MASTERPLAN

21世紀初頭の欧州へヴィメタル・シーンにおいて、MASTERPLAN (マスタープラン)の登場は単なる新人バンドのデビュー以上の意味を持っていた。

Biography

MASTERPLAN (マスタープラン)
ジャーマン・パワーメタルの進化と系譜

1. ジャーマン・メタルにおけるMASTERPLANの歴史的意義

21世紀初頭の欧州へヴィメタル・シーンにおいて、MASTERPLAN (マスタープラン)の登場は単なる新人バンドのデビュー以上の意味を持っていた。ドイツのパワーメタル界の巨人 Helloween (ハロウィン) から離脱した Roland Grapow (ローランド・グラポウ)とUli Kusch (ウリ・カッシュ) が中心となり結成されたこのバンドは、当初から 「スーパーグループ」としての宿命を背負っていた。MASTERPLANの結成は、1980年代から続くジャーマン・メタル (メロディック・スピード・メタル)の伝統と、2000年代のモダンでプログレッシブなヘヴィネスとの融合を試みる壮大な実験であったと言える。

2. 結成前夜: Helloween からの離脱と「裏切り」の真相 (2000-2001)

2.1 『The Dark Ride』 ツアーと亀裂の発生

MASTERPLAN (マスタープラン)の歴史を語る上で、その前日譚となる Helloween (ハロウィン) 末期の動乱は避けて通れない。2000年にリリースされた Helloween (ハロウィン)のアルバム『The Dark Ride』は、プロデューサー Roy Z (ロイ・Z)を迎え、従来の明るい「ハッピー・メタル」から、ダウンチューニングを多用したダークでモダンなサウンドへと大きく舵を切った作品であった。この音楽性の変化は、バンド内部、特にリーダー格である Michael Weikath (マイケル・ヴァイカート)と、その方向性を推進した Roland Grapow (ローランド・グラポウ) および Uli Kusch (ウリ・カッシュ)との間に決定的な溝を生じさせた。

2001年の『The Dark Ride Tour』中、Grapow (グラポウ) と Kusch (カッシュ)は、バンド内での発言権や音楽的方向性の不一致から、サイドプロジェクトの構想を練り始めていた。彼らは Helloween (ハロウィン)での活動と並行して自身のアイディアを具現化する場所を求めていたが、これが他のメンバー、特にWeikath (ヴァイカート) とヴォーカルの Andi Deris (アンディ・デリス)には「バンドへの背信行為」と映った。

2.2 解雇通告と「裏切り者」の烙印

ツアー終了後の2001年夏、事態は急転する。Helloween (ハロウィン) 側は Grapow (グラポウ)と Kusch (カッシュ)の解雇を発表した。表向きの理由は「音楽的相違」であったが、その裏には根深い感情的な対立が存在した。後に Andi Deris (アンディ・デリス)はインタビューで、二人を「バンドを裏切った (betrayed the band)」 と強い言葉で非難しており、バンドの資金を私的に流用しようとしたという疑惑や、バンド内政治における不誠実さを理由に挙げている。

一方、Grapow (グラポウ)はこの主張に反論し、自身にはバンドの口座へのアクセス権はなく、給与はマネジメントから支払われていたため資金流用は不可能であると主張している。彼によれば、解雇の通達はメールで行われ、Weikath (ヴァイカート) が 「Grapow (グラポウ)とKusch (カッシュ)が残るなら自分が辞める」と迫ったことによる政治的な排除であったとされる。この双方の食い違う主張と感情的なしこりは、後の2017年の Helloween (ハロウィン) 再結成ツアー 「Pumpkins United」 に Grapow (グラポウ) と Kusch (カッシュ)が招待されなかったという事実にも色濃く反映されている。

いずれにせよ、Helloween (ハロウィン) という巨大な看板を失った二人は、自らの音楽的正当性を証明するため、そして生活の糧を得るために、新たなバンドを始動させる必要に迫られた。こうして生まれたのが MASTERPLAN (マスタープラン)であった。

3. 創設期: スーパーグループの誕生 (2002-2003)

3.1 バンド名の由来とメンバー選定の難航

バンド名 「MASTERPLAN (マスタープラン)」は、「自分たちの手で未来を切り開くためのマスタープラン(基本計画)を持つ優れたミュージシャンたち」というコンセプトに基づき命名された。当初の構想では、キーボードには Children of Bodom (チルドレン・オブ・ボドム)のJanne Wirman (ヤンネ・ウィルマン)、ヴォーカルには Symphony X (シンフォニー・エックス) の Russell Allen (ラッセル・アレン)がリストアップされていた。

しかし、Russell Allen (ラッセル・アレン)は自身のバンドを優先して辞退。さらに、Grapow (グラポウ)はかつての盟友である元 Helloween (ハロウィン) の Michael Kiske (マイケル・キスク)にも参加を打診したが、当時メタル・シーンから距離を置いていた Kiske (キスク)はこれを固辞した。

最終的に白羽の矢が立ったのは、ノルウェーのプログレッシブ・メタル・バンド Ark (アーク)や Millenium (ミレニアム)、The Snakes (ザ・スネイクス)での活動で知られる Jorn Lande (ヨルン・ランデ)であった。David Coverdale (デイヴィッド・カヴァーデイル)を彷彿とさせるブルージーでソウルフルな中音域と、Ronnie James Dio (ロニー・ジェイムス・ディオ)のような力強いハイトーンを併せ持つ彼の歌声は、Grapow (グラポウ) と Kusch (カッシュ)が目指す 「Helloween (ハロウィン)よりもさらにメロディアスで、かつ伝統的なハードロックの要素を持つパワーメタル」に合致した。

3.2 デビュー・アルバム 『MASTERPLAN』 の衝撃(2003)

2003年1月、Andy Sneap (アンディ・スニープ)をプロデューサーに迎えたデビュー・アルバム『MASTERPLAN』 がリリースされた。レコーディングには Janne Wirman (ヤンネ・ウィルマン)がセッション・キーボーディストとして参加したが、正式メンバーとしてツアーに参加することは不可能であったため、後任として無名の Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット)が加入した。ベースに関しては、レコーディングの大半を Grapow (グラポウ) 自身が担当したが、アルバム・リリース後のツアー・メンバーとして、元Iron Savior (アイアン・セイヴィアー)のJan S. Eckert (ヤン・S・エッカート)が迎えられた。

このアルバムは、"Spirit Never Die"、"Enlighten Me"、"Kind Hearted Light" といった強力なアンセムを収録しており、メディアとファンから熱狂的な支持を受けた。特に、ゲスト・ヴォーカルとして Michael Kiske (マイケル・キスク)が参加した楽曲 "Heroes"は、Helloween (ハロウィン) 分裂後のドラマを知るファンにとって、Grapow (グラポウ) と Kiske (キスク)の再会という象徴的な意味を持つ楽曲となった。

表3.1: デビュー時の主要ラインナップ (2003)

メンバー名(英語/カタカナ) 担当パート 備考
Jorn Lande (ヨルン・ランデ) Vocals Ark, Millenium等で活動。圧倒的な歌唱力でバンドの顔となる。
Roland Grapow (ローランド・グラポウ) Guitars 元Helloween。メインソングライター。
Uli Kusch (ウリ・カッシュ) Drums 元 Helloween, Gamma Ray。ソングライティングにも大きく貢献。
Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット) Keyboards リリース後に正式加入。
Jan S. Eckert (ヤン・S・エッカート) Bass 元 Iron Savior。リリース後に正式加入。

4. 黄金期の輝きと内部の亀裂:『Aeronautics』 (2004-2005)

4.1 音楽的進化と「航空学」のコンセプト

デビュー作の成功を受け、バンドは2005年に2ndアルバム 『Aeronautics (エアロノーティクス)』をリリースした。本作は「飛行」や「航空機」をテーマにした緩やかなコンセプト・アルバムであり、音楽的には前作のストレートなパワーメタル路線に加え、よりプログレッシブで緻密なアレンジが施された。Roland Grapow (ローランド・グラポウ)のヘヴィなリフと Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット)のシンフォニックなキーボード・ワーク、作用して Uli Kusch (ウリ・カッシュ) のテクニカルなドラミングが高度に融合し、バンドとしてのアンサンブルは頂点に達していた。

HammerFall (ハンマーフォール) との欧州ツアーや、初のヘッドライナー・ツアー 「Flying Aces Tour」も成功を収め、バンドは順風満帆に見えた。しかし、水面下では深刻な問題が進行していた。

4.2 ソングライティングにおける主導権争い

『Aeronautics』の制作過程において、Grapow (グラポウ) と Kusch (カッシュ)の関係は悪化の一途をたどっていた。1stアルバムでは両者が対等にアイディアを出し合っていたが、2ndアルバムでは音楽的方向性を巡る意見の相違が顕在化した。Grapow (グラポウ)は後のインタビューで、当時 Uli Kusch (ウリ・カッシュ)が自身の別プロジェクトである Beautiful Sin (ビューティフル・シン)に注力しており、MASTERPLAN (マスタープラン)へのモチベーションが低下していたと指摘している。また、私生活における問題 (離婚など)も重なり、バンド内の雰囲気は「ネガティブな時間」となっていた。

5. 第1次分裂:創設メンバーと絶対的エースの喪失(2006)

2006年、バンドは結成以来最大の危機を迎える。創設者の一人である Uli Kusch (ウリ・カッシュ)と、バンドの声である Jorn Lande (ヨルン・ランデ)が相次いで脱退を表明したのである。

5.1 Uli Kusch 脱退の背景

Uli Kusch (ウリ・カッシュ)の脱退理由は複合的である。Grapow (グラポウ)との人間関係の悪化に加え、ビジネス面での対立が決定的であったとされる。バンド運営における民主的な意思決定プロセスが機能不全に陥り、弁護士を介するほどの争いに発展した結果、両者の友情は完全に崩壊した。また、Kusch (カッシュ)にとってバンドからの収入が不安定であり、家族を養うための経済的安定を求めていたことも一因であった。彼はその後、ノルウェーに移住し、音楽業界の第一線から退こととなる。

5.2 Jorn Lande 脱退の理由: 「メタル」か「ロック」か

Jorn Lande (ヨルン・ランデ)の脱退理由は、音楽的方向性の違いに加え、 他プロジェクト(特に Avantasia)への参加やスケジュールの都合も大きな要因であった 。音楽的方向性の違いに関しては、自身のルーツである Whitesnake (ホワイトスネイク)のようなクラシック・ロックやブルース・ロックへの回帰を望んでおり、MASTERPLAN (マスタープラン)が志向する現代的なヘヴィ・メタル、特にハイトーンを多用するパワーメタル・スタイルに窮屈さを感じていた。Jorn (ヨルン)は「より実験的でモダンな要素を減らし、ストレートなスタイルに戻したい」と主張したが、バンド側(主に Grapow (グラポウ)) はこれを拒否したため、彼は自身のソロ・キャリアに専念する道を選んだ。

6. 再起への道:『MKII』と Mike DiMeo 時代(2007-2008)

主要メンバー二人を失った Roland Grapow (ローランド・グラポウ)であったが、バンドを解散させるつもりはなかった。彼は新たなメンバーを探し、バンドを再構築する。

6.1 新メンバーの加入

新たなヴォーカリストには、アメリカのヘヴィメタル・バンド Riot (ライオット)での活動で知られる Mike DiMeo (マイク・ディメオ)が抜擢された。彼の歌声はJorn (ヨルン) と同様にソウルフルでありながら、よりアメリカン・ハードロック的な艶を持っていた。ドラマーには、Rage (レイジ)、Artension (アーテンション)、Yngwie Malmsteen (イングヴェイ・マルムスティーン)など数多のバンドを渡り歩いた実力派、Mike Terrana (マイク・テラーナ)が加入した。

6.2 アルバム 『MKII』の音楽的変遷

2007年にリリースされた3rdアルバム 『MKII (マーク・ツー)』は、その名の通りバンドの第二章を告げる作品となった。Mike DiMeo (マイク・ディメオ)の加入により、サウンドは以前よりもメロディアスで、AOR的なアプローチさえ感じさせるものとなった。シングル・カットされた "Lost and Gone" はキャッチーなサビと重厚なオーケストレーションが融合した名曲として評価された。

しかし、一部の批評家からは、Jorn (ヨルン) 時代の圧倒的なパワーとカリスマ性が失われたこと、そして楽曲のテンポやヘヴィネスが減退し「レトロ」な方向に寄ったことに対する批判もなされた。Saxon (サクソン) との欧州ツアーを行うなど精力的に活動したが、Mike DiMeo(マイク・ディメオ) 在籍時のバンドは、Jorn (ヨルン) 時代の成功を完全に再現することはできなかった。

2009年、Mike DiMeo (マイク・ディメオ)はバンドを脱退する。理由は、ツアー後のバンドの活動休止期間が長く、プロフェッショナルなシンガーとして生計を立てるために他のオファーを受けざるを得なかったためとされる。

7. 幻の再結成: Jorn Lande の帰還と二度目の別離(2009-2012)

7.1 待望の復帰とアルバム 『Time to Be King』 (2010)

ファンの強い要望とレーベル (AFM Records) の働きかけにより、2009年にJorn Lande (ヨルン・ランデ)の復帰が実現した。このニュースはメタル界で大きな話題となり、2010年には復帰作となる4thアルバム 『Time to Be King (タイム・トゥ・ビー・キング)』がリリースされた。このアルバムは、初期の化学反応を取り戻したかのような力作であり、"Time to Be King" や "Far from the End of the World" といった楽曲は、バンド本来の壮大さとパワーを見せつけるものであった。

7.2 ツアーなきリリースと再度の決裂

しかし、この「再結成」は極めて不安定なものであった。アルバム・リリースに伴う本格的なツアーは行われず、ライブ活動はほぼ皆無であった。その主な原因は Jorn Lande (ヨルン・ランデ)のスケジュール優先順位にあった。彼は当時、Tobias Sammet (トビアス・サメット)率いる Avantasia (アヴァンタジア)のワールド・ツアーに参加しており、MASTERPLAN (マスタープラン) の活動よりもそちらを優先させた (ギャラの問題も絡んでいたとされる)。

Roland Grapow (ローランド・グラポウ)はインタビューで、Jorn (ヨルン)との連絡が途絶えがちになり、彼がバンドに対して情熱を持っていないことに失望したと語っている。Jorn (ヨルン)にとって MASTERPLAN (マスタープラン)はあくまで数あるプロジェクトの一つに過ぎなかったのに対し、Grapow (グラポウ)にとっては自身のキャリアの全てであった。この温度差は埋まることなく、2012年にJorn Lande (ヨルン・ランデ)は二度目の、そして事実上の最後となる脱退を選択した。ドラマーの Mike Terrana (マイク・テラーナ) も同時期にバンドを去った。

8. 新体制の確立: Rick Altziと『Novum Initium』 (2013-2016)

8.1 メンバー総入れ替えと Rick Altzi の加入

バンドを存続させるため、Roland Grapow (ローランド・グラポウ)は大幅なメンバー刷新を断行した。

  • Vocal: 元 At Vance (アット・ヴァンス) の Rick Altzi (リック・アルツィ)を起用。Jorn (ヨルン)に匹敵するハスキーでパワフルな声質の持ち主であり、後任として最適であった。
  • Bass: Jan S. Eckert (ヤン・S・エッカート)が本業の都合などで脱退し、代わりに元 Stratovarius (ストラトヴァリウス) の名手 Jari Kainulainen (ヤリ・カイヌライネン)が加入。
  • Drums: Cradle of Filth (クレイドル・オブ・フィルス) の Martin "Marthus" Skaroupka (マーティン・"マルトゥス・スカロウプカ)を起用。

8.2 『Novum Initium』: 新たな始まり

2013年にリリースされた5thアルバム 『Novum Initium (ノヴァム・イニティウム)』は、ラテン語で「新たな始まり」を意味するタイトルが示す通り、バンドの再生を高らかに宣言する作品となった。Rick Altzi (リック・アルツィ)の加入は、Jorn (ヨルン) ロスに嘆くファンを納得させるに十分な説得力を持っていた。特に10分を超えるタイトルトラック "Novum Initium"や、疾走曲"The Game"は、バンドが依然として高品質なパワーメタルを創造できることを証明した。

このラインナップは比較的安定し、2015年には初のライブ映像作品『Keep Your Dream aLive』をリリース。「Masters of Rock」 フェスティバルや 「Wacken Open Air」でのパフォーマンスを収録し、ライブ・バンドとしての健在ぶりをアピールした。

9. 過去との対峙:『PumpKings』と Helloween への回答 (2017-2023)

9.1 『PumpKings』の制作意図

2017年、バンドは全編 Helloween (ハロウィン)のカバー曲で構成されたアルバム『PumpKings (パンプキングス)』をリリースした。これは Roland Grapow (ローランド・グラポウ) が Helloween (ハロウィン) 在籍時 (1989年~2001年)に作曲した楽曲を、現在の MASTERPLAN (マスタープラン)のメンバーで再録音したものである。

このプロジェクトの背景には、同時期に進行していた Helloween (ハロウィン)の歴史的リユニオン 「Pumpkins United」がある。このリユニオンには Michael Kiske (マイケル・キスク) と Kai Hansen (カイ・ハンセン)が復帰したが、Grapow (グラポウ) と Kusch (カッシュ)には声がかからなかった。Grapow (グラポウ)は、「自分たちの作った楽曲は自分たちの子供のようなものだが、今のHelloween (ハロウィン)がそれらを演奏しないのであれば、自分たちで現代風にアップデートして提示する」という意図を語っている。

選曲は『Pink Bubbles Go Ape』 から 『The Dark Ride』までの楽曲で構成され、"The Chance"、"Mr. Ego"、"The Time of the Oath"、"The Dark Ride" といった名曲が含まれた。評価は賛否両論あり、「不必要なリメイク」とする声もあった一方で、「Rick Altzi (リック・アルツィ)のヴォーカルと現代的なプロダクションにより楽曲が生まれ変わった」と評価する声もあった。

9.2 ドラマーの交代

この時期、ドラマーの Martin Skaroupka (マーティン・スカロウプカ) が Cradle of Filth (クレイドル・オブ・フィルス)の活動多忙により脱退。後任として、Rick Altzi (リック・アルツィ)の紹介により Kevin Kott (ケヴィン・コット)が加入した。彼は Mike Portnoy (マイク・ポートノイ)を彷彿とさせるテクニカルなドラミングでバンドを支えることとなる。

10. 現在と未来:『Metalmorphosis』へ (2024-2026)

10.1 活動再開と新曲 "Rise Again"

『PumpKings』以降、オリジナル・アルバムのリリースは途絶えていたが、2024年に入りバンドは再始動した。1月には久々の新曲となるシングル "Rise Again"をリリース。これは往年の MASTERPLAN (マスタープラン) 節とも言えるメロディアスで力強いパワーメタル・ナンバーであり、ファンの期待を一気に高めた。

10.2 レーベル移籍と新作『Metalmorphosis』

バンドは長年在籍した AFM Records (AFMレコード)を離れ、イタリアの Frontiers Music Srl (フロンティアーズ・ミュージック)と契約を結んだ。Roland Grapow (ローランド・グラポウ)によれば、6枚目となるスタジオ・アルバム『Metalmorphosis (メタルモルフォシス)』は2026年初頭のリリースを目指して制作が進められている。

Grapow (グラポウ)は新作について、「よりメタル的な影響を強めた原点回帰の作品になる」と語っており、プログレッシブな要素を残しつつも、ストレートなパワーメタル・サウンドへの回帰を示唆している。また、南米ツアーや欧州ツアーも精力的に行っており、Rick Altzi (リック・アルツィ) 体制での結束はかつてないほど強固なものとなっている。

表10.1: 現在のラインナップ (2025年時点)

名前(英語/カタカナ) 担当パート 加入年 備考
Roland Grapow (ローランド・グラポウ) Guitars 2001 唯一のオリジナル・メンバー。
Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット) Keyboards 2003 サウンドの要。
Rick Altzi (リック・アルツィ) Vocals 2012 歴代最長在籍のヴォーカリスト。
Jari Kainulainen (ヤリ・カイヌライネン) Bass 2012 フィンランド出身の名手。
Kevin Kott (ケヴィン・コット) Drums 2016 現行ドラマー。

11. メンバー列伝 (Biography of Members)

MASTERPLAN (マスタープラン)に関わった主要メンバーの詳細なバイオグラフィを以下に記す。

Roland Grapow (ローランド・グラポウ) - Guitars

  • 経歴: 元々は自動車整備工として働きながらバンド活動を行っていたが、1989年にHelloween (ハロウィン)に加入し、Kai Hansen (カイ・ハンセン)の後任という重責を担った。『Pink Bubbles Go Ape』 から 『The Dark Ride』までのアルバムに参加し、ソングライターとしても頭角を現した。
  • スタイル: Yngwie Malmsteen (イングヴェイ・マルムスティーン)の影響を受けたネオクラシカルな速弾きから、モダンでヘヴィなリフワークまで幅広いスタイルを持つ。
  • その他: スロバキアに自身のスタジオ 「Grapow Studios (グラポウ・スタジオ)」を構え、MASTERPLAN (マスタープラン)の作品だけでなく、Lords of Black (ローズ・オブ・ブラック) や Firewind (ファイアーウインド)などのプロデュースやミキシングも手掛けるエンジニアとしての顔も持つ。

Jorn Lande (ヨルン・ランデ) - Vocals

  • 経歴: ノルウェー出身。Whitesnake (ホワイトスネイク)のカヴァーバンド The Snakes (ザ・スネイクス)や、プログレッシブ・バンド Ark (アーク)で評価を高めた。「北欧のデヴィッド・カヴァーデイル」の異名を取る。
  • MASTERPLANでの役割: 1st、2nd、4thアルバムに参加。バンドのアイデンティティを決定づけたが、自身のソロ活動や Avantasia (アヴァンタジア)への参加を優先する傾向があり、バンドへの定着は叶わなかった。

Uli Kusch (ウリ・カッシュ) - Drums

  • 経歴: Gamma Ray (ガンマ・レイ)を経て Helloween (ハロウィン)に加入。ドラミングだけでなく、作曲能力も非常に高く、Helloween (ハロウィン) 時代にも多くの名曲を残した。
  • その後: MASTERPLAN (マスタープラン) 脱退後は、Mekong Delta (メコン・デルタ)や自身のプロジェクト Beautiful Sin (ビューティフル・シン)、Symfonia (シンフォニア)に参加したが、手首の神経損傷によりドラマーとしての活動を事実上引退している。現在はノルウェーで音楽以外の仕事に従事しているとの情報もある。

Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット) - Keyboards

  • 経歴: ドイツ・ハンブルク出身。Janne Wirman (ヤンネ・ウィルマン)の後任として加入以来、20年以上バンドを支え続ける最古参メンバーの一人。派手なソロよりも楽曲の雰囲気を構築するオーケストレーションやパッド系の音色を得意とする。

Rick Altzi (リック・アルツィ) - Vocals

  • 経歴: スウェーデン出身。At Vance (アット・ヴァンス) や Thunderstone (サンダーストーン)での活動で知られる。ハスキーでパワフルな声質は Jorn Lande (ヨルン・ランデ)の後任として違和感がなく、かつ人柄の良さやプロフェッショナルな姿勢でバンドの安定化に貢献した。

12. 音楽的スタイルと影響 (Musical Style & Influence)

MASTERPLAN (マスタープラン)の音楽性は「メロディック・パワーメタル」と定義されるが、その内実はより多様で重層的である。

  1. Helloween のDNAと進化: Roland Grapow (ローランド・グラポウ) と Uli Kusch (ウリ・カッシュ)が基盤を作ったため、当然ながら Helloween (ハロウィン) 譲りの疾走感やメロディが核にある。しかし、Michael Weikath (マイケル・ヴァイカート)が好むような明るくコミカルな要素 (所謂「ハッピー・メタル」)は排除され、よりシリアスでダーク、そして叙情的な側面が強調されている。これは『The Dark Ride』で彼らが目指した路線の延長線上にあると言える。
  2. プログレッシブ・メタルの要素: 特に Uli Kusch (ウリ・カッシュ) 在籍時の楽曲には、変拍子や複雑な展開が多用されていた。これはArk (アーク) 出身のJorn Lande (ヨルン・ランデ)の歌唱スタイルとも相性が良く、単なるスピード・メタルに留まらない深みを楽曲に与えている。
  3. ハードロック/ブルースのフィーリング: Jorn Lande (ヨルン・ランデ)の歌唱スタイルに起因する、Deep Purple (ディープ・パープル) や Whitesnake (ホワイトスネイク)、Rainbow (レインボー) 直系のクラシック・ロックの要素が色濃い。これは典型的なジャーマン・メタル・バンドとは一線を画す点であり、バンドに大人の色気と重厚感をもたらしている。
  4. プロダクション: Roland Grapow (ローランド・グラポウ)が自身のスタジオでプロデュースを行うため、アルバムごとの音質の一貫性が高い。ギターサウンドは非常に太くモダンで、キーボードによるオーケストレーションが空間を埋めるリッチな音像が特徴である。

13. ディスコグラフィ (Discography)

13.1 Studio Albums

1. MASTERPLAN (マスタープラン) (2003)
  • 概要: 衝撃のデビュー作。パワーメタルの理想形と称賛された。
  • 重要楽曲:
    • Spirit Never Die (スピリット・ネヴァー・ダイ): オープニングを飾る疾走曲。キャッチーなサビと力強いリフはバンドの代名詞。
    • Enlighten Me (エンライトゥン・ミー): ミドルテンポでメロディアスなシングル曲。Jorn (ヨルン)の歌唱力が際立つ。
    • Heroes (ヒーローズ): Michael Kiske (マイケル・キスク)がゲスト参加。Grapow (グラポウ)との共演は、Helloween (ハロウィン) ファンにとって歴史的な瞬間であった。歌詞の内容も「英雄」について語る意味深なもの。
    • Soulburn (ソウルバーン): 重厚でスローな楽曲。バンドのダークな側面を象徴している。
2. Aeronautics (エアロノーティクス) (2005)
  • 概要: 飛行をテーマにしたコンセプト的要素を持つ。より緻密でプログレッシブ。
  • 重要楽曲:
    • Crimson Rider (クリムゾン・ライダー): 高速でアグレッシブなナンバー。Uli Kusch (ウリ・カッシュ)のドラミングが光る。
    • Back for My Life (バック・フォー・マイ・ライフ): アコースティック・ギターから始まるバラード調の楽曲。シングルとしてヒットした。
    • Wounds (ウーンズ): プログレッシブな展開を見せる複雑な楽曲。
3. MKII (マーク・ツー) (2007)
  • 概要: Mike DiMeo (マイク・ディメオ)加入。よりメロディアス・ハードロック寄りへシフト。
  • 重要楽曲:
    • Lost and Gone (ロスト・アンド・ゴーン): シンフォニックなイントロとキャッチーなサビが印象的な名曲。
    • Warrior's Cry (ウォリアーズ・クライ): Mike Terrana (マイク・テラーナ)のツーバスが唸るスピード・メタル・チューン。
    • MASTERPLAN (マスタープラン): バンド名を冠した楽曲。ヘヴィで力強い。
4. Time to Be King (タイム・トゥ・ビー・キング) (2010)
  • 概要: Jorn Lande (ヨルン・ランデ) 復帰作。壮大で王道的なサウンド。
  • 重要楽曲:
    • Time to Be King (タイム・トゥ・ビー・キング): タイトル曲。Jorn (ヨルン)の圧倒的なヴォーカル・パフォーマンスが堪能できる。
    • Far from the End of the World (ファー・フロム・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド): 典型的なMASTERPLAN節の疾走曲。
5. Novum Initium (ノヴァム・イニティウム) (2013)
  • 概要: Rick Altzi (リック・アルツィ)加入。バンドの新生と安定を示す。
  • 重要楽曲:
    • The Game (ザ・ゲーム): Stratovarius (ストラトヴァリウス)を彷彿とさせるネオクラシカルな疾走曲。
    • Keep Your Dream Alive (キープ・ユア・ドリーム・アライヴ): ポジティブなメッセージを持つアンセム。
    • Novum Initium (ノヴァム・イニティウム): 10分超の大作。ドラマティックな展開はバンドの健在を示した。
6. PumpKings (パンプキングス) (2017)
  • 概要: Roland Grapow (ローランド・グラポウ) 作曲の Helloween (ハロウィン) 曲セルフ・カバー。
  • 重要楽曲:
    • The Chance (ザ・チャンス): 『Pink Bubbles Go Ape』収録の名曲。よりヘヴィにアップデートされた。
    • The Dark Ride (ザ・ダーク・ライド): ダークでヘヴィな原曲の世界観を、現在のバンドのサウンドで完璧に再現。
    • Escalation 666 (エスカレーション666): ミドルテンポのヘヴィ・チューン。

14. Conclusion

MASTERPLAN (マスタープラン)の25年に及ぶ歴史は、栄光と挫折、そして再生の繰り返しであった。Helloween (ハロウィン)からの不本意な離脱という逆境からスタートし、デビュー・アルバムでの爆発的な成功、そして主要メンバーの相次ぐ脱退による存続の危機。しかし、リーダーである Roland Grapow (ローランド・グラポウ)の不屈の精神と、彼を支える Axel Mackenrott (アクセル・マッケンロット) らの献身により、バンドは常に高品質なメタルを提供し続けてきた。

2026年に予定される新作『Metalmorphosis』は、バンドが過去の遺産 (『PumpKings』)を整理し終え、Frontiers Music (フロンティアーズ・ミュージック) という新たなパートナーと共に未来へと歩み出したことを象徴する作品となるだろう。Rick Altzi (リック・アルツィ)体制は歴代で最も長く続いており、バンドとしての成熟度はピークに達している。MASTERPLAN (マスタープラン)は、「元 Helloween (ハロウィン)のメンバーによるバンド」という枕詞を必要としない、欧州パワーメタル界における真の「マスター (巨匠)」としての地位を確立したと言える。

Albums

Metalmorphosis CD
/

メロディック・パワー・メタルの王道を、MASTERPLANらしい重厚さで再構築する一作。

PumpKings CD
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過去曲を現在の演奏と音作りで照らし直す、MASTERPLANの再構築型作品。

Novum Initium CD
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重厚なリフとドラマティックなコーラスで、MASTERPLANの正統派メロディック・メタルを再起動する一枚。

Time to Be King CD
/

重厚なリフと壮大なコーラスで、MASTERPLANのドラマティックなパワー・メタルを示す一作。

MK II CD
/

技巧的なアレンジと大きなメロディで、MASTERPLANが新編成の推進力を示した第3作。

Aeronautics CD
/

重厚なギター、鍵盤の広がり、ヨルン・ランデの歌を束ね、MASTERPLANがドラマティックなメロディック・メタルを響かせた第二作。

Masterplan CD
/

緻密な鍵盤と厚いコーラスで、MASTERPLANが洗練された欧州パワー・メタルを提示したデビュー作。