990年に結成され(ブラバマウス、2023年)、1991年には6曲入りのデモ・テープ『72826』を作った。のちに『Undertow』に収められる「Sober」と「Crawl Away」の初期の形が、ここに入っている(ローリング・ストーン誌、2018年/アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。キーナンは、ロサンゼルスのクラブを占めていたヘア・メタルのバンドに背を向け、地元のアンダーグラウンドのバンドと結びついて新しい場を作ろうとしていたと語っている(ローリング・ストーン誌、2018年)。バンドが最初に契約したのは、Lou Magliaが興したレーベルZoo Entertainmentである(Louder、2016年)。
『Opiate』と『Undertow』(1992〜1994年)
最初の正式な作品は、1992年3月のEP『Opiate』である(Louder、2016年)。ジョーンズは2013年、そのころには『Undertow』の曲の半分ほどが書けていたが、レーベルの担当者から一番重い曲を出して注目を集めるよう勧められ、重い曲を選んで「予告編」のような作品にしたと語っている(ローリング・ストーン誌、2018年)。バンドはRAGE AGAINST THE MACHINE、WHITE ZOMBIE、ROLLINS BANDらと共演し、1992年のROLLINS BANDのツアーでは前座を務めた。キーナンはRAGE AGAINST THE MACHINEの「Know Your Enemy」にも歌で加わっている(Louder、2024年/ローリング・ストーン誌、2018年)。
最初のフル・アルバム『Undertow』は1992年の秋、ハリウッドのGrandmaster Recordersとヴァン・ナイズのSound Cityで録音され、バンドとシルヴィア・マッシーが共同で制作した(ローリング・ストーン誌、2018年)。アルバムは1993年4月に出て(Louder、2024年)、4月24日付のBillboardのヒートシーカーズ・チャートに25位で初めて登場し、のちに1位まで上がった。Billboard 200での最高位は、同じ年の11月の50位である(ビルボード、2019年)。「Bottom」ではヘンリー・ロリンズが、キーナンがライヴで語っていた部分を自分の言葉で言い換えて吹き込んだ。最後の「Disgustipated」の録音では、キーナンが古いアップライト・ピアノに散弾銃を4発撃ち込み、ROLLINS BANDのクリス・ハスケットがそのピアノを大ハンマーで叩き壊して、クレジットに名を残している(ローリング・ストーン誌、2018年/Louder、2016年)。アメリカでの売り上げは200万枚を超えた(ローリング・ストーン誌、2018年)。
「Sober」と「Prison Sex」のビデオは、Fred Stuhrがジョーンズの意見を取り入れて作ったストップモーション・アニメーションで、メンバーはほとんど姿を見せない。「Sober」はMTVで繰り返し流された(ローリング・ストーン誌、2018年)が、性的虐待の連鎖を描いた「Prison Sex」のビデオは、MTVに放送を拒まれた(Louder、2024年・2016年)。1993年にはLollapaloozaのツアーとイギリスのReadingフェスティヴァルに出演し、1994年にはGlastonburyにも出た(Louder、2024年)。
『Undertow』のライナーノーツには、コメディアンのビル・ヒックスの名が挙げられている。これをきっかけにバンドとヒックスは親しくなり、1993年8月、カリフォルニア州アーウィンデールでのLollapaloozaではヒックスがTOOLを紹介したが、ヒックスは1994年2月にすい臓がんで亡くなった(ローリング・ストーン誌、2018年)。
ベーシストの交代と『Ænima』(1995〜1998年)
1995年、ポール・ダムールがバンドを去った(Louder、2024年)。ケアリーによれば、ギターがもともとの楽器だったダムールは、『Undertow』の前から別のベーシストを入れて自分はギターを弾きたいと望んでいた(ローリング・ストーン誌、2018年)。ダムール自身は2024年、『Undertow』の成功のあとはバンドが行き詰まり、次のアルバムの曲作りに1年をかけて5曲ほどしかできなかったのがもどかしかったと語っている(Louder、2024年)。後任のジャスティン・チャンセラーは、TOOLとツアーを共にしたこともあるイギリスのバンドPEACHのベーシストだった(Songfacts/Louder、2016年)。チャンセラーによれば、最初にオーディションに誘われたときは気後れして断ったが、兄に説得されて考え直した(Ernie Ball)。
2作目のアルバム『Ænima』は、1996年9月17日にアナログ盤で、10月1日にCDで出た(Louder、2016年/Loudwire)。プロデューサーのデヴィッド・ボトリルは、前の年にKING CRIMSONの『Thrak』を手がけていた(Louder、2026年)。アルバムはビル・ヒックスに捧げられ、内ジャケットには医者の姿をしたヒックスの絵が「Another dead hero」の言葉とともに描かれ、「Third Eye」の前にはヒックスの語りが使われた(Loudwire)。Billboard 200では1996年10月に2位まで上がり、2019年の時点でアメリカで370万枚を売る、TOOLでもっとも売れたアルバムになっている(ビルボード、2019年)。1998年の第40回グラミー賞では、収録曲「Ænema」が最優秀メタル・パフォーマンス賞を受けた(グラミー賞公式サイト)。
シングル「Stinkfist」のビデオは、題名を嫌ったMTVによって「Track #1」の名で放送された(Louder、2026年/Loudwire)。1997年にはLollapaloozaのツアーにメイン・ステージで加わり(Songfacts)、1998年にはOzzfestのツアーに出た(MTVニュース、1998年)。
Volcanoとの係争と『Salival』(1997〜2000年)
TOOLと契約したZoo Entertainmentは、1996年にVolcano Entertainmentに売却された(Louder、2016年)。MTVニュースによれば、Volcanoは1997年の夏、バンドが1991年に結んだ契約から抜け出そうとしているとして2,500万ドルの訴えを起こし、バンドの側は、レーベルが契約のオプションを行使しなかった以上、他社と契約できるとして訴え返した。争いは1年半に及び、1998年12月の和解で、TOOLはVolcano Entertainment IIを通じて自分たちのレーベルを持つことになった(MTVニュース、1998年)。この時期、バンドは長年のマネージャーを解雇し、その元マネージャーからも報酬をめぐって訴えられている(ステレオガム、2021年)。
1999年と2000年に、TOOLが開いた公演は1度だけだった(Pollstar、2001年)。その間、キーナンはTOOLのギター・テクニシャンだったBilly HowerdelとA PERFECT CIRCLEを結成して『Mer de Noms』を出し、ジョーンズはMELVINSのBuzz Osborneと、ケアリーはDEAD KENNEDYSのジェロ・ビアフラと演奏した(ステレオガム、2021年)。ケアリーは自身のプロジェクトZAUMでも活動している(Pollstar、2001年)。2000年の暮れには、ライヴ録音と未発表のスタジオ録音を集めたCDと映像のボックス・セット『Salival』が出て(MTVニュース、2001年)、Billboard 200で38位に入った(ビルボード、2019年)。
『Lateralus』(2001〜2005年)
2001年1月には、新作の題名は『Systema Encéphale』になるとMTVニュースが伝え、バンドの公式サイトにも架空の題名や曲名が載ったが、1月28日に公式サイトが本当の題名『Lateralus』を発表した(MTVニュース、2001年/スピン誌、2001年/公式サイト、2001年)。制作は前作に続いてデヴィッド・ボトリルが担当した(MTVニュース、2001年)。
『Lateralus』は2001年5月に出て(Louder、2016年)、発売第1週に55万5,200枚を超える売り上げを記録し、TOOLにとって初めてBillboard 200の1位になった(ビルボード、2001年)。透明なページを重ねたブックレットの絵は、画家のアレックス・グレイが描いた(アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。シングル「Schism」はBillboard Hot 100で最高67位を記録し(ビルボード、2019年)、2002年の第44回グラミー賞で最優秀メタル・パフォーマンス賞を受けた(グラミー賞公式サイト)。2001年8月には、KING CRIMSONを迎えて、コロラド州のRed Rocks Amphitheatreからサンディエゴまでの短いアメリカ・ツアーを行った(Pollstar、2001年)。
『10,000 Days』(2006〜2009年)
4作目のアルバム『10,000 Days』は2006年5月に出て(Louder、2016年)、5月20日付のBillboard 200で1位に入った(ビルボード、2019年)。Louderによれば、発売第1週の売り上げは50万枚を超え、2位のPEARL JAMの2倍だった(Louder、2016年)。のちに『Fear Inoculum』を手がけるジョー・バレシも、この作品の制作に加わっている(ブラバマウス、2019年)。CDのパッケージには立体写真を見るためのレンズが組み込まれ、アート・ディレクターを務めたジョーンズは、2007年の第49回グラミー賞で最優秀レコーディング・パッケージ賞を受けた(ブラバマウス、2007年/グラミー賞公式サイト)。シングル「The Pot」はBillboardのメインストリーム・ロック・チャートで4週にわたって1位にとどまり(ビルボード、2019年)、「Vicarious」と「The Pot」はグラミー賞の最優秀ハード・ロック・パフォーマンス部門の候補になった(グラミー賞公式サイト)。2007年2月の時点で、アルバムの売り上げは141万枚を超え、バンドは日本でのツアーを終えようとしていた(ブラバマウス、2007年)。
長い空白と『Fear Inoculum』(2007〜2019年)
『10,000 Days』の後、次のアルバムが出るまでには13年かかった(ブラバマウス、2019年)。2007年、バンドのために働いていたジョーンズの友人が、自分の作ったアートワークの功績を認めるよう求めた。バンドは保険会社が対応するものと考えていたが、保険会社はこれを拒んだうえにバンドを訴え、ジョーンズによれば、争いには何百万ドルもの費用がかかった(ローリング・ストーン誌、2014年/ヤフー・ミュージック、2015年)。ケアリーは2014年、メンバーに子どもができるなど暮らしの優先順位が変わったことも、バンドの日程を合わせにくくしていると語っている(ローリング・ストーン誌、2014年)。訴訟は2015年3月の初めに、バンドに有利な形で決着した(ヤフー・ミュージック、2015年/ステレオガム、2015年)。
2019年8月2日、TOOLは、それまでCDとレコードでしか出していなかった作品を、配信とストリーミングで聴けるようにした(コンシークエンス、2019年/ビルボード、2019年)。8月17日付のBillboardのトップ・ロック・アルバム・チャートでは、『Ænima』『Lateralus』『10,000 Days』『Undertow』が1、2、4、5位を占め、『Opiate』は初めてBillboard 200に入った。8月7日に公開された表題曲「Fear Inoculum」は、10分21秒の長さでBillboard Hot 100に入り、同チャートの61年の歴史で最も長いヒット曲になった(ビルボード、2019年)。
5作目のアルバム『Fear Inoculum』は、2019年8月30日にRCA Recordsから出た。プロデュースはバンド自身で、ジョー・バレシが録音とミックスを担当している(ブラバマウス、2019年)。アルバムは発売第1週に27万ユニットを記録してBillboard 200の1位に入り、前の週に1位だったテイラー・スウィフトの『Lover』を2位に退けた(ブラバマウス、2019年/CNBC、2019年)。4インチの画面とスピーカーを組み込んだ限定盤のCDを求めて、発売日には店の前に行列ができた(CNBC、2019年)。2020年の第62回グラミー賞では、収録曲「7empest」が最優秀メタル・パフォーマンス賞を受けた(グラミー賞公式サイト)。
2020年以降
2020年3月、『Fear Inoculum』のツアーは、オレゴン州ポートランドの公演を最後に、感染症の流行のため中断された(ブラバマウス、2022年)。北米ツアーはまず延期され、6月にはすべて取りやめになった(ビルボード、2020年)。同じ年の8月、ケアリーは、バンドはもうレコード会社と契約しておらず、自由の身だと語っている(ブラバマウス、2020年)。ツアーは2022年1月10日、オレゴン州ユージーンのMatthew Knight Arenaで再開された(ブラバマウス、2022年)。
2022年3月、最初の作品の30周年を記念して、表題曲を作り直して長くした「Opiate²」が配信で出た。同じ月には、ジョーンズと映像作家のドミニク・ヘイルストーンが作った10分を超える短編映画が、46ページのアート・ブックに収めたブルーレイで出ている。TOOLにとって15年ぶりの新しいビデオだった。4月には、『Fear Inoculum』の5枚組のアナログ盤も出た(ブラバマウス、2022年)。
2023年には、アメリカのRockville、Sonic Temple、Louder Than Life、Aftershock、Power Tripといったフェスティヴァルに出演し、秋には2019年以来のカナダ公演を含むツアーを回った(公式サイト/ブラバマウス、2023年)。2024年は1月から2月にアメリカを、5月から6月にヨーロッパを回っている(公式サイト)。2025年3月にはメキシコと南米を回り、アルゼンチン、チリ、ブラジルのLollapaloozaと、コロンビアのEstéreo Picnicに出演した(公式サイト/ブラバマウス、2025年)。同じ年の7月5日には、イングランドのバーミンガムで開かれたBLACK SABBATHの最後の公演「Back to the Beginning」に出演し、BLACK SABBATHの「Hand of Doom」を演奏した(ステレオガム、2025年)。11月から12月にかけてはニュージーランド、オーストラリア、日本、ハワイを回り、ハワイでの公演は15年近くぶりだった(公式サイト/コンシークエンス、2025年)。
チャンセラーは2025年2月、南米から戻ったら3か月をスタジオでのアイディアの整理にあてると語り、1曲だけのシングルやEPで出すことも話し合っていると明かした(ブラバマウス、2025年)。2026年2月には、ケアリーが新曲づくりの最中で、2027年の発表をめざしていると語り、ラスヴェガスの会場Sphereでの連続公演についても話を進めていると明かした(Louder、2026年)。キーナンは2026年の夏、A PERFECT CIRCLEのツアー中に股関節を痛め、8月に人工股関節の手術を受けたが、25日後の9月19日には杖をついて、シカゴのRiot FestでTOOLのステージに立った(Louder、2026年)。2026年10月の時点で、新しいアルバムは2027年の発表が仮の目標とされている(Louder、2026年)。
映像とアートワーク
TOOLのビデオの多くはジョーンズが監督している(ブラバマウス、2007年)。特殊効果の仕事で身につけたストップモーションの技法は、「Sober」「Prison Sex」「Stinkfist」「Ænema」「Schism」「Parabola」「Vicarious」のビデオに生かされ、ジョーンズの作る映像はライヴでも演奏に合わせて流される(プラネット・ロック、2022年)。
アルバムのパッケージにもジョーンズの考えが強く表れている。ジョーンズは『10,000 Days』が出たころの取材で、パッケージにはいつも誰もやったことのないものを求めてきたと語っている(アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。『Ænima』のパッケージは第39回グラミー賞の最優秀レコーディング・パッケージ部門の候補になり、『10,000 Days』で受賞した(グラミー賞公式サイト)。『Fear Inoculum』の限定盤のパッケージもジョーンズの発案である(アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。画家のアレックス・グレイは『Lateralus』からTOOLの作品にかかわり、その後の2作のアルバムにも加わった(アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。グレイはキーナンの公認伝記にも序文を寄せている(ブラバマウス、2016年)。
メンバーについて
現在の編成は、歌のメイナード・ジェームス・キーナン、ギターのアダム・ジョーンズ、ドラムのダニー・ケアリー、ベースのジャスティン・チャンセラーの4人である(ブラバマウス、2025年)。チャンセラーは、4人は対等で、誰かが一人で決めることはなく、何でも4人で決めていると語っている(Ernie Ball)。初代のベーシストのポール・ダムールは、脱退の後にREPLICANTSやLUSKで活動し、2019年からはMINISTRYでベースを弾いている(Songfacts/Louder、2024年)。
キーナンはTOOLのほかに、A PERFECT CIRCLEとPUSCIFERを率いている。A PERFECT CIRCLEの『Mer de Noms』(2000年)と『Thirteenth Step』(2003年)は、いずれもプラチナ・ディスクになった(Songfacts)。PUSCIFERは、もとはコメディ番組『Mr. Show』でキーナンが演じた架空のバンドの名前で(Louder、2016年)、2007年に最初のアルバムを出し(Songfacts)、2026年2月にはアルバム『Normal Isn't』を出した(Louder、2026年)。キーナンは1995年にアリゾナ州ジェロームに移り住み、ワイナリーCaduceus Cellarsを興して、2004年に最初のワインを出した(Phoenix New Times、2024年)。2016年11月には、Sarah Jensenが書いた公認伝記『A Perfect Union of Contrary Things』が出て、ニューヨーク・タイムズのハードカバー・ノンフィクション部門のベストセラー・リストに10位で入った(ブラバマウス、2016年)。
ケアリーは1990年代の初めにPIGMY LOVE CIRCUSに加わったが、まもなくTOOLに専念するようになり、2004年には同バンドの10年以上ぶりのアルバム『The Power of Beef』に参加した(ローリング・ストーン誌、2004年)。John Ziegler、Lance Morrisonと組むVOLTOでは2013年にアルバム『Incitare』を出し(ローリング・ストーン誌、2013年)、MASTODONのブレント・ハインズらと組んだLEGEND OF THE SEAGULLMENでは2018年にアルバムを出している(Louder、2018年)。神聖幾何学に惹かれていることでも知られ、ドラムのヘッドに秘教的な図形を描いている(Louder、2026年)。2026年には、Gore Verbinskiが監督した映画『Good Luck, Have Fun, Don't Die』のサウンドトラックに加わった(Louder、2026年)。
ジョーンズは、TOOLの作品のほかにも、映画の特殊効果や漫画、写真の仕事を残している(アルティメット・クラシック・ロック、2019年)。チャンセラーは、Peter Mohamedと組んだプロジェクトMTVOIDでも活動している(ブラバマウス、2025年)。
ディスコグラフィ
スタジオ・アルバム5作と、EP、ボックス・セットを、最初に出た年の順に並べる。このほかに、1991年のデモ・テープ『72826』(2019年にYouTubeで公開された)、2022年に配信とブルーレイで出た「Opiate²」、同じ年に出た『Fear Inoculum』の5枚組のアナログ盤がある(ローリング・ストーン誌、2018年/アルティメット・クラシック・ロック、2019年/ブラバマウス、2022年)。2019年8月2日からは、それまでの作品がすべて配信でも聴けるようになった(コンシークエンス、2019年)。
| 発売 | 題名 | 種別 | レーベル | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1992年 | Opiate | EP | Zoo Entertainment | 最初の正式な作品。ライヴ録音の「Cold and Ugly」と「Jerk-Off」を含む |
| 1993年 | Undertow | スタジオ・アルバム | Zoo Entertainment | シルヴィア・マッシーと共同で制作。「Bottom」にヘンリー・ロリンズが参加 |
| 1996年 | Ænima | スタジオ・アルバム | Zoo Entertainment | ジャスティン・チャンセラーが加わった最初の作品。ビル・ヒックスに捧げられた |
| 2000年 | Salival | ボックス・セット(CDと映像) | Volcano Entertainment/Tool Dissectional | ライヴ録音と未発表のスタジオ録音を収録 |
| 2001年 | Lateralus | スタジオ・アルバム | Volcano Entertainment/Tool Dissectional | 初めてのBillboard 200での1位。ブックレットの絵はアレックス・グレイ |
| 2006年 | 10,000 Days | スタジオ・アルバム | Volcano Entertainment/Tool Dissectional | 立体写真のレンズを組み込んだパッケージでグラミー賞 |
| 2019年 | Fear Inoculum | スタジオ・アルバム | Tool Dissectional/Volcano Entertainment/RCA Records | 13年ぶりのアルバム。Billboard 200で1位 |
日本公演
日本では、1993年5月21日に『Undertow』がBMGビクターから出たのが最初の作品で、EP『Opiate』の表題曲がボーナス・トラックとして加えられていた。1996年には『Ænima』がファンハウスから、2001年5月16日には『Lateralus』がゾンバ・レコーズ・ジャパンから出て、同じ会社から6月27日にEP『Opiate』が初めて日本で出た。『10,000 Days』は2006年5月10日にBMG JAPANから出ている。『Fear Inoculum』は当初は輸入盤だけで、2019年12月18日にソニー・ミュージックジャパンインターナショナルから日本盤が出た(オリコン、タワーレコード、ソニー・ミュージックジャパン)。ボックス・セット『Salival』は、日本では出ていない(タワーレコード、オリコン)。
初来日は2001年7月29日、新潟県の苗場スキー場で開かれたFUJI ROCK FESTIVAL '01の3日目で、GREEN STAGEでSYSTEM OF A DOWNとEMINEMの間に出演した(FUJI ROCK FESTIVAL、公式サイト)。2002年4月には、ウドー音楽事務所の招きで日本で初めての単独公演を行い、東京の赤坂BLITZで2夜、大阪のMother Hall、名古屋のDIAMOND HALLを回った(ウドー音楽事務所、公式サイト)。2006年8月にはSUMMER SONIC 06に出演し、大阪と千葉の両日でSONIC STAGEのトリを務めた(SUMMER SONIC、クリエイティブマン)。2007年2月の2度目の単独ツアーはクリエイティブマンの招きで、Zepp Osaka、Zepp Tokyoでの2夜、川崎のクラブチッタ、名古屋のDIAMOND HALLを回った。Zepp Tokyoの2夜目は川崎公演が売り切れた後に加えられたもので、その川崎公演は、横浜BLITZから会場を移したものだった(クリエイティブマン、CDジャーナル)。2013年5月12日には、幕張メッセで開かれたOZZFEST JAPAN 2013の2日目に、BLACK SABBATHの前に出演した(OZZFEST JAPAN、ナタリー)。2025年12月のTOOL TOUR IN JAPAN 2025は2007年2月以来の単独公演となり、11日にKアリーナ横浜、13日にGLION ARENA KOBEで演奏した。ニュージーランドとオーストラリアを回ったこのツアーで、アジアの日程は日本の2公演だけだった(クリエイティブマン、ソニー・ミュージックジャパン、Mikiki)。同じ年の9月1日には、ダニー・ケアリーもBEATの一員として日本武道館で演奏している(キョードー東京)。
| 日付 | 会場 | 公演 |
|---|---|---|
| 2001年7月29日 | 苗場スキー場(新潟) | FUJI ROCK FESTIVAL '01(GREEN STAGE)。初来日 |
| 2002年4月10日 | 赤坂BLITZ(東京) | 日本で初めての単独公演 |
| 2002年4月11日 | 赤坂BLITZ(東京) | 単独公演 |
| 2002年4月12日 | Mother Hall(大阪) | 単独公演 |
| 2002年4月13日 | 名古屋DIAMOND HALL(愛知) | 単独公演 |
| 2006年8月12日 | WTCオープンエアスタジアム・インテックス大阪&Zepp大阪(大阪) | SUMMER SONIC 06。SONIC STAGEのトリ |
| 2006年8月13日 | 千葉マリンスタジアム&幕張メッセ(千葉) | SUMMER SONIC 06。SONIC STAGEのトリ |
| 2007年2月8日 | Zepp Osaka(大阪) | TOOL JAPAN TOUR 2007 |
| 2007年2月9日 | Zepp Tokyo(東京) | TOOL JAPAN TOUR 2007 |
| 2007年2月10日 | Zepp Tokyo(東京) | TOOL JAPAN TOUR 2007。追加公演 |
| 2007年2月12日 | クラブチッタ川崎(神奈川) | TOOL JAPAN TOUR 2007。横浜BLITZから会場を変更 |
| 2007年2月14日 | 名古屋DIAMOND HALL(愛知) | TOOL JAPAN TOUR 2007 |
| 2013年5月12日 | 幕張メッセ 国際展示場9~11ホール(千葉) | OZZFEST JAPAN 2013(2日目) |
| 2025年12月11日 | Kアリーナ横浜(神奈川) | TOOL TOUR IN JAPAN 2025 |
| 2025年12月13日 | GLION ARENA KOBE(兵庫) | TOOL TOUR IN JAPAN 2025 |
出典について
出典は、バンド公式サイトtoolband.comの公演一覧(2001年と2002年のページはInternet Archiveに残るもの)、グラミー賞(レコーディング・アカデミー)の公式サイト、ローリング・ストーン誌、スピン誌、ビルボード、ブラバマウス、Louder(メタル・ハマー誌、プログ誌ほか)、MTVニュース(Internet Archiveに残る1998年と2001年の記事)、Loudwire、コンシークエンス、ステレオガム、アルティメット・クラシック・ロック、メタル・インジェクション、Pollstar、ヤフー・ミュージック、CNBC、プラネット・ロック、Phoenix New Times、Songfacts、SonorとErnie Ballのアーティスト紹介である。作品の発売日とレーベルの一部はMusicBrainzで確かめた。日本盤と来日公演は、オリコン、タワーレコード、ソニー・ミュージックジャパン、クリエイティブマン、ウドー音楽事務所、SUMMER SONIC、FUJI ROCK FESTIVAL、OZZFEST JAPAN、ナタリー、CDジャーナル、Mikiki、キョードー東京の各ページ(一部はInternet Archiveに残るもの)で確かめた。
Trivia
2020年1月の第62回グラミー賞で、『Fear Inoculum』の「7empest」が最優秀メタル・パフォーマンス賞を受けた。賞を受け取ったのはジャスティン・チャンセラーとダニー・ケアリーの2人で、ケアリーは、今は神々の機嫌を損ねるのに良い時期ではないからと冗談を言って、すべての神々に感謝した。同じ日の授賞式では表題曲「Fear Inoculum」も最優秀ロック・ソング賞の候補になっていたが、こちらはゲイリー・クラーク・ジュニアの「This Land」が受賞した。
アダム・ジョーンズは高校時代、のちにRAGE AGAINST THE MACHINEのギタリストになるトム・モレロと親しく、2人はELECTRIC SHEEPというバンドを一緒に組んでいた。モレロの母親のメアリー・モレロは、ジョーンズのホームルームの担任でもあった。2人はその後それぞれの道に進み、ジョーンズは美術学校を出てハリウッドの特殊効果の工房で働くようになった。
TOOLに加わる前のアダム・ジョーンズは、映画の特殊メイクや特殊効果の仕事をしていた。『A Nightmare on Elm Street 5: The Dream Child』では「子宮の中のフレディ・クルーガー」の特殊メイクを作り、Stan Winstonのスタジオでは『Jurassic Park』のために、「Spitter」の愛称で呼ばれた恐竜ディロフォサウルスの小型の模型と実物大の造形を手がけた。2022年、ジョーンズはそのころの写真をInstagramで公開している。この世界で身につけたストップモーションの技法は、「Sober」から「Vicarious」までのTOOLのビデオに生かされている。
TOOLの始まりについては、メンバーの記憶が食い違っている。ダニー・ケアリーは1997年の取材で、路地の向かいで隣人を怒鳴りつけている声を聞いて歌い手の声だと思ったのがメイナード・ジェームス・キーナンを知ったきっかけで、バンドを組もうとしていたアダム・ジョーンズにキーナンを引き合わせたのは自分だと語っている。一方、キーナンの公認伝記は、ジョーンズがキーナンの以前のバンドC.A.D.のカセットを聴き、ステージも見たうえで、何か月もかけてキーナンを口説いたと書いている。
ダニー・ケアリーは1980年代の終わりから、冗談めいた作風のバンドGREEN JELLŸでドラムを叩いていた。メイナード・ジェームス・キーナンもこのバンドのステージに立ったことがあり、ヒット曲「Three Little Pigs」にはコーラスで加わっている。この曲のクレイ・アニメーションのビデオを監督したFred Stuhrは、ドラムを叩くケアリーと、ところどころに顔を出すキーナンを作品に登場させた。Stuhrはのちに、アダム・ジョーンズの意見を取り入れて、TOOLの「Sober」と「Prison Sex」のストップモーションのビデオも監督している。
『Undertow』の「Bottom」で語りを吹き込んだヘンリー・ロリンズについて、メイナード・ジェームス・キーナンは1993年、ロリンズは自分たちとのポーカーで負けた3,000ドルほどの借金を返すために参加したのだと話した。しかも物販の売り上げから金を借りてまで賭けていた、という念の入った話である。ローリング・ストーン誌は、キーナンが話を面白く盛ることがあると断ったうえでこの逸話を紹介している。バンドとロリンズが親しくなったのは、TOOLが1992年のROLLINS BANDのツアーで前座を務めたときだった。
『Undertow』のアートワークの大半はアダム・ジョーンズの手によるもので、表紙の赤い肋骨の彫刻も彼が作った。中の写真に裸の女性と男性が写っていたため、Wal-MartとK-Martはこのアルバムを扱わず、バンドは別の表紙の盤も売ることになった。裏表紙で、立ち並ぶフォークの中に立ち、脇腹に「undertow」の文字がある豚は、ジョーンズが飼っていたモーである。実際には毛を剃ってはおらず、文字はあとから写真に加えたもので、モーはその後、KYUSSやTHE OBSESSEDで弾いたベーシストのスコット・リーダーの砂漠の牧場で長生きしたという。
「Prison Sex」がシングルになったとき、レーベルはバンドに断りなく、TOOLのレンチのロゴを入れた子ども用のTシャツを作り、ラジオ局に配ろうとした。NIRVANAが同じような宣伝で成功していたからだという。アダム・ジョーンズによれば、レンチのロゴはそもそも男根の象徴だった。メイナード・ジェームス・キーナンが、この曲が子どものころに受けた性的虐待を歌ったものだと担当者に説明し、Tシャツは結局配られなかった。この曲のビデオは、MTVにも放送を拒まれている。
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TOOLの4作目。2006年5月2日発売。バンド自身がプロデュースし、ビルボード200で初登場1位。立体視レンズ付きの装丁はグラミー賞最優秀レコーディング・パッケージ賞を受けた。
TOOLの3作目。2001年5月15日発売。レーベルとの訴訟が和解した後に作られ、ビルボード200で初の1位を獲得、「Schism」はグラミー賞最優秀メタル・パフォーマンス部門を受賞した。
TOOL初のフル・アルバム。1993年4月6日発売。初代ベーシストが参加した唯一のフル・アルバムで、1993年に新人向けのヒートシーカーズ・チャートで1位、ビルボード200で50位を記録した。