CARCASS
1985年にイングランド・リヴァプールで結成されたエクストリーム・メタル・バンド、CARCASS(カーカス)のバイオグラフィとディスコグラフィー。1988年の『Reek of Putrefaction』から2021年の『Torn Arteries』まで、スタジオ作7枚の全アルバムに個別ページを用意し、収録曲、CD情報、ライナーノーツ、来日公演の記録をまとめている。
Biography
CARCASS
バイオグラフィー
CARCASS(カーカス)は、1985年にイングランドのリヴァプールで結成されたエクストリーム・メタル・バンドである。医学用語を積み上げた曲名と極端な音で、のちにゴアグラインドと呼ばれる様式の出発点となり、1993年の『Heartwork』ではメロディック・デス・メタルの基準作を残した。1988年の『Reek of Putrefaction』から2021年の『Torn Arteries』までスタジオ作7枚を発表しており、1996年にいったん解散したあと2007年に活動を再開している。結成以来変わらずにいるのは、ギターのビル・スティアーとベース/ヴォーカルのジェフ・ウォーカーの2人である。
結成とデビュー(1985〜1990年)
母体になったのは、ギターのビル・スティアーとドラムのケン・オーウェンが在籍していたリヴァプールのハードコア・パンク・バンド、Disattackである。そこにベースのジェフ・ウォーカーが加わったところでバンド名がCarcassに改まった。スティアーは当時NAPALM DEATHのギタリストでもあり、カーカスはもともとその傍らで動かしていた企画だった。
1988年、Earache Recordsからデビュー作『Reek of Putrefaction』が出る。録音はバーミンガムのRich Bitch Studiosで4日間、制作はバンド自身とポール・タルボットである。出来上がった音をバンド自身は望んでいない。ジェフ・ウォーカーはのちにメタル・ハマー誌に、本当に怠慢なエンジニアに台無しにされた、良いリフがあったのにプロダクションで濁ってしまったのが残念だ、と語っている。スティアーも、焦点が定まっておらず速くて重いことだけを考えていた、濁った音は経験不足の結果だと振り返っている。
それでもこの一枚は一部の聴き手に強い衝撃を与えた。BBCラジオ1のジョン・ピールは英紙オブザーヴァーのインタビューで1988年の最も好きなアルバムに挙げており、翌1989年には自身の番組にバンドを招いている。医学書から集めた検死写真のコラージュというジャケットは大手の小売店に敬遠され、のちの再発では修正された。
1989年の2作目『Symphonies of Sickness』は、前作の極端な録音状態から一転して音が聞き取れるようになった作品である。制作はコリン・リチャードソン。曲数は減り、一曲は長く、構成も複雑になった。この時期にスティアーはカーカスに専念するためNAPALM DEATHを脱退している。
四人編成と『Heartwork』(1991〜1993年)
1991年、スウェーデン出身のマイケル・アモット(のちのARCH ENEMY)が2本目のギターとして加わり、バンドは初めて四人編成になった。同年の『Necroticism - Descanting the Insalubrious』では一曲あたりの場面が長くなり、構造も入り組んで、当時台頭していたテクニカル・デス・メタルに近い書き方になっている。ケラング誌は364号でこの作品に満点を与えた。
1993年の『Heartwork』は、それまでの塊のような重さの上に旋律を接ぎ木し、NWOBHMの影を帯びたリフを並べた作品である。この組み合わせが、のちにメロディック・デス・メタルと呼ばれるものの出発点になった。制作は引き続きコリン・リチャードソン、録音はリヴァプールのParr Street Studios。ジャケットに使われたのはH・R・ギーガーの彫刻「Life Support 1993」である。イギリスではEarache、アメリカでは翌1994年にColumbiaから出ており、バンド唯一のメジャー契約作となった。ジェフ・ウォーカーはメタル・ハマー誌に、この作品がグラインドとデスの全てのバンドに大きな影響を与えたことに疑いはないと思う、と語っている。
コロンビア移籍の頓挫と解散(1994〜1996年)
1994年にマイケル・アモットが脱退し、元VENOMのマイク・ヒッキーが加わった。この編成で、バンドは初の来日公演を行っている。ヒッキーものちに離れ、カルロ・レガダスを迎えて5作目の制作に入った。
録音は1995年2月から4月、ウェールズのRockfield StudiosとロンドンのBattery Studios。ところがコロンビア・レコードとの間に問題が起き、バンドはEaracheに戻ることになる。その過程でビル・スティアーが脱退し、カーカスは歴史に終止符を打った。分裂前に作られていた5作目『Swansong』は、バンドが存在しなくなったあとの1996年6月にEaracheから発売された。デス・メタルの語彙を残したまま曲の骨格がロックの形に寄った内容で、しばしば「デス・ン・ロール」と呼ばれる。創設メンバーのケン・オーウェンがドラムを叩いた最後の作品でもある。
空白の時期と再結成(1997〜2012年)
1999年、ケン・オーウェンが脳出血で倒れた。回復はしたものの、以前のように叩くことはできなくなっている。
再結成は2008年、ジェフ・ウォーカー、ビル・スティアー、マイケル・アモットに、オーウェンの代わりとしてARCH ENEMYのダニエル・アーランドソンを加えた四人編成で、ライヴ活動のみという形で始まった。当時ウォーカーは新作は出ないと明言している。転機になったのは2008年のツアーで、スティアーがダン・ワイルディングの演奏を見て、オーウェンに通じるものを感じたという。2012年にアモットとアーランドソンがARCH ENEMYに専念するため離れ、残ったスティアーとウォーカーがワイルディングを迎えた。
『Surgical Steel』以後(2013〜2026年)
2013年、17年ぶりのスタジオ作『Surgical Steel』がNuclear Blastから発売された。レーベルの支援を受けないまま自費で録音された三人編成の作品で、『Heartwork』の旋律とそれ以前のグラインドコアの粗さを同じ盤に置いた音である。日本盤はトゥルーパー・エンタテインメントから、世界に先駆けて2013年9月4日に出た。ケン・オーウェンがバッキング・ヴォーカルで参加している。
2021年の『Torn Arteries』は『Heartwork』以来はじめて、同じ編成で続けて録られた作品となった。題名はケン・オーウェンが十代の頃に録ったデモ・テープの名前から採られている。当初の発売は2020年8月7日に予定されていたが、コロナ禍によって1年以上延期された。同じ2021年、ギターのトム・ドレイパーに代わってジェームズ“ニップ”ブラックフォードが加入している。
2026年9月、バンドはドラマーのダン・ワイルディングが家族と過ごすことを優先するとして、オーストラリア/ニュージーランド、中国、インドの公演を2027年9月に振り替えると発表した。同月には来日公演2本が行われている。
メンバーについて
現在の編成は、ジェフ・ウォーカー(ベース/ヴォーカル)、ビル・スティアー(ギター)、ジェームズ“ニップ”ブラックフォード(ギター)、ダニエル・ワイルディング(ドラム)の4人である。当サイトのメンバー欄は、2024年4月の来日公演中に行われたインタビューでウォーカーとスティアー自身が名を挙げた4人だけを載せており、それ以外の演奏者を推測で並べることはしていない。2026年にドラムを代役で務めたヴァルテリ・ヴァユリュネンはツアー要員であり、ここには含めていない。
ブラックフォードの加入について、スティアーは、前任のトムがグリーンカードの申請で問題を抱えたこと、ジェームズは友人であり良い奏者だと知っていたので真っ先に思い浮かんだことを語っている。ウォーカーは、彼は音楽面だけでなく人としてもバンドに馴染んだ、ジェームズなら両方が手に入る、と述べている。
ディスコグラフィ
スタジオ作は7枚である。『Reek of Putrefaction』(1988年)、『Symphonies of Sickness』(1989年)、『Necroticism - Descanting the Insalubrious』(1991年)、『Heartwork』(1993年)、『Swansong』(1996年)、『Surgical Steel』(2013年)、『Torn Arteries』(2021年)。
このほかにEP『Tools of the Trade』(1992年)と『Heartwork』(1994年)、再結成後のEP『Surgical Remission / Surplus Steel』(2014年)と『Despicable』(2020年)、編集盤『Wake Up and Smell the Carcass』(1996年)、そして複数のライヴ作品がある。当サイトのアルバム一覧はスタジオ作を対象としている。
初期の4作には日本盤の邦題が付けられていた。〈LOUD PARK 13〉公式サイトのバンド紹介によれば、『Reek of Putrefaction』は「腐乱屍臭」、『Symphonies of Sickness』は「真・疫魔交響曲」、『Necroticism - Descanting the Insalubrious』は「屍体愛好癖」であり、以降は『Heartwork』が「ハートワーク」、『Swansong』が「スワンソング」、『Surgical Steel』が「サージカル・スティール」とカタカナ表記になっている。当サイトのアルバム名は原題で統一している。
日本公演
バンドはこれまでに何度も来日している。当サイトのLIVE欄に登録しているのは、そのうち開催日が出典から確認できる14公演である。
初来日は1994年、マイケル・アモットの脱退後にマイク・ヒッキーを迎えた編成で行われた。〈LOUD PARK 13〉公式サイトのバンド紹介がこれを記録しているが、開催日と会場を明示した資料は今回参照した範囲では見つからなかった。当サイトの公演ページはURLに日付を含み、いったん公開すると恒久的に残るため、日付の裏付けが取れない公演は登録していない。
フェスティバルへの出演は4度ある。2008年10月18日の〈LOUD PARK 08〉(さいたまスーパーアリーナ、17時25分から)、2013年10月19日の〈LOUD PARK 13〉(同、BIG ROCK STAGE、16時40分から)、2015年10月11日の〈LOUD PARK 15〉(同、EXTREME STAGE、18時40分から)、そして2023年3月26日の〈LOUD PARK 2023〉(幕張メッセ国際展示場9〜11ホール)である。〈LOUD PARK 13〉への出演は、『Surgical Steel』の日本先行発売日である2013年9月4日に発表された。
単独公演は3度ある。2014年5月の〈CARCASS JAPAN TOUR 2014〉は、1日の広島CLUB QUATTRO、2日の梅田CLUB QUATTRO、3日の名古屋CLUB QUATTRO、6日と7日の渋谷CLUB QUATTROの5公演。2024年4月の〈CARCASS JAPAN TOUR 2024〉は、16日の名古屋CLUB QUATTRO、17日の梅田CLUB QUATTRO、18日と19日の渋谷Spotify O-EASTの4公演。2026年9月は17日の豊洲PITと18日の代官山SPACE ODDの2公演である。招聘はいずれもクリエイティブマンで、日本盤を出しているトゥルーパー・エンタテインメントが協力している。
出典について
ここに記した事実は、〈LOUD PARK 13〉公式サイトのバンド紹介ページ、〈LOUD PARK 08〉〈LOUD PARK 15〉〈LOUD PARK 2023〉各公式サイトのタイムテーブルと出演者一覧、招聘元クリエイティブマンの2014年・2024年・2026年の公演ページ、Blabbermouthに載ったジェフ・ウォーカーとビル・スティアーのインタビュー(2024年)とバンドの声明(2026年)、メタル・ハマー誌の記事(ジェイソン・アーノップによる初期2作の回顧、マルコム・ドームによる『Heartwork』の記事)、MusicBrainzの登録情報、および英語版・日本語版Wikipediaのバンド記事と各アルバム記事に拠っている。演奏者の氏名や公演の日付を推測で補うことはしていない。
Trivia
初期のアルバムには日本盤の邦題が付けられていた。〈LOUD PARK 13〉公式サイトのバンド紹介によれば、デビュー作『Reek of Putrefaction』は「腐乱屍臭」、2作目『Symphonies of Sickness』は「真・疫魔交響曲」、3作目『Necroticism - Descanting the Insalubrious』は「屍体愛好癖」である。4作目以降は原題をカタカナに移した表記になり、『Heartwork』は「ハートワーク」、『Swansong』は「スワンソング」、17年ぶりの『Surgical Steel』は「サージカル・スティール」と紹介されている。当サイトはアルバム名を原題で統一しているため、これらの邦題はページ上には出てこない。
再結成後はじめての来日は2008年、〈LOUD PARK 08〉への出演だった。公式サイトのタイムテーブルによれば、出演は初日の10月18日、さいたまスーパーアリーナで17時25分から。同じ日の前後にはSONATA ARCTICAとAVENGED SEVENFOLDが並び、その夜を締めくくったのはSLIPKNOTである。当サイトのLIVE欄で同じ日に登録されているDOWNは19時35分の出演だった。翌19日のタイムテーブルにこのバンドの名前は無い。
〈LOUD PARK 13〉への出演は、17年ぶりのスタジオ作『Surgical Steel』が日本で先行発売された2013年9月4日に発表された。フェスティバル公式サイトのバンド紹介はそのことを明記している。出演は10月19日、さいたまスーパーアリーナのBIG ROCK STAGEで16時40分から。同じステージにはLOST SOCIETY、BRING ME THE HORIZON、THERION、LYNCH MOB、EUROPEが並び、もう一方のULTIMATE STAGEはSTONE TEMPLE PILOTS with Chester Benningtonが締めくくった。翌20日のタイムテーブルにこのバンドの名前は無い。
〈LOUD PARK 15〉では、デス・メタルとブラック・メタルを集めたEXTREME STAGEの最後に立っている。公式タイムテーブルによれば出演は2日目の2015年10月11日、18時40分から。同じステージをその日先に通過したのはOBITUARY、ABBATH、DARK TRANQUILLITY、AT THE GATES、NAPALM DEATHで、他の2ステージはHELLOWEENとMEGADETHが締めくくった。前日10日のタイムテーブルにこのバンドの名前は無い。
〈LOUD PARK〉は2023年に一年限りの復活開催が行われ、バンドはその東京公演に出演した。公式サイトによれば、東京は3月26日、幕張メッセ国際展示場9〜11ホールで開場10時・開演11時、料金は19,000円である。同じ回の大阪公演は3月25日にインテックス大阪で行われたが、出演はPANTERA、KREATOR、NIGHTWISH、STRATOVARIUS、BLEED FROM WITHINの5組のみで、このバンドは含まれていない。東京の出演者にはこの5組に加えてAMARANTHE、OUTRAGE、H.E.R.O.、JASON RICHARDSON & LUKE HOLLANDが並び、オープニング・アクトはBRIDEARとPhantom Excaliverだった。
2014年5月の〈CARCASS JAPAN TOUR 2014〉は、『Surgical Steel』を携えた5公演だった。招聘元クリエイティブマンの公演ページによれば、1日の広島CLUB QUATTRO、2日の梅田CLUB QUATTRO、3日の名古屋CLUB QUATTRO、6日と7日の渋谷CLUB QUATTROで、チケットは前売6,800円・当日7,300円、発売は3月22日である。名古屋だけが開場17時・開演18時と1時間早く、他の3会場は開場18時・開演19時だった。東京の2公演はいずれもソールド・アウトしている。
カーカスは、ギターのビル・スティアーがNAPALM DEATHに在籍していた時期に、その傍らで始めたサイド・プロジェクトだった。〈LOUD PARK 13〉公式サイトのバンド紹介はそう記している。結成時の編成はスティアーにベース/ヴォーカルのジェフ・ウォーカーとドラムのケン・オーウェンを加えた三人で、1989年に2作目『Symphonies of Sickness』を出すのと同時に、スティアーはカーカスに専念するためNAPALM DEATHを脱退した。
1988年のデビュー作『Reek of Putrefaction』は、極端な音と歌詞のために大手の流通からは敬遠された一方で、BBCラジオ1のジョン・ピールを引き寄せた。メタル・ハマー誌の回顧記事によれば、ピールは自身の番組でこの作品の曲をかけており、英紙オブザーヴァーのインタビューでは1988年の最も好きなアルバムに挙げている。同記事は、粗い録音状態がかえってピールの関心を引く一因になったとも書いている。
News
CARCASS、豪州/ニュージーランド・中国・インド公演を2027年9月に延期 ドラマーの家庭の事情のため
9月2日にバンドが声明を発表し、Dan Wildingが家族と過ごすことを優先するとして<Putrefying Down Under>ツアーを振り替えた。インドのBangalore Open Airのみ予定どおり開催され、既存のチケットは振替公演でそのまま有効となる。
【国内】CARCASS、9月18日に東京追加公演 — 代官山SPACE ODD
9月17日の豊洲PIT公演に続く追加公演。OPEN 18:00 / START 19:00、9,500円(税込・オールスタンディング・1ドリンク別)、チケットは8月22日発売。
Current Members / 現メンバー
バンド自身が名を挙げた現行ラインナップです。2026-09-30時点。
Albums
CARCASSの3作目。1991年、Earacheから発売。マイケル・アモットが加わり、初めて四人編成で録音された作品である。
CARCASSの2作目。1989年7月から8月にかけてイースト・ヨークシャーのThe Slaughterhouse Studiosで、コリン・リチャードソンの制作により録音された。