TREAT TRIVIA
Trivia
2017年の東京公演は、1990年の初来日から数えて27年ぶりの単独公演だった。BARKSのレポートによると、本編の終盤に置かれた「Get You on the Run」は、前回の来日やライブDVDで使ってきたものとは違う『Organized Crime』収録版のイントロで始まっている。日本のファンはそちらのほうが喜ぶのではないかとメンバーが判断して決めたもので、実際の反応は前回よりさらに良かった、というのがメンバーの受け止めである。サビの合唱にはステージ上の5人が驚いた表情を見せた。
2025年11月21日にフロンティアーズ・ミュージックから出た『The Wild Card』は、TREATにとって10作目のスタジオ・アルバムで、2006年の再結成後では5作目にあたる。アンダース・ヴィクストロムによれば、これはバンドのキャリア全体を音楽的な時系列として書くつもりで取りかかったアルバムで、各曲が音楽的にも歌詞の面でもその意図を担っている。物語としての時系列を——控えめではあるが確かに——埋め込んだのはTREATでこれが初めてで、1980年代初頭から現在までをたどる作りになっている。前作『The Endgame』の時点ですでに頭にあった構想を、ここで完成させたのだという。
『The Wild Card』の3曲目に置かれた「1985」について、バンドは「時系列は続いていて、この曲では1985年にバンドとして経験したことを捉えたかった」と述べている。あの年が自分たちのすべてを変えた年であり、曲の空気がその一部始終を語っている、という説明である。1985年はTREATが1stアルバム『Scratch and Bite』でデビューした年にあたる。先行して公開されたシングルは「Adam & Evil」で、「1985」はそれに続いてミュージック・ビデオとともに発表された。
TREATは1985年にデビューし、1990年の初来日公演までに4枚のアルバムを重ねている。BARKSが2017年に来歴をまとめた記事によれば、その初来日のあとバンドは音楽性を当時の主流だったグランジ寄りへ振り、それまでの路線とは違う作品が従来のファンの支持を失う結果になった。最初の解散が発表されたのは、そこからほどなくのことである。
2006年に再結成したTREATは、2010年に18年ぶりのアルバム『Coup de Grace』を出して評価を取り戻したが、2013年にふたたび解散を発表している。2015年には最後のツアーとしてEUROPE、CRASHDÏETと並ぶ北欧3バンドでの来日公演を行い、そのあとで解散の表明を撤回した。アンダース・ヴィクストロムは2017年のBARKSの取材で、当時バンドは岐路にあり、結成30年の節目でライブは行ったものの新作を作る予定がなかったことが解散を告げた理由のひとつだったと語っている。アルバムを作らずにキャリアを続ける選択肢は自分たちにはなく、懐メロだけを演奏するノスタルジーのバンドにはならない、というのが彼の言い分である。
アルバム『Tunguska』の題名は、1908年にシベリア上空で起きた大爆発の名から採られている。ただしアンダース・ヴィクストロムは2018年のBARKSの取材で、史実そのものを扱ったわけではなく、ビッグバンのような巨大なエネルギーの放出の比喩として選んだのだと説明した。響きがいかにもロックで、映画の題名にもなりそうな語感に惹かれたという。ポンタス・エグベリは科学者にも解けなかった未解決の出来事だと言い添え、ロバート・アーンルンドは含みを歌詞の各所に散りばめてあると話している。
アンダース・ヴィクストロムは2018年のBARKSの取材で、再結成後に出した『Coup de Grace』『Ghost of Graceland』『Tunguska』の3枚でひとつのコンセプトが完成したと語っている。発想の元は彼自身の聴き方だった。レッド・ツェッペリンやディープ・パープル、AC/DCを好きになったときはアルバム1枚ではなくカタログを丸ごと聴いてきたから、TREATも3枚まとめて受け取ってほしかったのだという。『Tunguska』単体をコンセプト・アルバムだと受け取った人が多かったことにも触れ、ひとつの物語にはできないがこの3枚でひとつになったのは間違いない、と述べている。
アンダース・ヴィクストロムは2024年のBARKSの取材で、曲作りの土台はバンドを始める前の仕事にあると答えている。プロのポップ・ソングライター/プロデューサーとして15年以上働いて多くを学んだといい、今も依頼があれば他のアーティストのために曲を書く。日々の生活からインスピレーションを得ていると言いたいところだが実際はそちらだ、という言い方をしたうえで、良いレコードを作ることに大きな誇りを持っていて、それがTREATが今も一目置かれている理由だと思う、と続けている。
2018年10月の来日は、TREATにとって過去最速となる1年での再来日だった。前年に27年ぶりの単独公演を行ったばかりで、ポンタス・エグベリは前回が楽しかったから早く戻ってきたかったと述べ、ジェイミー・ボーガーは「次は半年後かも」と冗談を返している。10月4日の渋谷CLUB QUATTRO公演は「Skies of Mongolia」で幕を開け、アンコールの「World of Promises」で終わっている。アンダース・ヴィクストロムは、アルバム発売の翌日にドイツのフェスへ出た以外は本格的なツアーが日本から始まるため、前回とはかなり違うセットにしたと説明していた。
TREATが生まれたのはスウェーデンの首都ストックホルムで、時期は1980年代初頭にあたる。2025年のアルバム『The Wild Card』にフロンティアーズ・ミュージックが添えた資料は、メロディック・ハードロックとAORを結び合わせた音楽性で早くから頭角を現したバンドとして紹介し、EUROPEやPRETTY MAIDSといった同時代の北欧勢と並ぶ位置にいたと記している。
2025年の『The Wild Card』は、ピーター・モンソンがプロデュースとミックスの両方を担当している。アンダース・ヴィクストロムはレーベル資料のなかで、このアルバムは自分たちとファンのために作ったもので、モンソンと一緒にやることで自分たちの仕事がさらに良くなった、と述べている。制作チームを固定する姿勢は以前からのもので、2018年のBARKSの取材でもヴィクストロムは、プロデューサーからアートワーク、ビデオのスタッフに至るまで顔ぶれを変えていないと説明し、プロダクションを褒められることが多いのは今のチームが良いからだろうと話していた。
2016年の『Ghost of Graceland』からベースを弾いたポンタス・エグベリは、THE POODLESやKING DIAMONDでの活動で知られる。2017年のBARKSの取材で本人は、2010年にTHE POODLESとTREATがヨーロッパを一緒に回った縁があり、『Ghost of Graceland』を作るにあたってアンダース・ヴィクストロムから「ベースを弾いてみないか」と連絡が来て、その機会に飛びついたと話している。同じ席でロバート・アーンルンドは、メンバー交代がベーシストに集中しているのは「このバンドの謎」だと笑い、ヴィクストロムはこれで最後にしたいと応じている。
2024年6月にスウェーデン・ロック・フェスティバルへ戻ってきたTREATは、ベースがポンタス・エグベリからナリー・ポールソンに替わっていた。BARKSは2018年の来日公演以降にエグベリが脱退し、ポールソンが復帰したかたちだと伝えている。翌2025年の『The Wild Card』でレーベルが現在の編成として挙げるのも、ロバート・アーンルンド(ヴォーカル)、アンダース・ヴィクストロム(ギター)、パトリック・アッペルグレン(キーボード)、ジェイミー・ボーガー(ドラムス)、ナリー・ポールソン(ベース)の5人である。
『Tunguska』の制作に取りかかった2017年、TREATにはヨーロッパ・ツアーの予定が入っていた。アンダース・ヴィクストロムは2018年のBARKSの取材で、そのツアーをあえて延期して制作に専念したと明かし、その判断が非常に良かったと述べている。前作『Ghost of Graceland』から2年というペースでアルバムを出せたのも、ライブが充実しているのも、その選択の結果だという。
2023年5月2日、客船マリナー・オブ・ザ・シーズを舞台に開かれた<Monsters of Rock Cruise 2023>に、TREATはアンダース・ヴィクストロム不在のまま出演した。ギターには同じフェスに出ていたECLIPSEのマグナスが加わり、ベースには元メンバーのポンタス・エグベリが再び立っている。翌日に予定されていた2度目のステージは屋外プール・ステージが雨で中止となり、その日がフェス最終日だったため振り替えもできず、この航海でのTREATの演奏は1回きりになった。会場では、ヴァンデンバーグで出演していた元シンガーのマッツ・レヴィンとメンバーが歓談する姿も見られたという。
2024年6月7日のスウェーデン・ロック・フェスティバル出演は、2006年の再結成以来5度目で、2017年以来7年ぶりだった。アンダース・ヴィクストロムは、北欧最大のロック・フェスティバルであること、これまでの出演には素晴らしい思い出しかないことを挙げている。この日のステージは代表曲の並びに『THE ENDGAME』からの2曲を挟む構成で、バックドロップにはその曲の時代のバンドの姿が映し出された。昼間の出番にもかかわらずパイロが惜しみなく使われたのも、このフェスならではだったという。
2017年の来日公演では、中盤に3作目『Dreamhunter』の30周年を記念したメドレーが披露された。MCでは「今回のセットリストは日本のための特別なものだ」と告げられている。アンダース・ヴィクストロムは同じ年の夏のスウェーデン・ロック・フェスティバルでも『Dreamhunter』30周年の内容にする予定であること、ジャケット違いのアナログ盤で再発することを取材のなかで明かしていた。