W.E.T.
W.E.T.の詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。
Biography
メロディック・ロックの至高点
W.E.T.の軌跡と音楽的遺産
1. スーパーグループの概念とその再定義
21世紀のメロディック・ロック (Melodic Rock) およびAOR (Adult Oriented Rock) シーンにおいて、スウェーデン (Sweden)とアメリカ合衆国(United States) の越境プロジェクトとして誕生したW.E.T. (ダブル・イー・ティー)は、単なる「企画モノ」の枠を超越し、ジャンルの新たな基準 (Standard)を確立する存在へと進化した。
バンド名 「W.E.T.」は、中心メンバーが所属する主要バンドの頭文字に由来するアクロニムである。
- W: ワーク・オブ・アート (WORK OF ART) - ロバート・サール (Robert Säll)
- E: エクリプス (ECLIPSE) - エリック・モーテンソン (Erik Mårtensson)
- T: タリスマン (TALISMAN) - ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto)
この名称は、単なるメンバーの寄せ集めではなく、各バンドが持つ音楽的DNA ― ワーク・オブ・アートの洗練されたAOR、エクリプスの現代的でヘヴィなハードロック、タリスマンのソウルフルなグルーヴ ― が化学反応を起こしていることを象徴している。
2. 結成の経緯と初期の背景 (2008-2009)
2.1. フロンティアーズ・レコードの戦略とヴィジョン
W.E.T.の結成は、イタリア (Italy)のレコードレーベル、フロンティアーズ・ミュージック (Frontiers Music Srl / 当時はFrontiers Records)の社長であるセラフィーノ・ペルジーノ (Serafino Perugino)の主導によるものであった。2000年代後半、フロンティアーズは「メロディック・ロックの復興」を掲げ、往年のスターと新世代の才能を組み合わせるプロジェクトを数多く手掛けていた。
2008年、ペルジーノはスウェーデンの新鋭ソングライターであったロバート・サールとエリック・モーテンソンに対し、ベテラン・ヴォーカリストであるジェフ・スコット・ソートのための楽曲制作を打診した。当初の計画では、サールとモーテンソンがそれぞれ6曲ずつを提供し、ソートが歌うという、比較的緩やかなコラボレーションが想定されていた。しかし、ジェフ・スコット・ソートが送られてきたデモテープの質の高さに感銘を受け、単なるソロ・アルバムへの楽曲提供ではなく、バンド形式でのプロジェクトへと発展させることを提案したことで、W.E.T.の骨格が形成された。
2.2. メンバーの背景と役割
- ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto) - ヴォーカル
アメリカ出身。1984年、イングヴェイ・マルムスティーン (Yngwie Malmsteen)の『ライジング・フォース』 (Rising Force) でデビューして以来、ジャーニー (Journey)、アクセル・ルディ・ペル (Axel Rudi Pell)、そして自身のバンドであるタリスマン (TALISMAN)などで活動。その声は、ハードロックの力強さとR&B/ソウルの情感を兼ね備えており、W.E.T.のサウンドに人間味と深みを与えている。彼は歌詞の多くを担当し、メロディへの貢献も大きい。 - エリック・モーテンソン (Erik Mårtensson) - ギター、ベース、キーボード、ヴォーカル、プロダクション
スウェーデン出身。バンド、エクリプス (ECLIPSE) のリーダーであり、ノルディック・ユニオン (Nordic Union) やアムニッション (Ammunition)などでも活動。W.E.T.においては、マルチ・インストゥルメンタリストとしての演奏に加え、全アルバムのプロデュース、ミキシング、マスタリングを担当する「サウンドの建築家」である。彼が作り出す「ウォール・オブ・サウンド (Wall of Sound)」的な分厚いコーラスとタイトなリズム処理は、W.E.T.の聴覚的アイデンティティを決定づけている。 - ロバート・サール (Robert Säll) - キーボード、ギター
スウェーデン出身。TOTOやシカゴ (Chicago)、ジャイアント (Giant)といった80年代のアリーナ・ロックやウェストコースト・ロック (Westcoast Rock)に強い影響を受けたバンド、ワーク・オブ・アート(WORK OF ART) のギタリスト兼メインコンポーザー。彼の楽曲は、洗練されたコード進行とフックのあるキーボード・ラインを特徴とし、W.E.T.にAOR的な色彩を加えている。
3. ディスコグラフィー
W.E.T.の作品は、これまでに5枚のスタジオ・アルバムと1枚のライブ・アルバムがリリースされている(2025年時点)。以下に各作品の詳細なデータと分析を記述する。
3.1. 第1作:『W.E.T.』 (2009)
デビューアルバム『W.E.T.』は、2009年11月6日にヨーロッパで、その後世界各国でリリースされた。このアルバムは、メロディック・ロック・コミュニティにおいて即座に「ジャンルを定義する傑作(Genre-defining masterpiece)」としての地位を確立した。
音楽的特徴と分析: 本作は、各メンバーの母体バンドの要素が最も純粋な形で融合している。オープニングの「Invincible」や「One Love」に見られるように、エクリプスの推進力あるリズムと、ワーク・オブ・アートの煌びやかなキーボード、そしてタリスマン譲りのソウルフルなヴォーカル・メロディが渾然一体となっている。特に「One Love」は、「ザ・ラスマス (The Rasmus) がAOR化し、タリスマンとエクリプスに出会ったような純粋な魔法」と評された。
制作体制: デビュー作ではあるが、すでに「バンド」としての体裁を整えるため、エクリプスのマグナス・ヘンリクソン (Magnus Henriksson / Guitar)とロバン・バック (Robban Bäck / Drums) がレコーディングに参加しており、エリック・モーテンソンがベースとリズムギター、キーボードを兼任する形で制作された。
トラックリストとクレジット (Tracklist and Credits)
| No. | タイトル (Title) | 作詞・作曲 (Writers) | 時間(Time) | 備考(Notes) |
|---|---|---|---|---|
| 1 | インヴィンシブル (Invincible) | Mårtensson, Säll, Soto | 3:50 | |
| 2 | ワン・ラヴ (One Love) | Mårtensson, Säll, Soto | 3:56 | リードトラック |
| 3 | ブラザーズ・イン・アームズ (Brothers In Arms) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:46 | |
| 4 | カムズ・ダウン・ライク・レイン (Comes Down Like Rain) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:41 | バラード |
| 5 | ランニング・フロム・ザ・ハートエイク (Running From The Heartache) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:27 | |
| 6 | アイル・ビー・ゼア (I'll Be There) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:44 | |
| 7 | ダメージ・イズ・ダン (Damage Is Done) | Mårtensson, Säll, Soto | 3:25 | |
| 8 | プット・ユア・マネー・ホエア・ユア・マウス・イズ (Put Your Money Where Your Mouth Is) | Mårtensson, Säll, Soto | 3:13 | |
| 9 | ワン・デイ・アット・ア・タイム (One Day At A Time) | Mårtensson, Säll, Soto | 5:02 | |
| 10 | ジャスト・ゴー (Just Go) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:25 | |
| 11 | マイ・エヴリシング(My Everything) | Mårtensson, Säll, Soto | 3:19 | |
| 12 | イフ・アイ・フォール (If I Fall) | Mårtensson, Säll, Soto | 6:09 | 大作バラード |
| 13 | カムズ・ダウン・ライク・レイン (アコースティック) | Mårtensson, Säll, Soto | 4:31 | 日本盤ボーナストラック |
- Jeff Scott Soto: Vocals
- Erik Mårtensson: Guitars, Bass, Keyboards, Backing Vocals
- Robert Säll: Keyboards, Guitars
- Magnus Henriksson: Lead Guitar (Tracks 3, 4, 6, 9, 10, 12)
- Robban Bäck: Drums
3.2. 第2作:『ライズ・アップ』 (Rise Up) (2013)
デビュー作の成功を受け、2011年のファイアフェスト (Firefest) でのライブを経て制作されたセカンド・アルバム。2013年2月22日にリリースされた。
音楽的進化: 『ライズ・アップ』は、デビュー作よりもさらに「バンド」としての結束を強めた作品となった。サウンドはよりヘヴィで、アリーナ・ロック (Arena Rock)を意識した壮大なコーラスが特徴である。これは、エクリプスのマグナス・ヘンリクソンとロバン・バックが正式メンバーとしてクレジットされ、ライブ活動を見越したアレンジが施された結果であると言える。批評家からは、「2013年のメロディック・ロック・アルバム・オブ・ザ・イヤーの最有力候補」と絶賛された。
トラックリスト (Tracklist)
| No. | タイトル (Title) | 時間(Time) | 備考(Notes) |
|---|---|---|---|
| 1 | ウォーク・アウェイ (Walk Away) | 3:56 | 第1シングル |
| 2 | ラーン・トゥ・リヴ・アゲイン (Learn To Live Again) | 3:31 | MV制作曲 |
| 3 | ライズ・アップ (Rise Up) | 3:21 | タイトルトラック |
| 4 | ラヴ・ヒールズ (Love Heals) | 4:27 | バラード |
| 5 | ワット・ユー・ウォント (What You Want) | 3:42 | |
| 6 | ザ・モーメント (The Moment) | 3:14 | |
| 7 | バッド・ボーイ (Bad Boy) | 4:26 | |
| 8 | オン・ザ・ラン (On The Run) | 3:59 | |
| 9 | ブロークン・ウィングス (Broken Wings) | 4:26 | |
| 10 | ショット (Shot) | 4:31 | |
| 11 | スティル・ビリーヴ・イン・アス (Still Believe In Us) | 3:32 | |
| 12 | スティル・アンブロークン (Still Unbroken) | 3:46 | |
| 13 | ヴィクトリアス (Victorious) | 日本盤ボーナストラック |
日本盤ボーナストラックに関する考察: 日本盤 (Spinning社よりリリース、規格番号 SPIN-049)には、「Victorious」という楽曲が追加収録されている。この曲は、海外の一部エディションでは未収録、あるいはデジタル・ボーナスとして扱われることがあるが、物理メディアとしては日本盤独自の価値を高める要素となっている。日本のメロディック・ロック市場がいかに重要視されているかを示す証左である。
3.3. ライブ作品: 『ワン・ライブ・イン・ストックホルム』 (One Live - In Stockholm) (2014)
2013年1月17日、ストックホルムのクラブ「デバサー・スリュッセン (Debaser Slussen)」で行われたライブを収録したCD/DVD作品。2014年2月21日リリース。
ライブの意義: この公演は『ライズ・アップ』のリリース記念として行われたもので、ファンへの告知は主にウェブ上のバイラル・キャンペーンを通じて行われた。極寒のスウェーエデンの冬にもかかわらず、会場は超満員となり、バンドとしての「W.E.T.」がスタジオ・プロジェクトからライブ・アクトへと完全に脱皮した瞬間を記録している。
セットリストの構成: W.E.T.のオリジナル曲に加え、各メンバーの出身バンドの楽曲も披露された点が特筆される。
- タリスマン (TALISMAN): 「I'll Be Waiting」 「Mysterious」
- エクリプス (ECLIPSE): 「Bleed & Scream」 (エリック・モーテンソンがヴォーカルを担当)
- ワーク・オブ・アート (WORK OF ART): 「The Great Fall」 (ワーク・オブ・アートのヴォーカリスト、ラース・サフスンド (Lars Säfsund)がゲスト参加)
収録内容(Tracklist highlights)
| CD/DVD Track | タイトル (Title) | オリジナル・アーティスト |
|---|---|---|
| 1 | ウォーク・アウェイ (Walk Away) | W.E.T. |
| 7 | ブリード&スクリーム (Bleed & Scream) | ECLIPSE |
| 11 | アイル・ビー・ウェイティング (I'll Be Waiting) | TALISMAN |
| 15 | ザ・グレイト・フォール (The Great Fall) | WORK OF ART |
| Bonus | ポイズン (Poison) | 未発表スタジオ音源 |
| Bonus | ビガー・ザン・ボース・オブ・アス (Bigger Than Both Of Us) | 未発表スタジオ音源 |
この作品には、スタジオ・ボーナストラックとして『ライズ・アップ』セッションからのアウトテイクである「Poison」と「Bigger Than Both Of Us」が収録されており、コレクターズ・アイテムとしての価値も高い。
3.4. 第3作:『アースレイジ』 (Earthrage) (2018)
前作から5年の空白を経て、2018年3月23日にリリースされた第3作。
音楽的特徴: 『アースレイジ』は、前2作の成功を踏まえつつ、よりダークで重厚なリフと、洗練されたプロダクションが融合した作品である。タイトルの「Earthrage」が示唆するように、大地の怒りのような力強さと、エモーショナルな旋律が共存している。エリック・モーテンソンのプロダクション能力はこの時点で完全に成熟しており、現代的な音圧とクリアな分離感を両立させている。
ラインナップの変遷: このアルバムより、クレジット上のドラマーに関する記載に変化が見られる(ライブやMVではエクリプスのフィリップ・クルスネル (Philip Crusner)が叩くこともあるが、レコーディング・クレジットとしてはロバン・バック等のエクリプス人脈が継続して関与している)。
トラックリスト (Tracklist)
| No. | タイトル (Title) | 時間(Time) | 備考(Notes) |
|---|---|---|---|
| 1 | ウォッチ・ザ・ファイア (Watch The Fire) | 5:05 | リード曲 |
| 2 | バーン (Burn) | 4:17 | |
| 3 | キングス・オン・サンダー・ロード (Kings On Thunder Road) | 4:25 | |
| 4 | エレガントリー・ウェイステッド (Elegantly Wasted) | 2:58 | |
| 5 | アージェント (Urgent) | 3:44 | |
| 6 | デンジャラス (Dangerous) | 3:14 | |
| 7 | コーリング・アウト・ユア・ネイム (Calling Out Your Name) | 4:02 | |
| 8 | ハート・イズ・オン・ザ・ライン (Heart Is On The Line) | 4:28 | |
| 9 | アイ・ドント・ワナ・プレイ・ザット・ゲーム (I Don't Wanna Play That Game) | 3:38 | |
| 10 | ザ・バーニング・ペイン・オブ・ラヴ (The Burning Pain Of Love) | 4:03 | |
| 11 | ザ・ネヴァーエンディング・リトレイサブル・ドリーム (The Neverending Retraceable Dream) | 3:51 | |
| 12 | エレガントリー・ウェイステッド(アコースティック) | 日本盤ボーナストラック |
3.5. 第4作: 『リトランスミッション』 (Retransmission) (2021)
2021年1月22日リリース。パンデミック (COVID-19) の影響下で制作・リリースされたが、そのポジティブなエネルギーは多くのファンを勇気づけた。
コンセプトと評価: アルバム・タイトル『 Retransmission (再送信)』は、80年代の輝かしいハードロックの電波を、現代の技術と感性で増幅して再送信するという意図を感じさせる。収録曲「Big Boys Don't Cry」や「The Moment Of Truth」は、ドッケン (Dokken) やヨーロッパ (Europe)、初期ボン・ジョヴィ (Bon Jovi)といったアリーナ・バンドの精神性を継承しつつ、エクリプス特有の現代的な疾走感を加味している。
トラックリスト (Tracklist)
| No. | タイトル (Title) | 時間(Time) | 備考(Notes) |
|---|---|---|---|
| 1 | ビッグ・ボーイズ・ドント・クライ (Big Boys Don't Cry) | 3:04 | |
| 2 | ザ・モーメント・オブ・トゥルース (The Moment Of Truth) | 4:33 | |
| 3 | ザ・コール・オブ・ザ・ワイルド (The Call Of The Wild) | 3:49 | |
| 4 | ガット・トゥ・ビー・アバウト・ラヴ (Got To Be About Love) | 3:30 | |
| 5 | ビューティフル・ゲーム (Beautiful Game) | 3:48 | |
| 6 | ハウ・ファー・トゥ・バビロン (How Far To Babylon) | 4:25 | |
| 7 | カミング・ホーム (Coming Home) | 3:04 | |
| 8 | ワット・アー・ユー・ウェイティング・フォー (What Are You Waiting For) | 4:58 | |
| 9 | ユー・ベター・ビリーヴ・イット (You Better Believe It) | 3:03 | |
| 10 | ハウ・ドゥ・アイ・ノウ (How Do I Know) | 4:13 | |
| 11 | ワン・ファイナル・キス (One Final Kiss) | 3:12 | |
| 12 | ビッグ・ボーイズ・ドント・クライ(デモ) | 日本盤ボーナストラック |
- Jeff Scott Soto: Vocals
- Erik Mårtensson: Guitars, Keyboards, Backing Vocals
- Robert Säll: Keyboards, Guitars
- Magnus Henriksson: Guitars
- Andreas Passmark: Bass
- Robban Bäck: Drums
このアルバムでは、アンドレアス・パスマーク (Andreas Passmark / WORK OF ART, Royal Hunt) がベーシストとして明確にクレジットされており、リズム隊の強化が図られている。
3.6. 第5作: 『エイペックス』 (Apex) (2025)
結成15周年を記念する最新作。2025年3月19日に日本先行発売、3月28日に全世界リリース予定。
新体制とジェミー・ボーガーの加入: 本作最大の特徴は、ドラマーとしてジェミー・ボーガー (Jamie Borger)が正式加入したことである。ジェミーはタリスマンにおいて長年ジェフ・スコット・ソートのリズムを支えた盟友であり、トリート (Treat) やラスト・オータムズ・ドリーム (Last Autumn's Dream)での活動でも知られるスウェーデン・ロック界のレジェンドである。彼の加入により、バンド名のアクロニム「T」の要素が、ジェフ一人だけでなくリズムセクションにも拡張され、バンドの正当性がより強固なものとなった。
アルバム・タイトルの意味: 「Apex」とは「頂点」を意味する。エリック・モーテンソンは、これがバンドの自信の表れであり、これまでの活動の集大成(Best work to date) であると語っている。
トラックリスト (Tracklist)
| No. | タイトル (Title) | 時間(Time) |
|---|---|---|
| 1 | ビリーヴァー (Believer) | 3:37 |
| 2 | ディス・ハウス・イズ・オン・ファイア (This House Is On Fire) | 3:03 |
| 3 | ワット・アー・ウィ・ファイティング・フォー (What Are We Fighting For) | 4:03 |
| 4 | ラヴ・コンカーズ・オール (Love Conquers All) | 3:58 |
| 5 | ホエア・アー・ザ・ヒーローズ・ナウ (Where Are The Heroes Now) | 5:24 |
| 6 | ブレイキング・アップ (Breaking Up) | 3:33 |
| 7 | ノーウェア・トゥ・ラン (Nowhere To Run) | 3:34 |
| 8 | ペイ・ダート (Pay Dirt) | 3:36 |
| 9 | プレジャー&ペイン (Pleasure & Pain) | 3:39 |
| 10 | ステイ・アライヴ (Stay Alive) | 3:56 |
| 11 | デイ・バイ・デイ (Day By Day) | 4:38 |
| 12 | ラヴ・コンカーズ・オール(アコースティック) |
4. メンバー詳細バイオグラフィーと相関関係
W.E.T.のサウンドを構成する各メンバーの経歴と、その相関関係を詳述する。
4.1. ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto) - ヴォーカル
- 出身: アメリカ合衆国・ニューヨーク (ブルックリン)
- 主な経歴:
- Yngwie Malmsteen's Rising Force (1984-1985): アルバム『Rising Force』 『Marching Out』で10代にして世界的な注目を浴びる。ネオクラシカル・メタルの黎明期を支えた。
- TALISMAN (1990-2007, 2014, 2019): マルセル・ヤコブ (Marcel Jacob / Bass)と共に結成。ファンクやソウルの要素を取り入れたメロディック・ハードロックを展開し、特にスウェーデンを含む欧州で絶大な人気を誇った。「I'll Be Waiting」はTALISMANの代表曲であり、W.E.T.のライブでも演奏される。
- Journey (2006-2007): スティーヴ・オウリー (Steve Augeri)の後任としてツアーに参加。正式メンバーとして活動した期間は短かったが、その実力は高く評価された。
- Sons of Apollo (2017-2023): マイク・ポートノイ (Mike Portnoy)、ビリー・シーン(Billy Sheehan)らとのプログレッシブ・メタル・スーパーグループ。
- W.E.T.での役割: バンドの「声」であり「顔」。歌詞の大部分を担当し、メロディラインの構築にも深く関わる。彼がカリフォルニア (California) 在住であることが、スウェーデン在住の他メンバーとの制作上の物理的距離を生んでいるが、それを乗り越える情熱がバンドの原動力となっている。
4.2. エリック・モーテンソン (Erik Mårtensson) - ギター・ベース・キーボード・プロデュース
- 出身: スウェーデン
- 主な経歴:
- ECLIPSE (1999-現在): W.E.T.と並行して活動するメインバンド。初期のハードロック路線から、よりアンセミックで現代的なメロディック・ロックへと進化させた。
- Nordic Union: プリティ・メイズ (Pretty Maids)のロニー・アトキンス (Ronnie Atkins)とのプロジェクト。
- Ammunition: 元ウィグ・ワム (Wig Wam)のオーゲ・ステン・ニルセン(Åge Sten Nilsen)とのバンド。
- W.E.T.での役割: 「E」を象徴する存在。W.E.T.のサウンドスケープを決定づけるプロデューサー。彼のミキシング技術は業界内でも高く評価されており、多くのバンドのエンジニアリングも手掛けている。W.E.T.では、ロバート・サールのAOR的なデモを、エクリプス流のハードな音像に変換する役割も担っている。
4.3. ロバート・サール (Robert Säll) - キーボード・ギター
- 出身: スウェーデン
- 主な経歴:
- WORK OF ART (2008-現在): TOTO、Chicago、Journeyといった80年代アメリカン・ロックの系譜を受け継ぐAORバンド。デビューアルバム『Artwork』は、その年のメロディック・ロック界の話題を独占した。
- W.E.T.での役割: 「W」を象徴する存在。彼の作る楽曲は、複雑なコード進行と洗練されたアレンジが特徴。W.E.T.においては、ハードなギターリフの中に、煌びやかなキーボードの旋律や、AOR特有の哀愁あるメロディを持ち込むことで、単なるハードロック・バンドとは一線を画す音楽性を付与している。
4.4. その他の主要メンバー
- マグナス・ヘンリクソン (Magnus Henriksson): エクリプスのギタリスト。テクニカルなシュレッド・ギターから泣きのメロディまで自在に操る。W.E.T.の楽曲におけるギター・ソロの多くを担当し、曲にドラマ性を加えている。
- アンドレアス・パスマーク (Andreas Passmark): ワーク・オブ・アートおよびロイヤル・ハント(Royal Hunt) のベーシスト。『Retransmission』以降、クレジット上でも重要な役割を果たしている。
- ジェミー・ボーガー (Jamie Borger): 元タリスマン、トリートのドラマー。2025年の『Apex』より正式参加。パワフルかつグルーヴィなドラミングで、W.E.T.のリズムをさらに強固なものにした。
5. 制作プロセスとサウンド分析
5.1. リモート・コラボレーションの先駆者
W.E.T.のメンバーは、ジェフがアメリカ、他のメンバーがスウェーデンという地理的な制約があるため、初期からファイル共有を通じたデータ交換による楽曲制作を行ってきた。エリック・モーテンソンは、「全員のスケジュールが合うスイートスポットを見つけるのは常に挑戦だが、集まった時の野心は高まる」と語っている。この制作スタイルは、各メンバーが自身のホームスタジオで納得いくまでテイクを重ねることができるため、結果として極めてクオリティの高いプロダクションにつながっている。
5.2. サウンド・デザイン:「現代的」なメロディック・ロック
W.E.T.のサウンドは、80年代の郷愁に浸るだけのものではない。エリック・モーテンソンのプロデュースにより、低音域の太さ、ドラムのアタック感、そしてコンプレッションの効いたギター・サウンドなど、現代のロック・スタンダードに合わせた音作りがなされている。これにより、オールドファンだけでなく、より若い世代のロック・ファンにも訴求する普遍性を獲得している。
6. W.E.T.の未来とレガシー
結成から15年以上が経過し、W.E.T.は「サイド・プロジェクト」というレッテルを完全に過去のものとした。5枚のスタジオ・アルバムとライブ作品を通じてW.E.T.が提示し続けてきたのは、「メロディの力」への絶対的な信頼である。
『Apex』におけるジェミー・ボーガーの加入は、バンドが過去(タリスマンの遺産)を尊重しつつ、未来へと進むための布陣を完了させたことを意味する。メロディック・ロックというジャンルが、ノスタルジーの彼方に消え去るのではなく、新たな名曲を生み出し続ける生きたジャンルであることを、W.E.T.はその活動をもって証明し続けている。W.E.T.のディスコグラフィーは、21世紀におけるこのジャンルの進化の記録そのものである。