SKILLS

現代のメロディック・ハードロック (Melodic Hard Rock) シーンにおいて、過去の伝説的なミュージシャンと新世代の才能を融合させる試みは数多く行われているが、2022年に結成されたSKILLS (スキルズ)は、その中でも特筆すべきプロジェクトである。

Biography

音楽的技能の結晶
ハードロック・スーパーグループ SKILLS (スキルズ)

SKILLS (スキルズ)の結成概念と業界における位置づけ

現代のメロディック・ハードロック (Melodic Hard Rock) シーンにおいて、過去の伝説的なミュージシャンと新世代の才能を融合させる試みは数多く行われているが、2022年に結成されたSKILLS (スキルズ)は、その中でも特筆すべきプロジェクトである。

バンド名である「SKILLS (スキルズ)」は、公式のプレスリリースにおいて「特定の活動や仕事をうまくこなす能力、特にそれを練習したことによって得られる能力 (an ability to do an activity or job well, especially because you have practiced it)」と定義されている。一見すると自信過剰 (cocky)にも思えるこの名称であるが、参加メンバーの圧倒的な実績と技巧を鑑みれば、この言葉が単なる誇張ではなく、確固たる事実に基づいた宣言であることが理解できる。本プロジェクトは、1980年代のクラシック・ハードロック (Classic Hard Rock) 時代から長年にわたって技術を研鑽してきたベテラン・プレイヤーたちの「技能」と、新たな時代を担う圧倒的なボーカル能力との結晶として構想されたのである。

バンド結成のパラダイムとA&R戦略

SKILLS (スキルズ)の結成は、自然発生的なバンドの誕生ではなく、明確なビジョンに基づいたA&R(Artists and Repertoire) 戦略の産物である。このプロジェクトを立ち上げたのは、イタリア (Italy) のレコードレーベルであるフロンティアーズ・ミュージックSrl (Frontiers Music Srl) の社長兼A&Rディレクターであるセラフィーノ・ペルジーノ (Serafino Perugino)である。

プロジェクトの直接的なきっかけは、ペルジーノ (Perugino) がブラジル (Brazil) 出身の若きシンガー、レナン・ゾンタ (Renan Zonta)の歌声を初めて耳にし、その圧倒的な能力に衝撃を受けたことにある。ゾンタ (Zonta)が1980年代のクラシック・ハードロック (Classic Hard Rock)を深く愛聴していることを知ったペルジーノ (Perugino)は、彼をその時代を代表する「モンスター・プレイヤー (monster players)」たちと組み合わせるという野心的なアイデアを構想した。

ペルジーノ (Perugino) がゾンタ (Zonta) の歌唱クリップや音源を数名の著名なミュージシャンに共有したところ、全員が彼の才能を疑いようのないものとして絶賛した。その結果、ナイト・レンジャー(Night Ranger)のブラッド・ギルス (Brad Gillis)、ミスター・ビッグ (Mr. Big) のビリー・シーン (Billy Sheehan)、そしてジャイアント (GIANT)のデイヴィッド・ハフ (David Huff) という、ハードロック (Hard Rock) 界の重鎮たちがプロジェクトに賛同し、SKILLS (スキルズ)という新たな音楽的野獣 (musical beast)が誕生することとなった。

一部のソーシャルメディアや批評家の間では、フロンティアーズ・ミュージックSrl (Frontiers Music Srl)が毎月のように新しいスーパーグループ (ブラック・スワン (Black Swan) やアイコニック (Iconic)など)を立ち上げる手法に対し、「大量生産工場(factory)」や「強迫的なプロジェクト (forced)」であるとの批判的な声が存在することも事実である。これらの批判は、同レーベルのサウンドが反復的で退屈(repetitive and boring)になりがちであるという懸念に基づいている。しかし、SKILLS (スキルズ)においては、参加メンバーの卓越した能力と、完成した楽曲の質がそのような批判を凌駕しており、純粋な音楽的説得力を持つプロジェクトとして高い評価を獲得している。

メンバーのバイオグラフィーと音楽的背景

SKILLS (スキルズ)の音楽的深みを理解するためには、各メンバーが歩んできた独自のキャリアと、彼らがハードロック (Hard Rock) 史において果たしてきた役割を極めて詳細に分析することが不可欠である。ここでは、メンバー一人ひとりの軌跡を追う。

レナン・ゾンタ (Renan Zonta) - ボーカル (Vocals)

ブラジル (Brazil) のパラナ州カスカヴェル (Cascavel, Paraná) 出身のレナン・ゾンタ (Renan Zonta)は、エレクトリック・モブ (Electric Mob) やブラザー・アゲインスト・ブラザー(Brother Against Brother)のフロントマンとして知られる新鋭のパワーハウス・シンガー (Powerhouse Singer) である。彼の音楽への目覚めは、意外にもボーカリストとしてではなく、アイアン・メイデン (Iron Maiden) のエイドリアン・スミス (Adrian Smith)のような「上品なシュレッダー (classy shredders)」に憧れたギタリスト志望から始まった。しかし、高校時代のバンドでボーカルが不在だったため、適切なシンガーが見つかるまでの一時的な代役としてマイクを握ったことが、彼の隠された才能を開花させる決定的な転機となった。

2016年、彼は地元を離れてパラナ州 (Paraná) の州都クリチバ (Curitiba) へ移住し、地元のミュージシャンであるベン・フール・アウヴァルテル (Ben Hur Auwarter: ギター)、ユーリ・エレロ (Yuri Elero: ベース)、アンドレ・ライスター (André Leister: ドラムス)と共にエレクトリック・モブ (Electric Mob)を結成した。同バンドは、1970年代から1990年代のブルージーなハードロック (Bluesy Hard Rock) とモダンなヘヴィ・グルーヴ (Heavy Groove) を融合させたスタイルで、デビューアルバム『ディスチャージ (Discharge)』をリリースし、一躍国際的な注目を集め、その後『2・メイク・ユー・クライ・アンド・ダンス (2 Make U Cry & Dance)』を発表している。

さらにゾンタ (Zonta)は、人気オーディション番組『ザ・ヴォイス・ブラジル (The Voice Brasil)』に複数回出演し、その名声をブラジル (Brazil) 国内で確固たるものにしている。2016年の出演時にはAC/DC(エーシー・ディーシー)の「Highway To Hell (ハイウェイ・トゥ・ヘル)」を披露して観衆を圧倒し、イゴール・サントス (Igor Santos) とのバトルラウンドでも見事なパフォーマンスを見せ、審査員のミシェル・テロ (Michel Teló) から選出された。また2023年の第12シーズンでは、ハリー・スタイルズ (Harry Styles) の楽曲「Kiwi (キウイ)」を歌唱して、ルル・サントス (Lulu Santos)、カルリーニョス・ブラウン (Carlinhos Brown)、ミシェル・テロ (Michel Teló)、そしてイザ (IZA) / ムムジーニョ (Mumuzinho) という全審査員(コーチ)を振り向かせるという快挙を成し遂げている。

彼のボーカルスタイルは、バッドランズ (Badlands)の故レイ・ギラン (Ray Gillen)に例えられることが多いが、SKILLS (スキルズ)の文脈においては、グレン・ヒューズ (Glenn Hughes) やサミー・ヘイガー (Sammy Hagar) のような驚異的な音域の拡張性とパワーに、スティーヴン・タイラー (Steven Tyler)の表現力、さらにはデイヴィッド・カヴァデール (David Coverdale) のブルージーなニュアンスを兼ね備えた、比類なきボーカリストとして評価されている。

ブラッド・ギルス (Brad Gillis) - ギター (Guitars)

1957年6月15日、ハワイ州ホノルル (Honolulu, Hawaii) に生まれたブラッド・ギルス (Brad Gillis)は、1980年代のアメリカン・ハードロック (American Hard Rock) を象徴する伝説的なギタリストの一人である。1978年、ジェリー・マルティーニ (Jerry Martini)や、後に共にナイト・レンジャー (Night Ranger)を結成するジャック・ブレイズ (Jack Blades) らと共にファンク・ロック・バンド (Funk Rock Band)、ルビコン (Rubicon)で本格的なデビューを果たした。ルビコン (Rubicon)は、20世紀フォックス・レコード (20th Century Fox Records) から『ルビコン (Rubicon)』および『アメリカン・ドリームス(American Dreams)』という2枚のアルバムをリリースし、1978年には25万人もの観衆を集めた伝説的なロック・フェスティバル「カリフォルニア・ジャム2 (California Jam II)」に出演している。この時のパフォーマンスは、後にオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne) のバンドで同僚となるベーシストのルディ・サーゾ (Rudy Sarzo) に強い印象を与えた。

ルビコン (Rubicon) 解散後、ケリー・ケイギー (Kelly Keagy)らを加えた短命のクラブ・バンドであるステレオ (Stereo)を経て、1980年頃にナイト・レンジャー (Night Ranger) が結成された 。彼らは開設されたばかりのMTV(エムティーヴィー)の恩恵を強く受け、「Don't Tell Me You Love Me (ドント・テル・ミー・ユー・ラヴ・ミー)」などのミュージックビデオがコンテンツ不足の初期MTVにおいて1日に25回も放映されるなどして、またたく間にスターダムにのし上がった。

ギルス (Gillis)のキャリアにおいて特筆すべきもう一つの歴史的出来事は、1982年のオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne) ・バンドへの参加である。同年3月19日、天才ギタリストとして知られたランディ・ローズ (Randy Rhoads)が航空機事故で急逝するという悲劇が起きた。バーニー・トーメ(Bernie Tormé)の一時的な代役がオズボーン (Osbourne) のブルーズを基調としないスタイルに合わなかった後、ギルス (Gillis)はオーディションのために一晩で呼び出され、わずか1曲を演奏しただけで正式な後任として採用された。ローズ (Rhoads)の死を受け入れられず重度のアルコール依存に陥っていたオズボーン(Osbourne) から極めて厳しい扱いを受けながらも、ギルス (Gillis)は『ダイアリー・オブ・ア・マッドマン (Diary of a Madman)』ツアーを見事に完遂し、ライブ・アルバム『悪魔の囁き (Speak of the Devil)』にその歴史的演奏を刻み込んだ。その後、彼はナイト・レンジャー(Night Ranger)に戻り、独自のアーミング技術 (whammy-tinged bends) やゲインをたっぷりとかけたスケールライン (gain-drenched descending scale lines) でシーンの頂点を極め、SKILLS (スキルズ)においてもそのシグネチャー・サウンドを存分に発揮している。

ビリー・シーン (Billy Sheehan) - ベース (Bass)

1953年3月19日、ニューヨーク州バッファロー (Buffalo, New York)で生まれたビリー・シーン (Billy Sheehan)は、ベースという楽器の概念を根底から覆した革新的なプレイヤーであり、ロックおよびメタル界で最も尊敬されるベーシストの一人である。彼は「リード・ベース (lead bass)」という独自のプレイスタイルを確立し、コーディング (chording)、ツーハンド・タッピング (two-handed tapping)、スリーフィンガー・ピッキング (three-finger picking)、そしてコントロールド・フィードバック(controlled feedback) といった極めて高度なテクニックを駆使する。これらの革新的な演奏により、彼は『ギター・プレイヤー (Guitar Player)』誌の読者投票で「ベスト・ロック・ベース・プレイヤー(Best Rock Bass Player)」に5回選出され、2018年にはその卓越した技術と若手への指導的貢献が認められ「メタル・ホール・オブ・フェイム (Metal Hall of Fame)」への殿堂入りを果たしている。

シーン (Sheehan) のプロフェッショナルなキャリアは、地元バッファロー (Buffalo) で結成したバンド、タラス (Talas)から本格的にスタートした。1985年、ヴァン・ヘイレン (Van Halen)を脱退したデイヴィッド・リー・ロス (David Lee Roth) のソロ・バンドに引き抜かれ、プラチナ・セールスを記録した2枚のアルバムに参加し、世界的な名声を決定づけた。

1989年には、ギタリストのポール・ギルバート (Paul Gilbert) らと共に彼自身のバンドであるミスター・ビッグ(Mr. Big)を結成。同バンドの楽曲 「To Be With You (トゥ・ビー・ウィズ・ユー)」は、アメリカ合衆国(United States)を含む14カ国でビルボード (Billboard) 1位を獲得し、世界的な大ヒットとなった。その後も、マイク・ポートノイ (Mike Portnoy) やリッチー・コッツェン (Richie Kotzen)と結成したザ・ワイナリー・ドッグス (The Winery Dogs)で『ザ・ワイナリー・ドッグス (The Winery Dogs)』(2013年)や『ホット・ストリーク (Hot Streak)』 (2015年)をリリースし、さらにデレク・シェリニアン (Derek Sherinian)、ジェフ・スコット・ソート (Jeff Scott Soto)、ロン・バンブルフット・サール (Ron "Bumblefoot" Thal)らと組んだプログレッシブ・メタル・スーパーグループのサンズ・オブ・アポロ (Sons Of Apollo)など、現在に至るまで無数のプロジェクトで第一線で活躍し続けている。

デイヴィッド・ハフ (David Huff) - ドラムス (Drums)

1961年7月28日に生まれたデイヴィッド・ハフ (David Huff)は、セッション・ミュージシャンとして非常に名高い兄のダン・ハフ (Dann Huff)と共に、アメリカのロックおよびスタジオ・シーンで確供たる地位を築いてきたドラマー、ソングライター、プロデューサーである。

ハフ (Huff)のキャリアの起源は、1963年にミシシッピ州ローレル (Laurel, Mississippi)で兄弟のクレイボーン・ハフ (Clayborn Huff)、レイボーン・ハフ (Rayborn Huff)と共に結成したデイヴィッド・アンド・ザ・ジャイアンツ (David and the Giants)に遡る。1969年には『アイ・ラブ・ルーシー (I Love Lucy)』の子役として知られるキース・チボドー (Keith Thibodeaux)をドラマーとして迎え、バンドは商業的なピークを迎えた。しかし1977年、兄弟たちがキリスト教に回心したことを機に、バンドはメインストリーム・ロックからクリスチャン・ロック (Christian rock) へと音楽性を大きく転換した。

その後、デイヴィッド (David) とダン (Dann)の兄弟は、クリスチャン・ロック・バンドであるホワイト・ハート (White Heart) のオリジナル・ラインナップとして活動し、さらに1980年代後半にはメロディック・ハードロック・バンド,ジャイアント (GIANT)を結成して大きな成功を収め、ハードロック・ファンにその名を深く刻み込んだ。また、ハフ (Huff)はテネシー州ナッシュビル (Nashville, Tennessee)においてハフ・レコーディング・スタジオ (Huff Recording Studios)を設立し、カントリー、ポップス、ロックなど幅広いジャンルのアーティストのセッションをエンジニアリングおよびプロデュースする手腕も発揮している。彼はNAMMショー (NAMM Show)におけるTEC Tracksのディスカッションパネルに参加するなど、オーディオ・エンジニアリング界隈でも高い尊敬を集める存在となっている。

アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ (Alessandro Del Vecchio) - プロデューサー / キーボード (Producer / Keyboards)

1979年4月21日、イタリア・ロンバルディア州ソンマ・ロンバルド (Somma Lombardo, Lombardy, Italy)に生まれたアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ (Alessandro Del Vecchio)は、現代のメロディック・ロック (Melodic Rock) およびパワー・メタル (Power Metal) シーンにおける最重要プロデューサーの一人である。彼は自身のスタジオであるアイボリーティアーズ・ミュージック・ワークス・スタジオ(Ivorytears Music Works Studio)をミラノ (Milan) 北部に構え、フロンティアーズ・ミュージックSrl (Frontiers Music Srl)の専属(インハウス) プロデューサーとして、無数のプロジェクトを牽引してきた。

デル・ヴェッキオ (Del Vecchio)は、プロデューサーやミキシング・エンジニアとしてだけでなく、キーボーディスト、ソングライター、そしてバッキング・ボーカリストとしても卓越した才能を持つマルチ・プレイヤーである。これまでにハードライン (Hardline)、エッジ・オブ・フォーエヴァー (Edge of Forever)、レヴォリューション・セインツ (Revolution Saints)、サンストーム (Sunstorm)、アイコニック、ヴァンデン・プラス (Vanden Plas)など、枚挙にいとまがないほどのバンドやプロジェクトに参加し、その洗練されたプロダクション・スキルを提供してきた。

SKILLS (スキルズ)においても、彼はキーボードとバッキング・ボーカルを担当するだけでなく、アルバム全体のプロデュース、アレンジ、ミキシング、マスタリング、そして多くの楽曲のソングライティングを担い、異なるバックグラウンドと世代を持つメンバーの才能を一つの強靭なハードロック・サウンドへと統合する「接着剤」としての重要な役割を果たしている。

ディスコグラフィー: デビューアルバム『Different Worlds (ディファレント・ワールズ)』

SKILLS (スキルズ)のデビューアルバム『ディファレント・ワールズ (Different Worlds)』は、2022年5月13日にフロンティアーズ・ミュージックSrl (Frontiers Music Srl)から全世界に向けてリリースされた。本アルバムは、クラシックな80年代ハードロックの魂を現代の最新プロダクション技術で蘇らせた作品として位置づけられており、バンド名が示す通りの「熟練の技」が随所にちりばめられている。

アルバム概要と楽曲構成

アルバムは全11曲のオリジナル・トラックで構成されている。日本盤(Japanese edition) はアヴァロン(Avalon / Marquee Inc.) からリリースされ、ボーナストラックとして「Just When I Needed You (ジャスト・ウェン・アイ・ニーディッド・ユー)」のアコースティック・バージョンが追加収録されている。

トラック番号 曲名(English) 曲名(Katakana) 収録時間 備考
1 Escape Machine エスケープ・マシーン 3:27
2 Blame It On The Night ブレイム・イット・オン・ザ・ナイト 3:06 アルバム表題曲 ミュージックビデオ制作曲 リードシングル・MV制作曲
3 Different Worlds ディファレント・ワールズ 4:13
4 Losing The Track ルージング・ザ・トラック 3:59
5 Writings On The Wall ライティングス・オン・ザ・ウォール 3:29
6 Show Me The Way ショウ・ミー・ザ・ウェイ 4:28
7 Just When I Needed You ジャスト・ウェン・アイ・ニーディッド・ユー 3:56
8 Need To Fall ニード・トゥ・フォール 3:17
9 Stop The World ストップ・ザ・ワールド 4:10
10 Hearts Of Stone ハーツ・オブ・ストーン 3:53
11 Don't Break My Heart ドント・ブレイク・マイ・ハート 4:30 ゲスト・ギターソロ:ベン・フール・アウヴァルテル (Ben Hur Auwarter)
12 Just When I Needed You (Acoustic) ジャスト・ウェン・アイ・ニーディッド・ユー (アコースティック) - 日本盤(Avalon MICP-11695)専用ボーナストラック

メンバーおよび制作クレジット

本アルバムの制作は、国際的なリモート・コラボレーションと一流のスタジオ・ワークの融合によって実現した。

役割(Role) 氏名(Name) 担当内容の詳細
ボーカル レナン・ゾンタ (Renan Zonta) リード・ボーカル (Lead Vocals)
ギター ブラッド・ギルス (Brad Gillis) ギター (Guitars)、共同アレンジ (Arranged By)
ベース ビリー・シーン (Billy Sheehan) ベース (Bass)
ドラムス デイヴィッド・ハフ (David Huff) ドラムス (Drums)
プロデュース アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ (Alessandro Del Vecchio) プロデュース (Produced By)、ミックス (Mixed By)、マスター (Mastered By)、キーボード (Keyboards)、バッキング・ボーカル (Backing Vocals)

さらに、レコーディングおよびクリエイティブ・プロセスにおいて以下の専門家が貢献している。

  • ソングライティング (Songwriting Contributions): アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ(Alessandro Del Vecchio)、レナン・ゾンタ (Renan Zonta)、ピート・アルペンボルグ (Pete Alpenborg)、マーティン・イェプセン・アンデルセン(Martin Jepsen Andersen)、ギー・オリヴェイラ(Gui Oliver)等の共同作業によって構築されている。
  • レコーディング・エンジニア (Recording Engineers):
    • ドラムス録音: テネシー州ナッシュビル (Nashville, Tennessee)のアディクション・サウンド・スタジオ (Addiction Sound Studios)にて、デイヴィッド・カルムスキー (David Kalmusky)およびイーサン・バレット (Ethan Barette)が担当。
    • ベース録音:スコット・ブッシュ (Scott Bush) が担当。
    • ボーカル録音: マウリシオ・バザ (Mauricio Baza)が担当。
  • アートワーク (Album Artwork): ジャスティン・ロシュコウスキ (Justin Roszkowski)。
  • ミュージックビデオ制作 (Music Video Production): 「Stop The World (ストップ・ザ・ワールド)」および「Just When I Needed You (ジャスト・ウェン・アイ・ニーディッド・ユー)」の映像は、エンツォ・マッツェオ (Enzo Mazzeo) がプロデュースおよびスチール撮影を行い、エリック・ボアデラ(Eric Boadella)が監督と編集を務めた。撮影監督にはドニー・グレンジャー (Donny Granger)とブラッド・チェスター (Brad Chester) が起用されている。

リリース形態

本アルバムは世界中のリスナーに向けて、複数のフォーマットで提供された。

フォーマット(Format) レーベル(Label) カタログ番号(Catalog Number) 発売地域(Region) 発売年 備考
CD Frontiers Music SRL FR CD 1225 USA & Europe 2022 12ページのブックレット付属
CD Avalon (Marquee Inc.) MICP-11695 Japan 2022 ボーナストラック1曲収録、ライナーノーツ(平井毅)付属
LP (Vinyl) Frontiers Music SRL FR LP 1225WM Italy 2022 限定版ホワイト・マーブル・ヴァイナル (White Marbled)

批評的受容と音楽的評価

『ディファレント・ワールズ (Different Worlds)』は、リリース直後から音楽メディアや批評家から熱狂的な支持と、一部のシニカルな分析の両方を受けた。この二極化する評価は、現在のメロディック・ロック市場の複雑な状況を浮き彫りにしている。

『アルティメット・クラシック・ロック (Ultimate Classic Rock)』のレビューでは、SKILLS (スキルズ)の音楽性には「賞味期限が存在しない (no shelf life)」と評され、ホワイトスネイク (Whitesnake)、ディオ(Dio)、ドッケン (Dokken)、スコーピオンズ (Scorpions)、さらにはジューダス・プリースト (Judas Priest)といった往年の名バンドの作品と並べても遜色のないプロトタイプ的な完成度を誇っていると絶賛された。特に、アルバムのカバーアートそのものが、ホワイトスネイク (Whitesnake) の1987年のマルチプラチナ・アルバムのグラフィックデザインに対するオマージュ (kissin' cousin) のようであると指摘されている。

同レビューはさらに、フロントマンであるレナン・ゾンタ (Renan Zonta) のパフォーマンスを極めて高く評価している。彼は、ヘア・メタル (hair-metal) コミュニティの先人たちの影響を色濃く残しながらも、パワフルなテノール (powerhouse tenor)の歌声で圧倒的な存在感を示していると述べられている。特に「Just When I Needed You (ジャスト・ウェン・アイ・ニーディッド・ユー)」で見せる驚異的な肺活量とヴァルハラを揺るがすようなパワー (Valhalla-shaking power)は、メタル寄りのダイナミクスを持つベテラン・バンドメンバーの重厚なサウンドと完璧に調和している。楽曲単位でも、洗練された推進力を持つ「Show Me the Way (ショウ・ミー・ザ・ウェイ)」、疾走感のある「Escape Machine (エスケープ・マシーン)」、アリーナ級のスケール感を誇る「Hearts of Stone (ハーツ・オブ・ストーン)」などがハイライトとして挙げられている。

一方で、『ヘッドバンガーズ・ライフスタイル (Headbangers Lifestyle)』のレビューは、レーベル主導で次々と結成されるスーパーグループの量産体制 (factory)に対して、一部のファンから「サウンドが反復的で退屈だ (repetitive and boring)」 「音楽が強制的に作られているように聞こえる (forced)」といった批判がSNS上で噴出していることにも客観的に触れている。しかし、レビューの執筆者は、最終的には好みの問題 (A MATTER OF TASTE)であるとし、SKILLS (スキルズ)に関して言えば批判すべき点がほとんど見当たらないと結論づけている。ゾンタ (Zonta)の圧倒的な歌唱力と、ギルス(Gillis)、シーン(Sheehan)、ハフ (Huff) という百戦錬磨のベテランたちが持ち寄った実績 (musical laurels)が見事に融合しており、フロントマンの声を最大限に活かすアレッサンドロ・デル・ヴェッキオ (Alessandro Del Vecchio) のプロダクションが完全に成功していると評価した。

また、音楽的な側面として、ブラッド・ギルス (Brad Gillis) のシグネチャーとも言えるギタープレイが随所で光っている点も特筆すべきである。『ギター・ワールド (Guitar World)』の言及によれば、「Stop The World (ストップ・ザ・ワールド)」の3分10秒付近から登場するギターソロでは、彼特有のアーミングを効かせたベンド (whammy-tinged bends)や、ゲインをたっぷりとかけた下降スケールのライン(gain-drenched descending scale lines)が堪能でき、往年のナイト・レンジャー (Night Ranger) やオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne) 時代を彷彿とさせる強烈な興奮をリスナーに提供している。

第二次・第三次洞察:プロジェクトが示唆するハードロックの未来と構造的意義

世代間技能の継承とコンテクストの再構築

SKILLS (スキルズ)は、単に有名なミュージシャンを集めただけのグループではない。レナン・ゾンタ(Renan Zonta) という1990年代以降に生まれた新世代の才能に対し、1970年代から1980年代のロック黄金期をサバイブしてきたブラッド・ギルス (Brad Gillis)、ビリー・シーン (Billy Sheehan)、デイヴィッド・ハフ (David Huff) というレジェンドたちが、物理的な演奏技術のみならず、楽曲に宿る「アティテュード(態度)」や「ダイナミクス」という無形の技能 (Skills)を伝授する儀式的な側面を持っている。

過去のロック・ジャイアントたちの影響(グレン・ヒューズ (Glenn Hughes) やスティーヴン・タイラー(Steven Tyler)など)を自己の血肉としているゾンタ (Zonta)にとって、当時のオリジナル・シーンを創り上げた当事者たちと直接音を交えることは、模倣を本物へと昇華させる不可欠なプロセスである。同時に、ベテラン勢にとっても、自身のプレイスタイルが現代の若きパワーボーカルの基盤として機能することを証明する絶好の機会となっている。この相互作用が、SKILLS (スキルズ)のサウンドに「時代を超越した(timeless)」 響きを与えている根源的な理由である。

「A&R主導型プロジェクト」の成熟と制作の非中央集権化

フロンティアーズ・ミュージックSrl (Frontiers Music Srl)の手法は、かつてのモータウン (Motown)やティン・パン・アレー (Tin Pan Alley)のような、明確な統括者のビジョンに基づく「システム化された音楽制作」の現代版であると言える。セラフィーノ・ペルジーノ (Serafino Perugino)は、単に出資するエグゼクティブではなく、リスナーが何を求めているかを熟知し、ピースを組み合わせるキャスティング・ディレクターの役割を果たしている。

さらに、このプロジェクトを技術的に可能にしているのは、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ(Alessandro Del Vecchio) というプロデューサーの存在と、リモート・レコーディング技術の成熟である。イタリア (Italy) のデル・ヴェッキオ (Del Vecchio)、テネシー州ナッシュビル (Nashville, Tennessee)のアディクション・サウンド・スタジオ (Addiction Sound Studios)で録音するハフ (Huff)、ブラジル (Brazil) でボーカルを録音するゾンタ (Zonta)、そしてアメリカ各地のギタリストとベーシストが、地理的な制約を完全に無視して一つの強固なハードロック・アルバムを作り上げている。それぞれの録音環境が独立しながらも、最終的なミキシングにおいて一つの「バンド」としての連続性を獲得している点は、現代のオーディオ・エンジニアリングとプロデュース手法の大きな勝利である。

Conclusion

SKILLS (スキルズ)は、ノスタルジア・プロジェクトではなく、計算し尽くされた高度な音楽的・産業的デザインの産物である。ブラジル (Brazil) が生んだ傑出した新星であるレナン・ゾンタ (Renan Zonta)を中心に、ブラッド・ギルス (Brad Gillis)、ビリー・シーン (Billy Sheehan)、デイヴィッド・ハフ (David Huff) というレジェンドたちが集結し、アレッサンドロ・デル・ヴェッキオ (Alessandro Del Vecchio)の洗練されたプロデュースによって束ねられたデビューアルバム『ディファレント・ワールズ (Different Worlds)』は、メロディック・ハードロック (Melodic Hard Rock) のジャンルにおいて一つの金字塔を打ち立てた。

各メンバーがこれまでに培ってきた音楽的「技能(SKILLS)」が一切の妥協なく注ぎ込まれた本作は、レーベル主導のスーパーグループという形態に対する一部の懐疑的な見方を払拭するに十分な力強さと説得力を持っている。SKILLSの音楽的DNAは、世代や国境という「異なる世界 (Different Worlds)」を超越して共鳴し合い、ハードロックというジャンルが持つ普遍的なエネルギーと美学が、今後も決して色褪せることなく継承されていくことを力強く証明しているのである。

Albums

Different Worlds CD
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伝統派ハード・ロックの名手たちが、キャッチーな曲作りを共有したSKILLSのデビュー作。