TOKYO MOTOR FIST

TOKYO MOTOR FISTの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。

Biography

東京モーターフィスト (TOKYO MOTOR FIST)
バイオグラフィ、ディスコグラフィ、音楽的影響

1. メロディック・ロックの復興とスーパーグループの再定義

21世紀におけるメロディック・ロック (Melodic Rock) およびAOR (Adult Oriented Rock) のシーンにおいて、TOKYO MOTOR FIST (トウキョウ・モーター・フィスト)の登場は、プロジェクトの枠を超えた重要な事象として記録されている。2016年頃に結成され、2017年にデビューを果たしたこのバンドは、一般的に「スーパーグループ (Supergroup)」と形容される。この用語はロックジャーナリズムにおいて頻繁に、と時に安易に使用される傾向があるが、TOKYO MOTOR FISTのラインナップに関しては、その呼称が持つ重みと歴史的文脈が正当に機能している稀有な例であると言える。

本バンドの中核を成すのは、Danger Danger (デンジャー・デンジャー) の象徴的なヴォーカリストである Ted Poley (テッド・ポーリー)と、Trixter (トリックスター)のギタリスト兼プロデューサーである Steve Brown (スティーヴ・ブラウン) という、ニュージャージー州(New Jersey) のロックシーンを牽引してきた二人の巨頭である。さらに、彼らを支えるリズムセクションには、Ted Nugent (テッド・ニュージェント)、Rainbow (レインボー)、Alice Cooper (アリス・クーパー) 等での活動で知られるベーシスト Greg Smith (グレッグ・スミス)と、同じくRainbow、Blue Öyster Cult (ブルー・オイスター・カルト)のドラマーであり、長年にわたり Billy Joel (ビリー・ジョエル) のバンドを支える Chuck Burgi (チャック・バーギ) が名を連ねている。

2. 結成の背景と歴史的文脈

2.1 フロンティアーズ・ミュージック (Frontiers Music Srl) の戦略的役割

TOKYO MOTOR FISTの結成は、イタリアのレコードレーベルである Frontiers Music Srl (フロンティアーズ・ミュージック) の戦略的ヴィジョンと深く結びついている。同レーベルの社長である Serafino Perugino (セラフィノ・ペルジーノ)は、クラシック・ロックのアーティスト同士を組み合わせ、新たな化学反応を生み出すプロジェクトを数多く手掛けてきたことで知られる。

2016年当時、Ted PoleyとSteve Brownはそれぞれの母体バンド (Danger Danger及びTrixter)での活動を行っていたが、両バンドとも散発的な活動状況にあった。Steve Brownは、Trixterがよりアーシーでブルージーな方向へ進化していたのに対し、自身のルーツである「Def Leppard (デフ・レパード) と Bon Jovi (ボン・ジョヴィ) が融合したような」キャッチーでエネルギッシュなメロディック・ロックを表現する新たなアウトレットを模索していた。Frontiers Music Srlはこのニーズを敏感に察知し、長年の友人関係にあったPoleyとBrownのコラボレーションを提案したのである。

2.2 ニュージャージー・コネクションと 「本物」のバンドへの昇華

多くのレーベル主導型プロジェクトが、メンバー間の有機的なつながりの欠如により短命に終わる中、TOKYO MOTOR FISTは New Jersey (ニュージャージー) という地域的・文化的背景を共有するメンバーによって構成されている点が特筆される。Steve BrownとTed Poleyは30年以上にわたり友人関係にあり、同じクラブサーキットで演奏し、互いのキャリアの浮き沈みを目撃してきた間柄であった。

Steve Brownはインタビューにおいて、このプロジェクトが決して「金稼ぎのためのフェイク (fake cash grab)」 や 「一度きりのスタジオプロジェクト」ではなく、「正真正銘のロックグループ (genuine rock group)」であることを強調している。この主張を裏付けるのが、リズム隊の選定である。単なるスタジオミュージシャンではなく、Greg Smith と Chuck Burgi という、ロック史に名を刻む 「ワールドクラスのリズム・パワーハウス (world-class rhythm powerhouse)」を正式メンバーとして迎え入れたことで、バンドのサウンドはアリーナ級のスケール感を獲得することとなった。特に、Greg SmithとChuck Burgiは共に Rainbow (レインボー) の系譜に連なるミュージシャンであり、その人脈の厚さがバンドの格を一段押し上げている。

2.3 バンド名 「TOKYO MOTOR FIST」の由来と意味

TOKYO MOTOR FIST (トウキョウ・モーター・フィスト) という独特かつインパクトのあるバンド名は、聴衆や批評家の間でしばしば議論の的となってきた。その由来について明確な公式見解は少ないものの、Steve Brownはインタビューでこの名前について「間違いなく祝祭的なバンド (definitely a celebration band)」を象徴するものだと述べている。一部の批評家はこの名前について 「映画『ワイルド・スピード X3 TOKYO DRIFT (The Fast and the Furious: Tokyo Drift)』 の格闘シーン」や、重厚な機械 (Motor) と力強さ (Fist) のイメージを想起させると分析しているが、正確な意味については「見当がつかない」と正直に吐露するレビュアーも存在する。しかし、この名称が持つ「エネルギッシュで、少し攻撃的だが、どこかコミカルで記憶に残る」という響きは、TOKYO MOTOR FISTが体現する80年代的で享楽的なロックの美学と見事に合致していると言える。

3. メンバー・バイオグラフィ詳細

TOKYO MOTOR FISTの音楽的深みは、各メンバーが過去数十年にわたり築き上げてきた膨大なキャリアの蓄積によって支えられている。以下に各メンバーの詳細な経歴を記す。

3.1 Ted Poley (テッド・ポーリー) - Vocals

Ted Poley (テッド・ポーリー)、本名 Theodore Harris Poley は、1959年1月5日(一部資料では1964年説もあるが、多くは1959年生まれとする) に Englewood, New Jersey (ニュージャージー州イングルウッド)で生まれた。彼は、そのハイトーンで少年のような輝きを持つ歌声により、メロディック・ロック界のアイコンとして君臨している。

  • 初期キャリアとProphet: Poleyの音楽キャリアは、ヴォーカリストとしてではなく、ドラマーとして始まった。彼はプログレッシブ・ロックバンド Prophet (プロフェット)のドラマーとして活動し、1985年にデビューアルバムをリリースしている。このドラマーとしての経験が、彼のリズムに対する鋭い感覚の基礎となっている。
  • Danger Dangerでの成功: 1987年、Bruno Ravel (ブルーノ・ラヴェル) と Steve West (スティーヴ・ウェスト) からのアプローチを受け、Danger Danger (デンジャー・デンジャー) のリード・ヴォーカリストとして加入。1989年のデビューアルバム『Danger Danger』は、「Naughty Naughty」や「Bang Bang」 といったヒット曲を生み出し、Poleyは一躍MTV世代のスターとなった。1993年、アルバム 『Cockroach』のレコーディング終了後にバンドを解雇されるという不運に見舞われたが(同アルバムは長年お蔵入りとなった)、2004年にバンドに復帰し、ファンを歓喜させた。
  • Sonic the Hedgehog (ソニック・ザ・ヘッジホッグ) との関わり: Poleyはロックファン以外の層、特にゲーマー層からも絶大な支持を得ている。彼はセガの人気ゲームシリーズ『Sonic the Hedgehog (ソニック・ザ・ヘッジホッグ)』の楽曲でヴォーカルを担当しており、『Sonic Adventure』の「Lazy Days (Livin' in Paradise)」、『Sonic Heroes』の「We Can」などが有名である。
  • その他の活動: Bone Machine (ボーン・マシーン)、Melodica (メロディカ)、Pleasure Dome (プレジャー・ドーム) といったプロジェクトへの参加や、ソロアルバム『Beyond the Fade』 等のリリースも精力的に行っている。また、彼は宝石商としての顔も持ち、動物愛護活動 (No Kill Animal Shelters) にも熱心に取り組んでいる。

3.2 Steve Brown (スティーヴ・ブラウン) - Guitar, Vocals, Keyboards, Production

Steve Brown (スティーヴ・ブラウン)は、ニュージャージー州で生まれ育ち、9歳でギターを手にして以来、独学でその技術を磨き上げた。彼はTOKYO MOTOR FISTの音楽的支柱であり、主要なソングライター兼プロデューサーである。

  • Trixterの結成と成功: わずか12歳で Trixter (トリックスター)を結成。1989年にMCA Recordsと契約し、1990年のデビューアルバム 『Trixter』はゴールドディスクを獲得した。「Give It to Me Good」や「One in a Million」 といった楽曲は、Van Halen (ヴァン・ヘイレン) 直系のハードロックサウンドと極上のポップメロディを融合させたものであった。
  • Def Leppardとの関係: Brownのキャリアにおいて特筆すべきは、伝説的バンド Def Leppard(デフ・レパード) との深い関わりである。彼は、ギタリストの Vivian Campbell (ヴィヴィアン・キャンベル) が癌治療を行っていた際や、Phil Collen (フィル・コリン) が家庭の事情で離脱した際に、代役ギタリストとして数多くのショーに出演した。この経験により、彼はDef Leppardのプロデューサーである Mutt Lange (マット・ランジ) の構築した緻密なプロダクション手法(重層的なコーラスワークや磨き上げられたギターサウンド)を深く内面化し、それをTOKYO MOTOR FISTのサウンドメイクに反映させている。
  • 多才な活動: 彼は1980年代トリビュートショー Rubix Kube (ルービックス・キューブ)のメンバーとしても活動しており、これを「本当の本業 (real day job)」と呼ぶほど精力を注いでいる。また、Eddie Van Halen (エディ・ヴァン・ヘイレン) とは2020年にエディが亡くなるまで親交があり、EVHブランドの機材を愛用している。

3.3 Greg Smith (グレッグ・スミス) - Bass, Vocals

Greg Smith (グレッグ・スミス)は、業界で最も信頼されるベーシストの一人であり、その重厚なベースプレイに加え、リードヴォーカルもこなせるほどの高い歌唱力を持つバッキングヴォーカルが評価されている。

  • キャリアの初期とAlice Cooper: 彼の最初の大きなブレイクは、Plasmatics(プラズマティックス)のWendy O. Williams (ウェンディ・O・ウィリアムズ) のアルバム『WOW』 (Gene Simmons プロデュース) への参加であった。その後、1991年に Alice Cooper (アリス・クーパー) バンドに加入し、映画『ウェインズ・ワールド (Wayne's World)』の劇中演奏シーン (曲: 「Feed My Frankenstein」)にも出演している。
  • Rainbowと歴代の共演者: 1990年代半ばには、再結成された Ritchie Blackmore's Rainbow (リッチー・ブラックモアズ・レインボー)に参加し、アルバム『Stranger in Us All』(1995年)で演奏した。このRainbow人脈は、ドラマーのChuck Burgiとの共通点でもある。
  • Ted NugentとBilly Joel: 2007年から2022年まで、Ted Nugent (テッド・ニュージェント) バンドのベーシストとして長く活動した。また、Billy Joel (ビリー・ジョエル)のブロードウェイ・ミュージカル 『Movin' Out』 のバンドに参加し、2012年のチャリティコンサート 「12-12-12」ではBilly Joelのバックを務めるなど、ポップス界の頂点での活動歴も持つ。2023年には The Guess Who (ザ・ゲス・フー)に加入したが、バンド内の法的紛争により2024年に活動が終了している。

3.4 Chuck Burgi (チャック・バーギ) - Drums

Chuck Burgi (チャック・バーギ) (1952年8月15日、ニュージャージー州モントクレア生まれ)は、ハードロックからポップスまでを自在に叩き分ける熟練のドラマーである。

  • RainbowとBlue Öyster Cult: Burgiは1983年のアルバム 『Bent Out of Shape』期に Rainbow (レインボー) に在籍しており、ヒット曲「Street of Dreams」のミュージックビデオにも出演している。また、Blue Öyster Cult (ブルー・オイスター・カルト) にも複数回在籍し、『Cult Classic』や『Heaven Forbid』 といったアルバムに参加した。
  • Billy Joelの不動のドラマー: 2005年以降、彼は Billy Joel (ビリー・ジョエル) バンドの正規ドラマーとして活動しており、Madison Square Garden (マディソン・スクエア・ガーデン) での記録的な連続公演や、歴史的なシェア・スタジアム (Shea Stadium)公演『The Last Play at Shea』でドラムを叩いている。彼がTOKYO MOTOR FISTに参加することは、世界最高峰のスタジアム級ドラマーがインディペンデントなメロディック・ロック・バンドで演奏するという意味で、非常に贅沢な配置である。

4. 音楽的スタイルとサウンド・プロダクション

TOKYO MOTOR FISTの音楽性は、1980年代のメロディック・ハードロックへの深い敬愛と、現代的な音響技術の融合によって成立している。Steve Brownは「車輪の再発明(reinvent the wheel)」をするつもりはないと語り、自身が得意とするスタイルを極めることに注力している。

4.1 「Feel Good」 フィロソフィー

バンドの哲学は一貫してポジティブである。Steve Brownは彼らの作品を「世界が今必要としているポジティブでフィール・グッドなレコード (positive & feel good record)」と表現している。歌詞の世界観は、失恋からの立ち直り ("Pickin' Up The Pieces")、若さへの賛歌("Youngblood")、夢を追いかける情熱といった普遍的なテーマを扱っており、グランジ以降のシニカルな視点とは対照的である。これは聴き手に80年代的な「楽しさ」や「希望」を提供する。

4.2 サウンドの構成要素

  • 重厚なコーラスワーク: Ted Poleyのリードヴォーカルに加え、Steve BrownとGreg Smithも優れたシンガーであるため、Def LeppardやBon Joviを彷彿とさせる分厚い「ギャング・ヴォーカル (gang vocal)」 スタイルのコーラスが多用される。
  • ギターサウンド: Brownは EVH (エディ・ヴァン・ヘイレン) ブランドの機材を使用し、倍音豊かで温かみのある、いわゆる「ブラウン・サウンド (Brown Sound)」を現代的に再現している。
  • プロダクション・チーム: プロデュースはSteve Brown自身が手掛けるが、ミキシングにはDanger Dangerのベーシストであり、自身のバンド The Defiants (ザ・デファイアンツ) でも知られる Bruno Ravel (ブルーノ・ラヴェル) を起用している。マスタリングは、Faith No MoreやDokkenを手掛けた Maor Appelbaum (マオール・アップルバウム)が担当し、音圧とクリアさを両立させている。

5. ディスコグラフィ

これまでにリリースされた2枚のスタジオ・アルバムについて、収録曲ごとの詳細な分析を行う。

5.1 1st Album: 『TOKYO MOTOR FIST』 (2017)

リリース日: 2017年2月24日
レーベル: Frontiers Music Srl / King Records (Nexus)
規格品番: Europe: FR CD 775 / Japan: KICP-1832

概要: デビューアルバム 『TOKYO MOTOR FIST』は、メロディック・ロック・ファンが長年待ち望んでいたサウンドを提供し、批評家から絶賛された。TrixterやDanger Dangerの新譜を渇望していた層に対し、期待以上の品質で応えた作品である。

【収録曲詳細分析】
No. 曲名(英語) 曲名(カタカナ/邦題) 時間 解説・分析
1 Pickin' Up The Pieces ピッキン・アップ・ザ・ピーシーズ 3:44 アルバムの幕開けを飾るリード・シングル。Steve Brownによるキャッチーなリフと、Chuck Burgiの雷のようなドラミングが特徴。歌詞は失恋からの再起を描いており、ミュージックビデオは80年代MTVの黄金期を想起させる演出がなされている。
2 Love Me Insane ラヴ・ミー・インセイン 3:50 「悪い関係なのに最高に良い」という矛盾した恋愛感情を歌った楽曲。強力なメロディフックを持ち、アルバムの勢いを持続させる。
3 Shameless シェイムレス 3:22 Enuff Z'nuff (イナフ・ズナフ) を彷彿とさせるパワー・ポップ的なメロディセンスが光る。ギターソロは短いが楽曲に完璧にフィットしており、無駄のない構成が評価されている。
4 Love ラヴ 3:29 Def Leppardの名盤『Hysteria』のタイトル曲の続編かのような、ミッドテンポで空間的な広がりを持つ楽曲。
5 Black and Blue ブラック・アンド・ブルー 3:39 伝統的なハードロックのリズムと哀愁あるメロディが融合したトラック。
6 You're My Revolution ユア・マイ・レヴォリューション 3:05 疾走感のあるロックナンバー。ライブでの盛り上がりを意識した構成。
7 Don't Let Me Go ドント・レット・ミー・ゴー 4:10 アルバムの中盤を支えるパワー・バラード。Poleyのヴォーカルの表現力が際立つ。
8 Put Me to Shame プット・ミー・トゥ・シェイム 4:22 グルーヴ感のあるリフが特徴的。Greg Smithのベースラインが楽曲を牽引する。
9 Done to Me ダン・トゥ・ミー 3:48 キャッチーなコーラスが印象的な、典型的なメロディック・ロック・アンセム。
10 Get You Off My Mind ゲット・ユー・オフ・マイ・マインド 4:33 感情的な深みを持つミディアム・ナンバー。
11 Fallin' Apart フォーリン・アパート 3:28 アルバム本編を締めくくる、エネルギッシュなフィナーレ。
12 Don't Let Me Go (Acoustic) ドント・レット・ミー・ゴー (アコースティック) 日本盤ボーナス・トラック。アコースティック・アレンジにより、楽曲本来のメロディの美しさとPoleyの歌唱力がより鮮明になっている。

5.2 2nd Album: 『Lions』 (2020)

リリース日: 2020年7月10日
レーベル: Frontiers Music Srl / King Records
規格品番: Europe: FR CD 1046 / Japan: KICP-4024

概要: COVID-19パンデミックの最中にリリースされた2作目『Lions』は、前作の成功を受けてさらに洗練された作品となった。Steve Brownは本作について「人生で作った中で最高傑作」と自負している。1作目よりも楽曲の幅が広がり、オーケストレーションや豪華ゲストの参加が見られる。

【収録曲詳細分析】
No. 曲名(英語) 曲名(カタカナ/邦題) 時間 解説・分析
1 Youngblood ヤングブラッド 3:29 リード・シングル。若さとエネルギーを称えるアンセム。ギターのイントロから始まり、Trixterや Def Leppardの要素を感じさせる。ミュージックビデオも制作され、バンドの変わらぬ活力をアピールした。
2 Monster In Me モンスター・イン・ミー 4:33 よりヘヴィでダークなリフを持つ楽曲だが、サビではキャッチーに展開する。
3 Around Midnight アラウンド・ミッドナイト 2:47 2ndシングル。3分を切るコンパクトな構成に、ラジオフレンドリーな巨大なコーラスを詰め込んだ楽曲。
4 Mean It ミーン・イット 4:27 ミッドテンポの力強いロックナンバー。
5 Lions ライオンズ 6:40 タイトル・トラックであり、バンド史上最も野心的かつプログレッシブな楽曲。Styx (スティクス) や Queen (クイーン) の影響を色濃く反映しており、元Styxの Dennis DeYoung (デニス・デ・ヤング)がゲスト・キーボード・ソロで参加している。壮大なバラードからロックオペラへと展開する構成は圧巻。
6 Decadence On 10th Street デカダンス・オン・テンス・ストリート 4:15 都会の退廃的な魅力を歌った曲。Van Halen を彷彿とさせるスウィング感のあるリフが特徴。
7 Dream Your Heart Out ドリーム・ユア・ハート・アウト 3:59 前向きなメッセージを持つ、爽快なメロディック・ロック。
8 Blow Your Mind ブロウ・ユア・マインド 3:47 スーパーグループ Bad English (バッド・イングリッシュ)を想起させる、各メンバーの技術とメロディセンスが融合した楽曲。
9 Sedona セドナ 5:07 通常のハードロック・スタイルからの逸脱を見せる楽曲。Billy Joelバンドの同僚である Mark Rivera (マーク・リベラ) がサックスで参加しており、80年代のEddie Moneyのようなポップ・ロックの雰囲気を醸し出している。
10 Look Into Me ルック・イントゥ・ミー 4:20 80年代であればチャートの上位に入っていたであろう、王道のパワー・バラード。
11 Winner Takes All ウィナー・テイクス・オール 4:27 豊かなストリングスの音色で始まり、劇的な展開を見せるクローザー。「勝者が全てを得る」という力強いメッセージでアルバムを締めくくる。
12 Lions (Acoustic Mix) ライオンズ(アコースティック・ミックス) 6:40 日本盤ボーナス・トラック。タイトル曲のアコースティック・バージョン。日本盤には帯 (OBI) と解説書が付属する。

6. 批評的受容とシーンへの影響

6.1 メディアによる評価

TOKYO MOTOR FISTに対するメディアの反応は、概して非常に好意的である。

  • The Rockpit はアルバム 『Lions』を「気品があり(classy)、生意気で(sassy)、さらに高いレベルへと引き上げられた」作品と評し、ブラスセクションの導入などを称賛した。
  • Sleaze RoxxZRockR といった専門メディアは、TOKYO MOTOR FISTがジャンルを再発明しているわけではないと認めつつも、その実行能力 (execution) の高さが別格であると指摘している。特に、Ted Poleyのヴォーカリストとしての過小評価 (criminally underrated) ぶりを嘆き、本作でのパフォーマンスを絶賛している。
  • Sonic Perspectivesは、TOKYO MOTOR FISTの作品が「バランスと感性のデモンストレーション」であり、ファンの期待を裏切らない「驚くほど磨き上げられたアルバム」であると評価した。

6.2 「スーパーグループ」としての実態

前述の通り、TOKYO MOTOR FISTは単なるプロジェクトではなく、メンバー間の結束が強い「バンド」として機能している点が批評家から高く評価されている。特に、Greg SmithとChuck Burgiのリズム隊がもたらす安定感とグルーヴは、多くのプロジェクト系バンドに欠けている「ライブ感」をスタジオアルバムにもたらしている。また、ミックスを担当するBruno Ravelの貢献により、Danger Dangerのファン層も違和感なく取り込むことに成功しており、既存のファンベースを巧みに統合している戦略も功を奏している。

7. 2024年以降の現状と展望

2026年初頭現在、TOKYO MOTOR FISTはFrontiers Music Srlのロスターに名を連ねており、活動継続の意思は明確であるが、各メンバーの多忙なスケジュールが活動のペースを決定づけている。

  • Steve Brown は、2024年から2025年にかけて、Trixterの新作アルバムの制作や、P.J. Farleyとの活動、さらには自身のソロワークについて言及しており、創作意欲は極めて高い。彼は「常に曲を書いている」状態にあり、新たなTOKYO MOTOR FISTの楽曲もストックされている可能性が高い。
  • Ted Poleyは、「ファイナル・ツアー」と銘打ったソロ活動を展開しつつも、スタジオ・レコーディングには引き続き意欲を見せている。
  • Greg Smith は2023年に The Guess Who に加入したが、法的問題によるバンドの活動停止など波乱含みの状況にあるものの、その卓越したスキルにより常に需要のあるミュージシャンである。
  • Chuck Burgi は依然としてBilly Joel のツアーにおける要であり、マディソン・スクエア・ガーデンでの定期公演が終了した後も、Joelの大規模なコンサート活動に従事している。

3枚目のアルバム(一部情報では『Wake Me』というタイトルも噂されるが、これは Honeymoon Suite の楽曲タイトルとの混同の可能性があるため注意が必要である)のリリースは、TOKYO MOTOR FISTのスケジュールが調整でき次第、実現する公算が高い。Steve Brownが「TMF (TOKYO MOTOR FIST) は本物だ」と断言している以上、ファンの期待は裏切られないであろう。

8. データ・アペンディクス (Data Appendix)

表1: バンド・メンバー一覧 (Band Members)

氏名(英語) 氏名(カタカナ) 担当パート 主な関連バンド
Ted Poley テッド・ポーリー Lead Vocals Danger Danger, Prophet, Bone Machine
Steve Brown スティーヴ・ブラウン Guitar, Vocals Trixter, Def Leppard, Rubix Kube
Greg Smith グレッグ・スミス Bass, Vocals Rainbow, Ted Nugent, Alice Cooper, Billy Joel
Chuck Burgi チャック・バーギ Drums Rainbow, Blue Öyster Cult, Billy Joel, Meat Loaf

表2: ディスコグラフィ一覧 (Discography)

リリース年 アルバム・タイトル レーベル 日本盤ボーナス・トラック
2017 TOKYO MOTOR FIST Frontiers / Nexus Don't Let Me Go (Acoustic)
2020 Lions Frontiers / King Records Lions (Acoustic Mix)

表3: 主要制作クレジット (Key Production Credits)

役割 氏名(英語) 氏名(カタカナ) 備考
Producer Steve Brown スティーヴ・ブラウン 全曲の作詞作曲・プロデュース
Mixing Bruno Ravel ブルーノ・ラヴェル Danger Danger / The Defiants
Mastering Maor Appelbaum マオール・アップルバウム Faith No More, Yes, Dokken等
Guest Keys Dennis DeYoung デニス・デ・ヤング 曲「Lions」に参加 (ex-Styx)
Guest Sax Mark Rivera マーク・リベラ 曲「Sedona」に参加 (Billy Joel Band)

Albums

Lions CD
/

テッド・ポーリーとスティーヴ・ブラウンが、軽快なフックとハード・ロックの勢いを詰め込んだ第2作。

Tokyo Motor Fist CD
/

爽快なAOR感覚とハード・ロックの勢いを、熟練の歌とギターで鳴らすデビュー作。