EDGUY
1990年代初頭、世界の音楽シーンはグランジやオルタナティブ・ロックの猛烈な嵐の中にあった。
Biography
エドガイ (EDGUY)
フルダからの飛翔、音楽的変遷
1990年代のメタル・シーンにおけるエドガイ (EDGUY) の登場と意義
1990年代初頭、世界の音楽シーンはグランジやオルタナティブ・ロックの猛烈な嵐の中にあった。ニルヴァーナ (Nirvana) やパール・ジャム (Pearl Jam) の台頭により、1980年代を席巻した華美なヘヴィメタルやハードロックは「時代遅れの遺物」としての烙印を押され、多くのバンドが解散や路線変更を余儀なくされていた。特に、伝統的なメロディと疾走感を重んじるパワーメタル (Power Metal) というジャンルにとって、それはまさに冬の時代であったと言える。
そのような逆風が吹き荒れる1992年、ドイツ連邦共和国ヘッセン州 (Hessen) の古都フルダ (Fulda) において、当時まだ14歳の少年たちによって結成されたのがエドガイ (EDGUY) である。EDGUYは、ハロウィン (Helloween) やガンマ・レイ (Gamma Ray) といったジャーマン・メタル (German Metal) の先達が築き上げた様式美を継承しつつ、若さゆえの無謀さと、既存の枠にとらわれないユーモア、そしてトビアス・サメット (Tobias Sammet) という稀代のフロントマンのカリスマ性を武器に、シーンの最前線へと躍り出た。
第1章: 結成と初期の闘争 (1992-1996)
1.1 「エドガー」の伝説とバンド名の由来
エドガイ (EDGUY) の歴史は、フルダ (Fulda) のギムナジウムに通う4人の学生、トビアス・サメット (Tobias Sammet - Vocals/Keyboards/Bass)、イェンス・ルートヴィヒ (Jens Ludwig - Lead Guitar)、ディルク・ザウアー (Dirk Sauer - Rhythm Guitar)、そしてドミニク・ストルチ (Dominik Storch - Drums) によって1992年に幕を開けた。
彼らのバンド名「EDGUY」は、メタル・シーンにおいて最も奇妙な由来を持つ名前の一つとして知られている。これは彼らの当時の数学 (資料によっては物理ともされる) 教師であった「エドガー (Edgar)」 氏に由来するあだ名であった。トビアス・サメット (Tobias Sammet) は後のインタビューで、この命名について次のように回想している。
「私たちは法的トラブルを避けるために、誰も使っていない言葉を発明しようとした。先生のあだ名をバンド名にするというのは、当時の私たちにとっては素晴らしいアイデアに思えたんだ。まるで思春期を過ぎたサーフ・パンク・バンドのような名前だけど、アルバムを何枚も出した後ではもう変えるには遅すぎたんだ」
このエピソードは、エドガイ (EDGUY) がキャリアを通じて貫くことになる「シリアスな音楽性」と「ふざけたユーモア感覚」の共存というアイデンティティを象徴している。彼らは権威 (教師) をおちょくりながらも、音楽に対しては真摯であった。
1.2 音楽的ルーツとデモテープ時代
結成当初のEDGUYは、キッス (KISS)、AC/DC、アイアン・メイデン (Iron Maiden)、そしてボン・ジョヴィ (Bon Jovi) といったバンドのカバーを演奏していたが、すぐにオリジナル楽曲の制作へと移行した。特にトビアス・サメット (Tobias Sammet)は、ハロウィン (Helloween) の『Keeper of the Seven Keys (守護神伝)』シリーズに強い衝撃を受けており、ジャーマン・メタル特有のツインギターのハーモニーとハイトーン・ボーカル、「アリーナで映える音」が追求されている。
1994年、バンドは2本のデモテープ 『Evil Minded』と『Children of Steel』 を制作した。これらのデモは、当時のテープ・トレードのネットワークを通じてアンダーグラウンド・シーンで評価され始めたが、メジャー・レーベルとの契約には至らなかった。当時の音楽業界は依然としてグランジの影響下にあり、ドイツの田舎町の少年たちが演奏する伝統的なヘヴィメタルに投資しようとするレーベルは皆無に等しかったのである。
1.3 自主制作アルバム 『Savage Poetry』 (1995)
レコード会社からの拒絶に直面したEDGUYは、諦めるどころか、自費でアルバムを制作するという大胆な決断を下した。1995年にリリースされた『Savage Poetry』は、完全にインディペンデントな体制で作られた作品であった。
このアルバムは、プロダクションこそ粗削りであったものの、楽曲のクオリティは新人離れしていた。「Key to My Fate」や「Hallowed」といった楽曲には、すでに後のエドガイ (EDGUY) 節とも言えるドラマティックな展開と哀愁を帯びたメロディが完成されていた。この自主制作盤の成功が、後にAFM レコード (AFM Records) の目に留まり、EDGUYの運命を大きく変えることになる。
第2章: AFMレコード時代とパワーメタルの復権 (1997-2003)
2.1 『Kingdom of Madness』: プロフェッショナルへの第一歩
1997年、AFMレコード (AFM Records) と契約を結んだバンドは、公式なデビューアルバム『Kingdom of Madness』をリリースした。この契約はバンドにとって大きな転機となり、よりプロフェッショナルな環境でのレコーディングが可能となった。
本作には、ドイツ・メタルの重鎮であるグレイヴ・ディガー (Grave Digger) のクリス・ボルテンダール (Chris Boltendahl) がゲスト参加しており、大曲「The Kingdom」でその強烈な歌声を披露している。これは、若きエドガイ (EDGUY) がドイツのメタル・コミュニティにおいて「次世代の旗手」として受け入れられつつあったことを示唆している。しかし、このリリースの直後、ドラマーのドミニク・ストルチ (Dominik Storch) が脱退し、バンドは初期のラインナップ変更を余儀なくされた。
2.2 『Vain Glory Opera』: 世界的ブレイクスルー
1998年リリースの2ndアルバム『Vain Glory Opera』は、エドガイ (EDGUY) をローカル・バンドから国際的なアクトへと飛躍させた決定的な作品である。本作のプロデュースには、ストラトヴァリウス (Stratovarius) のティモ・トルキ (Timo Tolkki) が招かれ、サウンド・プロダクションのクオリティが劇的に向上した。
さらに、ブラインド・ガーディアン (Blind Guardian) のハンシ・キアシュ (Hansi Kürsch) がゲスト・ボーカルとして参加し、「Out of Control」やタイトルトラック「Vain Glory Opera」でトビアス・サメット (Tobias Sammet) との壮絶なデュエットを披露した。このアルバムによって、エドガイ (EDGUY) はメロディック・パワーメタル・ファンの間で「必聴のバンド」としての地位を確立した。
ラインナップの固定化: この時期、バンドのリズム隊が刷新された。ドラムにはフェリックス・ボーンケ (Felix Bohnke) が、ベースにはトビアス・エクセル (Tobias Exxel) が加入した。トビアス・サメット (Tobias Sammet) はそれまでベースを兼任していたが、これによりボーカルとソングライティングに専念できるようになった。この5人 (サメット、ルートヴィヒ、ザウアー、エクセル、ボーンケ) のラインナップは、2020年の活動休止まで20年以上にわたり不動のものとなる。これはメンバーチェンジの激しいメタル界において奇跡的な結束力と言える。
2.3 『Theater of Salvation』: 様式美の極致
1999年の『Theater of Salvation』は、前作の成功を受けて制作された、「最もエドガイ (EDGUY) らしい」 パワーメタル・アルバムである。複雑な変拍子、重厚なクワイア、クラシック音楽の影響を受けたオーケストレーションが導入され、「Babylon」や「The Pharaoh」といった長尺の叙事詩的な楽曲が収録された。本作はドイツのナショナル・チャートに初めてランクイン (66位) し、商業的な成功への足がかりとなった。
2.4 『The Savage Poetry』: 過去の再構築
2000年、バンドはデビュー前の自主制作盤『Savage Poetry』を現行の「黄金のラインナップ」で完全に再録音し、『The Savage Poetry』としてリリースした。これは単なるリマスターではなく、楽曲のアレンジを見直し、演奏技術と録音環境を現代的なレベルに引き上げた「リメイク」であった。オリジナルの荒々しさと、成熟したバンドの表現力が融合した本作は、ファンの間で非常に高い評価を得ている。日本盤 (Japanese Edition) には帯 (Obi) が付属し、ボーナストラックの追加こそなかったものの、初期の名曲が高音質で蘇ったことは日本のメタル・ファンにとって大きな喜びであった。
2.5 『Mandrake』 と 『Burning Down The Opera』: AFM時代の集大成
2001年の『Mandrake』は、バンドがパワーメタルの枠組みの中で独自のダークかつシニカルな世界観を確立した傑作である。「Tears of a Mandrake」のようなミドルテンポの楽曲では、グルーヴとメロディの融合が見られ、後のハードロック路線への伏線とも取れる進化を見せた。このアルバムに伴うワールドツアーは大規模なものとなり、日本を含む世界各地でヘッドライナー公演が行われた。
2003年には、パリでの公演を収録した初のライブ・アルバム『Burning Down The Opera - Live』をリリース。100分を超える圧巻のパフォーマンスは、EDGUYがスタジオ・バンドとしてだけでなく、ライブ・アクトとしても超一流であることを証明した。このリリースをもって、バンドは長年所属したAFM レコード (AFM Records) を離れ、世界最大のメタル・レーベルであるニュークリア・ブラスト (Nuclear Blast) へと移籍することになる。
第3章: ニュークリア・ブラスト移籍とスタイルの変遷 (2004-2010)
3.1 『Hellfire Club』: オーケストラとの融合
2004年、ニュークリア・ブラスト (Nuclear Blast) 移籍第一弾となるアルバム『Hellfire Club』がリリースされた。豊富な予算を背景に、バンドはドイツの「バーベルスベルク・ドイツ映画管弦楽団 (Deutsches Filmorchester Babelsberg)」を起用し、シンフォニックで壮大なサウンドを構築した。
オープニングの「Mysteria」から10分超の大作「The Piper Never Dies」まで、アルバム全体が映画的なスケール感に満ちている。先行EP『King of Fools』もヒットし、アルバムはドイツチャートで26位を記録。この時期のエドガイ (EDGUY) は、パワーメタルの完成形を提示しつつ、同時にその限界を突破しようとしていた。
アヴァンタジア (Avantasia) の影: この時期、トビアス・サメット (Tobias Sammet) のソロ・プロジェクトであるアヴァンタジア (Avantasia) も世界的な成功を収めていた。『Hellfire Club』の音楽性が壮大になった背景には、アヴァンタジア (Avantasia) での経験 (マイケル・キスクやカイ・ハンセンらとの共演、大規模なオーケストレーションの導入) がフィードバックされていることは疑いようがない。しかし、これが同時に「トビアスの創造性が二つのプロジェクトに分散される」という懸念をファンに抱かせるきっかけともなった。
3.2 『Rocket Ride』: ハードロックへの大胆な転換
2006年の『Rocket Ride』は、多くのファンを驚愕させた問題作である。それまでの「剣と魔法」「ファンタジー」的な要素を後退させ、ドライでブルージーなハードロック、あるいは80年代のヘア・メタル (Hair Metal) 的なサウンドへと大きく舵を切ったのである。
歌詞やビジュアルには強烈なユーモアとアイロニー (皮肉) が込められ、「Trinidad」のような陽気な楽曲や、「Superheroes」のようなコミカルなPVが制作された。ドラムのフェリックス・ボーンケ (Felix Bohnke) はインタビューで、この変化を「パワー・ロック (Power Rock)」あるいは「パワー・メタルのボーカルが乗ったハード・ロック」と表現している。
この路線変更には賛否論があったが、結果としてアルバムはドイツチャートで8位を記録し、バンド史上初のトップ10入りを果たした。これは、EDGUYがマニアックなメタル・ファンだけでなく、より広いロック・リスナー層にアピールし始めたことを意味していた。
3.3 『Tinnitus Sanctus』: スタジアム・ロックの追求
2008年の『Tinnitus Sanctus』は、『Rocket Ride』の方向性をさらに洗練させ、よりシリアスで骨太なスタジアム・ロックを目指した作品である。「Ministry of Saints」や「Dragonfly」といった楽曲は、シンプルながらも強力なリフとフックを持ち、エアロスミス (Aerosmith) やスコーピオンズ (Scorpions) のサポート・アクトを務める中で培われた「アリーナで映える音」が追求されている。
第4章: 円熟と「活動休止」への道程 (2011-現在)
4.1 『Age of the Joker』: アナログへの回帰
2011年の『Age of the Joker』では、デジタル・レコーディング全盛の時代にあえてアナログ機材を多用し、ウォームでオーガニックなサウンド・プロダクションを試みた。楽曲構成もプログレッシブな要素が強まり、「Robin Hood」のような長尺曲がリード・トラックとして選ばれた。ドイツチャートでは3位を記録し、バンドの人気が不動のものであることを証明した。
4.2 『Space Police: Defenders of the Crown』: 最後のスタジオ・アルバム
2014年にリリースされた通算10枚目のスタジオ・アルバム『Space Police: Defenders of the Crown』は、近年のエドガイ (EDGUY) の集大成とも言える内容であった。「Sabre & Torch」のようなアグレッシブなヘヴィメタル、「Love Tyger」のような極めてポップなハードロック、およびファルコ (Falco) のカバー「Rock Me Amadeus」まで、バンドの持つ多様な側面が凝縮されている。
アルバム・タイトルは、「Space Police」と「Defenders of the Crown」という二つの案で意見が割れたため、トビアス・サメット (Tobias Sammet) が「両方使ってしまえ」と決断したことに由来する。このエピソードはEDGUYの自由な精神を象徴しているが、同時にトビアス・サメット (Tobias Sammet) は後に、このアルバムの制作プロセスが「非常に消耗するもの (exhausting) だった」と吐露している。この「消耗」こそが、後の活動休止の伏線となっていた可能性が高い。
4.3 『Monuments』と活動休止 (Hiatus)
2017年、バンド結成25周年を記念して、2CD+DVDの豪華ベスト・アルバム『Monuments』がリリースされた。新曲5曲が収録され、ツアーも行われたが、これが現在のところエドガイ (EDGUY) としての最後の大きな活動となっている。
2020年3月、トビアス・サメット (Tobias Sammet) はFacebook上で、エドガイ (EDGUY) が「活動休止 (hiatus)」状態にあることを正式に認めた。
「私はしばらくの間、新しいアヴァンタジア (Avantasia) のレコードに取り組んでおり、新しいエドガイ (EDGUY) のレコードには取り組んでいない。それが今の私にとって正しいと感じることだからだ」
現在、トビアス・サメット (Tobias Sammet) の創作活動の軸足は完全にアヴァンタジア (Avantasia) に置かれている。アヴァンタジア (Avantasia) が世界的なスタジアム・アクトへと成長し、固定メンバーの制約を受けずに自由にゲストを招聘できるプロジェクトであるのに対し、エドガイ (EDGUY) は幼馴染たちとの民主的なバンド運営が必要とされる。この構造的な違いと、長年の活動による疲弊が、活動休止の背景にあると考えられる。
第5章: メンバー詳細プロフィールと使用機材
エドガイ (EDGUY) のサウンドを支えるメンバーについて、その役割と機材、プレイスタイルを詳述する。
トビアス・サメット (Tobias Sammet)
- 担当: ボーカル (Vocals)、キーボード (Keyboards)、ベース (Bass: 1992-1997)
- 生年月日: 1977年11月21日
- 出身: フルダ (Fulda, Germany)
- 役割: バンドの絶対的なリーダーであり、ほぼ全ての楽曲の作詞・作曲を手掛ける。初期はベースを弾きながら歌っていたが、『Vain Glory Opera』以降はボーカルに専念し、ステージ上でのパフォーマンスを強化した。
- スタイル: ブルース・ディッキンソン (Iron Maiden) やマイケル・キスク (Helloween) の影響を受けたハイトーン・ボイスに加え、独特のビブラートと演劇的な歌唱法を持つ。歌詞には哲学的な問いと、皮肉めいたユーモアが混在している。
- 使用機材: ライブではShureのマイクを使用することが多いが、楽器の機材詳細はアヴァンタジア (Avantasia) での活動も含め多岐にわたる。
イェンス・ルートヴィヒ (Jens Ludwig)
- 担当: リードギター (Lead Guitar)
- 在籍: 1992年-現在 (オリジナルメンバー)
- 役割: エドガイ (EDGUY) のメロディックな側面を決定づけるギタリスト。トビアス・サメット (Tobias Sammet) とは幼馴染であり、楽曲制作やエンジニアリングにおいても重要なパートナーである。
- プレイスタイル: テクニカルな速弾きだけでなく、泣きのチョーキングや歌うようなフレージングを得意とする。
- 使用機材:
- Guitars: Gibson Explorer, Gibson Flying V, Gibson Firebird Studioなど、変形ギターを好んで使用。
- Amps: Marshall JVM410H, Kemper Profiler Head。
- Effects: Ibanez TS808 Tube Screamerなど。
ディルク・ザウアー (Dirk Sauer)
- 担当: リズムギター (Rhythm Guitar)
- 在籍: 1992年-現在 (オリジナルメンバー)
- 役割: バンドのサウンドの土台を支えるリズム隊長。イェンス・ルートヴィヒ (Jens Ludwig) とのコンビネーションは30年以上に及び、ライブではコミカルな表情や動きで観客を盛り上げるムードメーカーでもある。
- 使用機材: Gibson ExplorerやFlying Vなどをイェンスと同様に使用し、重厚なバッキング・サウンドを構築する。
トビアス・エクセル (Tobias "Eggi" Exxel)
- 担当: ベース (Bass)
- 在籍: 1998年-現在
- 経歴: Squealer, Gamma Ray (ライブサポート) などを経て加入。
- 役割: トビアス・サメット (Tobias Sammet) からベースパートを引き継いだ。堅実なピッキングとグルーヴ感で、スタイル変更後のハードロック路線においても重要な役割を果たしている。The Unityなどのバンドでも活動中。
フェリックス・ボーンケ (Felix Bohnke)
- 担当: ドラムス (Drums)
- 在籍: 1998年-現在
- 役割: オーディションで加入。"Alien Drum Bunny" という愛称を持ち、ライブでのドラムソロ (『スター・ウォーズ』のテーマに乗せたパフォーマンスなど) は名物となっている。正確無比なツーバス連打と、ハードロック的なタメの効いたグルーヴの両方をこなす。
- 使用機材: Ahead製のドラムグローブ (5B sticks) を使用。アヴァンタジア (Avantasia) のライブ・ドラマーとしてもトビアス・サメット (Tobias Sammet) の信頼が厚い。
第6章: ディスコグラフィ (Discography)
エドガイ (EDGUY) の作品群は、その時期によってスタイルが大きく異なる。以下に、スタジオ・アルバムを中心に、日本盤 (Japanese Edition) の仕様やボーナストラック情報を網羅したデータを示す。
6.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
以下の表は、主要なスタジオ・アルバムのリリース年、日本盤タイトル、および特記事項をまとめたものである。
| リリース年 | 原題 | 日本盤タイトル | レーベル (日本) | 日本盤の特徴・ボーナストラック等 |
|---|---|---|---|---|
| 1995 | Savage Poetry | (なし) | (なし) | 自主制作盤。日本では未発売だったが、後に2000年版が出回った。 |
| 1997 | Kingdom of Madness | キングダム・オブ・マッドネス | Victor | バンドの公式デビュー作。 Bonus: "Wings of a Dream (Live)", "Wings of a Dream (Version 2001)" (再発盤) |
| 1998 | Vain Glory Opera | ヴェイン・グローリー・オペラ | Victor | ハンシ・キアシュ参加の出世作。 Bonus: なし (通常) |
| 1999 | Theater of Salvation | シアター・オブ・サルヴェイション | Victor | Bonus: "For a Trace of Life", "Walk on Fighting (Live)" 等 |
| 2000 | The Savage Poetry | サヴェッジ・ポエトリィ | Victor | 1stの完全再録音盤 (VICP-61090)。オリジナル盤とは別物として扱われる。 |
| 2001 | Mandrake | マンドレイク | Victor | Bonus: "The Devil and the Savant", "Wings of a Dream (Remastered)" |
| 2004 | Hellfire Club | ヘルファイア・クラブ | Avalon | Nuclear Blast移籍第一弾。 Bonus: "Children of Steel (2004)", "Mysteria (feat. Mille Petrozza)" |
| 2006 | Rocket Ride | ロケット・ライド | Avalon | Bonus: "Spooks in the Attic (Live)" |
| 2008 | Tinnitus Sanctus | ティニタス・サンクタス | Avalon | Bonus: "Aren't You a Little Pervert Too?" |
| 2011 | Age of the Joker | エイジ・オブ・ザ・ジョーカー | Avalon | Bonus: "Standing in the Rain" |
| 2014 | Space Police: Defenders of the Crown | スペース・ポリス - ディフェンダーズ・オブ・ザ・クラウン | Avalon | Bonus: "England", "Aychim in Hysteria" |
6.2 重要な企画盤・ライブ盤
Burning Down The Opera - Live (2003)
- 日本盤タイトル: 『バーニング・ダウン・ジ・オペラ』 (Avalon MICP-90012)
- 概要: 2枚組ライブ・アルバム。AFM時代のベスト選曲とも言える内容。フランス・パリでの熱狂的な公演を収録。
Superheroes (2005 - EP/DVD)
- 日本盤タイトル: 『スーパーヒーローズ』
- 概要: アルバム『Rocket Ride』への先行EP。マイケル・キスク (Michael Kiske) がゲスト参加した「Judas at the Opera」や、マグナム (Magnum) のカバー「The Spirit」を収録。DVDにはドキュメンタリーやMVが収められている。
Fucking With Fire - Live (2009)
- 日本盤タイトル: 『ファッキング・ウィズ・ファイア〜ライヴ!』 (MIBP-50021)
- 概要: 2007年のブラジル・サンパウロ公演を収録したライブDVD/CD。南米の熱狂的な観衆と、エンターテイナーとして成熟したバンドの姿が確認できる。
Monuments (2017)
- 日本盤タイトル: 『モニュメンツ』 (MIZP-60060)
- 概要: 結成25周年記念ベスト。新曲5曲に加え、過去の名曲のリマスター、未発表レア音源、そして2004年の『Hellfire Club』ツアーのライブ映像 (DVD) を収録した豪華パッケージ。日本盤はSHM-CD仕様などでリリースされた。
エドガイの遺産とアヴァンタジアの影での未来
エドガイ (EDGUY) は、1990年代のメタルの冬の時代に、ドイツの地方都市から現れた希望の光であった。EDGUYはハロウィン (Helloween) の模倣から始まり、独自の演劇性とユーモアを加えることで「エドガイ・スタイル」を確立し、さらにはハードロックへと回帰することでジャンルの壁を破壊しようと試みた。
しかし、皮肉なことに、リーダーであるトビアス・サメット (Tobias Sammet) の才能があまりにも巨大であったため、サイドプロジェクトとして始まったアヴァンタジア (Avantasia) が本家エドガイ (EDGUY) を凌駕する規模へと成長してしまった。アヴァンタジア (Avantasia) では、ジェフ・テイト (Geoff Tate) やエリック・マーティン (Eric Martin) といった世界的レジェンドたちと共演が可能であり、音楽的な制約も少ない。トビアス・サメット (Tobias Sammet) が「今の自分にとって正しいこと」としてアヴァンタジア (Avantasia) を優先するのは、クリエイターとしては必然の選択かもしれない。
それゆえ、エドガイ (EDGUY) の活動再開は不透明である。しかし、イェンス・ルートヴィヒ (Jens Ludwig) やディルク・ザウアー (Dirk Sauer) との30年にわたる友情が壊れたわけではない。EDGUYは「活動休止 (Hiatus)」という言葉を選び、「解散」とは言明していない。トビアス・サメット (Tobias Sammet) の創作意欲のサイクルが再び「幼馴染たちとのロックンロール」に向いた時、エドガイ (EDGUY) は再びその翼を広げるであろう。それまでは、EDGUYが遺した10枚のスタジオ・アルバムと数々のライブ・パフォーマンスが、メタルの楽しさと自由さを我々に伝え続ける「モニュメント (記念碑)」となるのである。
Trivia
EDGUY の初来日は『Mandrake』(2001年)のツアー中である。日本のレーベル、マーキー/アヴァロンのバイオによれば、バンドはこの1年で23か国・62公演を回っており、そのうち4本が初の日本公演だった。ライヴ・バンドとしての実力を示したこの時期の記録が、初のライヴ・アルバム『Burning Down The Opera Live』になる。次の来日は Nuclear Blast 移籍第一弾『Hellfire Club』(2004年)の後で、このとき日本で初めてヘッドライナーとしてのツアーを行った。さらに『Tinnitus Sanctus』(2008年)前後には、単独公演とラウドパーク出演という2度の来日を果たしている。
EDGUY の日本盤には、日本でしか手に入らない曲が入っている。マーキー/アヴァロンの作品情報によれば、『Hellfire Club』の日本盤(MICP-10425、2004年3月10日)はボーナス・トラック3曲入りで、「Children Of Steel」、KREATOR のミレ・ペトロッツァを迎えた「Mysteria」の別ヴァージョン、そして「Navigator」のデモである「Heavenward」が加えられている。『Rocket Ride』の日本盤(MICP-10565、2006年1月21日)も3曲追加で、「Land Of The Miracle」のライヴ、「Reach Out」、「Lavatory Love Machine」のアコースティック・ヴァージョンが入る。『Tinnitus Sanctus』(MICP-10790、2008年11月19日)は1曲追加、『Mandrake』の再発盤には「The Devil & The Savant」が加えられている。
EDGUY という名前に意味はない。所属レーベルの Nuclear Blast が公式ページに書いているところによれば、1992年に結成した14歳の4人は、当時の物理教師のあだ名をそのままバンド名にした。トビアス・ザメット自身は2014年の取材で、自分たちは「ひどいバンド名」を掲げたまま世界を回り、それでも相当数の支持者を得たと振り返っている。ジャンル名で括られることにも同じ態度で、パワー・メタルと呼ばれても古いタイプのハード・ロックと呼ばれても構わない、ライヴを観てスタンダップ・コメディだと言われてもそれで構わない、と述べた。
始まりは1992年2月、ドイツ中部の街フルダである。同じ学校に通う14歳の4人——トビアス・ザメット、イェンス・ルドヴィグ、ダーク・ザウアー、ドラムのドミニク・ストール——がバンドを組んだ。レーベルの公式ページによれば、最初に演奏していたのは BON JOVI や AC/DC、KISS の曲で、自分たちの曲だけのデモ・カセットを作るのはそこから2年後のことだった。フルダは音楽業界の内情など人づてにしか伝わってこないような小さな町で、ザメットは後年、自分たちは観客としてコンサートに行くより先にEDGUYとしてステージに立っていた、と振り返っている。
2014年の『Space Police: Defenders of the Crown』以降、EDGUY の新作は出ていない。その理由をトビアス・ザメット自身が説明したのが、2020年3月28日にSNSへ投稿した長文である。彼はそこで、EDGUY はしばらく活動休止の状態にあり、いま進んでいるものは何もないと明言した。そのうえで『Space Police』については、いいアルバムだったが自分が満足できる出来にするまでが極度に消耗する作業だったと述べ、30年近く時計仕掛けのように作品を出してきたバンドには、ロゴを貼るためだけに何かを出すのではなく合意が尽きた時点で休む権利があるはずだ、と書いている。自分を二つに分けることはできない、というのが彼の説明の核心である。
「EDGUY はいつ戻ってくるのか」という読者からの質問に、トビアス・ザメットは2025年の Louder の企画でこう答えている。自分にも本当に分からない、関心が無いというのは誤解だ、と。彼の説明では、14歳の子どもとして集まった当時は誰も歌えず、楽器も弾けず、曲も書けず、そこから横並びで同じ速度で伸びていった。ところがある時点から各自の向かう方向が分かれ、仕事のやり方や進め方についての考えも違ってきて、議論が増えた。やがてエネルギーの9割が妥協点探しに費やされるようになる。AVANTASIA なら2か月でアルバムを作れるのに、EDGUY だと2か月では1曲目のキーすら決まらない——それが彼の言い方である。関係は今も良好で、本は閉じていないが、すぐには何も起きないだろう、と彼は述べた。
2012年7月14日、ドイツ・バリンゲンのフェスティバル〈Bang Your Head!!!〉で、トビアス・ザメットはステージから落ちている。5曲目の最中に足を滑らせ、カメラマン用のピットのコンクリートに叩きつけられた。負ったのは鼻の骨折、腰と肋骨の重度の打撲、複数の擦過傷と切り傷である。それでもバンドは残りの1時間、セットを最後までやり切った。本人は後に、ステージは濡れていなかったし靴にも問題はなく、当然ながら素面だったので、なぜ落ちたのか自分でも分からないと語っている。血と痛みは曲が進むごとにひどくなったが、アドレナリンが出ていたのと客の反応が素晴らしかったので、途中でやめるのは違うと感じた——止めずに続け、終わってから医者に直してもらうことにした、というのが彼の説明である。
『Space Police: Defenders of the Crown』の日本盤は2014年4月23日に発売された。マーキー/アヴァロンの当時のリリース情報によれば、仕様は2種類で、ボーナス・ディスクが付くのは初回限定盤の MICP-90075(2枚組、3,000円+税)だけ、通常盤は MICP-11155(2,600円+税)である。同じ告知は日本語でこの作品を、EDGUY 史上もっともアグレッシヴでヘヴィ・メタリックな曲が並ぶ会心作、『Age of the Joker』以来およそ3年ぶりの新作、と紹介している。先行して3月28日には「Love Tyger」がデジタル・シングルとして日本で配信された。
News
<SUMMER BREEZE>2027、30周年記念版の第1弾63組を発表 — EDGUYがお別れ公演
2027年8月18〜21日に独ディンケルスビュールで開催。EDGUYの発表済みのお別れ公演、CHILDREN OF BODOM、HammerFall、Halestormらが決まり、ライプツィヒ・フィルとの「Legends & Orchestra」も予定。先行販売は8月17日16時(CET)開始。