VANDENBERG

1980年代初頭、ハードロック (Hard Rock) とヘヴィメタル (Heavy Metal) のムーブメントが世界規模で拡大する中、オランダ (Netherlands) から一つのバンドが彗星のごとく現れ、瞬く間に国際的な名声を確立した。

Biography

ヴァンデンバーグ (VANDENBERG)
バイオグラフィ、ディスコグラフィ

1. オランダが生んだメロディック・ハードロックの至宝

1980年代初頭、ハードロック (Hard Rock) とヘヴィメタル (Heavy Metal) のムーブメントが世界規模で拡大する中、オランダ (Netherlands) から一つのバンドが彗星のごとく現れ、瞬く間に国際的な名声を確立した。その名はヴァンデンバーグ (VANDENBERG)。希代のギター・ヒーローであり、優れたソングライター、そして画家としての才能も併せ持つエイドリアン・ヴァンデンバーグ (Adrian VANDENBERG) によって率いられたこのバンドは、欧州的な哀愁を帯びたメロディと、アメリカ市場をも視野に入れたキャッチーな楽曲構成、そしてエイドリアンの技巧的かつ情熱的なギターワークによって、独自の地位を築き上げた。

2. 第1部: 創世記と飛躍 (1978年-1982年)

2.1 前史: ティーザー (Teaser)の時代

エイドリアン・ヴァンデンバーグ (本名: アドリアン・ファン・デン・ベルフ Adriaan van den Berg)の音楽キャリアの本格的なスタートは、1978年にアルバムデビューを果たしたバンド、ティーザー (Teaser) に遡る。ティーザーは、ブルース・ロック (Blues Rock) を基調としたハードロックバンドであり、エイドリアンのギタープレイは既にこの時点で非凡な才能を示していた。当時のラインナップは以下の通りである。

  • ジョス・フェルトハイゼン (Jos Veldhuizen): ヴォーカル
  • エイドリアン・ヴァンデンバーグ (Adrian VANDENBERG): ギター
  • グリフ・“スタッドリー”・マクグラス (Griff "Studly" McGrath): ベース
  • ビコ・デ・ゴイヤー (Bico De Gooijer): ドラムス

ティーザーはセルフタイトルのアルバム 『Teaser』をリリースし、オランダ国内で一定の評価を得たものの、エイドリアンが目指す国際的な成功には届かず、バンドは解散の道を辿ることとなる。この経験はエイドリアンにとって、単に優れたプレイヤーであるだけでは不十分であり、強力な楽曲と、それを表現できる卓越したメンバーが重要不可欠であることを痛感させる契機となった。

2.2 黄金のカルテットの結成

1981年、エイドリアンは世界進出を視野に入れた新しいバンドの構想を練り始めた。彼は自身の理想とするサウンドを具現化できるミュージシャンを探し求め、最終的に以下の3名を見出し、後に「クラシック・ラインナップ (Classic Lineup)」と呼ばれる不動の布陣を完成させた。

  1. ベルト・ヘーリンク (Bert Heerink): ヴォーカル
    彼の声は、ブルージーな深みと、ハードロックに必要な突き抜けるような高音域の両方を兼ね備えていた。バラードにおける情感豊かな表現力と、アップテンポなナンバーでの力強さは、バンドのサウンドに多様性をもたらした。
  2. ディック・ケンペル (Dick Kemper): ベース
    単なるリズム隊にとどまらず、楽曲のボトムを支えるメロディアスなベースラインを提供。また、彼はエンジニアリングの知識も持ち合わせており、バンドのデモ制作やサウンドプロダクションにおいても重要な役割を果たした。
  3. ヨス・ズーマー (Jos Zoomer): ドラムス
    エネルギッシュかつタイトなドラミングが特徴。エイドリアンの自由奔放なギタープレイを支える強固なリズムの要となった。

結成当初、バンドは依然として「ティーザー」の名で活動していたが、道のりは平坦ではなかった。ブッキング・エージェントを見つけることさえ難航し、ベースのディック・ケンペルが必要に迫られて自らブッキング業務を行い、小さなクラブやライブハウスでの演奏活動を続けた。彼らの運命が大きく変わったのは、一本のデモテープがポップ・ジャーナリストであったキース・バース (Kees Baars) の手に渡った時である。バンドの潜在能力を見抜いたバースはマネージメントを買って出て、彼のコネクションを通じてアトランティック・レコード (Atlantic Records) の重鎮、フィル・カーソン (Phil Carson) へのプレゼンテーションの機会を獲得した。

2.3 運命のショーケースと「ヴァンデンバーグ」の誕生

フィル・カーソンは、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin)、イエス(Yes)、AC/DCといった伝説的バンドを手掛けたことで知られるA&Rマンである。彼を説得するため、バンドはオランダのエンスヘデ劇場(Enschede Theater) を貸し切り、たった一人の観客のために全力のパフォーマンスを行った。この賭けは奏功し、カーソンはその場で彼らとの契約を決断した。これは、無名のオランダのバンドが世界最大のレコード会社の一つと契約を結ぶという、異例の快挙であった。

契約にあたり、バンド名の変更が求められた。「ティーザー」という名前はありふれており、インパクトに欠けると考えられたからである。様々な案が出される中、当時ロサンゼルス(Los Angeles)に住んでいた雑誌『アロハ (Aloha)』の編集者、チェード・ラマーズ(Tjeerd Lammers) が提案したのが、リーダーの姓でもある「ヴァンデンバーグ(VANDENBERG)」であった。ラマーズは、ロサンゼルス近郊にあるヴァンデンバーグ空軍基地(VANDENBERG Air Force Base) から飛び立つB-52爆撃機の轟音をイメージし、「これ以上ハードロックにふさわしい名前はない」と確信していたという。こうして、バンド「ヴァンデンバーグ」が正式に誕生した。

2.4 デビュー・アルバム 『VANDENBERG』 Con 「Burning Heart」の衝撃

1982年、バンドはイギリスのソル・スタジオ (Sol Studios) にてデビュー・アルバムのレコーディングを行った。このスタジオはレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジ (Jimmy Page) が所有しており、エイドリアンにとっては自身のアイドルの一人の本拠地で録音できるという夢のような環境であった。

完成したデビュー・アルバム『VANDENBERG』(邦題:『ヴァンデンバーグ』)は、1982年にリリースされると、そのクオリティの高さで世界中のロックファンを驚愕させた。特にシングルカットされた 「Burning Heart」 (邦題:『バーニング・ハート』) は、アコースティック・ギターの繊細なアルペジオから始まり、爆発的なサビへと展開するパワー・バラードの傑作として、全米ビルボード・ホット100 (Billboard Hot 100) で39位を記録するヒットとなった。

当時、ハードロックバンドがデビュー作で全米トップ40に入ることは極めて稀であり、この成功はVANDENBERGに大規模なツアーへの扉を開いた。アルバム自体も全米ビルボード200で65位を記録し、AllMusicなどの批評家からも 「80年代で最も過小評価されているデビュー・メタル・アルバムの一つ」と称賛された。

3. 第2部: 栄光のツアーと円熟 (1982年-1985年)

3.1 伝説のサポート・ツアー: MSG、オジー、KISS

デビュー直後の1982年後半、ヴァンデンバーグはマイケル・シェンカー・グループ(Michael Schenker Group / MSG) のUKツアー 「Assault Attack Tour」のスペシャル・ゲストに抜擢された。マイケル・シェンカーというギターの神様の前座を務めることは、エイドリアンにとって大きなプレッシャーであると同時に、自身のギタープレイを証明する絶好の機会でもあった。VANDENBERGのパフォーマンスは「グラスゴーからサウサンプトンに至るまで破壊の限りを尽くした」と形容されるほど熱狂的に迎えられ、新人バンドとは思えない実力を見せつけた。

続いて1983年から1984年にかけて、VANDENBERGはアメリカとヨーロッパでさらに大規模なスタジアム・ツアーに参加する。オジー・オズボーン (Ozzy Osbourne) とKISS (キッス) のサポート・アクトである。

オジー・オズボーンからの勧誘秘話

オジー・オズボーンのツアー中、興味深いエピソードが残されている。1983年のある日、ホテルのランチルームで、当時かなり酔っていたオジーがエイドリアンに近づき、「俺のバンドに入らないか?」と勧誘したのである。当時オジーのバンドには名手ジェイク・E・リー(Jake E. Lee) が在籍していたため、エイドリアンは驚きつつも、「私たちはあなたのサポートバンドですし、ジェイクは素晴らしいプレイヤーです」と丁重に断った。後日談として、オジーのバンドメンバー(ドン・エイリー等)が、「エイドリアンのプレイには亡きランディ・ローズ (Randy Rhoads) に通じるクラシカルな要素と欧州的な叙情性がある」とオジーに吹き込んでいたことが明らかになっている。この逸話は、エイドリアンのギタリストとしての評価が、当時すでにトップレベルにあったことを裏付けている。

また、KISSの「Lick It Up World Tour」(1983年-1984年)の欧州レグにおいても、ヴァンデンバーグはオープニング・アクトを務め、サンバーナーディーノ (San Bernardino) やソルトレイクシティ (Salt Lake City) といった都市で数千人の観客を前に演奏し、ファンベースを拡大していった。

3.2 2ndアルバム 『Heading for a Storm』 と日本での熱狂

1983年、バンドは2作目のスタジオ・アルバム『Heading for a Storm』(邦題:『誘惑の炎』) をリリースした。このアルバムのアートワークもエイドリアン自身が手掛けており、砂漠のハイウェイの上空をサメが泳ぐというシュルレアリスム的な絵画は、バンドの視覚的なアイデンティティを決定づけた。

音楽的には前作の延長線上にありつつも、より洗練されたアレンジと深みを増した楽曲群が並んだ。シングル「Different Worlds」(邦題: 『ディファレント・ワールド』)や、ライブでの定番曲となる 「Friday Night」(邦題: 『フライデイ・ナイト』)、「Waiting for the Night」(邦題:『ウェイティング・フォー・ザ・ナイト』) などが収録されている。本作はオランダのチャートで14位を記録し、母国での人気を不動のものとしたが、アメリカでは169位にとどまり、前作ほどの爆発的なセールスには至らなかった。

しかし、日本市場における反応は対照的だった。哀愁を帯びたメロディとエイドリアンの流麗なギタープレイは日本のハードロックファンの琴線に触れ、絶大な支持を集めた。1984年には初の単独来日公演 (Japan Tour)を実現させ、その熱狂的なパフォーマンスは後に映像作品『Live in Japan』(邦題: 『ライヴ・イン・ジャパン』) としてリリースされた。この映像は、当時のVANDENBERGがライブバンドとしていかに脂の乗った状態にあったかを記録した貴重な資料となっている。

4. 第3部: 『Alibi』、解散、そしてホワイトスネイクへ (1985年-1987年)

4.1 3rdアルバム 『Alibi』 と変化の予兆

1985年、バンドは3作目のアルバム『Alibi』(邦題: 『アリバイ』)をリリースした。本作はオランダのサウンドプッシュ・スタジオ (Soundpush Studios)で録音され、ゴールデン・イヤリング (Golden Earring) のマネージャーでもあったヤープ・エッヘロモント(Jaap Eggermont) がプロデュースを担当した。

『Alibi』は、よりプロダクションが整理され、当時のメインストリーム・ロックに近い煌びやかなサウンドを目指した意欲作であった。「Once in a Lifetime」(邦題:『ワンス・イン・ア・ライフタイム』) や 「How Long」(邦題: 『ハウ・ロング』) といった楽曲は高い完成度を誇っていたが、アメリカのチャートにはランクインせず、セールス的には苦戦を強いられた。この商業的な停滞は、バンド内部に不協和音を生じさせることとなる。

4.2 ヴォーカリストの脱退と解散の危機

アルバムリリース後まもなく、初代ヴォーカリストのベルト・ヘーリンクがバンドを脱退した。音楽的・個人的な意見の相違が原因とされている。エイドリアンはバンドを存続させるため、新たなシンガーとしてピーター・ストライク (Peter Struyk / Peter Stuyk) を迎え入れ、デモ音源の制作に着手した。しかし、アトランティック・レコードはこの新体制によるデモに難色を示し、次作へのサポートを拒否した。

レーベルからのサポートを失い、バンドの存続が危ぶまれる中、エイドリアンに運命的なオファーが舞い込む。ホワイトスネイク (Whitesnake) のデヴィッド・カヴァデール(David Coverdale) からの正式加入の要請である。

4.3 ホワイトスネイクへの加入とヴァンデンバーグの終焉

エイドリアンとカヴァデールの関係は、エイドリアンがホワイトスネイクのアルバム『1987』(邦題: 『サーペンス・アルバス』) 収録の再録版 「Here I Go Again」 にギターソロでゲスト参加したことに端を発する。カヴァデールはエイドリアンの作曲能力とギタープレイを高く評価しており、1987年、彼を正式メンバーとして迎え入れた。

自身のバンドの先行きの不透明さと、世界的なビッグバンドへの加入というチャンスを天秤にかけ、エイドリアンはホワイトスネイクへの加入を決断した。これにより、バンド「ヴァンデンバーグ」は事実上の解散 (活動停止)となった。残されたメンバーもそれぞれの道を歩み、ヨス・ズーマーとピーター・ストライクはアヴァロン (Avalon)へ、ディック・ケンペルはノー・エクスキューズ (No Exqze) を結成した。

5. 第4部: ホワイトスネイク時代と芸術家への回帰 (1987年-2013年)

5.1 ホワイトスネイクでの栄光と手首の怪我

ホワイトスネイクに加入したエイドリアンは、世界的なスタジアム・ツアーに参加し、その名声をさらに高めた。しかし、1989年のアルバム『Slip of the Tongue』(邦題:『スリップ・オブ・ザ・タング』)の制作において、彼は悲劇に見舞われる。過去の事故の後遺症とも言われる手首の負傷により、ギターを弾くことが困難になったのである。彼はアルバム全曲の作曲に携わっていた(カヴァデールとの共作)にもかかわらず、レコーディングでの演奏は代役として加入したスティーヴ・ヴァイ (Steve Vai) に委ねざるを得なかった。エイドリアンにとっては、自らの曲が他人の手によって、しかも全く異なるスタイルで演奏されるのを聴くという、複雑で苦しい時期であった。

しかし、怪我から回復した彼はバンドに復帰し、1997年のアルバム『Restless Heart』(邦題:『レストレス・ハート』)や、カヴァデールとのアコースティック・デュオによるライブ『Starkers in Tokyo』(邦題:『スターカーズ・イン・トーキョー』) で、円熟味を増したプレイを披露した。

5.2 マニック・エデンと画業への専念

ホワイトスネイクの活動休止中には、元リトル・シーザー (Little Caesar) のロン・ヤング(Ron Young)、そしてホワイトスネイクのリズム隊であるルディ・サーゾ (Rudy Sarzo)、トミー・アルドリッジ (Tommy Aldridge) と共に、マニック・エデン (Manic Eden) を結成。1994年にブルース色の強いハードロック・アルバム『Manic Eden』をリリースした。

1999年にホワイトスネイクを脱退した後は、音楽業界の第一線から退き、本来のもう一つの顔である「画家」としての活動に専念した。彼の繊細かつ幻想的なエアブラシ画は高く評価され、展覧会なども開催された。この間、音楽活動は散発的なゲスト参加にとどまっていたが、2004年にはヴァンデンバーグの再結成アルバム (ベスト盤+新録)のプロモーションのために一時的にオリジナル・メンバーが集結し、テレビ出演などを果たしている。

6. 第5部: 復活への序章と完全復活 (2014年-現在)

6.1 ヴァンデンバーグズ・ムーンキングス (VANDENBERG's MoonKings)

物理的な長い沈黙を破り、エイドリアンが本格的にロック・シーンに帰還したのは2013年のことである。彼は若手のオランダ人ミュージシャンを集め、ヴァンデンバーグズ・ムーンキングス(VANDENBERG's MoonKings) を結成した。

  • ヤン・ホーヴィング (Jan Hoving): ヴォーカル
  • セム・クリストフェル (Sem Christoffel): ベース
  • マルト・ニエン・エス (Mart Nijen Es): ドラムス

このプロジェクトは、70年代のヴィンテージ・ハードロックへの回帰をテーマとし、アルバム『MoonKings』(2014年)、『MKII』(2017年)、アコースティック盤『Rugged and Unplugged』 (2018年) をリリースした。エイドリアンは「若い才能とプレイすることで、自分自身も若返るような感覚だった」と語っている。

6.2 「VANDENBERG」の再始動: アルバム 『2020』

2020年、エイドリアンはついに自身の名を冠したバンド「ヴァンデンバーグ」を正式に復活させることを決意した。彼は、リッチー・ブラックモアズ・レインボー (Ritchie Blackmore's Rainbow) のヴォーカリストとして名を馳せたチリ出身のシンガー、ロニー・ロメロ (Ronnie Romero)を抜擢した。レコーディング・メンバーには、かつての盟友ルディ・サーゾ (ベース) とブライアン・ティッシー (ドラムス)を迎え、往年のハードロック・サウンドを現代的にアップデートしたアルバム 『2020』 をリリース。プロデューサーにはボブ・マーレット (Bob Marlette) を起用した。このアルバムには名曲 「Burning Heart」の2020年バージョンも収録され、オランダのチャートで2位を記録するなど、華々しい復活を遂げた。

ライブ活動においては、タンク (Tank) のベーシストであるランディ・ヴァン・デル・エルセン (Randy van der Elsen) と、エピカ (Epica) やドロ (Doro) での活動で知られるオランダのトップ・ドラマー、クーン・ヘルフスト (Koen Herfst) を正規メンバーとして迎えた。

6.3 新たな声、マッツ・レヴィンとアルバム 『SIN』

2021年秋、ロニー・ロメロがスケジュールの都合等で離脱し、新たなヴォーカリストとしてスウェーデンの実力派、マッツ・レヴィン (Mats Levén) が加入した。イングヴェイ・マルムスティーン、キャンドルマス (Candlemass)、トランス・サイベリアン・オーケストラ (Trans-Siberian Orchestra) などでの活動歴を持つ彼の加入は、バンドに新たな演劇性と重量感をもたらした。

この新体制(エイドリアン、マッツ、ランディ、クーン)で制作されたのが、2023年リリースの最新アルバム『SIN』 (邦題: 『シン』) である。先行シングル 「House on Fire」や「Thunder and Lightning」 で見せたアグレッシブかつメロディアスな楽曲は、現在進行形のハードロック・バンドであることを証明した。ジャケットには再び「サメ」が登場し、『Heading for a Storm』 へのオマージュを感じさせるデザインとなっている。

2025年には、エイドリアンのホワイトスネイク時代の楽曲に焦点を当てた特別ツアー「My Whitesnake Years」が行われており、彼の活動は70歳を超えてなお、精力的である。

7. ディスコグラフィ (Discography)

ここでは、ヴァンデンバーグ名義のスタジオ・アルバムを中心に、主要な作品を詳細に解説する。特に日本盤 (Japanese Edition) に関する情報は、コレクターやファンにとって重要な要素であるため、可能な限り詳述する。

7.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)

1. 『VANDENBERG』(邦題: 『ヴァンデンバーグ』)
  • リリース年: 1982年
  • レーベル: Atlantic / Atco
  • チャート最高位: オランダ 19位 / 全米65位
  • プロデューサー: エイドリアン・ヴァンデンバーグ&スチュアート・エップス
  • 録音: Sol Studios (UK)

【収録曲(英題/ 邦題カタカナ表記)】

  1. Your Love Is in Vain / ユア・ラヴ・イズ・イン・ヴェイン
  2. Back on My Feet / バック・オン・マイ・フィート
  3. Wait / ウェイト
  4. Burning Heart / バーニング・ハート

    バンド最大のヒット曲。哀愁漂うアコースティックな導入部からドラマティックに展開する構成は、80年代パワー・バラードの金字塔。

  5. Ready for You / レディ・フォー・ユー
  6. Too Late / トゥー・レイト
  7. Nothing to Lose / ナッシング・トゥ・ルーズ
  8. Lost in a City / ロスト・イン・ア・シティ
  9. Out in the Streets / アウト・イン・ザ・ストリーツ

【日本盤特記事項】

  • 当時の日本盤LP(規格番号: P-11260) や初期CD (18P2-2767等)には、歌詞カードや解説書に加え、特製の帯 (Obi) が付属しており、中古市場では高値で取引されている。
2. 『Heading for a Storm』(邦題:『誘惑の炎』)
  • リリース年: 1983年
  • レーベル: Atlantic / Atco
  • チャート最高位: オランダ 14位 / 全米169位
  • アートワーク: エイドリアン・ヴァンデンバーグ作 (砂漠のハイウェイとサメ)

【収録曲(英題/ 邦題カタカナ表記)】

  1. Friday Night / フライデイ・ナイト
  2. Welcome to the Club / ウェルカム・トゥ・ザ・クラブ
  3. Time Will Tell / タイム・ウィル・テル
  4. Different Worlds / ディファレント・ワールド

    「Burning Heart」 に続くバラードの名曲。

  5. This Is War / 闘いの日々 (ディス・イズ・ウォー)

    邦題が直訳ではなく意訳されている点に注目。

  6. I'm on Fire / ファイア (アイム・オン・ファイア)
  7. Heading for a Storm / 誘惑の炎 (ヘディング・フォー・ア・ストーム)

    アルバムタイトル曲だが、邦題はアルバム全体と同じく『誘惑の炎』とされた。

  8. Rock On / ロック・オン
  9. Waiting for the Night / ウェイティング・フォー・ザ・ナイト

【日本盤特記事項】

  • 邦題『誘惑の炎』は日本独自の命名であり、原題の直訳 「嵐に向かって」とは異なるニュアンスを持つ。これは当時の日本のレコード会社が、より情緒的でファンの購買意欲をそそるタイトルを付けた結果である。
  • 日本盤LP (P-11441) およびリマスターCD (WPCR-14249等) が存在する。
3. 『Alibi』(邦題: 『アリバイ』)
  • リリース年: 1985年
  • レーベル: Atlantic / Atco
  • チャート最高位: オランダ 18位
  • プロデューサー: ヤープ・エッヘロモント

【収録曲(英題/ 邦題カタカナ表記)】

  1. All the Way / オール・ザ・ウェイ
  2. Pedal to the Metal / ペダル・トゥ・ザ・メタル
  3. Once in a Lifetime / ワンス・イン・ア・ライフタイム
  4. Voodoo / ヴードゥー
  5. Dressed to Kill / ドレスト・トゥ・キル
  6. Fighting Against the World / ファイティング・アゲインスト・ザ・ワールド
  7. How Long / ハウ・ロング
  8. Prelude Mortale / プレリュード・モルターレ

    短尺のインストゥルメンタル・イントロダクション。

  9. Alibi / アリバイ
  10. Kamikaze / カミカゼ

    文字通り「神風」をテーマにした楽曲で、日本市場を意識したとも取れるタイトル。

【日本盤特記事項】

  • 2008年にワーナーミュージック・ジャパンからリリースされた紙ジャケット仕様(WPCR-13209)は、オリジナルのLP帯を忠実に再現した限定盤として知られる。
4. 『2020』(邦題:『2020』)
  • リリース年: 2020年
  • レーベル: Mascot / Ward Records(日本)
  • チャート最高位: オランダ 2位
  • メンバー: Adrian VANDENBERG (G), Ronnie Romero (V), Rudy Sarzo (B), Brian Tichy (D)

【収録曲(英題/ 邦題カタカナ表記)】

  1. Shadows of the Night / シャドウズ・オブ・ザ・ナイト
  2. Freight Train / フレイト・トレイン
  3. Hell and High Water / ヘル・アンド・ハイ・ウォーター
  4. Let It Rain / レット・イット・レイン
  5. Ride Like the Wind / ライド・ライク・ザ・ウィンド
  6. Shout / シャウト
  7. Shitstorm / シットストーム
  8. Light Up the Sky / ライト・アップ・ザ・スカイ
  9. Burning Heart 2020 / バーニング・ハート 2020

    ロニー・ロメロのヴォーカルによる再録音バージョン。

  10. Skyfall / スカイフォール
5. 『SIN』(邦題:『シン』)
  • リリース年: 2023年
  • レーベル: Mascot / Ward Records(日本)
  • チャート最高位: オランダ 3位
  • メンバー: Adrian VANDENBERG (G), Mats Levén (V), Randy van der Elsen (B), Koen Herfst (D)

【収録曲(英題/ 邦題カタカナ表記)】

  1. Thunder and Lightning / サンダー・アンド・ライトニング
  2. House on Fire / ハウス・オン・ファイア
  3. Sin / シン
  4. Light It Up / ライト・イット・アップ
  5. Walking on Water / ウォーキング・オン・ウォーター
  6. Burning Skies / バーニング・スカイズ
  7. Hit the Ground Running / ヒット・ザ・グラウンド・ランニング
  8. Baby You've Changed / ベイビー・ユーヴ・チェンジド
  9. Out of the Shadows / アウト・オブ・ザ・シャドウ

【日本盤特記事項】

  • 日本盤(ワードレコーズ)には、解説書や歌詞対訳が含まれ、独自の帯が付属する。また、曲順の変更やボーナス要素が含まれる場合がある (リサーチ結果では「Out of the Shadows」の配置やデモ音源の有無で版による違いが見られる)。

7.2 その他の主要作品

  • 『The Best of VANDENBERG』(邦題: 『ベスト・オブ・ヴァンデンバーグ』) (1988)
    初期3作からのベスト盤。
  • 『The Definitive VANDENBERG』(邦題:『ザ・デフィニティブ・ヴァンデンバーグ』) (2004)
    再結成時にリリースされたコンピレーション。新録「Burning Heart」 やデモ音源を収録。日本盤にはDVDが付属するバージョンもある。
  • 『Live in Japan』(邦題: 『ライヴ・イン・ジャパン』) (DVD/CD)
    1984年の来日公演を収録。全盛期のパフォーマンスを確認できる貴重な記録。

8. メンバー詳細プロフィール (Personnel)

バンドの歴史を彩った主要メンバーについて、役割と日本語表記、英語表記を整理する。

現在のメンバー (Current Members)

エイドリアン・ヴァンデンバーグ (Adrian VANDENBERG) - Guitar

  • 英語表記: Adrian VANDENBERG (Born: Adriaan van den Berg)
  • 別名: アドジェ (Adje)
  • 在籍期間: 1981-1987, 2020-現在
  • 概要: バンドの創設者であり絶対的なリーダー。ホワイトスネイクでの活動や、画家としての顔も持つ。彼のギタープレイは、マイケル・シェンカーやジミ・ヘンドリックスの影響を感じさせつつも、クラシック音楽の要素を取り入れた独自のフレージングが特徴。

マッツ・レヴィン (Mats Levén) - Vocals

  • 英語表記: Mats Levén
  • 在籍期間: 2021-現在
  • 概要: スウェーデン出身の実力派シンガー。イングヴェイ・マルムスティーン 『Facing the Animal』での歌唱や、キャンドルマスでの活動で知られる。その声域の広さと表現力は、エイドリアンが求める「クラシック・ロックの品格」と「ヘヴィ・メタルのパワー」を体現している。

クーン・ヘルフスト (Koen Herfst) - Drums

  • 英語表記: Koen Herfst
  • 在籍期間: 2020-現在
  • 概要: オランダのトップ・ドラマーの一人。エピカ (Epica) やドロ (Doro)のサポートを務めるなど、メタル界での信頼は厚い。ベネルクス (Benelux) 地域のベスト・ハードロック・ドラマーに複数回選出されている実力者。

ランディ・ヴァン・デル・エルセン (Randy van der Elsen) - Bass

  • 英語表記: Randy van der Elsen
  • 在籍期間: 2020-現在
  • 概要: NWOBHM (New Wave of British Heavy Metal) の伝説的バンド、タンク(Tank) のメンバーとしても活動。堅実かつドライビングなベースプレイでバンドのボトムを支える。

過去の主要メンバー (Past Members)

ベルト・ヘーリンク (Bert Heerink) - Vocals

  • 英語表記: Bert Heerink
  • カナ表記バリエーション: バート・ヒーリンク
  • 在籍期間: 1981-1986
  • 概要: 初期3作の声を担当したオリジナル・シンガー。彼のハイトーン・ヴォーカルはヴァンデンバーグ・サウンドの象徴であった。脱退後はピクチャー (Picture) やカヤック (Kayak) などで活動。

ディック・ケンペル (Dick Kemper) - Bass

  • 英語表記: Dick Kemper
  • 在籍期間: 1981-1987
  • 概要: オリジナル・ベーシスト。解散後は自身のバンド、ノー・エクスキューズを結成。エンジニアとしても活躍。

ヨス・ズーマー (Jos Zoomer) - Drums

  • 英語表記: Jos Zoomer
  • 在籍期間: 1981-1987
  • 概要: オリジナル・ドラマー。パワフルなドラミングで初期のサウンドを支えた。

ロニー・ロメロ (Ronnie Romero) - Vocals

  • 英語表記: Ronnie Romero
  • 在籍期間: 2020-2021
  • 概要: 復活作『2020』でのヴォーカル。リッチー・ブラックモアやマイケル・シェンカーに認められた現代屈指のロック・シンガー。

9. Conclusion

ヴァンデンバーグというバンドの歴史は、エイドリアン・ヴァンデンバーグという一人のアーティストの探求の旅そのものである。1980年代初頭の華々しい成功、商業主義との軋轢による解散、ホワイトスネイクでの世界的な成功と怪我による挫折、 Hendrickそして画家としての静穏な日々を経て、彼は再びロックの最前線へと戻ってきた。

2020年代の「復活ヴァンデンバーグ」が単なるノスタルジーに終わらないのは、エイドリアンが過去の遺産 (レガシー) を大切にしつつも、マッツ・レヴィンやクーン・ヘルフストといった現代の才能を取り入れ、サウンドをアップデートし続けているからに他ならない。アルバム『SIN』で見せた活力は、VANDENBERGが依然として「現役」のトップランナーであることを証明している。

日本のファンにとって、ヴァンデンバーグは特別な存在であり続けている。「誘惑の炎」という邦題に象徴されるように、VANDENBERGの音楽が持つ叙情性は日本人の感性と深く共鳴してきた。ホワイトスネイク時代の楽曲をフィーチャーしたツアーも含め、エイドリアンの活動は今後も我々を魅了し続けるであろう。彼が描くサメが再び大海原を泳ぎ出した今、ヴァンデンバーグの物語は新たな章を迎えている。

News

ADRIAN VANDENBERG、細菌感染により8月の全米ツアーをキャンセル

8月3日マサチューセッツ州ニューベッドフォード公演から始まる予定だった“My Whitesnake Years”ツアーが中止に。

出典: Blabbermouth(2026年7月31日)

ニュース一覧 →

Albums

Sin CD
/

アドリアン・ヴァンデンバーグの叙情的なギターが主導する、硬派なハード・ロック。

2020 CD
/

エイドリアン・ヴァンデンバーグがロニー・ロメロと復活させた、35年ぶりのスタジオ新作。

Alibi CD
/

緻密なギターと哀感あるメロディで、VANDENBERGが欧州メロディック・ハードの陰影を深めた第3作。

Heading for a Storm CD
/

叙情的なギターと力強い歌を軸に、VANDENBERGが正統派ハード・ロックを磨き上げた第二作。

Vandenberg CD
/

流麗なギターと歌心あるハード・ロックを備え、VANDENBERGが鮮やかにデビューした第一作。