ALTARIA
20世紀末から21世紀初頭にかけて、フィンランド (Finland) は世界のヘヴィ・メタル (Heavy Metal) シーンにおいて最も重要な震源地の一つとなった。
Biography
アルタリア (ALTARIA)
フィンランド・メロディック・メタル史における軌跡と音楽的変遷
1. 北欧メタル・シーンにおけるアルタリアの特異性
20世紀末から21世紀初頭にかけて、フィンランド (Finland) は世界のヘヴィ・メタル (Heavy Metal) シーンにおいて最も重要な震源地の一つとなった。ストラトヴァリウス (Stratovarius) が確立したメロディック・パワー・メタル (Melodic Power Metal) の様式美は、後続の世代に多大な影響を与え、その土壌からナイトウィッシュ (Nightwish) やソナタ・アークティカ (Sonata Arctica) といった世界的な巨星が誕生した。アルタリア (ALTARIA) は、まさにこの北欧メタルの黄金期である2000年に結成され、シーンの隆盛と共に歩んだバンドである。
アルタリア (ALTARIA) のキャリアは、単なる「中堅バンド」の枠組みを超えた興味深い事象を数多く含んでいる。第一に、結成初期において、前述したナイトウィッシュとソナタ・アークティカという二大バンドのギタリストを擁していた点である。これによりALTARIAは、デビュー前から「スーパーグループ」としての注目と、逃れられない比較の目に晒されることとなった。第二に、純粋なスピード・メタル (Speed Metal) から、より80年代的なAOR (Adult Oriented Rock) やハード・ロック (Hard Rock) へと音楽性を変遷させながら、独自のメロディックなアイデンティティを模索し続けた点である。そして第三に、2016年の活動終了宣言を経て、YouTubeでの楽曲再生数の急増という現代的な現象をきっかけに2019年に再結成を果たしたという劇的な経緯である。
2. 結成前夜と黎明期 (2000-2002)
2.1 起源: ヤコブスタッドとブラインドサイド
アルタリア (ALTARIA) の物語は、フィンランド西岸の港町、ヤコブスタッド (Jakobstad) (フィンランド語名: ピエタルサーリ (Pietarsaari)) で幕を開けた。この地域はスウェーデン語話者が多いことでも知られ、北欧諸国間の文化的交流が盛んな土地柄である。
バンドの核となったのは、ドラマーのトニー・スメジェバッカ (Tony Smedjebacka) とベーシストのマルコ・プッキラ (Marko Pukkila) であった。彼らは以前、ブラインドサイド (Blindside) というクリスチャン・ハード・ロック (Christian Hard Rock) バンドで活動していた経歴を持つ。この「クリスチャン・メタル」の出自は、後のアルタリアの歌詞世界に見られる精神性や、極端な悪魔崇拝的イメージを避けたバンドの姿勢に微細ながら影響を与えていると推察される。彼らは、よりメロディックで力強いパワー・メタル・サウンドを追求するため、新たなプロジェクトとしてアルタリアを始動させた。
2.2 強力な布陣の形成とデモ音源
結成当初、ヴォーカルにはヨハン・マットユス (Johan Mattjus) が、そしてギターには当時まだデビューしたばかりのソナタ・アークティカ (Sonata Arctica) のギタリスト、ヤニ・リーマタイネン (Jani Liimatainen) が参加した。ヤニの参加は、初期アルタリアの音楽的方向性を決定づける重要な要素となった。彼の卓越したテクニックと、クラシカルかつキャッチーな作曲能力は、バンドのサウンド・プロダクションを一気にプロフェッショナルなレベルへと引き上げた。
このラインナップで、バンドは以下のデモ音源を制作した:
- 『Sleeping Visions』(2001年): 最初のデモCD。バンドのポテンシャルを示す名刺代わりの作品となった。
- 『Feed the Fire』(2002年): より洗練された楽曲群を収録。
しかし、本格的なデビューを前に、ヴォーカルのヨハン・マットユスはスケジュールの問題等によりバンドを離れることとなる。バンドは新たな声を必要としていた。
3. デビューと「スーパーグループ」としての挑戦 (2002-2003)
3.1 メンバーの再編とエンプ・ヴオリネンの加入
2002年、バンドはデビュー・アルバムの制作に向け、体制を大幅に強化した。ヴォーカルには、レクイエム (Requiem) での活動経験を持つヨウニ・ニクラ (Jouni Nikula) を招聘した。そして、この時期にバンドの知名度を決定づける出来事が起こる。ナイトウィッシュ (Nightwish) のギタリスト、エンプ・ヴオリネン (Emppu Vuorinen) の正式加入である。
これにより、アルタリアは以下のラインナップとなった:
| パート (Role) | メンバー名 (Member Name) | 所属・関連バンド (Affiliation) |
|---|---|---|
| Vocals | ヨウニ・ニクラ (Jouni Nikula) | ex-Requiem |
| Guitars/Keys | ヤニ・リーマタイネン (Jani Liimatainen) | Sonata Arctica |
| Guitars | エンプ・ヴオリネン (Emppu Vuorinen) | Nightwish |
| Bass | マルコ・プッキラ (Marko Pukkila) | ex-Blindside |
| Drums | トニー・スメジェバッカ (Tony Smedjebacka) | ex-Blindside |
当時、ナイトウィッシュはアルバム 『Century Child』 (2002) で世界的な成功を収めつつあり、ソナタ・アークティカも 『Silence』 (2001) でパワー・メタル界の若き帝王としての地位を固めていた。その両バンドのギタリストが在籍するという事実は、アルタリアを瞬く間に「フィンランドのスーパーグループ」としてメディアの注目を集めさせることとなった。しかし、これは同時に、リスナーがALTARIAを常にこれら二つの偉大なバンドと比較して聴くという高いハードルを課すことでもあった。
3.2 1stアルバム『Invitation』のリリースと反響
2003年4月、ドイツのメタル・ヘヴン (Metal Heaven) レーベル (及びAORヘヴン (AOR Heaven)) より、デビュー・アルバム『Invitation』がリリースされた。
このアルバムは、疾走感溢れるリズム、煌びやかなキーボード、そしてキャッチーなコーラスという、当時のフィンランド・メタルの王道を行くスタイルで構成されていた。特に、ヤニ・リーマタイネンの手による楽曲群は、ソナタ・アークティカのファン層に直接響く要素を持っていた。アルバムはフィンランドのナショナル・チャートにランクインし、新人バンドとしては異例のセールスを記録した。
また、このアルバムにはゲストとして、ナイトウィッシュのベーシスト兼ヴォーカリストであるマルコ・ヒエタラ (Marco Hietala) がバッキング・ヴォーカルで参加しており、ファミリー的な結束の強さを印象付けた。
3.3 ヨウニ・ニクラの脱退とターゲ・ライホの加入
アルバムは成功を収めたものの、ライブ・ツアーの開始と共にラインナップの問題が浮上した。2003年9月のツアー 「Invitation Pt.1」を前に、ヴォーカルのヨウニ・ニクラが脱退した。彼のヴォーカル・スタイルについては、一部のレビューで批判的な意見も見られ、バンドのサウンドに完全にフィットしていなかった可能性が示唆されている。
後任として白羽の矢が立ったのは、キルピ (Kilpi) のシンガーとしても知られるターゲ・ライホ (Taage Laiho) であった。ターゲは、ヨウニに比べてより中音域に厚みがあり、ブルージーでソウルフルな声質を持っていた。彼の加入は、アルタリアの音楽性を単なる「ハイトーン・スピード・メタル」から、より重厚でメロディアスなハード・ロックへと深化させるきっかけとなった。
3.4 エンプ・ヴオリネンの離脱
デビュー・ツアーは大成功を収めたが、エンプ・ヴオリネンのスケジュール調整は限界を迎えていた。ナイトウィッシュはアルバム 『Once』 (2004) の制作とそれに伴う大規模なワールド・ツアーを控えており、エンプがアルタリアの活動に時間を割くことは物理的に不可能となった。2003年12月、エンプは友好的にバンドを離脱することを発表した。彼はスタジオ・アルバム1枚の参加に留まったが、初期のバンドの知名度向上に対する貢献は計り知れないものであった。
4. 黄金期の到来と音楽的洗練 (2004-2005)
4.1 2ndアルバム 『Divinity』の制作
エンプの脱退後、バンドは4人編成 (+サポート・メンバー) で2ndアルバムの制作に入った。ギター・パートは主にヤニ・リーマタイネンが一人で担当し、キーボードのアレンジも彼が手掛けた。
2004年5月にリリースされた2ndアルバム 『Divinity』は、多くのファンや批評家からバンドの最高傑作と見なされている。新ヴォーカリスト、ターゲ・ライホのパフォーマンスはバンドに新たな生命を吹き込んだ。特にオープニング・トラックの「Unchain the Rain」は、哀愁漂うイントロからドラマティックなサビへと展開する名曲であり、YouTubeでの再生数が100万回を超えるなど、バンドの代表曲となった。
4.2 サウンドの変化と評価
『Divinity』における音楽的進化は顕著であった。前作『Invitation』 で見られた若さ溢れる疾走感は適度に抑えられ、代わりにミドルテンポの楽曲におけるグルーヴと、優れたメロディラインが強調されるようになった。AOR的なアプローチや、80年代のアリーナ・ロックを彷彿とさせるコーラス・ワークは、ALTARIAを単なる「ソナタ・アークティカのフォロワー」という位置付けから脱却させた。
アルバムのミキシングは、ソナタ・アークティカやセンテンスト (Sentenced) を手掛けたアハティ・コルテライネン (Ahti Kortelainen) が、マスタリングはフィンヴォックス・スタジオ (Finnvox Studios) の名エンジニア、ミカ・ユッシラ (Mika Jussila) が担当しており、フィンランド・メタルの最高峰のプロダクション・チームが支えていたことが分かる。
4.3 ライブ活動とペトリ・アホの貢献
『Divinity』リリース後のツアーでは、ライブ・ギタリストとしてペトリ・アホ (Petri Aho) が帯同した。彼は単なるサポートに留まらず、バッキング・ヴォーカルとしても優れた能力を発揮し、バンドのライブ・サウンドを分厚くすることに貢献した。彼はその後、2006年に正式メンバーとして迎えられることになる。
この時期、アルタリアはソナタ・アークティカやナイトウィッシュといった盟友たちのオープニング・アクトを務めるなど、精力的にライブ活動を行い、フィンランド国内での地位を不動のものとした。
5. 転換期: ヤニの脱退とヘヴィ・サウンドへの移行 (2006-2008)
5.1 創設者ヤニ・リーマタイネンの脱退
2005年から2006年にかけて、バンドは再び大きな試練に直面する。初期からの音楽的支柱であったヤニ・リーマタイネンが、本業であるソナタ・アークティカの活動 (後に彼はこちらも脱退することになるが、当時は多忙を極めていた) に専念するため、アルタリアを脱退した。ヤニの脱退は、バンドから「主要ソングライター」と「華やかなキーボード・サウンド」の両方を奪うことを意味した。
5.2 J-P・アラネンの加入と 『The Fallen Empire』
ヤニの後任として迎えられたのは、セレスティ (Celesty) のギタリストであったJ-P・アラネン (Juha Pekka Alanen) である。また、前述のペトリ・アホも正式加入し、バンドはツイン・ギター体制を復活させた。
2006年にリリースされた3rdアルバム 『The Fallen Empire』は、バンドのディスコグラフィの中で最も「変化」を感じさせる作品となった。プロデューサーにスウェーデンのヨナス・シェルグレン (Jonas Kjellgren) (カーナル・フォージ (Carnal Forge) やスカー・シンメトリー (Scar Symmetry) での活動で知られる) を起用したことで、ギター・サウンドはより太く、モダンでアグレッシブなものへと変貌した。
楽曲面では、ヤニ・リーマタイネンも一部作曲に関与しているものの (「Abyss of Twilight」等)、全体としてはJ-P・アラネンやマルコ・プッキラ主導の、ギター・リフ主体の楽曲が増加した。また、ゲスト・ギタリストとして、元ディオ (Dio) のローワン・ロバートソン (Rowan Robertson) が参加し、「The Lion」で流麗なソロを披露している。
5.3 ターゲ・ライホの脱退とベスト盤
『The Fallen Empire』リリース後、ヴォーカルのターゲ・ライホがバンドを離れた。バンドは後任として、元テラーウィール (Terrowheel) のベーシストであったマルコ・ルポネロ (Marco Luponero) をヴォーカリストとして迎えた。
2007年には、ここまでの活動を総括するコンピレーション・アルバム『Divine Invitation』をリリース。これには、1stと2ndからの楽曲に加え、新体制で録音された新曲2曲 (「Keeper of Mystique」「Ball & Chain」) が収録された。
5.4 創設メンバー、マルコ・プッキラの離脱
2008年1月、バンドに最大の衝撃が走った。結成メンバーであり、実質的なリーダーであったベーシストのマルコ・プッキラが、レーベル (Metal Heaven) との契約解除を巡る意見の不一致からバンドを脱退したのである。これにより、オリジナル・メンバーはドラムのトニー・スメジェバッカただ一人となった。
6. マルコ・ルポネロ時代と活動休止 (2009-2016)
6.1 4thアルバム 『Unholy』 とハード・ロックへの回帰
マルコ・プッキラの脱退に伴い、ヴォーカリストのマルコ・ルポネロがベースも兼任することとなり、バンドは4人編成 (ルポネロ、アラネン [Gt]、アホ [Gt]、スメジェバッカ) となった。
2009年、レーベルをイギリスのエスケープ・ミュージック (Escape Music) に移籍し、4thアルバム『Unholy』をリリースした。このアルバムのアートワークはルポネロ自身が手掛けている。
『Unholy』の音楽性は、初期のメロディック・スピード・メタルとは明確に一線を画すものであった。スピード曲は影を潜め、ミドルテンポの重厚なハード・ロックや、プリティ・メイズ (Pretty Maids) を彷彿とさせる正統派ヘヴィ・メタル・スタイルが全面に押し出された。ルポネロのヴォーカルは力強く、ハスキーなシャウトからメロディアスな歌唱まで幅広くこなし、バンドの新たな顔として機能した。しかし、初期のスタイルを愛するファンからは、音楽性の変化に対する戸惑いの声も上がった。
6.2 活動の停滞と終焉 (2016)
『Unholy』のリリース後、バンドの活動ペースは徐々に鈍化していった。メンバー個々の生活の変化や、音楽業界の状況変化などが影響したと考えられる。そして2016年、バンドはついにその歴史に幕を下ろすことを決断する。
2016年6月23日、フィンランドの著名なメタル・フェスティバルであるヌンミロック (Nummirock) にて、アルタリアのラスト・コンサートが行われた。このステージは特別なものとなった。現行メンバーに加え、かつてのメンバーであるマルコ・プッキラ、ヤニ・リーマタイネン、ターゲ・ライホらがゲストとして登場し、歴代のラインナップが一堂に会して代表曲を演奏したのである。ファンにとっては、これ以上ない感動的な別れの場となった。
7. 奇跡の復活と『Wisdom』 (2019-現在)
7.1 YouTubeが繋いだ絆と再結成
解散から3年後の2019年、事態は急転する。バンドの代表曲である「Unchain the Rain」が、YouTube上で120万回以上の再生数を記録していることにメンバーが気付いたのである。活動を停止しているにもかかわらず、世界中のファンがALTARIAの音楽を求めているという事実は、メンバーの心を動かした。
2019年12月、アルタリアは再結成を公式に発表した。そのラインナップは、バンドが最も精力的かつ安定していた2006年の『The Fallen Empire』期のメンバー (+ターゲ・ライホ) をベースとした「最強の布陣」であった。
- ターゲ・ライホ (Taage Laiho): Vocals
- マルコ・プッキラ (Marko Pukkila): Bass
- J-P・アラネン (J-P Alanen): Guitars
- ペトリ・アホ (Petri Aho): Guitars
- トニー・スメジェバッカ (Tony Smedjebacka): Drums
7.2 新レーベルとの契約とリマスター
ALTARIAは新たにリーパー・エンターテインメント (Reaper Entertainment) と契約を結んだ。再始動の第一弾として、2020年3月に名盤『Divinity』のリマスター盤をリリースした。これにはボーナストラックが追加され、新たなファン層へのアピールも行われた。
7.3 13年ぶりの新作『Wisdom』
パンデミックによる遅れを経て、2022年7月8日、バンドは5枚目となるスタジオ・アルバム『Wisdom』をリリースした。
『Wisdom』は、往年のアルタリア・サウンドを見事に現代に蘇らせた作品である。過度なモダン化や実験的な要素を排除し、ALTARIAの強みである「キャッチーなメロディ」「合唱可能なコーラス」「安定したミドルテンポのグルーヴ」に焦点を絞っている。アルバムには新曲に加え、1stアルバム 『Invitation』収録の「History of Times to Come」の2022年バージョンや、「Kingdom of the Night」のリメイクも収録されており、自らの歴史への敬意と自信が感じられる。
8. ディスコグラフィ (Discography)
以下に、アルタリアがリリースした主要な作品ごとの詳細データと分析を記す。
8.1 Studio Albums
1st Album: Invitation (インヴィテイション)
- 発売日: 2003年4月28日
- レーベル: Metal Heaven (Europe), AOR Heaven
- 録音スタジオ: Sonic Pump Studios (Helsinki) 等
- 主要ラインナップ: Jouni Nikula (Vo), Jani Liimatainen (Gt/Key), Emppu Vuorinen (Gt), Marko Pukkila (Ba), Tony Smedjebacka (Dr)
| Tr. | 曲名 (English) | 曲名 (Katakana) | 時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Unicorn | ユニコーン | 3:31 | 初期の代表曲。典型的な北欧パワー・メタル。 |
| 2 | History of Times to Come | ヒストリー・オブ・タイムズ・トゥ・カム | 4:34 | 『Wisdom』でリメイクされた楽曲。 |
| 3 | Ravenwing | レイヴンウィング | 4:30 | |
| 4 | Innocent | イノセント | 4:11 | |
| 5 | Wrath of a Warchild | ラス・オブ・ア・ウォーチャイルド | 4:13 | |
| 6 | Kingdom of the Night | キングダム・オブ・ザ・ナイト | 3:14 | |
| 7 | Fire & Ice | ファイア・アンド・アイス | 3:26 | |
| 8 | House of My Soul | ハウス・オブ・マイ・ソウル | 3:32 | |
| 9 | Immortality | イモータリティ | 5:20 | |
| 10 | Here I Am | ヒア・アイ・アム | 3:53 | |
| 11 | Emerald Eye | エメラルド・アイ | 4:27 | |
| 12 | Unicorn (Demo) | ユニコーン (デモ) | ボーナストラック (盤による)。 |
分析:「スーパーグループ」としての期待を背負ってリリースされたデビュー作。ソナタ・アークティカやストラトヴァリウスの影響下にある疾走曲と、哀愁を帯びたミッド・チューンが混在する。ヴォーカルのヨウニ・ニクラの声質は好みが分かれるところだが、楽曲の質の高さは疑いようがない。ナイトウィッシュのマルコ・ヒエタラや、元アクセプト (Accept) のアクセル・リット (Axel Ritt) がエンジニアとして関与するなど、制作陣も豪華である。
2nd Album: Divinity (ディヴィニティ)
- 発売日: 2004年5月
- レーベル: Metal Heaven
- ミキシング: Ahti Kortelainen (Tico Tico Studios)
- マスタリング: Mika Jussila (Finnvox Studios)
- 主要ラインナップ: Taage Laiho (Vo), Jani Liimatainen (Gt/Key), Marko Pukkila (Ba), Tony Smedjebacka (Dr)
| Tr. | 曲名 (English) | 曲名 (Katakana) | 時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Unchain the Rain | アンチェイン・ザ・レイン | 3:43 | バンド最大のアンセム。 |
| 2 | Will to Live | ウィル・トゥ・リヴ | 3:56 | |
| 3 | Prophet of Pestilence | プロフェット・オブ・ペスティレンス | 3:40 | |
| 4 | Darkened Highlight | ダーケンド・ハイライト | 3:45 | |
| 5 | Discovery | ディスカバリー | 3:53 | |
| 6 | Falling Again | フォーリング・アゲイン | 4:14 | 美しいバラード。 |
| 7 | Divine | ディヴァイン | 4:04 | タイトル・トラック。 |
| 8 | Haven | ヘイヴン | 3:40 | |
| 9 | Try to Remember | トライ・トゥ・リメンバー | 3:37 | キーボード主体のAOR色が強い曲。 |
| 10 | Stain on the Switchblade | ステイン・オン・ザ・スウィッチブレイド | 3:28 | |
| 11 | Enemy | エネミー | 4:14 | |
| 12 | Final Warning | ファイナル・ウォーニング | 4:06 |
分析: ターゲ・ライホの加入により、バンドの表現力が飛躍的に向上した作品。楽曲の粒が揃っており、メロディのフックが強力である。「Unchain the Rain」のヒットはバンドに自信を与えた。エンプ不在のためギターはヤニが一人で担っているが、その分サウンドに統一感が出ている。AOR的な洗練とメタルのパワーが理想的なバランスで融合した、北欧メロディック・メタルの隠れた名盤。
3rd Album: The Fallen Empire (ザ・フォールン・エンパイア)
- 発売日: 2006年3月24日
- レーベル: Metal Heaven
- プロデュース: Jonas Kjellgren (Black Lounge Studios)
- 主要ラインナップ: Taage Laiho (Vo), J-P Alanen (Gt), Marko Pukkila (Ba), Tony Smedjebacka (Dr)
| Tr. | 曲名 (English) | 曲名 (Katakana) | 時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Disciples | ディサイプルズ | 6:13 | 大作志向のオープニング。 |
| 2 | Valley of Rainbows | ヴァレー・オブ・レインボウズ | 4:22 | キャッチーなコーラスが光る。 |
| 3 | Abyss of Twilight | アビス・オブ・トワイライト | 4:55 | 作曲はJani Liimatainen。 |
| 4 | Frozen Hearts | フローズン・ハーツ | 4:40 | |
| 5 | Crucifix | クルシフィックス | 3:28 | ソナタ・アークティカ的な疾走感。 |
| 6 | Showdown | ショウダウン | 3:38 | |
| 7 | The Lion | ザ・ライオン | 4:58 | ゲストGtソロ: Rowan Robertson。 |
| 8 | Outlaw Blood | アウトロー・ブラッド | 4:12 | |
| 9 | Chosen One | チョーズン・ワン | 4:13 | |
| 10 | Access Denied | アクセス・ディナイド | 5:20 | |
| 11 | The Dying Flame | ザ・ダイイング・フレイム | 7:55 | 欧州盤ボーナストラック。Keyソロ: Henrik Klingenberg (Sonata Arctica) |
| 12 | Metality | メタリティ | 日本盤ボーナストラック。 |
分析: ヨナス・シェルグレンのプロデュースにより、低音が強調されたモダンでヘヴィな音像となった。キーボードの装飾が減り、ギター・リフの攻撃性が増している。「Valley of Rainbows」のように過去のスタイルを踏襲した曲もあるが、全体的にシリアスな雰囲気が漂う。ソナタ・アークティカのヘンリク・クリンゲンベリ (Henrik Klingenberg) がゲスト参加しており、依然として両バンドの繋がりが深いことが窺える。
4th Album: Unholy (アンホーリー)
- 発売日: 2009年8月28日
- レーベル: Escape Music
- 主要ラインナップ: Marco Luponero (Vo/Ba), J-P Alanen (Gt), Petri Aho (Gt), Tony Smedjebacka (Dr)
| Tr. | 曲名 (English) | 曲名 (Katakana) | 時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | Alterior Motive | アルテリア・モチーフ | 3:59 |
| 2 | Warrior | ウォリアー | 4:19 |
| 3 | Unholy Invasion | アンホーリー・インヴェイジョン | 3:50 |
| 4 | Pride and Desire | プライド・アンド・デザイア | 3:06 |
| 5 | The Lake | ザ・レイク | 5:29 |
| 6 | Danger Zone | デンジャー・ゾーン | 3:22 |
| 7 | Steal Your Thunder | スティール・ユア・サンダー | 3:23 |
| 8 | Wind Beneath My Wings | ウィンド・ビニース・マイ・ウィングス | 3:24 |
| 9 | We Own the Fire | ウィ・オウン・ザ・ファイア | 3:49 |
| 10 | Ready! | レディ! | 4:08 |
| 11 | Never Wonder Why | ネヴァー・ワンダー・ホワイ | 3:55 |
| 12 | Underdog | アンダードッグ | 3:19 |
分析: マルコ・ルポネロの個性が爆発したハード・ロック・アルバム。パワー・メタルの要素は後退し、80年代的なリフとシャウトが支配する。楽曲のクオリティは高いものの、バンドの音楽的アイデンティティの大きなシフトを示した作品であり、賛否両論を呼んだ。
5th Album: Wisdom (ウィズダム)
- 発売日: 2022年7月8日
- レーベル: Reaper Entertainment
- 主要ラインナップ: Taage Laiho (Vo), J-P Alanen (Gt), Petri Aho (Gt), Marko Pukkila (Ba), Tony Smedjebacka (Dr)
| Tr. | 曲名 (English) | 曲名 (Katakana) | 時間 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | Wisdom | ウィズダム | 3:35 | タイトル・トラック。 |
| 2 | Diablo Rojo | ディアブロ・ロホ | 5:12 | |
| 3 | Without Warning | ウィズアウト・ウォーニング | 3:20 | |
| 4 | Kissed by the Flames | キスド・バイ・ザ・フレイムス | 4:54 | 先行シングルの一つ。 |
| 5 | Power to Heal | パワー・トゥ・ヒール | 3:45 | |
| 6 | Sometimes | サムタイムズ | 4:45 | |
| 7 | Victory of Winter | ヴィクトリー・オブ・ウィンタ | 4:31 | |
| 8 | History of Times to Come (2022) | ヒストリー・オブ・タイムズ・トゥ・カム (2022) | 4:51 | 1stアルバム曲のリメイク。 |
| 9 | Lost in Time | ロスト・イン・タイム | 4:26 | |
| 10 | Crimson Rain | クリムゾン・レイン | 8:36 | 大作。 |
| 11 | Kingdom of the Night (2022) | キングダム・オブ・ザ・ナイト (2022) | 3:14 | ボーナストラック (盤による)。 |
分析: ファンが待ち望んだ「アルタリアらしさ」が詰まった復活作。奇をてらわず、シンプルで力強いメロディック・メタルに回帰している。ターゲ・ライホの声は年齢を重ねて深みを増しており、バンドの演奏も円熟味を帯びている。
8.2 Compilations
『Divine Invitation』(2007年): ベスト・アルバム。新曲2曲、過去曲、デモ音源などを収録。マルコ・ルポネロのデビュー作でもある。
9. メンバー詳細プロフィール (Members Profile)
アルタリアに関わった主要メンバーの詳細な経歴と役割について解説する。
9.1 現行メンバー (Current Lineup)
ターゲ・ライホ (Taage Laiho) - Vocals
- 在籍: 2003-2006, 2019-現在
- プロフィール: キルピ (Kilpi) のフロントマンとしても著名。フィンランドの「The Voice of Finland」等の番組にも出演経験がある実力派。
- スタイル: 典型的なハイトーン・スクリーマーではなく、中音域に魅力を持つハスキー・ヴォイスが特徴。デヴィッド・カヴァデール (David Coverdale) 等の影響を感じさせるブルージーな歌唱は、アルタリアにAOR的な深みを与えた。
マルコ・プッキラ (Marko Pukkila) - Bass
- 在籍: 2000-2008, 2019-現在
- プロフィール: 創設メンバー。元ブラインドサイド (Blindside)。スターゲイザリー (Stargazery) でも活動。
- 役割: バンドの精神的支柱であり、メイン・ソングライターの一人。彼のベースプレイはシンプルながら楽曲のボトムを堅実に支える。2008年の脱退はバンドにとって大きな損失だったが、2019年の再結成を主導した。
J-P・アラネン (Juha Pekka Alanen) - Guitars
- 在籍: 2005-2016, 2019-現在
- プロフィール: セレスティ (Celesty) の元メンバー。
- 役割: ヤニ・リーマタイネンの後任として加入。テクニカルなシュレッド・ギターよりも、リフ・ワークや楽曲構成に重きを置くスタイル。彼の加入によりバンドはよりヘヴィな方向へシフトした。
ペトリ・アホ (Petri Aho) - Guitars
- 在籍: 2004 (Live), 2006-2016, 2019-現在
- プロフィール: 当初はサポートとして参加。
- 役割: ギターのみならず、優れたバッキング・ヴォーカル能力でバンドのハーモニーを支える。スタジオ・エンジニアとしてのスキルも持ち、録音に関与することもある。
トニー・スメジェバッカ (Tony Smedjebacka) - Drums
- 在籍: 2000-2016, 2019-現在
- プロフィール: 創設メンバー。元ブラインドサイド。
- 役割: 結成から解散、再結成まで、すべての時代に在籍した唯一のメンバー。派手さはないが、楽曲に忠実で安定したドラミングが持ち味。
9.2 過去の主要メンバー (Notable Past Members)
ヤニ・リーマタイネン (Jani Liimatainen) - Guitars, Keyboards
- 在籍: 2000-2005
- 関連バンド: ソナタ・アークティカ (Sonata Arctica), ケインズ・オファリング (Cain's Offering), ザ・ダーク・エレメント (The Dark Element), インソムニウム (Insomnium).
- 重要性: 初期の音楽的リーダー。彼の書く曲はメロディック・スピード・メタルの教科書的完成度を誇り、初期アルタリアの人気を決定づけた。
エンプ・ヴオリネン (Emppu Vuorinen) - Guitars
- 在籍: 2002-2004
- 関連バンド: ナイトウィッシュ (Nightwish), ブラザー・ファイアトライブ (Brother Firetribe).
- 重要性: 世界的スターである彼の加入は、アルタリアにとって最大のプロモーションとなった。在籍期間は短かったが、その存在感は大きかった。
マルコ・ルポネロ (Marco Luponero) - Vocals, Bass
- 在籍: 2006-2016
- 重要性: 困難な時期にフロントマンを務めた功労者。現在は自身のプロジェクト等で活動している。
10. 展望
アルタリアは、フィンランド・メタル・シーンの爆発的な成長期に生まれ、その波に乗りながらも、独自の立ち位置を模索し続けたバンドである。当初は「ソナタ・アークティカやナイトウィッシュのメンバーがいるバンド」として注目されたが、度重なるメンバーチェンジを経て、ALTARIA自身のサウンド―――哀愁を帯びたメロディと、80年代的なハード・ロックのダイナミズムの融合――を確立した。
2022年の『Wisdom』による復活は、ALTARIAが「現在進行系のバンド」である事を証明した。サブスクリプション・サービスやYouTubeを通じ、国境を超えてALTARIAの音楽が再評価された事実は、良質なメロディは時代を超えてリスナーに届くということを示している。現在も活動を継続するALTARIAが、今後どのような「歴史 (History of Times to Come)」を紡いでいくのか、シーンは注目している。