THE BLACK DAHLIA MURDER
21世紀初頭のアメリカ合衆国 (United States) におけるヘヴィメタル・シーンは、メタルコア (Metalcore) の爆発的な台頭と、ニュー・ウェイヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィメタル (NWOAHM) と呼ばれる潮流の中にあった。
Biography
ザ・ブラック・ダリア・マーダー (THE BLACK DAHLIA MURDER)
現代エクストリーム・メタルにおける変遷と持続性
1. 米国産メロディック・デスメタルの特異点
21世紀初頭のアメリカ合衆国 (United States) におけるヘヴィメタル・シーンは、メタルコア (Metalcore) の爆発的な台頭と、ニュー・ウェイヴ・オブ・アメリカン・ヘヴィメタル (NWOAHM) と呼ばれる潮流の中にあった。この激動の時代において、ミシガン州ウォーターフォード (Waterford, Michigan) で結成されたザ・ブラック・ダリア・マーダー (The Black Dahlia Murder、以下THE BLACK DAHLIA MURDER) は、流行のスタイルとは一線を画す、極めて純粋で、かつ独自に進化を遂げた音楽性を提示した。THE BLACK DAHLIA MURDERは、スウェーデンのヨーテボリ (Gothenburg) で生まれたメロディック・デスメタル (Melodic Death Metal) の叙情性と構築美を基盤としつつ、フロリダ・デスメタル (Florida Death Metal) 由来の高速なブラストビートと残虐性、装置、そしてアメリカン・ハードコア (Hardcore) のDIY精神を融合させることで、比類なきサウンドスケープを築き上げた。
バンド名は、1947年にロサンゼルス (Los Angeles) で発生した未解決猟奇殺人事件、通称「ブラック・ダリア事件 (Black Dahlia case)」 の被害者エリザベス・ショート (Elizabeth Short) に由来する。この名称は、単なるショック・バリュー (衝撃的価値) を狙ったものではなく、バンドがキャリアを通じて探求し続ける「死」「恐怖」「狂気」といったテーマを象徴している。
2. バイオグラフィー: 栄光、悲劇、そして不滅の隷属
2.1 黎明期: ミシガンの地下室から世界へ (2001-2003)
2.1.1 結成と初期の衝動
2001年、THE BLACK DAHLIA MURDERはボーカリストのトレヴァー・スターナド (Trevor Strnad) とギタリストのブライアン・エスクバック (Brian Eschbach) を中心に結成された。当時のミシガン州のシーンは、メタルコアやハードコア・パンクが優勢であったが、彼らはアット・ザ・ゲイツ (At The Gates)、カーカス (Carcass)、ディセクション (Dissection) といった欧州のバンドから強い影響を受けていた。
初期のラインナップは極めて流動的であり、マイク・シェプマン (Mike Schepman、Ba)、ジョン・デーリング (John Deering、Gt)、コリー・グレイディ (Cory Grady、Dr) といったメンバーが出入りを繰り返していた。この時期に制作されたデモテープ 『What a Horrible Night to Have a Curse』 (2001年) は、バンドの方向性を模索する習作でありながらも、トレヴァーの特徴的なハイピッチ・スクリームとロー・グロウルの使い分け、側、保持、そしてブライアンのメロディックなリフワークという、後のTHE BLACK DAHLIA MURDERサウンドの萌芽が見られる重要な記録である。
2.1.2 メタル・ブレイドとの契約: インターネット時代の先駆け
2002年、バンドはEP 『A Cold-Blooded Epitaph』をラブリスト・レコーズ (Lovelost Records) からリリースした。この作品には、ザ・ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の「Paint It Black」のカバーが収録されており、THE BLACK DAHLIA MURDERのルーツにあるロック的な感性とデスメタルの融合が試みられている。
このEPとバンドの活動が、メタル・ブレイド・レコーズ (Metal Blade Records) の創始者ブライアン・スラゲル (Brian Slagel) の目に留まることとなる。スラゲルは、当時隆盛を極めていたSNS 「MySpace」を通じてTHE BLACK DAHLIA MURDERを発見したと証言している。彼は深夜にMySpaceを回遊 (trolling) していた際、他のバンドのページからTHE BLACK DAHLIA MURDERに辿り着き、掲載されていた楽曲の質の高さに衝撃を受けたという。スラゲルは即座にメッセージを送り、当時別の小規模レーベルと契約寸前だったバンドをメタル・ブレイドへと引き入れた。このエピソードは、インターネットがアンダーグラウンド・バンドの発掘において重要な役割を果たし始めた2000年代初頭の音楽産業の転換点を象徴する事例として、しばしば語り草となっている。
2.2 『Unhallowed』 と 『Miasma』: シーンへの衝撃と確立 (2003-2006)
2.2.1 デビューアルバム 『Unhallowed』の衝撃
2003年6月17日、1stフルアルバム 『Unhallowed』 がリリースされた。このアルバムは、メロディック・デスメタルの様式美を保ちつつ、アメリカのバンドらしいハードコア由来の突進力とグルーヴを兼ね備えていた。特に収録曲「Funeral Thirst」 はミュージックビデオ (MV) が制作され、ゾンビ映画のような映像美とキャッチーなリフが相まって、バンドの知名度を一気に押し上げた。
当時、THE BLACK DAHLIA MURDERのルックス (短髪、Tシャツ、ジーンズといったカジュアルな服装) は、伝統的なデスメタル・ファンからは「メタルコア的である」として批判の対象となることもあった。しかし、音を聴けばTHE BLACK DAHLIA MURDERが真正のデスメタル・バンドであることは明白であり、このギャップこそが、メタルコア・ファンをデスメタルへ、デスメタル・ファンを新しい世代のサウンドへと橋渡しする役割を果たしたと言える。
2.2.2 『Miasma』 とオズフェストへの出演
2年に及ぶ過酷なツアーを経て、2005年7月12日に2ndアルバム 『Miasma』がリリースされた。本作はビルボードチャート (Billboard 200) で118位にランクインし、アンダーグラウンド・バンドとしては異例の商業的成功を収めた。音楽的には、前作のスタイルを踏襲しつつも、よりパンキッシュでカオティックな要素が強まり、トレヴァーの歌詞も個人的な苦悩や社会への冷笑を含むようになった。
この時期、バンドはアメリカ最大のメタル・フェスティバル・ツアーであるオズフェスト (Ozzfest) 2005のセカンド・ステージに出演を果たした。灼熱の太陽の下、連日行われる過酷なライブ・パフォーマンスはバンドを鍛え上げると同時に、メンバー間の緊張を高めることにもなった。ドラマーのザック・ギブソン (Zach Gibson) やベーシストのデヴィッド・ロック (David Lock) の脱退など、ラインナップの変動が激しかったのもこの時期である。後任としてベーシストにライアン・"バート"・ウィリアムズ (Ryan "Bart" Williams) が加入し、彼の安定したプレイとステージパフォーマンスは、その後のバンドの支柱となった。
2.3 『Nocturnal』: 金字塔の樹立と音楽的完成 (2007-2009)
2.3.1 シャノン・ルーカスの加入とリズムの革新
2007年、バンドにとって極めて重要なメンバーチェンジが行われた。元オール・ザット・リメインズ (All That Remains) のドラマー、シャノン・ルーカス (Shannon Lucas) の加入である。彼のドラミングは、機械のように正確なブラストビートと、複雑なフィルインを軽々とこなす技術力を持ち合わせており、THE BLACK DAHLIA MURDERの楽曲のBPM (テンポ) と複雑性を飛躍的に向上させた。
2.3.2 傑作『Nocturnal』の誕生
2007年9月18日にリリースされた3rdアルバム 『Nocturnal』は、バンドのキャリアにおける最高傑作 (Masterpiece) として、ファンや批評家から絶大な支持を得ている。スウェーデンの伝説的イラストレーター、クリスチャン・ヴォーリン (Kristian Wåhlin) による青い古城のアートワークは、アルバム全体を包む冷徹で邪悪な雰囲気を完璧に視覚化していた。
楽曲面では、「Everything Went Black」「What a Horrible Night to Have a Curse」「Deathmask Divine」 といった、現在でもセットリストの核となる名曲が多数収録されている。特にホラー映画的なドラマツルギーと、ネオクラシカルなギターソロ、そしてシャノンの爆発的なドラムが一体となったこのアルバムは、アメリカン・メロディック・デスメタルの到達点の一つと見なされている。
2.4 ライアン・ナイトの加入と技術的進化の時代 (2009-2016)
2.4.1 『Deflorate』 と技巧の極致へ
2009年、リードギタリストのジョン・ケンパイネン (John Kempainen) が脱退し、元アーシス (Arsis) のライアン・ナイト (Ryan Knight) が加入した。ライアンは高度な音楽理論と卓越したテクニックを持つギタリストであり、彼の加入によりTHE BLACK DAHLIA MURDERのギターソロはより洗練され、プログレッシブな領域へと足を踏み入れた。
同年リリースの4thアルバム『Deflorate』は、ビルボード43位を記録。ライアンの加入効果は即座に現れ、「Necropolis」や「I Will Return」 といった楽曲では、流麗なスウィープ奏法やタッピングを駆使したソロが楽曲のハイライトとなった。
2.4.2 コンセプト・アルバム 『Ritual』
2011年の5thアルバム 『Ritual』では、バンドはさらに実験的なアプローチを試みた。黒魔術やオカルト儀式をテーマにしたコンセプト・アルバム的な構成を取り、ストリングスやアコースティックギターの導入など、楽曲のアレンジ幅を拡大した。ビルボード31位というバンド史上最高のチャート・アクションを記録した本作は、バンドが単なるデスメタル・バンドの枠を超え、芸術的な深みを増したことを証明した。
2.4.3 リズム隊の刷新と 『Everblack』 『Abysmal』
2012年、長年バンドを支えたシャノン・ルーカスとライアン・ウィリアムズが脱退。後任として、マックス・ラヴェル (Max Lavelle、Ba / 元Despised Icon) とアラン・キャシディ (Alan Cassidy、Dr / 元The Faceless) が加入した。アランのドラミングはシャノンに勝るとも劣らないスピードとスタミナを誇り、バンドのアグレッシブな側面をさらに強化した。
この新体制で制作された『Everblack』 (2013年) と『Abysmal』 (2015年) は、バンドの成熟期を象徴する作品である。『Abysmal』は特に「地獄」をテーマにし、プロダクションを意図的に生々しく、荒々しいものにすることで、初期の衝動を取り戻しようとする意図が感じられた。しかし、この時期ライアン・ナイトはツアー生活への疲弊から脱退を決意し、2016年に友友好にバンドを去ることとなる。
2.5 ブランドン・エリスの加入と新世代の覇権 (2016-2021)
2.5.1 若き天才の加入
ライアン・ナイトの後任として白羽の矢が立ったのは、当時まだ20代前半であったブランドン・エリス (Brandon Ellis) である。彼はギターの腕前だけでなく、レコーディング・エンジニアとしてのスキルも持ち合わせていた。彼の加入後初のアルバムとなる『Nightbringers』 (2017年) は、33分という短尺の中に80年代ヘヴィメタルの煌びやかさとデスメタルの残虐性を凝縮した、極めて密度の高い作品となった。
2.5.2 『Verminous』 と地下世界への回帰
2020年4月、9thアルバム 『Verminous』がリリースされた。このアルバムは「地下世界」や「害獣 (Vermin)」 をテーマにしており、ブランドン・エリスがプロデュースを全面的に担当した。ドラムのサウンドはよりオーガニックになり、楽曲にはRPG (ロールプレイングゲーム) の世界観を反映したファンタジックな要素が強まった。しかし、リリースの直後に世界はCOVID-19のパンデミックに見舞われ、予定されていたツアーは全てキャンセルとなった。
2.6 トレヴァー・スターナドの死と再生の決意 (2022-Present)
2.6.1 2022年5月11日の悲劇
パンデミックが明け、バンドが活動を再開しようとしていた矢先の2022年5月11日、全世界に衝撃的なニュースが流れた。ボーカリストでありバンドの顔であったトレヴァー・スターナドが、41歳の若さで急逝したのである。
トレヴァーは、その卓越したボーカル・パフォーマンスだけでなく、メタル・シーンきっての「愛されキャラ」であり、また「歩く音楽百科事典」として知られるほどの知識人でもあった。彼は自身のコラムやSNSを通じて無数の新人バンドをフックアップし、シーン全体の活性化に貢献してきた「羊飼い (Shepherd)」のような存在であった。彼の死に対し、マシュー・キイチ・ヒーフィー (Trivium) やロブ・フリン (Machine Head) など、ジャンルを超えた数多くのミュージシャンが追悼の意を表した。
2.6.2 デトロイトでの追悼ライブと新体制の発表
トレヴァーの死後、バンドの存続は危ぶまれた。しかし、残されたメンバーは「トレヴァーの遺産を守り続けること」を選んだ。2022年10月28日、デトロイトのSaint Andrew's Hallで開催された追悼ライブ 「Celebration of the Life and Legacy of Trevor Strnad」において、バンドは驚くべき新体制を発表した。
- ブライアン・エスクバック (Brian Eschbach): 結成以来リズムギターを担当していた彼が、トレヴァーに代わってリードボーカルへ転向。
- ライアン・ナイト (Ryan Knight): 2016年に脱退した彼が、リズムギタリストとしてバンドに復帰。
この決断は、外部から新しいボーカリストを入れるのではなく、トレヴァーと共に歩んできた「家族」で穴を埋めるという、最もバンドらしい選択であった。ブライアンは「誰もトレヴァーの代わりにはなれないが、我々の人生そのものであるこの音楽を止めるわけにはいかない」という覚悟を示した。
2.6.3 『Servitude』 と新たなる旅路
2024年9月27日、新体制による初のアルバム 『Servitude』 がリリースされた。ブライアンが全曲の作詞とボーカルを担当し、プロデュースはブランドン・エリスとマーク・ルイス (Mark Lewis) が共同で行った。タイトル『Servitude (隷属)』は、THE BLACK DAHLIA MURDERがメタルという音楽、そして支えてくれるファンに対して生涯を捧げるという誓いの表れである。アルバムはオーストリアのチャートで49位を記録するなど、世界中で温かく迎え入れられた。ブライアンのボーカルはトレヴァーのスタイルを継承しつつも、より中低域の太さを強調した独自のアプローチを見せ、バンドが過去に囚われることなく前進していることを証明した。
3. メンバー構成の詳細分析 (Detailed Member Lineup)
THE BLACK DAHLIA MURDERのサウンドは、各時代のメンバーの個性が融合して形成されている。ここでは各メンバーの役割と貢献について詳述する。
3.1 現行メンバー (Current Members) [2025年2月時点]
| 氏名 (英語/カタカナ) | 担当パート | 在籍期間 | 役割と特徴 |
|---|---|---|---|
| Brian Eschbach ブライアン・エスクバック |
Lead Vocals (Formerly Rhythm Guitar) |
2001-Present | 唯一のオリジナルメンバー。バンドの楽曲の大半を作曲してきた中心人物。2022年よりボーカルに転向し、フロントマンとしてのカリスマ性を発揮。彼の書くリフはTHE BLACK DAHLIA MURDERのアイデンティティそのものである。 |
| Max Lavelle マックス・ラヴェル |
Bass | 2012-Present | 元Despised Icon。ライブでの激しいステージングと、指弾きによる太いベースラインでバンドのボトムを支える。ムードメーカーとしても知られる。 |
| Alan Cassidy アラン・キャシディ |
Drums | 2012-Present | 元The Faceless。ブラストビートの持久力とキックの正確さは人間離れしており、近年のTHE BLACK DAHLIA MURDERの高速化を支える心臓部。ドラムクリニック等も行う技巧派。 |
| Brandon Ellis ブランドン・エリス |
Lead Guitar, Backing Vocals | 2016-Present | 元Arsis, Cannibal Corpse (Live)。「The Shredder」。80年代ギターヒーローの系譜を継ぐプレイと、現代的なプロダクションスキルを併せ持つ。近年のアルバムのミックス/マスタリングも手がける重要人物。2025年2月に脱退予定との情報あり。 |
| Ryan Knight ライアン・ナイト |
Rhythm Guitar, Backing Vocals (Formerly Lead Guitar) |
2009-2016, 2022-Present | 元Arsis。黄金期(『Deflorate』~ 『Abysmal』)のリードギタリスト。復帰後はリズムギターを担当し、ブランドンとの至高のツインギター体制を構築。作曲面での貢献も大きい。 |
3.2 過去の主要メンバー (Notable Past Members)
- Trevor Strnad (トレヴァー・スターナド) [Vo]: (2001-2022) - バンドの顔であり精神的支柱。ハイ&ローを使い分ける変幻自在のボーカルと、文学的かつホラーチックな歌詞で唯一無二の世界観を築いた。
- Ryan "Bart" Williams (ライアン・"バート"・ウィリアムズ): (2005-2012) - レコーディング・エンジニアとしても活躍。彼の在籍時、バンドのサウンドはよりソリッドになった。
- Shannon Lucas (シャノン・ルーカス): (2007-2012) - 『Nocturnal』の成功に不可欠だったドラマー。「マシンガン」のようなブラストビートで知られる。
- John Kempainen (ジョン・ケンパイネン) [Gt]: (2002-2008) - 初期のリードギタリスト。今のテクニカル路線とは異なる、より直感的でメロディアスなソロを弾いた。
4. ディスコグラフィー (Discography)
4.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
1. Unhallowed (2003)
概要: 若き日の衝動が詰め込まれたデビュー作。スウェーデンのメロディック・デスメタルへの憧憬と、アメリカン・ハードコアの焦燥感が同居している。
重要曲:
- Funeral Thirst: バンドの代名詞。イントロのツインリードからブラストビートへの展開は様式美の極み。
- Apex: クライマックスへ向かう疾走感が特徴。
チャート: チャート圏外だったが、口コミで徐々に評価を高めた。
2. Miasma (2005)
概要: バンドの個性が確立された作品。前作よりパンク色が強まり、楽曲展開が予測不能になった。トレヴァーのボーカルもより狂気的になっている。
重要曲:
- Statutory Ape: ライブの定番曲。PVにはゴリラの着ぐるみが登場し、バンドのユーモアセンスを世に知らしめた。
- Miasma: タイトル曲。不協和音を用いたリフが不穏な空気を醸し出す。
3. Nocturnal (2007)
概要: 最高傑作との呼び声高い3rdアルバム。シャノン・ルーカスのドラムにより、スピードと正確性が格段に向上。ホラー映画のようなドラマチックな構成が全編を貫く。
重要曲:
- Everything Went Black: 完璧なオープニングトラック。
- What a Horrible Night to Have a Curse: ゲーム 『悪魔城ドラキュラ』シリーズ (Castlevania II) からの引用。高速リフとメロディアスなサビの対比が鮮やか。
- Deathmask Divine: 死体愛好 (ネクロフィリア) をテーマにした美しくもグロテスクなバラード的ラストナンバー。
4. Deflorate (2009)
概要: ライアン・ナイト加入作。テクニカル・デスメタルの要素が強まり、ギターソロの難易度が急上昇した。
重要曲:
- Necropolis: 中近東風のメロディを取り入れたリフが印象的。
- I Will Return: 「私は戻ってくる」という歌詞の通り、ライブの最後を飾るアンセム。希望と再生を感じさせるメロディが胸を打つ。
5. Ritual (2011)
概要: コンセプト・アルバム。魔術書のような歌詞と、より複雑な楽曲構造を持つ。ビルボード31位を記録し、商業的ピークを迎えた。
重要曲:
- Moonlight Equilibrium: 人狼伝説をモチーフにした楽曲。ワルツのようなリズム(3拍子)を取り入れている。
- A Shrine to Madness: 狂気への賛歌。パーティ・ソング的な側面も持つ。
6. Everblack (2013)
概要: リズム隊を一新しての作品。アラン・キャシディのドラムはシャノンとは異なるグルーヴをもたらした。「Everblack」 という造語は、バンドの闇が永遠であることを示唆する。
重要曲:
- In Hell Is Where She Waits for Me: 1stアルバムの 「Funeral Thirst」の前日譚とも言える歌詞。雨音のSEから始まる。
- Goat of Departure: 聖書の「身代わりの山羊 (スケープゴート)」をテーマにした疾走曲。
7. Abysmal (2015)
概要: 意図的にプロダクションを粗くし、ライブ感を重視した作品。「地獄」をテーマに、絶望的な速さで進行する。
重要曲:
- Receipt: 自殺をテーマにした重い歌詞。トレヴァーの死後、ファンの間で再評価され、聴くのが辛いと言われるほど感情が込められている。
- Threat Level No. 3: 精神的錯乱を描写したカオティックなナンバー。
8. Nightbringers (2017)
概要: ブランドン・エリス加入作。彼の持ち味である80年代HR/HM的な煌びやかなギターソロがフィーチャーされ、サウンドが劇的にクリアになった。
重要曲:
- Widowmaker: オープニングからフルスロットルで駆け抜ける。
- Matriarch: 妊娠・出産への恐怖をグロテスクに描いた楽曲。キャッチーなサビが特徴。
9. Verminous (2020)
概要: トレヴァー遺作。「地下世界」をテーマに、D&D (ダンジョンズ&ドラゴンズ) のようなファンタジー要素を取り入れた。ドラムのサウンドが生々しく、部屋鳴りを感じさせるミックスが施されている。
重要曲:
- Verminous: クリーントーンの導入など、ダイナミクスの幅が広がった。
- Child of Night: ミドルテンポで重厚に聴かせる楽曲。
10. Servitude (2024)
概要: 新体制での復活作。ブライアン・エスクバックのボーカルデビュー。全10曲、32分49秒というコンパクトな構成は、余計な装飾を削ぎ落としたバンドの決意を感じさせる。
トラックリストと詳細:
- Evening Ephemeral: イントロのSEから激流のようなブラストビートへ。ブライアンの咆哮が復活を告げる。
- Panic Hysteric: 往年のTHE BLACK DAHLIA MURDER節とも言える疾走曲。
- Aftermath: 先行シングル。終末的な世界観と哀愁あるメロディが融合。
- Cursed Creator
- An Intermission: 短いインストゥルメンタル。
- Asserting Dominion: 支配を宣言する力強いナンバー。
- Servitude: タイトル曲。バンドの「隷属」としての生き様を描く。
- Mammoth's Hand: PVが制作された。80年代アクション映画のようなリフワーク。
- Transcosmic Blueprint
- Utopia Black: アルバムを締めくくるダークな楽曲。
4.2 映像作品 (DVDs)
THE BLACK DAHLIA MURDERの魅力を語る上で欠かせないのが、THE BLACK DAHLIA MURDER of ドキュメンタリーDVDである。音楽のシリアスさとは対照的に、THE BLACK DAHLIA MURDERのツアー生活は酒、大麻、悪ふざけ、裸、花火といった「ジャッカス (Jackass)」的な狂乱に満ちている。
| タイトル | リリース年 | 内容・特徴 |
|---|---|---|
| Majesty | 2009 | 2枚組DVD。ディスク1は爆笑必至のドキュメンタリー。世界中のファンにTHE BLACK DAHLIA MURDERの「愛すべき馬鹿野郎」なキャラクターを植え付けた。ディスク2はライブ映像。 |
| Fool 'Em All | 2014 | Warped Tour 2013やヨーロッパツアーの記録。3Dメガネが同梱され、一部映像が3Dで楽しめるというギミック付き。 |
5. ライブ活動と主要ツアー (Touring History)
THE BLACK DAHLIA MURDERは「ツアー・バンド」としてのアイデンティティを強く持っている。THE BLACK DAHLIA MURDERはデスメタル・バンドでありながら、あらゆるジャンルのツアーに積極的に参加し、ファン層を拡大してきた。
5.1 サマー・スローター・ツアー (The Summer Slaughter Tour)
アメリカのエクストリーム・メタル・フェスの代表格であるサマー・スローター・ツアーには複数回参加している。
- 2008年: ヴェイダー (Vader)、クリプトプシー (Cryptopsy) らと共演。
- 2017年: ダイイング・フィータス (Dying Fetus) と共にヘッドライナーを務め、『Nocturnal』の10周年記念として同アルバムの完全再現を行った。
5.2 ワープド・ツアー (Vans Warped Tour)
2013年、THE BLACK DAHLIA MURDERはパンクやエモ・バンドが中心のワープド・ツアーに全日程参加した。これはデスメタル・バンドとしては異例のことであり、アウェイな環境でモッシュピットを作り出し、若いキッズたちをデスメタルの世界へ引きずり込んだ功績は大きい。
5.3 トレヴァー・スターナド追悼ライブ (2022)
2022年10月28日のデトロイト公演は、バンド史上最も感情的な夜となった。セットリストはバンドの歴史を網羅するものであり、ブライアンが初めてフロントマンとして立った歴史的瞬間であった。
セットリスト (一部抜粋):
- A Shrine to Madness
- Verminous
- Nightbringers
- Miasma
- Statutory Ape
- Everything Went Black
- Funeral Thirst
- I Will Return
6. Servitude (隷属) の先に
ザ・ブラック・ダリア・マーダーの25年は、絶え間ない進化と、予期せぬ悲劇との戦いの歴史であった。トレヴァー・スターナドという不世出の詩人を失ったことは、バンドにとって致命的な打撃となり得た。しかし、THE BLACK DAHLIA MURDERは解散という安易な道を選ばず、残されたメンバーの絆と音楽への献身 (Servitude) をもって再生を果たした。
最新作『Servitude』 とブライアン・エスクバックのボーカル転向は、単なる「代役」や「延命」ではない。それは、バンドの核にあるDNAが形を変えて発現した新たな進化形態である。ライアン・ナイトの復帰とブランドン・エリスの成熟により、楽器隊の演奏力は過去最高レベルに達しており、ブライアンのボーカルはバンドに新たな蛮性と重みをもたらしている。
THE BLACK DAHLIA MURDERは、デスメタルが単なる「激しい音楽」ではなく、仲間との絆、ユーモア、装置、そして人生の苦難を乗り越えるためのサウンドトラックであることを証明し続けている。THE BLACK DAHLIA MURDERの旅路は、「I Will Return」 の歌詞が予言した通り、死を超えて続いていくのである。
News
DARKEST HOUR、11作目『Suffer Divine』を10月30日に発売 タイトル曲の公式ミュージック・ビデオを公開
全11曲で、プロデュースはMark Lewis(WHITECHAPEL、THE BLACK DAHLIA MURDER、CANNIBAL CORPSE)。先行曲はアルバム表題曲。
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