EDGUY TRIVIA
Trivia
EDGUY の初来日は『Mandrake』(2001年)のツアー中である。日本のレーベル、マーキー/アヴァロンのバイオによれば、バンドはこの1年で23か国・62公演を回っており、そのうち4本が初の日本公演だった。ライヴ・バンドとしての実力を示したこの時期の記録が、初のライヴ・アルバム『Burning Down The Opera Live』になる。次の来日は Nuclear Blast 移籍第一弾『Hellfire Club』(2004年)の後で、このとき日本で初めてヘッドライナーとしてのツアーを行った。さらに『Tinnitus Sanctus』(2008年)前後には、単独公演とラウドパーク出演という2度の来日を果たしている。
EDGUY の日本盤には、日本でしか手に入らない曲が入っている。マーキー/アヴァロンの作品情報によれば、『Hellfire Club』の日本盤(MICP-10425、2004年3月10日)はボーナス・トラック3曲入りで、「Children Of Steel」、KREATOR のミレ・ペトロッツァを迎えた「Mysteria」の別ヴァージョン、そして「Navigator」のデモである「Heavenward」が加えられている。『Rocket Ride』の日本盤(MICP-10565、2006年1月21日)も3曲追加で、「Land Of The Miracle」のライヴ、「Reach Out」、「Lavatory Love Machine」のアコースティック・ヴァージョンが入る。『Tinnitus Sanctus』(MICP-10790、2008年11月19日)は1曲追加、『Mandrake』の再発盤には「The Devil & The Savant」が加えられている。
EDGUY という名前に意味はない。所属レーベルの Nuclear Blast が公式ページに書いているところによれば、1992年に結成した14歳の4人は、当時の物理教師のあだ名をそのままバンド名にした。トビアス・ザメット自身は2014年の取材で、自分たちは「ひどいバンド名」を掲げたまま世界を回り、それでも相当数の支持者を得たと振り返っている。ジャンル名で括られることにも同じ態度で、パワー・メタルと呼ばれても古いタイプのハード・ロックと呼ばれても構わない、ライヴを観てスタンダップ・コメディだと言われてもそれで構わない、と述べた。
始まりは1992年2月、ドイツ中部の街フルダである。同じ学校に通う14歳の4人——トビアス・ザメット、イェンス・ルドヴィグ、ダーク・ザウアー、ドラムのドミニク・ストール——がバンドを組んだ。レーベルの公式ページによれば、最初に演奏していたのは BON JOVI や AC/DC、KISS の曲で、自分たちの曲だけのデモ・カセットを作るのはそこから2年後のことだった。フルダは音楽業界の内情など人づてにしか伝わってこないような小さな町で、ザメットは後年、自分たちは観客としてコンサートに行くより先にEDGUYとしてステージに立っていた、と振り返っている。
2014年の『Space Police: Defenders of the Crown』以降、EDGUY の新作は出ていない。その理由をトビアス・ザメット自身が説明したのが、2020年3月28日にSNSへ投稿した長文である。彼はそこで、EDGUY はしばらく活動休止の状態にあり、いま進んでいるものは何もないと明言した。そのうえで『Space Police』については、いいアルバムだったが自分が満足できる出来にするまでが極度に消耗する作業だったと述べ、30年近く時計仕掛けのように作品を出してきたバンドには、ロゴを貼るためだけに何かを出すのではなく合意が尽きた時点で休む権利があるはずだ、と書いている。自分を二つに分けることはできない、というのが彼の説明の核心である。
「EDGUY はいつ戻ってくるのか」という読者からの質問に、トビアス・ザメットは2025年の Louder の企画でこう答えている。自分にも本当に分からない、関心が無いというのは誤解だ、と。彼の説明では、14歳の子どもとして集まった当時は誰も歌えず、楽器も弾けず、曲も書けず、そこから横並びで同じ速度で伸びていった。ところがある時点から各自の向かう方向が分かれ、仕事のやり方や進め方についての考えも違ってきて、議論が増えた。やがてエネルギーの9割が妥協点探しに費やされるようになる。AVANTASIA なら2か月でアルバムを作れるのに、EDGUY だと2か月では1曲目のキーすら決まらない——それが彼の言い方である。関係は今も良好で、本は閉じていないが、すぐには何も起きないだろう、と彼は述べた。
2012年7月14日、ドイツ・バリンゲンのフェスティバル〈Bang Your Head!!!〉で、トビアス・ザメットはステージから落ちている。5曲目の最中に足を滑らせ、カメラマン用のピットのコンクリートに叩きつけられた。負ったのは鼻の骨折、腰と肋骨の重度の打撲、複数の擦過傷と切り傷である。それでもバンドは残りの1時間、セットを最後までやり切った。本人は後に、ステージは濡れていなかったし靴にも問題はなく、当然ながら素面だったので、なぜ落ちたのか自分でも分からないと語っている。血と痛みは曲が進むごとにひどくなったが、アドレナリンが出ていたのと客の反応が素晴らしかったので、途中でやめるのは違うと感じた——止めずに続け、終わってから医者に直してもらうことにした、というのが彼の説明である。
『Space Police: Defenders of the Crown』の日本盤は2014年4月23日に発売された。マーキー/アヴァロンの当時のリリース情報によれば、仕様は2種類で、ボーナス・ディスクが付くのは初回限定盤の MICP-90075(2枚組、3,000円+税)だけ、通常盤は MICP-11155(2,600円+税)である。同じ告知は日本語でこの作品を、EDGUY 史上もっともアグレッシヴでヘヴィ・メタリックな曲が並ぶ会心作、『Age of the Joker』以来およそ3年ぶりの新作、と紹介している。先行して3月28日には「Love Tyger」がデジタル・シングルとして日本で配信された。
2017年、結成25周年に合わせて日本では旧作の紙ジャケット仕様 SHM-CD 再発が組まれた。マーキー/アヴァロンの作品情報によれば、8月30日に『Kingdom of Madness』(MICP-30082)、『Vain Glory Opera』(MICP-30083)、『Theater of Salvation』(MICP-30084)の3枚が、12月20日に『The Savage Poetry』(MICP-30085)、『Mandrake』(MICP-30086)、ベスト盤『Hall Of Flames』(MICP-30089/90)が出ている。25周年記念作『Monuments』の日本盤(MIZP-60060、2CD+DVD)はその間の7月12日発売で、新曲として「Ravenblack」「Wrestle The Devil」「Open Sesame」「Landmarks」「The Mountaineer」の5曲が収められた。
『Hellfire Club』の前哨戦として出たEP『King Of Fools』の日本盤(MICP-10419)は、2004年2月4日、アルバムのおよそ1か月前に発売された。マーキー/アヴァロンの作品情報によればミニ・アルバム扱いのエンハンスドCDで、パソコンに入れると『Hellfire Club』のメイキング映像が観られる。収録は5曲で、表題曲の編集版のほか「New Age Messiah」「The Savage Union」「Holy Water」、そして「Life And Times Of A Bonus Track」——ボーナス・トラックの一生、という自嘲めいた題の曲が並ぶ。
初のライヴ作品『Burning Down The Opera Live』の日本盤は、2003年8月21日に MICP-90012 として出ている。マーキー/アヴァロンの作品情報によれば2枚組で、ディスク1には「Welcome To The Opera」から「The Pharaoh」まで、ディスク2には「Vain Glory Opera」やドラム・ソロ、「Avantasia」などが収められた。エンハンストCD仕様でボーナス・トラックが1曲加えられ、さらにアメリカ公演から「The Headless Game」のビデオ・クリップとPC用の壁紙が入る。2009年4月22日には、『Rocket Ride』ツアーのサンパウロ公演を収めた2枚組ライヴ作品も MICP-90040 として日本発売された。
EP『Superheroes』の日本盤は、2005年9月22日に MICP-10537 として発売された。マーキー/アヴァロンの作品情報によればミニ・アルバム扱いの6曲入りで、表題曲のほか「Spooks In The Attic」「Blessing In Disguise」「Judas At The Opera」「The Spirit」、そして最後に「Superheroes」のエピック・ヴァージョンが置かれている。同じ表題曲を通常の形とエピック版の両方で収める構成で、EDGUY らしい遊びがそのまま曲順になっている。
デビュー作は自腹だった。日本のレーベル、マーキー/アヴァロンのバイオによれば、EDGUY は「EVIL MINDED」と「CHILDREN OF STEEL」という2本のデモ・テープを作った後、1995年にアルバム『SAVAGE POETRY』を自費で制作している。Nuclear Blast の公式ページも同じ経緯を書いており、この自主制作盤が評価されたことで待望のレコード契約——AFM Records との契約——につながった。2000年に発表された『The Savage Poetry』は、その自主制作盤を現在の編成で丸ごと録り直したものである。
いまも続く5人編成が固まったのは、1998年の『Vain Glory Opera』を作り終えた直後である。マーキー/アヴァロンのバイオによれば、ドラムは『Kingdom of Madness』の頃にドミニク・ストールからフランク・リンデンタルへ替わり、『Vain Glory Opera』完成直後にさらにフェリックス・ボーンケへ交代した。同時に、それまでベースを兼任していたトビアス・ザメットがヴォーカルに専念し、専任ベーシストとしてトビアス・エクセルが加入する。以後この5人は変わっていない。2017年の25周年に際してザメットは、30代の終わりに25年のバンド史を振り返れる者は多くないし、しかも直近20年はメンバー・チェンジが1度もない、と書いている。
1997年の『Kingdom of Madness』には、ドイツのメタル・シーンのベテランがひとり客演している。GRAVE DIGGER のフロントマン、クリス・ボルテンダールで、Nuclear Blast の公式ページによれば大作「The Kingdom」にゲスト参加した。まだ10代の後半だったバンドが、シーンの先輩を1曲に引き込んだ形である。同ページはこのアルバムについて、前作からの明確な進歩が聴き取れると書いている。
バンドの出世作となったのは1998年の『Vain Glory Opera』である。マーキー/アヴァロンのバイオによれば、このアルバムはSTRATOVARIUS のティモ・トルキがミックスを担当し、BLIND GUARDIAN のハンズィ・キアシュがゲスト参加するという、当時の彼らにとっては大物からの後押しを受けて作られた。そしてこの作品でようやく日本盤のリリースも実現している。つまり日本の聴き手がEDGUYを店頭で手に取れるようになったのは、通算3作目からということになる。
EDGUY は長く AFM Records に在籍していたが、2000年代に入って Nuclear Blast へ移籍する。マーキー/アヴァロンのバイオによれば、2004年の『Hellfire Club』が移籍第一弾にあたる。Nuclear Blast 側の公式ページもこの契約以降キャリアが加速したと書いており、同じ2004年に出たEP『King Of Fools』とこのアルバムが新しい基準を作った、という評価を残している。日本ではこの時期に初のヘッドライナー・ツアーが実現した。
2005年秋にEP『Superheroes』を出したEDGUYは、間を置かずに次のフル・アルバム『Rocket Ride』を送り出している。Nuclear Blast の公式ページはこの時期を、甘いものには汗がつきものだ、という言い方で紹介したうえで、トビアス・ザメットの説明ではバンドにとってまったく負担ではなかったと書いている。移籍から1年半ほどのあいだにEP2枚とアルバム2枚を出したことになる密度で、レーベル移籍後にキャリアが加速したという同ページの記述を、そのまま裏づける並びになっている。
トビアス・ザメットが自分の小遣いで最初に買ったレコードは、KISS の『Dressed To Kill』だった。Louder の企画で語ったところによれば、母親と買い物に出たときにジャケットが目に留まったのだという。仮面をつけているのにスーツとネクタイという格好が奇妙で、危険にも見えるのに『ロッキー・ホラー・ショー』のようでもある、その妙な感じに惹かれて9歳で買った。ところが聴いてみるともっと重い音を期待していた分だけ拍子抜けしたという。それでもKISSのファンになったのは、当時は次の1枚を買う金が貯まるまで気が遠くなるほど時間がかかり、買ったレコードは何度も聴いて好きになるしかなかったからだ、と彼は説明している。
トビアス・ザメットには、EDGUY のほかにもうひとつメタル・オペラ・プロジェクト AVANTASIA がある。2020年に本人がSNSへ投稿した文章によれば、EDGUY はずっと自分の愛であり続けたが、1999年の初めに二つ目の愛として AVANTASIA を始めた、という順序になる。日本のレーベルのバイオはこの時期を、『The Savage Poetry』のあとに EDGUY が一度活動を休めた期間として説明しており、その間にザメットが『AVANTASIA - THE METAL OPERA』を制作した、と書いている。AVANTASIA で得た評価がそのまま EDGUY への注目度を押し上げ、活動再開後の2001年に『Mandrake』が出た。
2006年の『Rocket Ride』は、バンドにとって評価の難しい一枚になった。トビアス・ザメットは2008年の取材で、演奏とプロダクションという点ではEDGUYの作品の中で自分の一番のお気に入りだと述べつつ、曲がそれぞれ別の方向を向いていたとも認めている。彼が挙げた聴きどころの並びがそのまま散らばり具合を物語る——「Sacrifice」はEDGUYらしさをよく表し、表題曲はRAINBOWの「Spotlight Kid」のようになり得た、「The Matrix」は非常に現代的、「Wasted Time」はFIREHOUSEのよう、「Asylum」はDIOのよう。80年代のベスト盤のようだった、というのが本人の総括である。困ったのはその結果で、EDGUYをコメディ・バンドだと受け取った聴き手が現れた。自分たちはそうではない、と彼はわざわざ断っている。
2005年9月5日に出たEP『Superheroes』には、元 HELLOWEEN のミヒャエル・キスクがゲスト参加している。トビアス・ザメットの説明によれば、収録曲のひとつが重いQUEENとリヒャルト・ワーグナーとAVANTASIAを混ぜたような荘厳な速い曲になり、それならキスクに歌ってもらうしかないと考えたのだという。彼は音楽とは鳥肌が立つかどうかだと言い、キスクの歌を聴いて実際に何度も鳥肌が立ったと述べている。またこのEPは、バンドの意向でシングル1枚の値段で店頭に並べられた。
『Superheroes』のEPとDVDは同じ日に出たが、中身は表題曲以外まったく重ならない別の商品として作られた。トビアス・ザメットが公式サイトに書いた告知によれば、これは意図的なもので、二重に買わせないための設計だという。録音についても彼は同じ文章で、多くのバンドが何か月かけたかを誇るのに対して自分たちはベーシック・トラックを全員同時に、ライヴで録ったと書いている。そのうえで3本目・4本目のギターを重ね、失敗した箇所を直し、歌とキーボードを足す——それが彼らのやり方だ、と説明している。
『Superheroes』のEPは、ドイツのシングル・チャートで25位まで上がっている。トビアス・ザメットが2005年10月の取材で語ったところによれば、この時点で5週目のチャートインで、大手のアーティストに挟まれた位置につけていた。一方でテレビやラジオはほとんど掛けてくれなかったといい、その理由として彼は、放送されるための金銭的な取引に一切応じなかったことを挙げている。同じ取材では、スウェーデンでDVDがチャート2位に入り、映像も放送されたことにも触れている。
2011年の『Age of the Joker』は、ドイツのメディア・コントロール・チャートに3位で初登場した。バンドはこれを受けて、その週はトップ10に新譜が7枚入る今年最強のチャート週だったかもしれない、それでも自分たちを選んでくれたのはファンだ、という趣旨のコメントを出している。知らせが届いたのは、9月23日に始まるツアーのリハーサル中の練習部屋だった。ヨーロッパでの発売は2011年8月29日、Nuclear Blast からである。
『Age of the Joker』が録音されたのは、ハノーファーのペパーミント・パーク・スタジオである。SCORPIONS やフィル・コリンズが使ってきた場所で、バンド自身はここを、鳴りの素晴らしい部屋を持つ録音の神殿と評していた。収録は11曲で総演奏時間は1時間を超え、限定盤のデジパックにはさらに6曲を収めたボーナス・ディスクが付いた。
『Age of the Joker』から作られた「Robin Hood」のミュージック・ビデオは、エロール・フリン主演の映画『ロビンフッドの冒険』のパロディである。監督はAVANTASIA、NENA、HELLOWEEN の映像を手がけてきたオリヴァー・ゾンマー。森で大勢のエキストラを使って撮影された小さな叙事詩で、ドイツのテレビで活躍するコメディアン、ベルンハルト・ヘッカーが2つの主要な役を演じている。
10作目『Space Police: Defenders of the Crown』は、AVANTASIA の大規模ツアーの直後に作られている。トビアス・ザメットの説明によれば、12人編成のバンドで3大陸を回り、2013年8月に帰ってきた時点で、スタジオに戻って要点だけを突いた曲を書くのが心地よかったのだという。コンセプトもゲスト・ヴォーカルも無い、速くて重いヘヴィ・メタル・アルバムをバンドメイトと作りたかった——その飢餓感がアルバムを化け物にしたのだろう、というのが本人の見立てである。日程をきつく詰めたので疑ったり考え直したり、直す必要のないものに手を入れたりする時間が無かったことも、彼は良い方向に働いたと述べている。
『Space Police: Defenders of the Crown』のジャケットについて、トビアス・ザメットはレーベルからヘヴィ・メタルらしいアートワークを要求されたと明かしている。彼はその要求に応えた結果を、モンスター、無鉄砲なアクション・ヒーロー、ファンタジー宇宙風景、手描きであること、火、そしてその火が出ている武器——という6項目の箇条書きで説明した。要求どおりに作って堂々とやり切ること、それこそがメタルだ、という言い方で締めている。同じ発表でバンドは、この作品を自分たちの最も強く最も重いアルバムになると信じている、今後EDGUYが比較される基準になるだろうとも述べた。
『Space Police: Defenders of the Crown』の6曲目「Rock Me Amadeus」は、EDGUY のオリジナルではない。オーストリアのファルコが1985年に放った同名曲を、パワー・メタルの形に作り替えたカヴァーである。Louder はこれを、パワー・メタルと80年代ニュー・ウェイヴという滅多に交わらない二つの世界が衝突した例として紹介し、トビアス・ザメットにその発想の出どころを直接尋ねている。EDGUY のアルバムに他人の曲が1曲入っていること自体が珍しく、しかも選ばれたのがメタルとは縁遠い曲だった点が、当時の話題になった。
『Space Police』のボーナス・ディスクに入った「England」は、ドイツ人であるトビアス・ザメットがイングランドへ捧げたバラードである。Classic Rock 誌の取材で本人が語ったところによれば、この曲は IRON MAIDEN のスティーヴ・ハリスとブルース・ディッキンソン、ザ・ビートルズ、AVANTASIA でも共演した MAGNUM のボブ・キャトレイ、DEF LEPPARD、シェイクスピア、ゲーリー・リネカー、そしてミスター・ビーンを生んだ国への賛歌として書かれた。PK戦は過大評価されている、という一節まで入っている。曲の存在が伝わると母国の一部のファンからは反発があり、そんなにイングランドが好きなら移住しろという声も出たという。ザメットは、妻と実際に検討したことがあると答えている。
EDGUY をコメディ・バンドと誤解させてきた代表格が、2004年の『Hellfire Club』に入った「Lavatory Love Machine」だろう。Louder はこの曲を、マイル・ハイ・クラブ——飛行機の中で愛を交わすこと——の喜びを祝うために録音された曲として紹介している。トビアス・ザメットはこうしたユーモアについて、自分たちは滑稽すぎると思われることがあるが音楽そのものはきわめて真剣に取り組んでいる、と語り、笑いを楽しむことは否定しないと述べた。彼が好きなものとして挙げたのは『フォルティ・タワーズ』とモンティ・パイソンで、イギリス流のユーモア感覚が必ずしも通じるとは限らないことも自覚している。
『Space Police: Defenders of the Crown』は通常のCDのほかに、2枚組のデジブックと、さらに数を絞ったハードカヴァーの「イヤーブック」仕様でも出ている。イヤーブックは28.5cm四方の大判で、2枚のディスクに加え、バンドのアーカイヴから選んだ130枚を超える写真による歴史、ライナーノーツ、ツアー歴などを収めた。ボーナス・ディスクの中身は、未収録曲の「England」と「Aychim In Hysteria」、表題曲のプログレッシヴ・ヴァージョン、そして「Space Police」「Love Tyger」「Defenders Of The Crown」「Do Me Like A Caveman」のインストゥルメンタル・ヴァージョンである。
結成25年を記念して2017年7月14日に出た『Monuments』は、いわゆるベスト盤ではない。Nuclear Blast からの2CD+DVDで、25年分の代表曲に加えて完全な新曲と、それまで未発表だった古い音源が収められた。DVDには2004年の Hellfire Club ツアーの公演がまるごと1本と、バンドのビデオ・クリップ全曲が入る。限定盤にはさらに、バンド史全体から素材を集めた大判の写真集が付いた。トビアス・ザメットは、写真をすべて集める作業の中で、自分たちが作ってきたものをあらためて誇らしく思ったと述べている。
25周年のツアーは〈25 Years - The Best Of The Best: Monuments Tour 2017〉と名付けられ、キャリア全体から選んだベスト・セットで回った。7月にチェコの Masters Of Rock に出たあと、9月からドイツ語圏を縦断し、最終日は10月3日、彼らの地元フルダの Wartenberg-Oval である。25年を出発点の町で締めくくる日程だった。同じ時点でバンドは、40か国を超える国で公演し、アジア・オーストラリア・アメリカを何度も回り、10枚のスタジオ・アルバムと各国でのトップ10入りを積み上げていた。
EDGUY はパワー・メタルというジャンルの存続に貢献したのか——2025年の Louder の読者質問企画でそう問われたトビアス・ザメットは、貢献どころか自分たちがジャンルを生き延びさせたのだ、と笑いながら答えている。もっとも彼はすぐに、他にもバンドはいた、HELLOWEEN はずっといたし GAMMA RAY も STRATOVARIUS もいた、そのあと DRAGONFORCE のような第3の波が来て大きくなった、と付け加えた。そもそも自分が音楽を始めた頃には「パワー・メタル」という言葉自体を聞いたことがなく、ヘヴィ・メタルはその性質からしてパワフルなものだった、と彼は述べている。
メタル・オペラという形式を確立した当人でありながら、トビアス・ザメットはオペラそのものの音楽が苦手だと認めている。2025年の Louder の企画で語ったところによれば、物語も、演出も、語りの構造も、シャンデリアまで好きなのに、クラシック音楽は好きでも歌が始まった途端にサイレンのように聞こえて気持ちが離れてしまうのだという。同じ企画で、生きている人も故人も含めて誰と食事をしたいかと問われた彼は、フレディ・マーキュリーを挙げた。書き方も演じ方も、話すであろう内容も、その人生も、そして英国流の皮肉の効いたユーモアも興味深いから、というのが理由である。
若いバンドへの助言を求められたトビアス・ザメットの答えは、成功の作法ではなく失敗の選び方だった。2025年の Louder の企画で彼は、自分が感じたとおりにやれ、たいていは失敗するだろうが、好きなことで失敗するほうが、他人に言われて信じてもいなかったことで失敗するよりずっといい、と述べている。信じるものを手放さず、そこに向けて働くこと。自分が幸せになれることをやれば、うまくいったときに誰かを幸せにできる可能性が生まれる、というのが彼の言い方である。あわせて彼は、KISS のドラマー、エリック・シンガーから聞いた話を引いている——人生で一度チャンスをつかむと次の扉が開き、そこからさらに上へ行く機会が与えられる、というものだ。
トビアス・ザメットには、アルバム・ジャケットの好みに一貫した癖がある。青である。2017年の Louder の企画で好きなアートワークを問われた彼は、自分は青い色が好きで、それは AVANTASIA のディスコグラフィを見れば誰にでも分かる、と笑いながら答えた。具体例として挙げたのは MAGNUM のコンピレーション『Mirador』と、ミートローフの『Bat Out Of Hell II』で、どちらも理由は説明できないが色が好きなのだという。明日には別の答えになるかもしれない、と本人は付け加えている。
歌詞で現代を批判することはあっても、説教者として振る舞うつもりはない——トビアス・ザメットは2014年の取材でそう述べている。不安も心配も無いと言い切ったうえで、自分の歌詞は多くが個人的なこと、精神的なこと、あるいは単に楽しませるためのものだと説明した。批判するときも同じで、たとえば「Space Police」で音楽批評や俗物根性を叩くときでさえ、端から端まで笑みを浮かべ、舌を頬の内側に入れたまま小さな物語として語るようにしている、というのが彼の書き方である。
アメリカとドイツでは、メタルの聴かれ方が違う——トビアス・ザメットは2014年の取材でそう語っている。彼の見立てでは、アメリカの聴き手はブルースの要素をヨーロッパ大陸よりはるかに高く評価する。その傍証として彼が挙げたのは、AEROSMITH や VAN HALEN でさえドイツではゴールド・ディスクをほとんど受けていないという事実だった。一方でアメリカ公演では、ヨーロッパのバンドが回ってくること自体が珍しいためか客の熱狂ぶりが凄まじいという。ただし規模は落とさざるを得ず、クラブでの演奏に合わせて編成を絞る必要がある。そこでの心得として彼は、どれだけ小さなクラブでも全力でやり切ってアリーナ公演に変えてしまうことだ、と述べている。
AVANTASIA の2025年作『Here Be Dragons』の先行曲「Creepshow」がEDGUYっぽいと感じた、という読者の指摘に、トビアス・ザメットはこう答えている。意図してそうしたわけではない、自分のやることはたいてい出てくるままに出てくるのだ、と。ただし過去のAVANTASIAはたいてい、誤解された物憂げな少年についての話で、胸から降ろしたいものが山ほどあった。今回はただパーティー・ソングを書いてそのまま任せるのが楽しかったのだという。バンドのウェブマスターからは、新作は『Hellfire Club』と『Theater of Salvation』を思い出させると言われたそうで、彼自身は曲が似ているとは思わないが、若々しい勢いという点は共通していて、そこがEDGUY的に響くのだろうと述べている。