NORDIC UNION
21世紀初頭から現在に至るまで、世界のハードロックおよびヘヴィメタルシーンにおいて、特定のレコードレーベルが果たす役割は極めて大きなものとなっている。
Biography
北欧メロディック・ロックの至宝
NORDIC UNION (ノルディック・ユニオン)
1. 現代メロディック・ロック・ルネサンスにおける文脈
1.1 「プロジェクト・バンド」の台頭とFrontiers Music Srlの戦略
21世紀初頭から現在に至るまで、世界のハードロックおよびヘヴィメタルシーンにおいて、特定のレコードレーベルが果たす役割は極めて大きなものとなっている。その中心に位置するのが、イタリアのナポリを拠点とするFrontiers Music Srl (フロンティアーズ・ミュージック)である。同レーベルの社長であるSerafino Perugino (セラフィノ・ペルジーノ) は、1980年代のAOR (Adult Oriented Rock) やメロディック・ロックの黄金時代を現代に蘇らせるべく、独自のA&R戦略を展開してきた。
その戦略の核となるのが、「スタジオ・プロジェクト」あるいは「スーパーグループ」の結成である。これは、既に名声を確立した異なるバンドのミュージシャン同士を組み合わせ、化学反応を狙う手法である。Peruginoは、単なる企画モノに留まらせないために、専属の優れたソングライターやプロデューサー (「ハウス・ライター」や「ハウス・プロデューサー」と呼ばれる)を配置し、楽曲のクオリティを担保するシステムを構築した。NORDIC UNION (ノルディック・ユニオン) は、このシステムが生み出した最も成功した事例の一つであり、北欧のロックシーンを象徴する二つの才能が融合したプロジェクトとして位置づけられる。
1.2 NORDIC UNIONの概念的枠組み: 世代と国境を超えた融合
NORDIC UNION (ノルディック・ユニオン) という名称が示す通り、このプロジェクトは北欧(Nordic) 諸国の才能の連合 (Union) を意味している。具体的には、デンマークの伝説的ハードロックバンドPRETTY MAIDS (プリティ・メイズ) のボーカリスト、Ronnie Atkins(ロニー・アトキンス)と、スウェーデンの新世代メロディック・ロックの旗手であるErik Mårtensson (エリック・モーテンソン) (ECLIPSE (エクリプス) / W.E.T. (ウェット))のコラボレーションである。
この組み合わせにおける特筆すべき点は、「世代間の対話」にある。1980年代からシーンを牽引し、哀愁と攻撃性を兼ね備えた歌声で知られるAtkins (ベテラン)と、2000年代以降に登場し、現代的なプロダクション技術と80年代的なフックを持つ楽曲制作で評価されるMårtensson(新世代)の融合は、メロディック・ロックというジャンルに、現代的な音圧と鮮度をもたらすことに成功した。批評家たちは、このパートナーシップが「音楽的な魔法 (Musical Magic)」を生み出したと評しており、両者のキャリアにおいても重要な位置を占めるプロジェクトとなっている。
2. 主要構成員の軌跡と相互作用 (Biography)
2.1 Ronnie Atkins (ロニー・アトキンス): 不屈の魂を持つデンマークの獅子
2.1.1 初期キャリアとPRETTY MAIDSでの成功
Ronnie Atkins (ロニー・アトキンス) (本名: Paul Christensen)は、1964年生まれのデンマーク出身のボーカリストである。彼は1981年、ギタリストのKen Hammer (ケン・ハマー) と共にPRETTY MAIDS (プリティ・メイズ) を結成した。1983年のデビュー以来、『Red, Hot and Heavy』(1984年) や 『Future World』 (1987年)といった名盤を発表し、北欧メタルを世界に知らしめた功労者の一人である。
Atkinsのボーカルスタイルは極めて独特であり、NORDIC UNIONのサウンドキャラクターを決定づける最大の要因となっている。彼は、耳をつんざくような鋭い金属的なシャウトと、AORバラードで見せる甘く情感豊かなクルーナー・ボイスという、相反する二つの要素を完璧に使い分けることができる。この「静と動」、「醜と美」のコントラストは、Mårtenssonの書く洗練されたメロディに、ロック本来の「汚れ (Grit)」 や 「重み」を加える役割を果たしている。
2.1.2 癌との闘争と 「Carpe Diem」の哲学
NORDIC UNIONの活動、特に中盤以降を語る上で避けて通れないのが、Atkinsの健康問題である。2019年、彼は肺癌の診断を受けた。一度は治療の成功が伝えられたものの、2020年にはステージ4の転移性癌であり、完治不能 (Incurable) であるとの残酷な診断が下された。
しかし、ここからのAtkinsの行動は驚異的であった。彼は「家に座ってふさぎ込む (sit at home and sulk)」ことを拒否し、残された時間を音楽創作に捧げることを決意したのである。彼は「医師からの承認 (thumbs up from the doctors)」を得ながら、精力的にソロアルバムの制作やNORDIC UNIONの活動を継続した。この「メメント・モリ(死を想え)」と「カルペ・ディエム (今を生きろ)」が交錯する彼の精神状態は、NORDIC UNIONの3rdアルバム『Animalistic』 の歌詞やパフォーマンスに色濃反映されており、聴く者に痛切な感動を与える要素となっている。彼の歌声は、病を感じさせないほどエネルギッシュであり、批評家からは「運命の顔に唾を吐きかける (spit in fate's face)」ような力強さがあると評されている。
2.2 Erik Mårtensson (エリック・モーテンソン): 現代スカンジナビアの音響建築家
2.2.1 「キング・オブ・メロディック・ロック」への道
Erik Mårtensson (エリック・モーテンソン)は、スウェーデン出身のマルチプレイヤー、ソングライター、プロデューサーである。彼は自身のバンドECLIPSE (エクリプス)での活動に加え、ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto) らとのプロジェクトW.E.T. (ウェット) や、AMMUNITION (アミュニション) など、数多くのプロジェクトで主要な役割を果たしている。
Mårtenssonの才能は、単に良い曲を書くことだけに留まらない。彼はレコーディングエンジニア、ミキシング、マスタリングまでを一貫して手掛ける技術者でもあり、彼が作り出すサウンド(通称「Mårtensson Sound」)は、現代メロディック・ロックの業界標準(Gold Standard) となっている。その特徴は、分厚いギターの壁 (Wall of Sound) がありながらも、ボーカルや各楽器の分離が良く、クリアでパンチのある音像にある。
2.2.2 NORDIC UNIONにおける役割: 職人としての献身
NORDIC UNIONにおいて、Mårtenssonは音楽的な土台(バックトラック)のほぼ全てを構築している。クレジットによれば、彼はリードギター、リズムギター、ベース、キーボード、バッキングボーカルを担当し、さらにプロデュースも行っている。インタビューにおいて彼は、Atkinsとのコラボレーションについて「個人的なファン心理」からの喜びを語っている。「Ronnie Atkins とレコードを作ることは、自分にとっても本当にクールなことだ」と述べ、ビジネスライクな関係を超えたリスペクトが存在することを示唆している。彼はAtkinsの声域や歌唱スタイルを熟知しており、Atkinsが最も輝くようなキー設定やメロディラインを意識的に構築していることが、楽曲の完成度の高さに繋がっている。
2.3 結成の経緯: Serafino Peruginoの慧眼
プロジェクトの始動は、Frontiers Music Srlの社長、Serafino Peruginoの提案によるものであった。Mårtenssonによれば、Peruginoは当初、TNTのトニー・ハーネル (Tony Harnell)など他のシンガーとの組み合わせも模索していたが、最終的にRonnie Atkinsの名前が挙がった際、Mårtenssonは即座に 「Yes!」 と回答したという。一方のAtkinsも、Mårtenssonから送られてきたデモ音源を聴いた段階で「良い直感(Good gut feeling)」 を得たと語っている。彼はMårtenssonを「非常に才能あるソングライター (very gifted and talented songwriter)」と評し、メロディへの焦点と優れたギターワークを称賛した。このように、双方が互いの才能を認め合った状態でプロジェクトはスタートしたため、スタジオ・プロジェクトにありがちな「ぎこらしさ」が皆無であり、あたかも長年活動してきたバンドのような一体感を生み出すことに成功した。
3. ディスコグラフィ : 三部作の進化 (Discography Analysis)
NORDIC UNIONはこれまでに3枚のスタジオ・アルバムをリリースしている。それぞれのアルバムは、彼らのパートナーシップの進化と、その時々のAtkinsの状況を反映した独自のカラーを持っている。
3.1 1st Album: 『Nordic Union』(2016年) - 衝撃のデビュー
2016年1月29日、セルフタイトルのデビューアルバム 『Nordic Union』 がリリースされた。この作品は、メロディック・ロック界に衝撃を与え、多くのメディアでその年のベストアルバム候補に挙げられた。
3.1.1 アルバム概要
- リリース日: 2016年1月29日
- レーベル: Frontiers Music Srl (World), Avalon/Marquee (Japan)
- プロデューサー: Erik Mårtensson
- 主要ラインナップ:
- Ronnie Atkins: Lead & Backing Vocals
- Erik Mårtensson: Guitar, Bass, Keyboards, Backing Vocals
- Magnus Ulfstedt: Drums
3.1.2 参加ゲストミュージシャン
本作では、ギターソロの一部をゲストギタリストが担当しており、楽曲に彩りを加えている。
- Thomas Larsson: "Every Heartbeat", "Wide Awake"でのギターソロ。
- Fredrik Folkare: "Point Of No Return", "Hypocrisy"でのギターソロ。UNLEASHED等のデスメタルバンドでの活動でも知られるが、ここでは流麗なメロディック・ソロを披露している。
- Magnus Henriksson: "The War Has Begun"でのギターソロ。ECLIPSEのギタリストであり、Mårtenssonの盟友。
3.1.3 全曲解説と分析
| トラック番号 | タイトル (Title) | 時間 | 解説・分析(Insight) |
|---|---|---|---|
| 1 | The War Has Begun | 3:52 | アルバムの幕開けを飾るアンセム。Magnus Henrikssonのギターソロがフィーチャーされている。Magnum (マグナム)の全盛期(『Wings of Heaven』 時代)を彷彿とさせる壮大で高揚感のあるハードロック。歌詞は戦いの始まりを告げるもので、プロジェクトの始動を高らかに宣言している。 |
| 2 | Hypocrisy | 3:42 | ヘヴィなリフが主導する楽曲。Atkinsのボーカルはより攻撃的になり、Pretty Maidsのファンにも訴求するメタル寄りのアプローチ。Fredrik Folkareのソロが楽曲の緊張感を高めている。 |
| 3 | Wide Awake | 3:27 | ポップとメロディック・ロックが融合したモダンな楽曲。サビのキャッチーさはECLIPSEの作風に近いが、Atkinsの声が乗ることで大人の哀愁が加わっている。Thomas Larssonがソロを担当。 |
| 4 | Every Heartbeat | 4:00 | ミッドテンポの力強いナンバー。心臓の鼓動(Heartbeat)をメタファーにしたリリックと、シンガロング必至のコーラスが特徴。 |
| 5 | When Death Is Calling | 3:38 | アルバムのハイライトの一つ。タイトルは不吉だが、メロディは極めて美しく、北欧メタルの真骨頂とも言える「慟哭」のメロディが炸裂する。後のAtkinsの病状を考えると予言的なタイトルとも取れるが、この時点では純粋なフィクションとしての死生観が描かれている。 |
| 6 | 21 Guns | 3:27 | 礼砲(21-gun salute) を意味するタイトル。アップテンポでドライビングなロックンロール・ナンバー。ライブ映えする楽曲構成である。 |
| 7 | Falling | 3:57 | バラード的な導入から徐々に盛り上がりを見せる楽曲。Atkinsの表現力豊かな歌唱法(ささやきから絶叫まで)が堪能できる。 |
| 8 | The Other Side | 3:46 | 典型的な「Mårtensson節」が聴けるメロディアスな楽曲。キーボードのアレンジが効果的に使われている。 |
| 9 | Point Of No Return | 3:39 | 疾走感のあるハードロック。Fredrik Folkareのテクニカルなギターソロが聴きどころ。「後戻りできない地点」というテーマは、ロック人生を突き進むNORDIC UNIONの姿勢とも重なる。 |
| 10 | True Love Awaits You | 4:14 | アルバム中最もエモーショナルなバラードの一つ。希望と救済を感じさせる歌詞とメロディが、Atkinsの温かみのある声質とマッチしている。 |
| 11 | Go | 3:15 | アルバム本編を締めくくる、短くパンキッシュな勢りのある楽曲。 |
| 12 (Japan Bonus) | When Death Is Calling (Acoustic Version) | 3:00 | 日本盤ボーナストラック。アコースティック・アレンジにより、楽曲の骨格 (メロディの良さ)が露わになっている。Atkinsの歌唱の繊細なニュアンスが強調された名演。 |
3.2 2nd Album: 『Second Coming』(2018年) - 確信への進化
2018年11月9日、2作目となる『Second Coming』 がリリースされた。デビュー作の成功を受け、プロジェクトとしてのアイデンティティを確立した上での制作となり、よりバンドとしての一体感が増した作品となった。
3.2.1 アルバム概要
- リリース日: 2018年11月9日
- レーベル: Frontiers Music Srl
- プロデューサー: Erik Mårtensson
- 主要ラインナップ: 前作同様、Atkins, Mårtensson, Ulfstedtのトリオ編成。
3.2.2 音楽的特徴と評価
本作のテーマは「継続」と「深化」である。レビューでは「記憶に残る (Memorable)」メロディの宝庫であると評され、Frontiers Recordsのリリースの中でも特に高品質であることが保証されているとされた。一方で、革新性(Originality) には欠けるという指摘もあったが、ファンが求める「王道のサウンド」を完璧に提供したという意味で、期待を裏切らない作品である。
3.2.3 全曲解説と分析
| トラック番号 | タイトル (Title) | 時間 | 解説・分析(Insight) |
|---|---|---|---|
| 1 | My Fear and My Faith | 4:15 | ドラマティックなオープニング。恐怖と信仰(信念)の対比を描く。重厚なリズム隊とシンフォニックなキーボードが、壮大なスケール感を演出している。 |
| 2 | Because of Us | 4:04 | アルバムを代表するハードなトラック。リフの切れ味と、サビでの爆発力が凄まじい。先行シングルとしてMVも公開され、NORDIC UNIONの健在ぶりをアピールした。 |
| 3 | It Burns | 4:54 | エモーショナルなミッドテンポ曲。タイトル通り「燃えるような」情熱を感じさせるボーカルパフォーマンス。メロディのフックが強力で、一度聴いたら耳から離れない。 |
| 4 | Walk Me Through The Fire | 4:34 | 本作のハイライトの一つ。非常にヘヴィで、「花崗岩のように硬い (hard-as-granite)」 ヘッドバンギング・ナンバーと評される。Atkinsの荒々しいシャウトが最大限に活かされており、Pretty Maidsファンも納得の攻撃性を持つ。 |
| 5 | New Life Begins | 3:51 | 「新たな人生の始まり」を歌うポジティブな楽曲。メロディが上昇志向を持っており、聴く者を鼓舞するアンセム (Metal Anthem) となっている。 |
| 6 | The Final War | 3:47 | ヨハネの黙示録的な世界観を持つ楽曲。AtkinsはPretty Maidsでも宗教的・終末論的なテーマを扱うことがあるが、ここでも善と悪の最終戦争が描かれている。ドラマティックな構成が秀逸。 |
| 7 | Breathtaking | 4:22 | 文字通り「息を呑む」ような美しいメロディラインを持つ楽曲。クレッシェンドしていく展開が魔法のような高揚感を生む。 |
| 8 | Rock's Still Rolling | 3:47 | ロックンロールへの讃歌。古典的なテーマだが、Mårtenssonのモダンなアレンジにより古臭さは感じさせない。 |
| 9 | Die Together | 3:58 | タイトルとは裏腹に、対比的なメロウなパートを持つ楽曲。ギターソロへ向かう展開が劇的である。 |
| 10 | The Best Thing I Never Had | 3:41 | クラシックなPretty Maidsを彷彿とさせるハードロッカー。肉厚なリフとシンフォニックなキー、そして素晴らしいコーラスを持つ「極上の逸品 (Classy stuff)」。 |
| 11 | Outrun You | 3:56 | アルバムの最後を飾る疾走曲。最後までテンションを落とさずに駆け抜ける。 |
| 12 (Japan Bonus) | Because Of Us (Acoustic Remix) | 日本盤ボーナストラック。資料により表記が揺れるが、通常はアコースティック・バージョンやリミックスが収録される。Ebay等のリストでは"Because Of Us"のアコースティック版が確認できる。 |
3.3 3rd Album: 『Animalistic』(2022年)-生命の咆哮
2022年8月5日(日本先行)、3作目『Animalistic』 がリリースされた。このアルバムは、Atkinsのステージ4の癌闘病という過酷な現実の中で制作された、極めて特別な意味を持つ作品である。
3.3.1 アルバム概要
- リリース日: 2022年8月5日(Japan), 2022年8月12日(World)
- レーベル: Frontiers Music Srl, Avalon (Japan)
- プロデューサー: Erik Mårtensson
- ラインナップ変更: ドラムがMagnus UlfstedtからHenrik Erikssonに交代した。
3.3.2 テーマとサウンドの変化: 野生への回帰
タイトル 『Animalistic (動物的、野生的)』が示す通り、本作のサウンドは前2作に比べてよりアグレッシブで、ギターリフ主導のヘヴィなものとなっている。Atkinsのボーカルも、病を感じさせないどころか、死に直面した人間特有の「生への執着」や「怒り」が込められており、鬼気迫るパフォーマンスを見せている。歌詞には「Fight (戦い)」 「End (終わり)」「Last Man(最後の男)」といった単語が頻出し、彼の置かれた状況とリンクしている。
3.3.3 全曲解説と分析
| トラック番号 | タイトル (Title) | 解説・分析(Insight) |
|---|---|---|
| 1 | On This Day I Fight | タイトルが全てを物語る。自身の病との闘いをメタファーにしたような、決意表明の楽曲。オープニングからリスナーの感情を揺さぶる。 |
| 2 | In Every Waking Hour | リードシングル。スタッカートのリフが印象的で、MUSE (ミューズ)を思わせるアトモスフェリックなヴァースから、爆発的なコーラスへと展開する。MVも制作され、Atkinsの健在ぶりを世界に示した。 |
| 3 | If I Could Fly | ムーディーなイントロから、ダウンチューニングされたパーカッシブなリフへと移行する。メロディック・ロックの基準からすると「毒々しい(venomous)」ほどヘヴィだが、サビはアリーナ級の広がりを持つ。 |
| 4 | Riot | タイトル通りの暴動のようなエネルギーを持つトラック。Thomas Larssonがリードギターで参加。 |
| 5 | This Means War | 「これは戦争だ」と宣言する楽曲。これもまた、病魔に対する宣戦布告と解釈できる。攻撃的なリフとAtkinsのシャウトが交錯する。 |
| 6 | Scream | キャッチーなフックを持つ楽曲。Thomas Larsson参加。日本盤にはこの曲のアコースティック版が収録されており、楽曲の核にあるメロディの強さを証明している。 |
| 7 | Animalistic | タイトル・トラック。80年代のフレアを持ちながらも、モダンな音像で構築されている。ロックンロールの精神 (Spirit of rock'n'roll)を体現した楽曲。 |
| 8 | Wildfire | スピーディーでスリリングなナンバー。 |
| 9 | Shot In The Dark | 古典的なハードロックのイディオムを用いた楽曲だが、Mårtenssonのアレンジにより新鮮に響く。 |
| 10 | Last Man Alive | WHITESNAKEの『1987』時代を想起させるミッドテンポの重厚なナンバー。Thomas Larsson参加。「生き残った最後の男」というテーマは、Atkinsの現状を思うとあまりにも切実である。 |
| 11 | King For A Day | アルバムを締めくくる、激しい抵抗の歌。「もしこれが最後だとしても(If this is the end)」 という歌詞で始まり、最後まで燃え尽きるように疾走する。これがAtkinsの「白鳥の歌 (Swan Song)」になるかもしれないという批評家の懸念を吹き飛ばすようなエネルギーに満ちている。 |
| 12 (Japan Bonus) | Scream (Acoustic Version) | 日本盤ボーナストラック。アコースティックギター1本でも成立する楽曲の良さと、Atkinsの声の深みが際立つ。 |
4. 音楽的・技術的分析(Technical & Musical Analysis)
4.1 「Scandi-Rock」の定義とNordic Unionのサウンド
NORDIC UNIONの音楽性は、「Scandi-Rock (スカンジ・ロック)」あるいは「Scandinavian Melodic Rock」の典型にして最高峰と定義できる。このジャンルの特徴は以下の要素の融合にある。
- 哀愁のメロディ (Melancholic Melody): 北欧特有の、冷たく澄んだ空気感を想起させるマイナー調のメロディライン。ABBAから続くスウェーデンのポップ・センスが、ハードロックのフォーマットに移植されている。
- ヘヴィネスと透明感の両立: ギターは深く歪んでいるが、決してノイズにはならず、各弦の響きがクリアである。Mårtenssonのミキシング技術により、ドラムのキックとベースが強固な低音部を支え、その上にシンセサイザーとボーカルが煌びやかに乗る構造となっている。
- ボーカルの役割: Atkinsの声は「楽器」の一部として機能している。彼の声に含まれる倍音成分 (歪み)が、クリーントーン主体のモダンなトラックに「有機的な荒々しさ」を加え、デジタル臭さを消している。
4.2 制作プロセスとErik Mårtenssonの多能性
NORDIC UNIONは、現代的な「ファイル・シェアリング」による制作手法を採っていると思われるが、その中心にいるのは常にMårtenssonである。クレジットを見ると、彼がドラム以外のほぼ全ての楽器を担当していることがわかる (ギターソロのゲスト参加を除く)。これは、彼が自身の頭の中で鳴っている音を、他者を介さずに直接具現化できることを意味する。ECLIPSEでの活動と比較すると、NORDIC UNIONではより「メタル寄り」あるいは「Pretty Maids寄り」のアプローチ意識しており、Atkinsのファン層を強く意識したソングライティングが行われている。
5. ライブ活動の実態と展望 (Live Performances & Future)
5.1 スタジオ・プロジェクトとしての制約
NORDIC UNIONは、設立当初から「スタジオ・プロジェクト」としての性質が強く、大規模なワールドツアーなどは行われていない。これには以下の理由が挙げられる。
- メンバーの多忙: AtkinsはPretty MaidsやAvantasia、MårtenssonはEclipseやW.E.T.など、それぞれがメインの活動を持っている。
- 健康問題: 特に2019年以降のAtkinsの闘病生活は、長期間の移動を伴うツアーを困難にしている。
5.2 稀少なライブ・パフォーマンス
しかし、完全にライブが行われていないわけではない。資料によれば、2022年6月18日に開催された「Rock N Loc Festival」 (フランス)において、NORDIC UNIONとしてのライブパフォーマンスが行われている。YouTube等にはファン撮影の映像が存在し、"Hypocrisy"などが演奏されたことが確認できる。これは極めて稀な機会であり、NORDIC UNIONが「実体のあるバンド」として機能し得ることを証明した。また、Setlist.fm等のデータベースには「Union」という同名の別バンド (元KISSのBruce Kulickらが結成したバンド)の情報が混在している場合があるため、情報の選別には注意が必要である。NORDIC UNIONとしてのライブ履歴は極めて限定的である。
5.3 未来への展望: 不確実性の中で
Atkinsの健康状態は予断を許さないが、2023年や2024年のインタビューにおいて、彼は依然として創作意欲に溢れていることを語っている。ソロアルバム『Trinity』のリリースや、Pretty Maidsの活動再開の可能性についても言及しており、体調が許す限りNORDIC UNIONの第4作が制作される可能性はゼロではない。Erik Mårtenssonもまた、「次のアルバムが常に最高傑作」という姿勢を崩しておらず、二人のスケジュールとAtkinsの体調が合致すれば、再び「北欧の連合」が結成されることだろう。
6. Conclusion
NORDIC UNIONは、Serafino Peruginoの企画によって生まれた「人工的な」プロジェクトであったかもしれないが、Ronnie Atkins と Erik Mårtenssonという二人の稀代の才能が出会ったことで、その枠組みを遥かに超えた「有機的で情熱的な」 ロックバンドへと進化した。NORDIC UNIONの残した3枚のアルバムは、2010年代から2020年代にかけてのメロディック・ロックシーンにおける金字塔であり、特に『Animalistic』は、死の淵に立たされた人間が放つ生命の輝きを記録したドキュメンタリーとしても、音楽史にその名を刻む作品である。北欧の冷たい風と、燃え上がるロックの魂が融合したこのプロジェクトは、今後も多くのロックファンに語り継がれていくことだろう。
附録: データ・資料編
ディスコグラフィ一覧 (Discography Table)
| タイトル (Title) | 発売年 (Year) | 形式 (Format) | レーベル (Label) | 備考・日本盤ボーナス (Notes/Bonus) |
|---|---|---|---|---|
| Nordic Union | 2016 | Album | Frontiers / Avalon | "When Death Is Calling (Acoustic Version)" |
| Second Coming | 2018 | Album | Frontiers / Avalon | "Because Of Us (Acoustic Remix)" 等 |
| Animalistic | 2022 | Album | Frontiers / Avalon | "Scream (Acoustic Version)" |
| In Every Waking Hour | 2022 | Single | Frontiers | Digital Single |
関連人物・バンド一覧 (Key Personnel & Affiliations)
| 名前 (Name) | 役割 (Role) | 関連バンド (Affiliations) |
|---|---|---|
| Ronnie Atkins | Vocals | Pretty Maids, Avantasia, Solo |
| Erik Mårtensson | Guitars, Bass, Keys, Prod. | Eclipse, W.E.T., Ammunition |
| Magnus Ulfstedt | Drums (1st, 2nd) | ex-Eclipse, Jimi Jamison |
| Henrik Eriksson | Drums (3rd) | ex-Baltimoore |
| Thomas Larsson | Guitar (Guest) | |
| Fredrik Folkare | Guitar (Guest) | Unleashed, Firespawn |
| Magnus Henriksson | Guitar (Guest) | Eclipse |
| Serafino Perugino | Executive Producer | Frontiers Music Srl President |