FATES WARNING
フェイツ・ウォーニング (FATES WARNING)は、1982年にアメリカ合衆国コネチカット州ハートフォード (Hartford, Connecticut) で結成されたヘヴィ・メタル (Heavy Metal) バンドである。
Biography
フェイツ・ウォーニング (FATES WARNING)
歴史的変遷、音楽的進化、作品体系
1. プログレッシブ・メタル (Progressive Metal) の始祖としての位相と歴史的意義
フェイツ・ウォーニング (FATES WARNING)は、1982年にアメリカ合衆国コネチカット州ハートフォード (Hartford, Connecticut) で結成されたヘヴィ・メタル (Heavy Metal) バンドである。FATES WARNINGは、クイーンズライク (Queensrÿche) やドリーム・シアター (Dream Theater) と並び、プログレッシブ・メタル (Progressive Metal) というジャンルを確立した「ビッグ・スリー (Big Three)」の一角として、音楽史において極めて重要な位置を占めている。
FATES WARNINGの40年以上にわたるキャリアは、単なる一バンドの歴史にとどまらず、ヘヴィ・メタルというジャンルがいかにして芸術的な深みと複雑性を獲得していったかを示す縮図そのものである。初期の「NWOBHM (New Wave of British Heavy Metal)」 に影響を受けたアイアン・メイデン (Iron Maiden) 直系のツイン・ギター・ハーモニーから、複雑な変拍子と長尺な楽曲構成を持つテクニカルなスタイル、そしてアンビエント (Ambient) やインダストリアル (Industrial)、ポスト・ロック (Post-Rock) の要素を取り入れた内省的なアート・ロック (Art Rock)へと、その音楽性は劇的かつ論理的な進化を遂げてきた。
2. バンド・バイオグラフィー (Biography)
2.1 黎明期:ミスフィット (Misfit) からの脱皮とコネチカットの地下水脈 (1982-1983)
結成前夜とミスフィット (Misfit)
フェイツ・ウォーニング (FATES WARNING) の起源は、1982年のコネチカット州ハートフォード(Hartford) 周辺のローカル・シーンに遡る。ギタリストのジム・マテオス (Jim Matheos) は、当時カバー・バンドで活動していたボーカリストのジョン・アーチ (John Arch) と出会い、意気投合する。彼らは当初、ミスフィット (Misfit) というバンド名で活動を開始した。
当時のラインナップは以下の通りである:
- ジョン・アーチ (John Arch) - ボーカル
- ジム・マテオス (Jim Matheos) - ギター
- ヴィクター・アルドゥイニ (Victor Arduini) - ギター
- ジョー・ディバイアズ (Joe DiBiase) - ベース
- スティーヴ・ジマーマン (Steve Zimmerman) - ドラムス
彼らの音楽的ルーツは、当時隆盛を極めていたジューダス・プリースト (Judas Priest) やアイアン・メイデン (Iron Maiden) といったブリティッシュ・ヘヴィ・メタルに加え、マーシフル・フェイト (Mercyful Fate) のような欧州のよりダークでシアトリカルなメタル・バンドにあった。特にヴィクター・アルドゥイニはリッチー・ブラックモア (Ritchie Blackmore) に影響を受けており、ジョン・アーチはロブ・ハルフォード (Rob Halford) の高音域のスクリームに強い影響を受けていた。
『1984 Demo』とメタル・ブレイド (Metal Blade) との契約
バンドは「FATES WARNING」と改名した後、本格的なオリジナル楽曲の制作に着手し、『1984 Demo』と呼ばれるデモテープを録音した。このデモテープは、当時のアンダーグラウンド・メタル・シーンの重要人物であり、メタル・ブレイド・レコーズ (Metal Blade Records) の創始者であるブライアン・スラゲル (Brian Slagel) の手に渡ることとなる。スラゲルは、メタリカ (Metallica) やスレイヤー (Slayer) を世に送り出した慧眼の持ち主であり、フェイツ・ウォーニングの持つ独特の旋律美とジョン・アーチの異形のボーカル・スタイルに即座に可能性を見出した。
この契約は、バンドにとって決定的な転機となった。当時、アメリカのメタル・シーンはスラッシュ・メタル (Thrash Metal) とLAメタル (Glam Metal) に二極化しつつあったが、フェイツ・ウォーニングはそのどちらにも属さない、より伝統的でありながら実験的な「第3の道」を提示することになる。
2.2 ジョン・アーチ (John Arch) 時代: 幻想と複雑性の融合 (1984-1986)
ジョン・アーチ在籍時の初期3作は、ファンの間でも「アーチ時代 (Arch Era)」として神格化されており、プログレッシブ・メタルの「原型」として極めて重要な位置を占めている。この時期の特徴は、変拍子の導入がまだ実験的段階にありながらも、アーチの独創的なメロディラインと歌詞世界が、既存のメタルの枠組みを逸脱し始めていた点にある。
『Night on Bröcken』 (1984) - NWOBHMへの憧憬と模索
デビュー・アルバム 『Night on Bröcken』は、アイアン・メイデン (Iron Maiden) の影響が色濃く反映された作品である。タイトルはドイツのハルツ山地にあるブロッケン山 (Brocken)に由来し、ヴァルプルギスの夜 (Walpurgis Night) の伝説や魔女の集会を想起させるオカルト的な雰囲気を漂わせている。
- 音楽性: ツイン・ギターによるハーモニー(通称 「ハモリ」)が全編を支配しており、ギャロップ・リズム (Gallop Rhythm) を多用したベースラインはスティーヴ・ハリス (Steve Harris) の影響を隠そうとしていない。しかし、「Buried Alive」や「The Calling」といった楽曲では、既に定型的な構成を崩しようとする意志が見え隠れしていた。
- 評価: 当時のプレスからは「アイアン・メイデンのクローン」と評されることもあったが、その演奏技術の高さと、ジョン・アーチの突き抜けるようなハイトーン・ボイスは、単なるフォロワー以上のポテンシャルを感じさせた。
『The Spectre Within』 (1985) - 独自性の確立と暗黒化
2作目『The Spectre Within』において、バンドはより複雑でダークな方向へと大きく舵を切った。このアルバムは、バンドが「プログレッシブ」というタグを貼られるきっかけとなった重要な作品である。
- 楽曲構造の進化: 「Traveler in Time」や「Epitaph」 といった楽曲では、リフの展開がより予測不能になり、曲の長さも伸長した。特にラストを飾る 「Epitaph」は12分近くに及び、静寂と激動が交錯するドラマティックな構成は、後のプログレッシブ・メタルの雛形とも言える。
- 歌詞世界: ジョン・アーチの歌詞は、単純な悪魔崇拝やホラーから離れ、死生観や超自然的な存在との対話といった、より哲学的で難解なテーマへと深化していった。
- ライブ活動: この時期、バンドはモーターヘッド (Motörhead) などのサポートとしてツアーを行い、過酷なロード環境の中で演奏力を磨き上げていった。しかし、モーターヘッドの荒々しいファン層と、フェイツ・ウォーニングの知的で複雑な音楽性は必ずしも親和性が高いわけではなく、バンドはアウェイな環境での戦いを強いられた。
『Awaken the Guardian』 (1986) - プログレッシブ・パワー・メタルの金字塔
1986年にリリースされた3作目『Awaken the Guardian』は、ジョン・アーチ時代の集大成であり、プログレッシブ・パワー・メタル (Progressive Power Metal) というサブジャンルにおける最高傑作の一つとして広く認識されている。
- メンバー交代: アルバム制作直前に、オリジナル・ギタリストのヴィクター・アルドゥイニ (Victor Arduini) がバンドを去り、後任としてフランク・アレスティ (Frank Aresti) が加入した。アレスティの加入はバンドに新たなテクニカルな要素をもたらした。彼のプレイスタイルはより正確無比であり、ジム・マテオスとのコンビネーションは「完璧な対位法」を生み出した。
- 音楽前特徴: このアルバムでは、変拍子がもはやギミックではなく、楽曲の骨格として自然に組み込まれている。「Guardian」や「Fata Morgana」におけるリフワークは複雑怪奇でありながら、アーチのボーカル・メロディはキャッチーさを失っていない。アコースティック・ギターの導入も効果的で、幻想的な雰囲気を高めている。
- 商業的成功: 本作はメタル・ブレイド・レコーズのリリース作品として初めてビルボード200チャート (Billboard 200) にランクイン (191位) するという快挙を成し遂げた。これは、地下に潜っていたプログレッシブなメタル・サウンドが、メインストリームの端に到達した瞬間であった。
ジョン・アーチ (John Arch) の解雇と真相
『Awaken the Guardian』での成功により、バンドはさらなる飛躍を期待されていた。しかし、1987年、衝撃的なニュースがファンを襲う。ジョン・アーチの脱退である。
長らく、その理由は「音楽的な相違」や「仕事とバンドの両立の困難さ」にあると公式には説明されてきた。しかし、近年の伝記 『Destination Onward: The Story of FATES WARNING』やインタビューにおいて、より複雑で個人的な事情が明らかになった。アーチは極度の「パフォーマンス不安(Performance Anxiety)」に苛まれており、これが原因でバンド活動に支障をきたしていたのである。彼は後に双極性障害Ⅱ型 (Bipolar II Disorder) と診断されたことを明かしている。また、バンド側 (特にジム・マテオス)がより攻撃的で現代的なサウンドを求めていたのに対し、アーチのスタイルがそれに合わなくなっていたという音楽的な乖離も事実であった。
2.3 レイ・アルダー (Ray Alder) の加入と黄金期への突入 (1987-1993)
新たな声の探求とレイ・アルダーの抜擢
ジョン・アーチの不在はバンド存続の危機であった。オーディションが行われ、最終的に選ばれたのは、テキサス州サンアントニオ (San Antonio, Texas) 出身の若きボーカリスト、レイ・アルダー (Ray Alder) であった。
アルダーの加入経緯はドラマティックである。彼は元々フェイツ・ウォーニングのファンであり、ジョン・アーチを尊敬していた。共通の知人を通じてデモテープが送られ、その圧倒的な声域とパワーがバンドの目に留まった。1987年、彼はコネチカットへ飛び、即座にバンドの顔となった。アルダーの声はアーチのような独特の「節回し」はないものの、より鋭く、より現代的なスクリームと、エモーショナルな中音域を持っていた。
『No Exit』 (1988) - 長尺組曲への挑戦とスラッシュへの接近
新生フェイツ・ウォーニングの第一弾 『No Exit』は、前作までのファンタジー色を一掃し、冷徹で攻撃的な作品となった。
- サウンドの変化: プロダクションはドライで硬質になり、ギター・リフはスラッシュ・メタル (Thrash Metal) に接近したクランチ感を増した。「Anarchy Divine」 や 「Silent Cries」といった楽曲は、バンド史上最も速く、激しい部類に入る。
- The Ivory Gate of Dreams: アルバムのB面(レコード時代) 全てを占める21分58秒の大作「The Ivory Gate of Dreams」は、ホメロス (Homer) の 『オデュッセイア(Odyssey)』に登場する「角の門と象牙の門 (Gates of Horn and Ivory)」の伝説をモチーフにした壮大な組曲である。8つのパートに分かれたこの曲は、静寂なアコースティック・パートから怒涛のスラッシュ・パートまで目まぐるしく展開し、プログレッシブ・メタルの歴史における初期の長尺組曲(エピック・ソング)の金字塔となった。
- 成功: ビルボード200で111位を記録し、MTVの 「Headbangers Ball」でのビデオ・オンエアも手伝って、バンドの世界的な知名度は飛躍的に向上した。
ドラマーの交代: スティーヴ・ジマーマンからマーク・ゾンダーへ
『No Exit』の後、オリジナル・ドラマーのスティーヴ・ジマーマン (Steve Zimmerman) が脱退する。彼のプレイスタイルはパワフルであったが、マテオスが求める複雑なリズム構築には限界があったとされる。後任として迎えられたのが、カルト的な人気を誇るバンド、ウォーロード (Warlord) のドラマー、マーク・ゾンダー (Mark Zonder)である。
ゾンダーの加入は、フェイツ・ウォーニングにとって「第二の結成」とも言えるほどの影響をもたらした。彼の手数の多いジャズ・フュージョン (Jazz Fusion) 的なアプローチ、電子ドラムや変則的なアクセントを駆使したプレイは、バンドのリズム構造を根本から変革し、真の意味での「プログレッシブ・メタル」を完成させた。
『Perfect Symmetry』 (1989) - テクニカル・プログレの頂点
1989年の『Perfect Symmetry』は、マーク・ゾンダーの加入効果が最大限に発揮された作品である。
- 音楽性: ラッシュ (Rush) の 『Hemispheres』 期やキング・クリムゾン (King Crimson)の影響を色濃く反映し、変拍子と複雑なリズム構成を極限まで追求している。楽曲はメロディアスでありながら、そのリズムは数学的とも言えるほど緻密である。
- ケヴィン・ムーアの参加: 当時ドリーム・シアター (Dream Theater) のキーボーディストであったケヴィン・ムーア (Kevin Moore) がゲスト参加し、「At Fates Hands」などでピアノやキーボードを提供した。これにより、バンドのサウンドに冷ややかで知的な空間的広がりが加わった。
- 評価: このアルバムは、ドリーム・シアターの『Images and Words』 (1992) に先駆けてプログレッシブ・メタルの文法を確立した重要作として、現在でも極めて高い評価を得ている。
『Parallels』 (1991)-商業的成功と洗練
1991年、バンドはラッシュ (Rush) のプロデューサーとして名高いテリー・ブラウン (Terry Brown) を迎えて『Parallels』を制作した。
- 方向転換: 『Perfect Symmetry』の複雑さを維持しつつも、楽曲のコンパクトさと「歌心」を重視した方向へとシフトした。無駄な展開を削ぎ落とし、メロディのフックを強調したアプローチは、クイーンズライク (Queensrÿche) の 『Empire』 と比較されることが多い。
- 商業的ピーク: シングル 「Point of View」や「Eye to Eye」のヒットにより、アルバムはビルボード200で141位を記録。バンド史上最も商業的に成功した時期であり、多くの新規ファンを獲得した。この時期、バンドはドリーム・シアターと共にツアーを行うなど、プログレッシブ・メタル・シーンの中心的存在として君臨していた。
2.4 実験と内省の時代 (1994-2004)
1990年代中盤以降、グランジ (Grunge) やオルタナティブ・ロック (Alternative Rock) の台頭により、伝統的なメタル・バンドは苦境に立たされた。フェイツ・ウォーニングも例外ではなく、FATES WARNINGは生き残りをかけて自身のアイデンティティを再構築する必要に迫られた。
『Inside Out』 (1994) とラインナップの崩壊
『Inside Out』は『Parallels』の延長線上にある作品だが、よりダークで重苦しい空気が漂っている。「Pale Fire」 や 「Monument」などの佳曲を収録しているものの、バンド内部には疲弊の色が見え始めていた。
1996年、長年バンドを支えてきた創設メンバーのベーシスト、ジョー・ディバイアズ (Joe DiBiase)と、ギタリストのフランク・アレスティ (Frank Aresti) が相次いで脱退する。特にディバイアズの脱退により、オリジナル・メンバーはジム・マテオスただ一人となった。
『A Pleasant Shade of Gray』 (1997) - コンセプト・アルバムの極致
解散の危機に瀕したバンドは、ジム・マテオス、レイ・アルダー、マーク・ゾンダーのトリオ編成となり、ベースにはアーマード・セイント (Armored Saint) のジョーイ・ヴェラ (Joey Vera)、キーボードには脱退後のドリーム・シアターからケヴィン・ムーア (Kevin Moore) を迎えて再起を図った。
こうして生まれた『A Pleasant Shade of Gray』は、バンドの芸術的頂点の一つとされる傑作である。
- コンセプト: アルバム全体が50分を超える「1曲」として構成され、便宜上12のパート (Part I - Part XII) に分割されている。
- 音楽性: 従来のメタル的なリフ構成を捨て、インダストリアル (Industrial) なSE、ミニマルなフレーズの反復、アンビエントな静寂を大胆に取り入れた。全体を貫く「灰色の陰影」のような憂鬱なムードは、マテオスの内省的な側面が色濃く反映されている。
- 反応: 当初、この急激な変化に戸惑うファンもいたが、その完成度の高さから、現在ではプログレッシブ・メタルの枠を超えたアート・ロックの名盤として評価されている。
『Disconnected』 (2000) と 『FWX』 (2004) - 現代的なヘヴィネスへ
21世紀に入り、バンドはさらに実験的なアプローチを推し進めた。
- 『Disconnected』 (2000): ケヴィン・ムーアの影響が色濃く、ツール (Tool) やナイン・インチ・ネイルズ (Nine Inch Nails) にも通じる冷徹なインダストリアル・サウンドと、プログレッシブ・メタルの融合を試みた。「Still Remains」 は16分に及ぶ大作であり、バンドのライブにおけるハイライトの一つとなった。
- 『FWX』 (2004): 通算10作目。前作までの実験性を維持しつつも、よりロック的なダイナミズムを取り戻した。「Simple Human」や「Another Perfect Day」 に見られるように、楽曲はコンパクトになり、レイ・アルダーのボーカルも力強さを増した。
2.5 長期活動休止とサイド・プロジェクトの深化(2005-2012)
『FWX』のツアー後、長年のドラマーであるマーク・ゾンダーが脱退する。彼は音楽業界自体への興味を失いつつあり、ビジネス(ドラム・レンタル会社) に専念したいという意向を持っていた。後任として、スポックス・ビアード (Spock's Beard) のニック・ディヴァージリオ(Nick D'Virgilio) が一時的に参加しライブ活動を行ったが、バンドとしての創作活動は停滞期に入る。
この9年間の空白期間、メンバーはそれぞれのプロジェクトで創造性を発揮した。
- OSI (Office of Strategic Influence): ジム・マテオスとケヴィン・ムーアによるプロジェクト。よりエレクトロニックで実験的なサウンドを追求し、ドリーム・シアターのマイク・ポートノイ (Mike Portnoy) やポーキュパイン・ツリー (Porcupine Tree) のギャヴィン・ハリソン (Gavin Harrison) がドラムで参加した。
- Redemption: レイ・アルダーがボーカルとして参加したプログレッシブ・メタル・バンド。ニコラス・ヴァン・ダイク (Nicolas van Dyk) 率いるこのバンドで、アルダーはよりアグレッシブなメタル・ボーカルを披露し続けた。
- Arch/Matheos: 2011年、ジム・マテオスは初代ボーカリストのジョン・アーチと約25年ぶりに再合流し、プロジェクト 「Arch/Matheos」 としてアルバム 『Sympathetic Resonance』をリリースした。この作品は、実質的に『Awaken the Guardian』時代のフェイツ・ウォーニングを現代の技術で蘇らせたものであり、往年のファンを狂喜させた。参加メンバーもジョーイ・ヴェラ、ボビー・ジャーゾンベク、フランク・アレスティと、フェイツ・ウォーニングのファミリーで固められていた。
2.6 復活と現代のフェイツ・ウォーニング (2013-2019)
『Darkness in a Different Light』 (2013)-9年ぶりの帰還
Arch/Matheosでの成功が呼び水となり、マテオスは再びフェイツ・ウォーニングとしての活動に意欲を見せた。2013年、9年ぶりとなるスタジオ・アルバム 『Darkness in a Different Light』がリリースされた。ドラマーには、ライオット (Riot) やハルフォード (Halford) での活動で知られる超絶技巧派ボビー・ジャーゾンベク (Bobby Jarzombek) が正式加入。彼の加入により、バンドはゾンダー時代とは異なる、より直線的でアグレッシブな推進力を獲得した。
『Theories of Flight』 (2016) とアウェイクン・ラインナップの再結集
続く『Theories of Flight』 (2016)は、近年の最高傑作との呼び声も高く、多くのメディアで年間ベスト・アルバムに選出された。テーマは「逃避」や「移動」であり、マテオスの個人的な引っ越しや環境の変化が反映されている。
また、2016年から2017年にかけては、ジョン・アーチを含む 『Awaken the Guardian』時代のラインナップ (Arch, Matheos, Aresti, DiBiase, Zimmerman) が一期間限定で再結成し、欧米のフェスティバルに出演。その模様はライブ・アルバム 『Awaken the Guardian Live』(2017)に収められた。
2.7 最終章への示唆: 『Long Day Good Night』 (2020-現在)
2020年、通算13作目となるアルバム 『Long Day Good Night』 がリリースされた。
- 内容: 全13曲、72分を超えるバンド史上最長の作品であり、これまでのバンドの音楽性の全て(メタル、プログレ、アンビエント、アコースティック、ジャズ)を網羅した集大成的な内容となっている。
- ゲスト: ポーキュパイン・ツリーのギャヴィン・ハリソン (Gavin Harrison) が「When Snow Falls」でドラムを叩いているほか、ツアー・ギタリストのマイケル・アブドゥ(Michael Abdow) がソロで大きく貢献している。
しかし、このアルバムのリリース後、ジム・マテオスは「バンドのための新しい音楽を書くつもりはない」と公言し、レイ・アルダーもインタビューで「バンドは解散していないが、新しい音楽が作られることはないだろう」と語っている。2024年現在、マテオスとアルダーは新プロジェクト「ノース・シー・エコーズ (North Sea Echoes)」を始動させており、静謐なアンビエント・ロックを追求している。フェイツ・ウォーニングとしてのスタジオ・アルバム制作は事実上終了したと考えられているが、ライブ活動の可能性は完全に否定されていない。
3. メンバー詳細 (Band Members)
フェイツ・ウォーニングの歴史は、ジム・マテオスを中心としたメンバーの変遷の歴史でもある。各メンバーのプレイスタイルや機材、影響について詳述する。
3.1 現行ラインナップ (最終スタジオ・アルバム時点)
ジム・マテオス (Jim Matheos) - ギター (1982-現在)
- 役割: バンドの創始者、リーダー、メイン・ソングライター。
- スタイル: 決して派手な速弾きをひけらかすタイプではないが、変拍子を自然に聴かせるリフ構成や、クリーン・トーンを用いたアルペジオの美しさは特筆に値する。彼のギター・ソロは、感情的でメロディアスであり、デヴィッド・ギルモア (David Gilmour)の影響を感じさせる。
- 機材: 主にスタインバーガー (Steinberger) のギターを愛用していた時期が長いが、近年はポール・リード・スミス (PRS) やギブソン・レスポール (Gibson Les Paul) も使用。アンプはメサ・ブギー (Mesa Boogie)を長年愛用。
- 影響: 歌詞の面では、個人的な疎外感や内省的なテーマを一貫して描いている。
レイ・アルダー (Ray Alder) - ボーカル (1987-現在)
- 役割: 第2代ボーカリスト。バンドの「顔」。
- スタイル: 加入当初はジェフ・テイト (Geoff Tate) にも匹敵する超高音域のスクリームを武器としていたが、90年代中盤以降、喉の酷使や音楽性の変化に伴い、中低音域の表現力を増し、ハスキーでエモーショナルな歌唱スタイルへと深化した。その哀愁を帯びた声質は、マテオスの書くメランコリックなメロディと完璧に合致している。
- 活動: 現在はスペインに在住。RedemptionやEngine、A-Zなどのプロジェクトでも活動。
ジョーイ・ヴェラ (Joey Vera) - ベース (1996-現在)
- 役割: ベーシスト。バンドのムードメーカー。
- 経歴: アーマード・セイント (Armored Saint) の創設メンバーとしても著名。1996年の『A Pleasant Shade of Gray』から参加し、鉄壁のリズム隊を支える。
- スタイル: フィンガー・ピッキングによる太く、うねるようなグルーヴが特徴。エンジニアとしてのスキルも高く、バンドの作品のミキシングに関わることもある。
ボビー・ジャーゾンベク (Bobby Jarzombek) - ドラムス (2007-現在)
- 役割: ドラマー。
- 経歴: ライオット (Riot)、ハルフォード (Halford)、セバスチャン・バック (Sebastian Bach)、スパスティック・インク (Spastic Ink)。
- スタイル: 「ドラム博士 (Drum Hakase)」の異名を持つ。左右対称の独特なドラム・セットアップと、シンバルを背後に配置するなどの奇抜なセッティング、そしてオープン・ハンド奏法 (Open-handed playing) を駆使し、超高速かつ複雑怪奇なリズムを叩き出す。彼の加入により、バンドはよりテクニカルな楽曲をライブで再現可能になった。
マイケル・アブドゥ (Michael Abdow) - ギター (2017-現在; ツアー・メンバーとしては2013年から)
- 役割: リード・ギター。
- 経歴: 地元のマサチューセッツ州で活動していたテクニカル・ギタリスト。フランク・アレスティの不在を埋める形で参加し、その流麗なシュレッド・ギター (Shred Guitar)でバンドのサウンドを若返らせた。
3.2 過去の主要メンバー (Past Members)
ジョン・アーチ (John Arch) - ボーカル (1982-1987)
- スタイル: その歌唱法は唯一無二。「エルフのような (Elven)」 と評されることもある独特の節回しと、楽器のメロディラインに絡みつくようなボーカルライン構築は、一般的なポップ・ソングの構成 (Aメロ-Bメロ-サビ)を無視することが多い。
- 歌詞: ファンタジー、神話、オカルトを題材にした難解な歌詞世界を構築。
マーク・ゾンダー (Mark Zonder) - ドラムス (1988-2005)
- スタイル: パワーよりもニュアンスとコントロールを重視するドラマー。従来のロック・ドラミングの定石 (スネアのバックビートなど)をあえて崩し、タムやシンバルのアクセントでリズムを構築するスタイルは、プログレッシブ・メタルのドラミングに革命をもたらした。
フランク・アレスティ (Frank Aresti) - ギター (1986-1996, 2005-2016)
- スタイル: マテオスとのツイン・ギターは「Iron Maiden on steroids (ステロイドを打ったアイアン・メイデン)」と形容されるほどの緻密さを誇った。脱退後も断続的にバンドに関わり続けた。
ケヴィン・ムーア (Kevin Moore) - キーボード (ゲスト/セッション: 1989, 1997-2000)
- 影響: 正式メンバーではなかったが、彼のサウンド・デザインとピアノ・プレイは、『Perfect Symmetry』 以降のバンドの「冷ややかで知的」なサウンド・イメージを決定づけた。現在は精神科医 (Psychiatrist) として活動している。
3.3 メンバー在籍タイムライン (Member Timeline)
| 期間 (Period) | ボーカル (Vocals) | ギター (Guitar) | ギター (Guitar) | ベース (Bass) | ドラムス (Drums) | キーボード (Keys) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 1982-1985 | John Arch | Jim Matheos | Victor Arduini | Joe DiBiase | Steve Zimmerman | |
| 1986-1987 | John Arch | Jim Matheos | Frank Aresti | Joe DiBiase | Steve Zimmerman | |
| 1987-1988 | Ray Alder | Jim Matheos | Frank Aresti | Joe DiBiase | Steve Zimmerman | |
| 1988-1996 | Ray Alder | Jim Matheos | Frank Aresti | Joe DiBiase | Mark Zonder | (Kevin Moore - Guest) |
| 1996-2004 | Ray Alder | Jim Matheos | Joey Vera | Mark Zonder | (Kevin Moore - Guest) | |
| 2005-2007 | Ray Alder | Jim Matheos | Frank Aresti | Joey Vera | (Nick D'Virgilio) | |
| 2007-2016 | Ray Alder | Jim Matheos | Frank Aresti | Joey Vera | Bobby Jarzombek | |
| 2017-Present | Ray Alder | Jim Matheos | Michael Abdow | Joey Vera | Bobby Jarzombek |
4. ディスコグラフィ (Discography)
4.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)
- リリース年: 1984年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: デビュー作。元々は『Misfit』 時代のデモを再録音したものが多い。アイアン・メイデン直系のツイン・リードと疾走感が特徴だが、音質はチープである。カバーアートがアイアン・メイデンの『The Number of the Beast』に似ているという指摘を受け、再発盤で変更された経緯がある。
- 重要曲:
- "The Calling": ライブでの定番曲。
- "Kiss of Death": 初期の代表的な疾走曲。
- リリース年: 1985年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: プロダクションが向上し、楽曲の複雑性が増した。ジョン・アーチのボーカル・パフォーマンスは鬼気迫るものがある。
- 重要曲:
- "The Apparition": 複雑な展開を持つ名曲。歌詞は幽霊との対話を描く。
- "Epitaph": 12分に及ぶ大作。静と動のコントラストが美しい。
- リリース年: 1986年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: アーチ時代の最高傑作。ビルボード191位。ジャケット・アートはIoannisが手掛けた幻想的なイラストで、バンドのイメージを決定づけた。
- 重要曲:
- "Guardian": アグレッシブなリフとキャッチーなサビが同居する。
- "Fata Morgana": 変拍子リフの嵐。テクニカル・メタルの教科書。
- リリース年: 1988年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: レイ・アルダー加入作。ビルボード111位。スラッシュ・メタルの影響を受けた攻撃的なサウンド。
- 重要曲:
- "Silent Cries": MTVで頻繁に流れたシングル。アルダーのハイトーンが炸裂する。
- "The Ivory Gate of Dreams": 22分の組曲。プログレッシブ・メタルの歴史的転換点。
- リリース年: 1989年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: マーク・ゾンダー加入作。ヒプノシス (Hipgnosis) のストーム・ソーガソン(Storm Thorgerson) 風のアートワーク (実際はヒュー・サイム (Hugh Syme) によるもの)が象徴するように、知的で洗練されたサウンドへ。
- 重要曲:
- "Through Different Eyes": メロディアスでシングル・カットされた。
- "At Fates Hands": ピアノ、アコースティック・ギター、変拍子が絡み合う美しい曲。
- リリース年: 1991年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: 最大のヒット作(ビルボード141位)。プロデューサーにテリー・ブラウン。カナダのトロントで録音された。
- 重要曲:
- "Eye to Eye": バンド史上最もキャッチーな曲の一つ。
- "The Eleventh Hour": アルバム中最もプログレッシブな8分超の曲。
- リリース年: 1994年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: よりヘヴィでグルーヴィーなサウンド。しかし、楽曲の質は高いものの、バンド内の人間関係の悪化が影を落としている。
- 重要曲:
- "Monument": 複雑なリズムとアルダーのエモーショナルな歌唱が光る。
- "Island in the Stream": メロディの美しさが際立つバラード。
- リリース年: 1997年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: 全1曲のコンセプト・アルバム。テリー・ブラウンが再びプロデュース。深夜から早朝にかけての心理描写を描く。
- 構成: Part IからPart XII まで切れ目なく続く。ライブでは完全再現されることが多い。
- リリース年: 2000年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: ケヴィン・ムーアとの共同作業的な側面が強い。「疎外感」をテーマにした冷徹な傑作。
- 重要曲:
- "One": エレクトロニクスとヘヴィ・リフの融合。
- "Still Remains": 16分の長尺曲。後半のアンビエントな展開が圧巻。
- リリース年: 2004年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: モダンなロック・サウンドとプログレの融合。ジャケットはDNAの二重螺旋を模している。
- 重要曲:
- "Simple Human": 映画的なSEから始まるヘヴィな曲。
- "Wish": バンドにしては珍しい、インダストリアル・ロック風のアプローチ。
- リリース年: 2013年
- レーベル: Inside Out Music
- 詳細: 9年ぶりの復活作。ボビー・ジャーゾンベク初参加。初期のテクニカルな要素と近年のメロディアスな要素が融合。
- 重要曲:
- "One Thousand Fires": 複雑なリフと壮大なコーラス。
- "And Yet It Moves": 14分の長尺曲。
- リリース年: 2016年
- レーベル: Inside Out Music
- 詳細: 非常に評価の高い作品。録音技術の進化により、クリアかつダイナミックなサウンドを実現。
- 重要曲:
- "From the Rooftops": 静寂から爆発的なヘヴィネスへの展開。
- "The Ghosts of Home": マテオスの子供時代の転居体験をテーマにした10分超の曲。
- リリース年: 2020年
- レーベル: Metal Blade Records
- 詳細: バンド史上最長のアルバム。ジャズ、ファンク、アコースティックなど多彩な要素を含む。
- 重要曲:
- "The Destination Onward": オープニングを飾る壮大な曲。
- "The Last Song": アルバムの最後、そしてバンドのキャリアの最後を示唆するような静謐なバラード。
5. 主要なライブ・アルバムおよび映像作品
| タイトル (Title) | 形式 | リリース年 | 解説 |
|---|---|---|---|
| Still Life | 2CD | 1998年 | 『A Pleasant Shade of Gray』の完全再現を含む初の公式ライブ盤。日本盤にはボーナス・ディスクとしてアコースティック・ライブを収録。 |
| The View from Here | DVD | 2003年 | 『Disconnected』 に伴うツアーの映像と、過去のPV集。 |
| Live in Athens | DVD/2CD | 2005年 | ギリシャ・アテネでの熱狂的なライブを収録。ニック・ディヴァージリオがドラムを担当。 |
| Awaken the Guardian Live | DVD/Blu-ray/2CD | 2017年 | ジョン・アーチを含む1986年のラインナップによる再結成ライブ。ドイツのKeep It True FestivalとアメリカのProgPower USAでの公演を収録。 |
| Live Over Europe | 2CD | 2018年 | 『Theories of Flight』 ツアーの模様を収録した2枚組ライブ・アルバム。現行ラインナップの演奏力の高さを示す。 |
6. 静かなる革新者たちの遺産
フェイツ・ウォーニングは、ドリーム・シアター (Dream Theater) のような派手なヴィルトゥオジティ (Virtuosity)や、クイーンズライク (Queensrÿche) のような大衆的な成功とは異なる道を歩んだ。FATES WARNINGは常に「内省的」で、自身の内面世界を音像化することに腐心してきたバンドである。
ジム・マテオスという一人のソングライターの個人的な感情の吐露から始まった音楽は、ジョン・アーチの幻想的な物語、レイ・アルダーのエモーショナルな叫び、そして歴代のメンバーたちの卓越した演奏技術によって、普遍的な芸術作品へと昇華された。FATES WARNINGが開拓した「インテリジェント・メタル (Intelligent Metal)」のスタイルは、その後のプログレッシブ・メタル・バンド (Shadow Gallery, Redemption, Hakenなど)に計り知れない影響を与えている。
現在、バンドとしての新規楽曲制作は停止しているが、FATES WARNINGが残した13枚のスタジオ・アルバムは、ヘヴィ・メタルの歴史において、知性と感情が最も高いレベルで融合した瞬間を記録した記念碑として、今後も聴き継がれていくことだろう。
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NORTH SEA ECHOES、「Good Enough」のミュージック・ビデオを公開
FATES WARNINGのRay Alder(vo)とJim Matheos(g)によるデュオの2作目『How To Cast A Shadow』(8月31日発売、Metal Blade)からの1曲。写真撮影の際に併せて撮影された。同作では数曲でDennis Leeflangが生ドラムを叩いている。
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