CHICKENFOOT

CHICKENFOOTの詳しいBiographyと全作品のディスコグラフィ。アルバムごとの個別ページも掲載するMETAL BOOSTのアーティストページ。

Biography

チキンフット (CHICKENFOOT)
スーパーグループの軌跡、音楽的構造、市場への影響

ヴァン・ヘイレン (Van Halen) の元メンバーであるサミー・ヘイガー (Sammy Hagar) とマイケル・アンソニー (Michael Anthony)、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ (Red Hot Chili Peppers) のドラマーであるチャド・スミス (Chad Smith)、そして世界的ギター・ヴィルトゥオーソであるジョー・サトリアーニ (Joe Satriani) という、ロック界の至宝とも言える4人によって構成されたこのバンドは、単なる「スーパーグループ」の枠を超え、70年代ハードロックの美学を現代的なプロダクションで再構築することに成功した稀有な事例である。

2. メンバー・プロファイルと結成前の背景 (Pre-Formation Context)

チキンフット (CHICKENFOOT) の音楽的アイデンティティを解明するためには、各メンバーが持ち寄ったバックグラウンドと、結成に至るまでの複雑な人間関係の絡み合いを理解することが不可欠である。

2.1 サミー・ヘイガー (Sammy Hagar) - "The Red Rocker"

担当: ボーカル、リズムギター
背景: モントローズ (Montrose) での鮮烈なデビュー以降、ソロアーティストとして「I Can't Drive 55」などのヒットを飛ばし、確固たる地位を築いていた。1985年から1996年、および2004年のヴァン・ヘイレン (Van Halen) 在籍時には、バンドを商業的な絶頂期へと導いた実績を持つ。
チキンフットにおける役割: バンドの発起人であり、精神的なリーダー。彼がメキシコのカボ・サン・ルーカス (Cabo San Lucas) に所有するクラブ「カボ・ワボ・カンティーナ (Cabo Wabo Cantina)」は、バンド結成の物理的な「揺りかご」となった。ヘイガーはビジネスマンとしても成功しており、テキーラブランド「カボ・ワボ (Cabo Wabo)」の創設者でもある。彼の「楽しむことを最優先する」という哲学は、チキンフットの活動方針の根幹を成している。

2.2 マイケル・アンソニー (Michael Anthony) - "The Anchor"

担当: ベース、バックグラウンド・ボーカル
背景: ヴァン・ヘイレン (Van Halen) の創設メンバーであり、その重厚なベースラインと、バンドのサウンドを決定づける高音域のコーラスワーク(ハイ・ハーモニー)で知られる。2004年のヴァン・ヘイレン再結成ツアー後のバンド内の確執、特にエディ・ヴァン・ヘイレン (Eddie Van Halen) との関係悪化により、彼は事実上バンドから排除される形となったが、サミー・ヘイガーとの絆は揺らぐことがなかった。
チキンフットにおける役割: ヘイガーとの長年の盟友関係はバンドの結束力の核である。チャド・スミスとのリズム隊は、ヴァン・ヘイレン時代以上に自由度の高いグルーヴを生み出し、彼のトレードマークであるジャック・ダニエル (Jack Daniel's) 型ベースも健在である。

2.3 ジョー・サトリアーニ (Joe Satriani) - "The Virtuoso"

担当: リードギター
背景: インストゥルメンタル・ロックギターの巨匠。「Surfing with the Alien」などの名盤で知られ、スティーヴ・ヴァイ (Steve Vai) やカーク・ハメット (Kirk Hammett) の師匠としても有名である。これまでソロ活動を主軸としてきた彼にとって、ボーカリストのいる本格的なロックバンドの一員となることは長年の夢であった。
チキンフットにおける役割: テクニカルな速弾きを楽曲に奉仕させる形で抑制しつつ、リフメイカーとしての才能を爆発させた。彼の参加により、チキンフットは単なるパーティ・ロック・バンドではなく、音楽的な深みと複雑さを兼ね備えたプログレッシブな側面を持つことになった。

2.4 チャド・スミス (Chad Smith) - "The Powerhouse"

担当: ドラムス
背景: レッド・ホット・チリ・ペッパーズ (Red Hot Chili Peppers) のドラマーとして、ファンクとパンクを融合させたスタイルで世界的な名声を博す。2008年当時、レッチリは活動休止期間中であり、スミスは新たな刺激を求めていた。
チキンフットにおける役割: ファンクの要素を持ち込みつつも、ジョン・ボーナム (John Bonham) を彷彿とさせるヘヴィなハードロック・ドラミングを展開した。彼のエネルギッシュなキャラクターはバンドの推進力となり、サトリアーニの緻密な楽曲に野性味を加える重要な要素となった。

3. 結成の経緯: カボ・ワボ (Cabo Wabo) からの飛翔

3.1 前史: プラネット・アス (Planet Us) プロジェクト (2002)

チキンフットの源流は、2002年に遡る。サミー・ヘイガーとマイケル・アンソニーは、ジャーニー (Journey) のギタリストであるニール・ショーン (Neal Schon)、ドラマーのディーン・カストロノヴォ (Deen Castronovo) と共に、「プラネット・アス (Planet Us)」 というプロジェクトを結成した。このプロジェクトには一時的にジョー・サトリアーニも関与していたが、サミー・ヘイガーとマイケル・アンソニーがヴァン・ヘイレンの2004年再結成ツアーに参加することになったため、プラネット・アスは短命に終わった。しかし、この時点でヘイガー、アンソニー、サトリアーニの3者の間には音楽的なコネクションが形成されていたのである。

3.2 偶然のジャムセッションと "The Other Half"

ヴァン・ヘイレンを脱退した後、ヘイガーは自身のバックバンド「ザ・ワボリタス (The Waboritas)」と共に活動していたが、そのショーの中にはアンソニーと共にヴァン・ヘイレン時代の楽曲を演奏する「ジ・アザー・ハーフ (The Other Half)」 (ヴァン・ヘイレンの「残りの半分」という意味)というコーナーがあった。メキシコのカボ・サン・ルーカス (Cabo San Lucas) にあるヘイガーのクラブ 「カボ・ワボ・カンティーナ (Cabo Wabo Cantina)」では、頻繁にジャムセッションが行われており、そこに休暇中のチャド・スミスが参加したことで化学反応が起きた。スミスはヴァン・ヘイレンの曲はあまり知らなかったが、モントローズ (Montrose) のファンであり、ヘイガーと意気ト合した。

3.3 ラスベガスでの運命的な夜 (2008年2月)

バンドとしての形が明確になったのは、2008年2月、ラスベガス (Las Vegas) のパームス・カジノ・リゾート (Palms Casino Resort) 内にあるパール・コンサート・シアター (Pearl Concert Theater) でのヘイガーの公演であった。アンコールでヘイガー、アンソニー、サトリアーニ、スミスの4人が初めて揃ってステージに立ち、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin) の 「Rock and Roll」、トラフィック (Traffic) の 「Dear Mr. Fantasy」、そしてフレディ・キング (Freddie King) の「Going Down」を演奏した。このパフォーマンスの圧倒的なエネルギーにより、彼らは単なるジャム・セッションを超えた「バンド」を結成することを決意した。ヘイガーは後に、「正しくやるなら、最高のギタリスト、つまりジョー・サトリアーニを連れてこなければならないと言った」と回想している。

3.4 バンド名 "CHICKENFOOT"の由来

「チキンフット (CHICKENFOOT)」というバンド名は、当初は真剣なものではなかった。マイケル・アンソニーとサミー・ヘイガーの証言によれば、3人(ヘイガー、アンソニー、スミス)でジャムを行っていた際、鶏の足跡には3本の爪があることから、「3人のメンバー」を象徴するものとしてこの言葉が出たという。また、この「鶏の足跡」の形状が、円枠のない「ピースマーク (Peace Symbol)」に似ているという視覚的な符合も、彼らのヒッピー的な平和愛好精神と共鳴した。彼らはこの名前を「馬鹿げた名前 (Silly name)」 と認識しており、よりクールな正式名称が決まるまでの仮称(プレースホルダー) として使っていた。しかし、噂が広まるにつれて「チキンフット」という名前が独り歩きして定着してしまい、最終的に「音楽が良ければ名前なんて関係ない (it all comes down to the music anyway)」という結論に至り、そのまま正式名称として採用された。

4. デビューアルバム 『CHICKENFOOT』の制作と成功 (2009)

4.1 レコーディング・プロセスとアンディ・ジョンズ

2008年の秋、4人はジョー・サトリアーニのツアーの合間を縫って、ヘイガーの自宅やジョージ・ルーカス (George Lucas) の所有するスカイウォーカー・サウンド (Skywalker Sound) スタジオ (カリフォルニア州マリン郡) でレコーディングを開始した。プロデューサーには、レッド・ツェッペリンの『IV』やローリング・ストーンズ (The Rolling Stones)、そしてヴァン・ヘイレンとの仕事で知られる伝説的なアンディ・ジョンズ (Andy Johns) が起用された。ジョンズの起用は、過度なデジタル編集を排し、70年代のハードロックが持っていた「部屋の空気感」や「バンドの生々しいグルーヴ」を捉えるためであった。

楽曲制作は、サトリアーニが持ち込んだ構造化されたデモに対し、ヘイガーが即興的にメロディと歌詞を乗せ、スミスとアンソニーがリズムを構築するというスタイルで行われた。「Soap on a Rope」などは、サトリアーニのリフに対してヘイガーがその場で歌詞を叫び、ジャムセッションの熱量がそのままパッケージされた好例である。

4.2 アートワークの革新: 熱感応インク

デビューアルバム 『CHICKENFOOT』は2009年6月5日にリリースされた。このアルバムのフィジカル (CD/LP) パッケージは非常にユニークで、初回盤には「熱感応インク (Heat-sensitive ink)」が使用されていた。常温(摂氏約29度以下)では黒一色のジャケットだが、手で触れて温めると、下からバンドのロゴやメンバーの写真が浮き出る仕組みになっていた。これは、違法ダウンロードやデジタル配信が主流になりつつある音楽業界において、物理メディアを所有するファンに対して「特別な体験」と「付加価値」を提供したいというバンド側の強い意志の表れであった。

4.3 商業的成功と市場の反応

アルバムは発売直後から大きな反響を呼んだ。

  • 米国: ビルボード200 (Billboard 200) で初登場4位を記録し、インディペンデント・アルバムおよびハードロック・アルバム・チャートでは1位を獲得した。売上は50万枚を超え、RIAAよりゴールドディスク認定を受けた。
  • 英国: UKアルバムチャートで23位、ロック&メタル・アルバム・チャートでは1位を記録。
  • 日本: オリコン洋楽チャート等で上位にランクインし、総合チャートでも健闘を見せた (詳細な順位データは後述のディスコグラフィ節を参照)。

批評家からは、「単なるスーパーグループのギミックではなく、本物のバンドサウンドがある」と高く評価された。特に、サトリアーニが自身の超絶技巧を抑制し、バンド全体のリズムと楽曲構成に奉仕している点が好意的に受け止められた。

5. ツアー活動: "Road Test" からアリーナへ (2009-2010)

5.1 "Road Test" ツアー (2009年5月)

アルバムリリースに先駆け、バンドは2009年5月に「Road Test (ロード・テスト)」と銘打った小規模なクラブツアーを北米で行った。

  • 目的: アリーナクラスの会場で演奏する前に、観客との密接な距離でバンドの結束を固め、新曲の反応をダイレクトに確認すること。
  • 会場: シアトルの「El Corazon」、サンフランシスコの「The Fillmore」、ウェスト・ハリウッドの「The Roxy Theatre」など、歴史的な小規模ライブハウスが選ばれた。
  • 反響: チケットは即日完売となり、転売防止のためにIDチェックが導入されるほどの熱狂を生んだ。

5.2 ワールドツアーと映像作品

アルバム発売後、バンドはヨーロッパのフェスティバル (モントルー・ジャズ・フェスティバル等)や北米を回る大規模なツアーを展開した。このツアーの模様は、映像作品『Get Your Buzz On Live』 として2010年にリリースされた。ライブでは、アルバム収録曲に加え、ディープ・パープルの「Highway Star」 やモントローズの「Bad Motor Scooter」などのカバー曲も披露され、往年のロックファンを狂喜させた。特にマイケル・アンソニーがジャック・ダニエルのボトル形状をしたベースギターでソロを弾くパフォーマンスは、ショーのハイライトとなった。

6. セカンドアルバム 『CHICKENFOOT III』 と進化(2011)

6.1 なぜ "II" ではなく "III" なのか?

2011年9月27日、バンドは2作目のスタジオアルバムをリリースしたが、『CHICKENFOOT III』であった。

  • 理由: 音楽業界には「ソフォモア・ジンクス (2作目のジンクス)」という言葉があり、2枚目のアルバムは失敗しやすいと言われている。バンドはあえて「2」を飛ばして「3」と名付けることで、このジンクスを回避しようとするユーモアを見せた。
  • ヘイガーの解釈: サミー・ヘイガーは「楽曲の完成度が高く、あたかも3枚目のアルバムを作っているような熟成感があった。我々は2枚目のアルバムを作る段階を飛び越えたのだ」とも語っている。

6.2 音楽的進化とプロダクションの変化

本作ではプロデューサーにマイク・フレイザー (Mike Fraser) が起起用された。フレイザーはAC/DCやメタリカ、そしてヴァン・ヘイレンのエンジニアとしての実績があり、前作のアンディ・ジョンズによる「70年代的な荒々しさ」に対し、よりソリッドで低音の効いたモダンな音作りを実現した。楽曲面でも、社会的なメッセージを含んだ 「Three and a Half Letters」(経済的困窮にあえぐファンからの手紙を歌詞に引用)や、サトリアーニがピアノで作曲したバラード 「Come Closer」など、前作以上の深みと多様性を見せた。

6.3 3Dパッケージ戦略

前作の熱感応インクに続き、本作の初回盤ジャケットには3D仕様が採用された。アルバムには専用の3Dメガネが同梱されており、ジャケットやブックレットのアートワークを立体的に楽しむことができる仕掛けとなっていた。

7. ドラマー交代劇と活動の変遷(2011-2012)

7.1 チャド・スミスのスケジュール競合

アルバム『III』のリリース時期、チャド・スミスは本籍地であるレッド・ホット・チリ・ペッパーズのニューアルバム 『I'm with You』のリリースと、それに伴う大規模なワールドツアーのスケジュールに拘束されていた。両バンドの活動時期が完全に重なってしまったため、スミスはチキンフットのツアー参加することが物理的に不可能となった。

7.2 ケニー・アロノフの加入と "Different Devil Tour"

スミス自身が後任として指名したのが、ジョン・メレンキャンプ (John Mellencamp) やジョン・フォガティ (John Fogerty) 等のドラマーとして知られるケニー・アロノフ (Kenny Aronoff) であった。

  • 選考理由: スミスはアロノフを選んだ理由として、「彼も自分と同じようにドラムを“演奏する”のではなく、“死ぬほどひっぱたく (beats them to death)”タイプだからだ。毎晩ドラムセットを買い替えなきゃいけないようなパワーが必要なんだ」と語っている。
  • ツアー活動: アロノフを迎えたバンドは、2011年11月の「Road Test 2011」および2012年5月から6月にかけての「Different Devil Tour」を行った。アロノフの正確無比かつパワフルなドラミングは高く評価されたが、ファンやメンバーの間では、チャド・スミス独自のグルーヴ感 (特にサトリアーニやアンソニーとの独特の"溜め"のある絡み)との違いを指摘する声もあり、スミスの復帰を望む声は根強かった。

8. 活动休止、再結集、そして現在 (2013-2025)

8.1 ライブ・アルバム『LV』と活動休止 (2012-2015)

2012年12月、ライブ・アルバム『LV』をリリース。これには2012年のアロノフ参加ツアーの音源と、2009年のスミス参加ツアーのレア音源が収録された。その後、各メンバーはそれぞれのメイン活動 (サトリアーニのソロ、レッチリ、ヘイガーのソロバンド 「The Circle」等)に戻り、チキンフットは事実上の活動休止状態に入った。

8.2 一時的な再結成と新曲"Divine Termination" (2016-2017)

2016年5月、ネバダ州サウス・レイク・タホ (South Lake Tahoe) のハラーズ (Harrah's) にて、チャド・スミスを含むオリジナル・ラインナップで2日限りの再結成ライブが行われた。この再結集に合わせて、バンドは5年ぶりとなる新曲「Divine Termination (ディヴァイン・ターミネーション)」をレコーディングした。この曲は2017年3月にリリースされた初のベストアルバム 『Best + Live』に収録された。サトリアーニはこの曲を「骨を砕くような、地獄から響くロック (bone crunching, hell raising rock)」 と評しており、バンドのクリエイティビティが枯渇していないことを証明した。

8.3 2024-2025年の動向: 新たな胎動

2024年、サミー・ヘイガーは「The Best of All Worlds Tour」 と題したツアーを開始した。このツアーにはマイケル・アンソニーとジョー・サトリアーニが参加しており、ドラムにはジェイソン・ボーナム (Jason Bonham)(一部公演ではケニー・アロノフが代役)が座った。実質的に「チャド・スミス抜きのチキンフット」とも言えるこのラインナップで、ヴァン・ヘイレンの楽曲と共にチキンフットの楽曲も演奏され、バンドの魂が生き続けていることを示した。

2025年に向けた最新情報: 2025年1月、マイケル・アンソニーは自身のソーシャルメディアでの新年の挨拶において、「2025年には素晴らしい計画がある」と語り、ウインクと共に「たぶん、新しいチキンフットの音楽も (Maybe some new CHICKENFOOT music)」と示唆した。これに対しサミー・ヘイガーも 「2025年は我々にとって久しぶりの最高の音楽の年になる」と肯定的なコメントを寄せている。また、サトリアーニもインタビューで「新曲のデモが存在し、チャドのドラムとサミーのボーカルが入っている」と明かしており、水面下での制作が進行している可能性が極めて高い。

9. 音楽的スタイルとメンバーの貢献 (Musical Style & Member Analysis)

チキンフットの音楽は、各メンバーの個性が絶妙なバランスで融合した結果である。

メンバー 貢献とスタイルの特徴
Sammy Hagar 即興性とリリックの自由度: ヘイガーはサトリアーニの複雑なリフに対し、直感的なメロディを乗せる能力に長けている。「Soap on a Rope」 のような曲では、彼の即興的なヴォーカル・パフォーマンスがそのまま楽曲の骨格となった。彼の歌詞は、パーティや車、女性といった伝統的なロックのテーマに加え、「Avenida Revolucion」や「Three and a Half Letters」のような社会的・政治的テーマも扱う。
Joe Satriani テクニックの抑制とリフの構築: ソロ活動ではインストゥルメンタル・ギターの限界に挑むサトリアーニだが、チキンフットでは「歌のためのギター」に徹している。彼はレッド・ツェッペリンやディープ・パープルを意識したブルージーでヘヴィなリフを提供し、ソロパートでもメロディを重視したプレイを展開する。
Michael Anthony "The Anchor" とハーモニー: 彼のベースはシンプルながらも強靭で、バンドのサウンドの底を支えている。そして何より、ヴァン・ヘイレン・サウンドの要であった彼の高音域コーラス (バックグラウンド・ボーカル)が、チキンフットのサウンドに「アリーナ・ロック」の輝きを与えている。
Chad Smith グルーヴとパワー: スミスはファンク由来の跳ねるようなグルーヴを持ち込みつつ、ジョン・ボーナム直系の重いビートを叩き出す。彼とアンソニーのリズム隊は、サトリアーニが自由に飛び回るための強固な土台を形成している。

10. チキンフット・ディスコグラフィ (Comprehensive Discography)

以下に、チキンフットの全公式リリース作品を詳細に記述する。日本盤独自のボーナストラックや仕様についても網羅している。

10.1 スタジオ・アルバム (Studio Albums)

1st Album: CHICKENFOOT (チキンフット)
  • リリース日: 2009年6月5日(欧州/米国), 2009年7月8日(日本)
  • レーベル: Redline (米国), earMUSIC (欧州), WHD Entertainment (日本)
  • 規格品番(日本盤): IECP-10190(通常盤), IECP-20165 (SHM-CD再発など)
  • チャート最高位:
    • US Billboard 200: 4位
    • US Hard Rock Albums: 1位
    • UK Albums Chart: 23位
    • Oricon (日本): 洋楽チャート等で上位、総合チャートでもトップ50圏内での推移が確認される。
  • 特徴: 初回盤は熱感応インクジャケット (Heat-sensitive artwork)。
曲順 タイトル(英語/カタカナ) 備考・解説
1 Avenida Revolucion (アヴェニダ・レボリューション) メキシコ国境の街ティフアナのメインストリートを題材にした、政治的緊張感漂うヘヴィなナンバー。
2 Soap on a Rope (ソープ・オン・ア・ロープ) ライブ感溢れるリフ主体の楽曲。レッド・ツェッペリンの「Black Dog」 のようなコール&レスポンス構造を持つ。
3 Sexy Little Thing (セクシー・リトル・シング) キャッチーなシングル曲。サトリアーニのポップセンスとヘイガーの艶のあるボーカルが融合
4 Oh Yeah (オー・イェー) 最初のリハーサルで生まれた、バンドを象徴するアンセム。ライブでの合唱定番曲。
5 Runnin' Out (ランニン・アウト)
6 Get It Up (ゲット・イット・アップ) モントローズ時代を彷彿とさせるストレートなロックンロール。
7 Down the Drain (ダウン・ザ・ドレイン) 暗く重厚なブルース・ロック。ジャムセッションから発展し、ほぼワンテイクで録音された。
8 My Kinda Girl (マイ・カインダ・ガール) 軽快なブギー・ロック
9 Learning to Fall (ラーニング・トゥ・フォール) サトリアーニの叙情的なギターが光るミドルテンポの楽曲。
10 Turnin' Left (ターニン・レフト) NASCAR (左回りコース)をメタファーにした疾走曲
11 Future in the Past (フューチャー・イン・ザ・パスト) 壮大なスケールのラストナンバー。ツェッペリン的な展開を見せる。
12 Bitten by the Wolf (ビトゥン・バイ・ザ・ウルフ) 日本盤およびデラックス盤ボーナストラック。ブルージーなアコースティック・イントロが特徴。
2nd Album: CHICKENFOOT III (チキンフット III)
  • リリース日: 2011年9月27日(米国), 2011年9月21日(日本)
  • レーベル: eOne Music (米国), earMUSIC (欧州), WHD Entertainment (日本)
  • チャート最高位:
    • US Billboard 200: 9位
    • US Independent Albums: 2位
    • Oricon (日本): 62位
  • 特徴: 初回盤は3Dジャケット仕様 (3Dメガネ同梱)。
曲順 タイトル(英語/カタカナ) 備考・解説
1 Last Temptation (ラスト・テンプテーション) メロディアスでラジオフレンドリーな楽曲。サトリアーニがアコギで作ったデモが元になっている
2 Alright Alright (オーライト・オーライト)
3 Different Devil (ディファレント・デヴィル)
4 Up Next (アップ・ネクスト)
5 Lighten Up (ライテン・アップ)
6 Come Closer (カム・クローサー) サトリアーニがピアノで作曲した、深みのあるバラード。ヘイガーのボーカル表現の新境地。
7 Three and a Half Letters (スリー・アンド・ア・ハーフ・レターズ) 職を失ったファンからの手紙を朗読するようなスタイルで歌われる、シリアスな社会的メッセージソング。
8 Big Foot (ビッグ・フット) 先行シングル。シンプルで力強い、これぞチキンフットというロックナンバー。
9 Dubai Blues (ドバイ・ブルース)
10 Something Going Wrong (サムシング・ゴーイング・ロング)
11 No Change (ノー・チェンジ) 日本盤および一部海外エディションにおけるボーナストラック。

10.2 ライブ・アルバム&コンピレーション (Live Albums & Compilations)

LV (Live)

  • リリース日: 2012年12月7日
  • 内容: 2012年の「Different Devil Tour」(ドラムはケニー・アロノフ) からのライブ音源と、2009年のツアー音源 (ドラムはチャド・スミス)を収録したレア・トラック集
  • 主要収録曲:
    • Side A (2012 Tour with Kenny Aronoff): Lighten Up, Big Foot, Last Temptation, Something Going Wrong.
    • Side B (2009 Tour with Chad Smith): Oh Yeah, Down the Drain, Turnin' Left, My Kinda Girl, Learning to Fall.

Best + Live (ベスト+ライブ)

  • リリース日: 2017年3月10日
  • 構成: 2枚組(Disc 1: ベスト盤+新曲/ Disc 2: ライブ盤)
  • 新曲: Divine Termination (ディヴァイン・ターミネーション) - 重厚なリフとサトリアーニのテクニカルなソロが融合した新曲。
  • Disc 2 (Live) 内容: 2009年のフェニックス公演を中心としたライブ音源。映像作品『Get Your Buzz On Live』の音源化に近い構成だが、Highway Star (Deep Purpleカバー) や Bad Motor Scooter (Montroseカバー) などのライブテイクもボーナスとして収録されている。

10.3 映像作品 (Videography)

Get Your Buzz On Live (ゲット・ユア・バズ・オン・ライブ)

  • リリース日: 2010年4月(米国/欧州)
  • フォーマット: DVD, Blu-ray
  • 収録内容: 2009年9月23日のアリゾナ州フェニックス (Dodge Theatre) 公演を中心に、アトランタのタバナクル (Tabernacle) 公演、コロラドのロック・ジャム (Rock Jam)公演のハイライトを収録。
  • トラックリスト: "Avenida Revolucion", "Sexy Little Thing", "Soap on a Rope", "My Kinda Girl", "Down the Drain", "Bitten by the Wolf", "Oh Yeah", "Learning to Fall", "Get It Up", "Turnin' Left", "Future in the Past", "Bad Motor Scooter", "My Generation" (The Who cover)。
  • 特徴: アダム・ロス (Adam Roth) 監督によるドキュメンタリータッチの映像や、バックステージの様子、メンバーへのインタビューも豊富に収録されている。

11. Conclusion

チキンフットは、21世紀のロックシーンにおいて、真の「スーパーグループ」がどうあるべきかを示した稀有な存在である。CHICKENFOOTは現在進行形のバンドとして、アルバム制作とライブ活動に全力を注いだ。2025年に向けた再始動の予兆は、CHICKENFOOTの物語がまだ完結していないことを示唆しており、ファンは再び「鶏の足跡」が世界中に刻まれる日を心待ちにしている。

Albums

Chickenfoot III CD
/

豪快なリフと即興性を備え、スーパーグループの演奏力を生々しく刻むハード・ロック作。

Chickenfoot CD
/

熟練プレイヤーの即興的な熱量を、太いリフとブルージーなグルーヴで鳴らしたスーパーグループ作品。