VOIVOD
1982年にカナダ・ケベック州ジョンキエールで結成されたメタル・バンド、VOIVOD(ヴォイヴォド)のバイオグラフィとディスコグラフィー。1984年の『War and Pain』から2023年の『Morgöth Tales』までのアルバム16枚と2026年のライヴ盤に個別ページを用意し、収録曲、CD情報、ライナーノーツ、来日公演の記録をまとめている。
Biography
VOIVOD
バイオグラフィー
VOIVOD(ヴォイヴォド)は、1982年にカナダ・ケベック州ジョンキエールで結成されたメタル・バンドである。スラッシュ・メタルの爆発期に出発しながら、最初から他のどのバンドにも似ていなかった。三度と七度を避けた不協和な和音、途中で割れる拍子、そして終末後の世界の吸血鬼の君主「ヴォイヴォド」を軸にした物語——その全部を、ドラムのミシェル“アウェイ”ランジュヴァンが描くジャケットとともに四十年以上続けている。バンド自身のディスコグラフィがアルバムとして挙げているのは16枚で、2022年の『Synchro Anarchy』が15作目のスタジオ盤、2023年の『Morgöth Tales』は結成40年を機にした再録集である。2026年にはケベック交響楽団との共演を収めたライヴ盤『Symphonique』を発表した。
結成とデビュー(1982〜1986年)
1982年、ケベック州サグネ=ラック・サンジャン地方のジョンキエールで結成された。中心にいたのはドラムのミシェル・ランジュヴァン——通称アウェイ——とギターのデニス・ダムール(ピギー)で、歌のデニス・ベランジェ(スネイク)とベースのジャン=イヴ・テリオー(ブラッキー)が加わって四人になった。終末後の世界の吸血鬼の君主「ヴォイヴォド」の神話を作ったのはアウェイで、公式サイトの記述によれば、バンドはもともとその着想のまわりに集まっており、以後も続く科学小説的な主題も大部分が彼に由来する。
1983年にデモ『Anachronism』を残し、1984年にMetal Blade Recordsからデビュー作『War and Pain』を発表した。公式サイトによれば8月10日の発売で、1986年のテレビ・インタビューでバンドは二年で4万枚を超えたと述べている。表題曲ではなく「Voivod」に映像が作られ、監督はデデ・フォルタンだった。
1986年3月の2作目『Rrröööaaarrr』はNoise Internationalから。速さと荒さはデビュー作のままだが、不協和な和音の選び方がはっきり顔を出している。全世界で4万枚以上を売った。
プログレッシヴ化と全盛期(1987〜1991年)
1987年の『Killing Technology』は、スラッシュの骨格にプログレッシヴ・ロックの要素を入れた最初の作品とされる。録音は西ベルリンのMusic Labで、制作はハリス・ジョンズとバンド。当時のインタビューによれば、1986年の時点でバンドはメタルよりもハードコア・パンクとクロスオーヴァーに影響を受けており、メンバー全員が支持していたメタル・バンドはKREATORとMOTÖRHEADだけだった。全世界で6万枚以上を売っている。
1988年6月の『Dimension Hatröss』は、バンドの象徴である機械化された存在コーグルの物語を追う構成作である。題名の「Hatröss」は、スネイクがフランス語のatroce(ひどい、恐ろしい)をそう発音したものだとバンド自身が説明している。7万枚以上を売り、2017年にはアメリカの雑誌ローリング・ストーンが選ぶ「史上最高のメタル・アルバム100選」の78位に入った。
1989年10月の『Nothingface』は、このバンドがビルボード200に入った唯一の作品で、114位を記録した。制作はグレン・ロビンソンとスティーヴ・シンクレア。3曲目はPINK FLOYDの「Astronomy Domine」で、MTVのHeadbangers Ballで流れている。「Pre-Ignition」の中盤にはストラヴィンスキー『春の祭典』から来た刻みがある。
1991年の『Angel Rat』はRUSHの諸作で知られるテリー・ブラウンの制作で、トロントのMetalworks Studiosで録音された。プログレッシヴ・メタルからさらにオルタナティヴで幻惑的なロックへ寄った作品だが、ベースのブラッキーは発売前にバンドを離れている。
スネイクの離脱とエリック・フォレストの時代(1993〜2001年)
1993年の『The Outer Limits』はブラッキー抜きで作られ、ベースはセッションのピエール・サン=ジャンが弾いた。PINK FLOYDの「The Nile Song」と、17分26秒のこのバンド最長の曲「Jack Luminous」を含む。初回のCDには小冊子を立体で見るための3Dメガネが封入されており、ジャケット右上の「Number 8」は、編集盤『The Best of Voivod』を数に入れると通算8作目になるという意味である。
1994年にスネイクが一時バンドを離れた。後任は立てず、新しく入ったベースのエリック・フォレストが歌も務め、1995年の『Negatron』と1997年の『Phobos』の2作を残した。この時期の音は工業的な硬さとデス・メタル寄りの唸りを帯びており、バンドの歴史のなかでもはっきり別の相を成している。フォレストは2001年に離れた。
スネイクの復帰、ニューステッド、そしてピギーの死(2002〜2009年)
2002年にスネイクが戻り、同じ年にMETALLICAを離れたジェイソン・ニューステッドが“ジェイソニック”としてベースに加わった。2003年の同名作『Voivod』はニューステッドのレーベルChophouse Recordsから出て、「We Carry On」の映像がMTV2とFuse TVで頻繁に流れ、若い聴き手にバンドを届けた。同年のオズフェストではセカンド・ステージに立ち、ニューステッドはVOIVODとヘッドライナーのオジー・オズボーンの両方でベースを弾いている。
2005年8月26日、ギターのデニス“ピギー”ダムールが大腸癌で亡くなった。1959年9月24日生まれ、45歳だった。追悼の集いは同年10月22日にモントリオールで開かれ、彼の機材や写真、ツアーの映像が並べられた。マネージャーのジェームズ・マクリーンは公式サイトで、ピギーは音楽のために生きた人で、誰の負担にもなるまいとし、ただ曲を書いてギターを弾きたかったのだと書いている。
ピギーはカリフォルニアのニューステッド宅で、自分のMacにギターとベースを録り残していた。バンドはその音を二枚の作品にした。2006年の『Katorz』——ピギーがPro ToolsのCDに書きつけた「14」のフランス語quatorzeの音綴りが題名になった——と、2009年の『Infini』である。『Infini』はピギーの演奏を使った最後の作品で、ニューステッドが弾いた最後の盤でもある。
現在の編成と近年(2008年〜)
ギターの後任にはダニエル“チューイ”モングランが2008年に加わった。ブラッキーは2009年に復帰し、2013年の『Target Earth』——モングランが弾いた最初のスタジオ盤で、1991年以来ブラッキーが弾いた唯一の作品——を経て2014年に再び離れた。後任はドミニク“ロッキー”ラロシュで、以後この四人が続いている。
2018年の『The Wake』はドイツ26位、スイス51位、ベルギーのワロン94位、ハンガリー32位、アメリカでは新人チャート8位・総合148位に届き、2019年のJUNO賞メタル/ハードミュージック・アルバム部門を受賞した。移動できない時期に書かれた2022年の『Synchro Anarchy』は、バンド自身が15作目のスタジオ盤と数えている。2023年の『Morgöth Tales』は、各時代から1曲ずつを選んで現在の編成で録り直した結成40年の記念作である。
2025年5月、バンドは母校のあるケベック大学シクーティミ校(UQAC)から名誉博士号を授与された。同年9月には、40年以上の活動をたどる書籍『Always Moving — The Strange Multiverse of Voïvod』が出ている。2025年6月4日にはケベックシティのグラン・テアトルでケベック交響楽団と共演し、その一夜が2026年6月のライヴ盤『Symphonique』になった。アウェイによれば、2027年にはサグネ=ラック・サンジャン交響楽団との再演も予定されている。
メンバーについて
現在の編成は、歌のデニス“スネイク”ベランジェ、ギターのダニエル“チューイ”モングラン、ベースのドミニク“ロッキー”ラロシュ、ドラムのミシェル“アウェイ”ランジュヴァンの4人である。アウェイは1982年の結成から一度も離れていない唯一のメンバーで、ジャケットと視覚面も一貫して彼の手による。スネイクは1982年から1994年まで、そして2002年から現在まで在籍している。モングランは2008年から、ラロシュは2014年からである。
過去のメンバーでは、1982年から2005年までギターを弾いたデニス“ピギー”ダムール、1982年から1991年と2009年から2014年までベースを弾いたジャン=イヴ“ブラッキー”テリオー、1994年から2001年までベースと歌を務めたエリック・フォレスト、2002年から2009年までベースを弾いたジェイソン“ジェイソニック”ニューステッドの名前が挙がる。このほか公式サイトは、ピエール・サン=ジャン(1992〜1993年)、マルタン・ボルデュック(1993〜1994年)、ジル・ブリズボワ(1994年)、ヴィンセント・ピーク(2002年)を過去のメンバーとして載せている。
ディスコグラフィ
バンド自身のディスコグラフィがアルバムとして挙げているのは16枚で、これに2026年のライヴ盤『Symphonique』を加えた17作に、このサイトでは個別のページを用意している。各作の収録曲、CD情報、ライナーノーツは、このページのアルバム一覧から読める。
| 年 | タイトル | レーベル |
|---|---|---|
| 1984 | War and Pain | Metal Blade |
| 1986 | Rrröööaaarrr | Noise International |
| 1987 | Killing Technology | Noise |
| 1988 | Dimension Hatröss | Noise |
| 1989 | Nothingface | Mechanic/MCA |
| 1991 | Angel Rat | Mechanic/MCA |
| 1993 | The Outer Limits | Mechanic/MCA |
| 1995 | Negatron | Hypnotic/Mausoleum |
| 1997 | Phobos | Hypnotic |
| 2003 | Voivod | Chophouse/Surfdog |
| 2006 | Katorz | The End/Nuclear Blast |
| 2009 | Infini | Relapse/Nuclear Blast |
| 2013 | Target Earth | Century Media |
| 2018 | The Wake | Century Media |
| 2022 | Synchro Anarchy | Century Media |
| 2023 | Morgöth Tales | Century Media |
| 2026 | Symphonique(ライヴ) | Century Media |
このほかに、1983年のデモ『Anachronism』、EP『Thrashing Rage』(1986年)、『Cockroaches』(1987年)、『Post Society』(2016年)、『The End of Dormancy』(2020年)、ライヴ作品『Voivod Lives』(2000年)、『Tatsumaki: Voivod Japan 2008』(2009年)、『Warriors of Ice』(2011年)、『Lost Machine – Live』(2020年)、そして編集盤『The Best of Voivod』(1992年)、『Kronik』(1998年)、『Build Your Weapons』(2017年)がある。
日本公演
日付を特定できた公演は4本で、いずれも川崎のCLUB CITTA'で行われた〈THRASH DOMINATION〉の二夜連続公演である。
最初は2008年9月20日と21日の〈THRASH DOMINATION 08〉。会場の告知ページはTESTAMENT、VOIVOD、FORBIDDENの三組を両日の出演者として挙げており、開場15時、開演16時、オールスタンディング、前売8500円・当日9000円(いずれもドリンク代500円別)だった。主催はbayfm78「POWER ROCK TODAY」、招聘・企画制作はCLUB CITTA'、後援はtvk。このときの編成はスネイク、ブラッキー、アウェイ、そしてダニエル・モングランで、この来日からライヴ作品『Tatsumaki: Voivod Japan 2008』が生まれている。
二度目は2014年3月15日と16日の〈THRASH DOMINATION 2014〉で、EXODUS、SANCTUARY、ARTILLERYとの共演だった。開場15時、開演16時、前売9500円(ドリンク代500円別)。会場の告知ページにはアウェイ自身の映像メッセージが置かれており、3月15日と16日にEXODUSと一緒に出ること、2008年のときはTESTAMENTと一緒だったことを本人が語っている。この二夜は〈THRASH DOMINATION〉主催者自身のアーカイブにも記録されている。
出典について
ここに書いた事実は、バンドの公式サイト(バイオグラフィ、メンバー紹介、ディスコグラフィの各作品ページ、ピギーの追悼ページ、トップページの『Symphonique』の告知とニュース一覧)、MusicBrainzの各作品のリリース情報と楽曲の作者情報、Wikidata、Spotifyの各実体の配信情報、英語版Wikipediaのバンドおよび各アルバムの記事、そしてCLUB CITTA'と〈THRASH DOMINATION〉主催者のアーカイブに拠っている。結成年と結成地、メンバーの在籍期間、各作の発売日とレーベル、ピギーの生没日と追悼の集いの日付は、いずれも公式サイトの記述である。演奏者の名前も公演の日付も、推測では書いていない。発売日が二つの資料で食い違う作品については、このページのアルバム一覧から開ける個別ページにその旨を記している。
Trivia
バンド名でもある「ヴォイヴォド」は、終末後の世界の吸血鬼の君主として設定された存在である。公式サイトのメンバー紹介は、この神話を作ったのはドラムのミシェル“アウェイ”ランジュヴァンであり、バンドはもともとその着想のまわりに集まったのだと記している。以後も続く科学小説的な主題も、大部分が彼に由来するとされている。ランジュヴァンは1982年の結成から一度も離れていない唯一のメンバーで、この人物像はデビュー作『War and Pain』の1曲目の題名にもなっている。
1988年の『Dimension Hatröss』は、バンドの象徴である機械化された存在コーグルの遍歴を追う構成作である。題名の「Hatröss」について、バンドの公式サイトは、歌のスネイク(デニス・ベランジェ)がフランス語のatroce——ひどい、恐ろしいという意味の語——をそう発音したものだと説明している。ジャケットの構想と絵はドラムのミシェル・ランジュヴァンで、全世界で7万枚以上を売った。2017年にはアメリカの雑誌ローリング・ストーンが選ぶ「史上最高のメタル・アルバム100選」の78位に入っている。なお「Batman Theme」のカヴァーはCDにのみ収められており、オリジナルのLPとカセットには入っていない。
1993年の『The Outer Limits』の初回CDには、小冊子のアートワークを立体で見るための小さな3Dメガネが封入されていた。ジャケット右上に小さく置かれた「Number 8」の文字は、編集盤『The Best of Voivod』を数に入れるとこれが通算8作目にあたるという意味である。7曲目「Jack Luminous」は17分26秒で、このバンドが録音した最も長い曲である。4曲目はPINK FLOYDの「The Nile Song」のカヴァー。歌のスネイクがこの後2002年に戻るまで、これが彼の参加した最後の作品になった。
2006年の『Katorz』という題名は、ギターのデニス“ピギー”ダムールの書きつけから来ている。ダムールはカリフォルニアのジェイソン・ニューステッド宅で自分のMacにギターとベースを録り、デモを収めたPro ToolsのCDをバンドに送っていた。そのCDに彼が書いた語が「Katorz」で、これはフランス語で14を意味するquatorzeを音のまま綴ったものである。ダムールは2005年8月に大腸癌で亡くなり、残された音の上にランジュヴァンとベランジェがドラムと歌を重ねてこの作品が完成した。9曲目「The X-Stream」はゲーム『ギターヒーローII』に収録されている。
結成から23年ギターを弾いたデニス“ピギー”ダムールは、公式サイトの追悼ページによれば1959年9月24日生まれ、2005年8月26日に亡くなった。追悼の集いは同年10月22日にモントリオールで開かれ、彼の機材や作り直されたカスタム・ギター、写真、映像が並べられ、彼のレコード棚から選ばれた音楽が一晩流された。バンドのマネージャー、ジェームズ・マクリーンは同ページで、ピギーは音楽のために生きた人で、穏やかでありながら集中力があり、不満を言わず誰の負担にもなるまいとし、ただ曲を書いてギターを弾きたかったのだと述べている。
ピギーの後任としてギターを弾いているダニエル“チューイ”モングランは2008年に加わった。公式サイトのメンバー紹介によれば、彼はギターとバッキング・ヴォーカルを担い、メンバーとして曲作りにも加わっている。またケベックのテクニカル・メタル・バンドMARTYRの共同創設者でもある。ベースのドミニク“ロッキー”ラロシュは2014年から、歌のデニス“スネイク”ベランジェは1982年から1994年までと2002年から現在までである。
1984年のデビュー作『War and Pain』について、バンドの公式サイトは1986年のテレビ・インタビューを引いて、発売から二年で4万枚を超えたと記している。同作からは表題曲ではなく1曲目の「Voivod」に映像が作られ、監督はデデ・フォルタンだった。この作品はその後も何度もCDで再発されており、1990年にはEnigmaから、同年Roadrunnerの廉価シリーズからも、1994年にはMetal Bladeのリマスター盤として、そして2004年には同社から3枚組のリマスター箱として出ている。
2003年の同名作『Voivod』を携えて、バンドは同年のオズフェストのセカンド・ステージに立った。ベースのジェイソン・ニューステッドはこのとき、VOIVODとヘッドライナーのオジー・オズボーンの両方でベースを弾いている。この時期はテレビでの露出も多く、「We Carry On」の映像はMTV2のHeadbangers BallとFuse TVのUraniumで頻繁に流れた。バンドはUraniumに出演もしており、そこでニューステッドはMETALLICAからVOIVODへ移った経緯を語っている。彼は加入前から長くこのバンドの聴き手だった。
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