STONE SOUR BIOGRAPHY
プロフィール
| 結成 | 1992年、アイオワ州デモイン |
|---|---|
| 出身 | アメリカ |
| ジャンル | オルタナティヴメタル、ハードロック |
Biography
STONE SOUR (ストーン・サワー)
バイオグラフィ・ディスコグラフィ、活動軌跡
1. アイオワが生んだもう一つの怪物
STONE SOUR (ストーン・サワー)は、アメリカ合衆国 Iowa (アイオワ州) Des Moines (デモイン)出身のオルタナティヴ・メタル/ハードロック・バンドである。一般的には、世界的なニュー・メタル・バンドであるSLIPKNOT (スリップノット)のフロントマン、Corey Taylor (コリィ・テイラー)が率いるバンドとして知られているが、その結成は SLIPKNOTよりも古く、1992年に遡る。
STONE SOURの音楽性は、SLIPKNOTのような混沌としたアグレッションや覆面による演劇性とは対照的に、よりメロディックで伝統的なハードロック、ポスト・グランジ、ヘヴィ・メタルの要素を色濃く反映している。グラミー賞への複数回のノミネートやゴールド・プラチナ認定の実績が示す通り、STONE SOURは単なる「サイド・プロジェクト」の枠を超え、現代アメリカン・ロック・シーンにおける確固たる地位を築き上げた。
2. バイオグラフィー: 結成から現在までの歴史的変遷
2.1 第1期: 創生期とデモインでの活動 (1992年-1997年)
STONE SOUR の歴史は、1992年のDes Moines (デモイン) に始まる。バンドの創設者は、当時まだ無名であったボーカリストのCorey Taylor (コリィ・テイラー) とドラマーのJoel Ekman (ジョエル・エクマン)であった。
バンド名の由来
「STONE SOUR」というバンド名は、彼らが地元のバーにいた際、カクテルメニューにあった同名のドリンク (ウィスキー1、オレンジジュース1、サワーミックス少々からなるアルコール飲料)を見つけた Corey Taylor が、その響きを気に入ったことに由来するとされている。このエピソードは、バンドが当初持っていた荒削りでロックンロール的なアティチュードを象徴している。
初期ラインナップとデモ音源
結成直後、Taylorの長年の友人である Shawn Economaki (ショーン・エコノマキ)がベーシストとして加入した。このトリオがバンドの核となり、ギターに関しては流動的なメンバーチェンジを繰り返しながら、地元のクラブやバーでのライブ活動を展開していった。
この時期、バンドは2本のデモテープを制作している。
- 1992年デモ: バンド初期の衝動的なサウンドが記録されている。
- 1994年デモ: 音楽的な方向性を模索していた時期の記録である。
1995年、バンドにとって極めて重要な転機が訪れる。後にSLIPKNOTでもTaylorと共に活動することになるギタリスト、Jim Root (ジム・ルート)の加入である。Root の加入により、バンドのサウンドはより重厚かつテクニカルなものへと進化した。この「クラシック・ラインナップ」とも言える編成で、STONE SOURは1996年にもう1本のデモテープを録音した。この1996年のデモに含まれていた楽曲の多くは、後に2002年のデビュー・アルバム 『STONE SOUR』で再録音され、世に出ることとなる。
1997年の解散と SLIPKNOT への合流
しかし、1997年にバンドは突如として活動を停止し、解散状態となる。その理由は、当時デモインのシーンで急激に頭角を現していた SLIPKNOT (スリップノット)の存在であった。Corey Taylor が SLIPKNOT のボーカリストとして引き抜かれ、その1年後には Jim Root も同バンドに加入したためである。Shawn Economaki はその後、SLIPKNOT のステージ・マネージャーとして裏方で支える道を選び、Joel Ekman はデモインに残り家庭を持つ道を選んだ。こうして、STONE SOUR の名は一度歴史から消え去ることとなった。
2.2 第2期: 再結成と鮮烈なデビュー (2000年-2005年)
再始動のきっかけ: 「Project X」
2000年、SLIPKNOT がデビュー・アルバムのツアーを終え、一時的な休息期間に入っていた頃、ギタリストのJosh Rand (ジョシュ・ランド)が Corey Taylor に接触した。RandはTaylor と共に新しい楽曲制作を開始し、当初このプロジェクトは「Project X」や「Super Ego」といった仮称で呼ばれていた。
制作された楽曲 (およそ14曲)は、SLIPKNOT のような極端なブルータリティとは異なり、メロディと楽曲構成を重視したハードロックであった。Taylor はこの音楽性がかつての STONE SOUR の延長線上にあると感じ、オリジナルのバンド名を復活させることを決意した。彼らはかつての仲間である Shawn Economaki と Joel Ekman を呼び戻し、さらにJim Root も再加入させることで、バンドを再構築した。
デビュー・アルバム 『STONE SOUR』 と成功
バンドはアイオワ州シーダーフォールズ (Cedar Falls) の Catamount Studios でレコーディングを行い、2002年8月27日に Roadrunner Records からセルフタイトルのデビュー・アルバム 『STONE SOUR』をリリースした。
このアルバムからのシングル 「Bother」は、映画『スパイダーマン』 (Spider-Man) のサウンドトラックに収録されたことで爆発的なヒットを記録した。当初は Taylor のソロ名義でクレジットされていたこの楽曲は、アコースティック・ギターとボーカルのみのバラードであり、SLIPKNOT の「叫ぶ男」としてのTaylor のイメージを覆すものであった。アルバムはアメリカでゴールドディスク (50万枚以上のセールス)を獲得し、シングル 「Get Inside」と「Inhale」は2年連続でグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門にノミネートされた。
バンドは Sinchや Chevelle といったバンドと共に約6ヶ月間のツアーを行ったが、Taylor と Root が SLIPKNOT の次作 『Vol. 3: (The Subliminal Verses)』の制作に戻るため、再び一時的な活動休止に入った。
2.3 第3期: 『Come What(ever) May』とJoel Ekman の脱退 (2006年-2009年)
Joel Ekman の悲劇と Roy Mayorga の加入
2006年1月、バンドはセカンド・アルバムのレコーディングを開始したが、その最中にドラマーの Joel Ekman がバンドを離脱するという事態が発生した。離脱の理由は、彼の9歳になる息子 Isaac Ekman (アイザック・エクマン) が脳腫瘍(脳癌)と診断されたため、家族のケアに専念する必要があったからである。悲しいことに、Isaac はその後亡くなっている。
バンドは後任として、元Soulfly (ソウルフライ)のドラマーである Roy Mayorga (ロイ・マイヨルガ)を迎えた。Mayorgaの加入により、バンドのリズム・セクションはより強固でダイナミックなものへと変化した。
『Come What(ever) May』の商業的成功
2006年8月1日にリリースされた2ndアルバム 『Come What (ever) May』 (カム・ホワット・エヴァー・メイ)は、全米ビルボード・チャートで初登場4位を記録する大ヒットとなった。プロデューサーには Nick Raskulinecz を迎え、ロサンゼルスStudio 606で録音された。
シングル「Through Glass」はビルボード・メインストリーム・ロック・チャートで1位を獲得し、ポップ・チャートであるHot 100でも39位に食い込むなど、クロスオーバーなヒットとなった。アルバムはアメリカ、カナダでプラチナまたはゴールド認定を受け、バンドの地位を不動のものにした。
2007年には初のライブ・アルバム 『Live in Moscow』をデジタル配信およびスペシャル・エディションの特典としてリリースし、そのライブ・パフォーマンスの質の高さも証明した。
2.4 第4期: 『Audio Secrecy』と Shawn Economaki の脱退 (2010年-2011年)
2010年、バンドは3rdアルバム 『Audio Secrecy』 (オーディオ・シークレシー)をリリースした。このアルバムでは、よりメロディアスで重厚なラジオ・ロック・サウンドへと接近し、メンバー全員がソングライティングにクレジットされるなど、バンドとしての結束が強調された。
しかし、2011年のツアー中、創設メンバーの一人であるベーシスト Shawn Economaki が「個人的な問題」を理由にツアーを離脱し、2012年に正式に脱退したことが発表された。脱退の詳細は完全には明らかにされていないが、一部のインタビューやファンの推測では、バンド内の人間関係 (特に Josh Randとの確執など)や音楽的な方向性の違いが示唆されている。
Economaki の脱退に伴い、ツアー・ベーシストとして Johny Chow (ジョニー・チョウ)が参加することとなった。
2.5 第5期: 『House of Gold & Bones』 二部作と Jim Root の解雇 (2012年-2014年)
野心的なコンセプト・アルバム
2012年から2013年にかけて、STONE SOURはキャリア最大の野心作であるコンセプト・アルバム『House of Gold & Bones』 (ハウス・オブ・ゴールド・アンド・ボーンズ)を2部作として発表した。
- Part 1: 2012年10月リリース。
- Part 2: 2013年4月リリース。
このアルバムのレコーディングでは、まだ正式メンバーではなかった Johny Chow に代わり、Skid Row (スキッド・ロウ)のベーシストである Rachel Bolan (レイチェル・ボラン)がスタジオ・ミュージシャンとしてベースを担当した。物語は Corey Taylor 自身が執筆し、Dark Horse Comics からコミック版も出版された。
Jim Root の解雇劇
『House of Gold & Bones』の成功の裏で、バンド内には亀裂が生じていた。2013年後半、Jim Root はSLIPKNOT の次期アルバム制作に専念するため、STONE SOUR の北米ツアーに参加しないことを決めた。しかし、2014年5月、Root は自身が STONE SOUR から解雇されたことをファンへの返信で明らかにした。「もうそのバンドにはいない。俺の決断ではない。嬉しくはないが (Not happy about it)」と述べ、解雇が電話一本で告げられたことへの不満を露わにした。
Root は後のインタビューで、バンド (特に SLIPKNOT との両立)におけるスケジュールの対立や、音楽的な方向性の違い、そして「互いに殺し合うことになる前に離れたほうが良かった」という旨の複雑な心境を語っている。この出来事は、両バンドのファンに大きな衝撃を与えた。
2.6 第6期: 新体制と 『Hydrograd』 (2014年-2019年)
Root の後任として、それまでツアー・サポートを務めていた Christian Martucci (クリスチャン・マルトゥッチ)が正式ギタリストとして加入した。また、ツアー・ベーシストであったJohny Chow (ジョニー・チョウ) も正式メンバーへと昇格した。
新体制となったバンドは、結束を高めるためにカバーEPシリーズ 『Meanwhile in Burbank...』と『Straight Outta Burbank...』 を2015年にリリースした。
2017年6月、通算6枚目のスタジオ・アルバム『Hydrograd』 (ハイドログラッド)をリリース。このアルバムは、コンセプト重視だった前作から一転し、ライブ感重視のストレートなロックンロール・アルバムとなった。カリフォルニア州の Sphere Studios で録音され、"オーバーダブなし"の生々しいサウンドが特徴である。
2019年には、バンド初の公式ライブ・アルバム 『Hello, You Bastards: Live in Reno』(ハロー、ユー・バスターズ: ライヴ・イン・リノ)をリリースし、オーバーダブを一切行わない完全なライブ音源をファンに届けた。
2.7 現在: 無期限活動休止 (2020年-現在)
2020年、Corey Taylor はインタビューにおいて、STONE SOURが「無期限の活動休止 (indefinite hiatus)」 に入ったことを明言した。Taylor は「STONE SOUR は今のところ役割を終えた (run its course for now)」と述べ、自身はソロ・プロジェクト (CMFT) や SLIPKNOT の活動に注力する意向を示した。
メンバー間の不仲が決定的理由ではないとされているが、Taylor は過去のバンドメンバーとの間にまだ解決すべき問題があることも示唆している。現在、各メンバーはそれぞれのプロジェクトで活動しており、再始動の目処は立っていない。
2026年11月20日には、『Audio Secrecy』の発売15周年を記念した3枚組『Audio Secrecy (15th Anniversary Edition)』が海外で発売(日本盤はワーナーミュージック・ジャパンから12月9日発売)。ディスク2の冒頭には、アルバム制作時のデモから生まれた未発表曲を、Corey Taylor が新たに書いた詞で、アルバム当時のメンバーが2026年に録音した「Full Of Empty (2026 Version)」が入り、ディスク3には2010年11月7日のイギリス・ブライトン・センター公演が収められている。
3. メンバー詳細プロフィール
STONE SOUR のサウンドを形成した主要メンバーについて詳述する。
現メンバー (活動休止時点)
-
Corey Taylor (コリィ・テイラー)
担当: ボーカル、ギター、ピアノ
在籍期間: 1992-1997, 2000-2020
役割: バンドの創設者であり絶対的なフロントマン。SLIPKNOT での叫びとは対照的に、STONE SOUR ではクリーン・ボーカルを多用し、作詞作曲の中心的役割を担う。 -
Josh Rand (ジョシュ・ランド)
担当: リズムギター、リードギター
在籍期間: 2000-2020 (1993年のデモ期にも関与)
役割: 2000年の再結成を主動した人物。STONE SOUR のリフ・メイカーであり、Jim Root 脱退後はバンドのサウンド・ディレクションを大きく担った。几帳面な性格で知られ、楽曲のアレンジにおいて緻密な構成を好む。 -
Roy Mayorga (ロイ・マイヨルガ)
担当: ドラムス、パーカッション、シンセサイザー
在籍期間: 2006-2020
役割: 元 Soulfly。Joel Ekman の後任として加入。『Come What(ever) May』以降のドラム・サウンドを支えるだけでなく、シンセサイザーやピアノのアレンジにも貢献し、バンドの音楽的幅を広げた。 -
Johny Chow (ジョニー・チョウ)
担当: ベース、バックボーカル
在籍期間: 2012-2020 (2012-2014はツアーメンバー)
役割: 元 Fireball Ministry, Cavalera Conspiracy。Shawn Economaki の後任として加入し、『Hydrograd』 から作曲にも本格的に参加。アグレッシブなステージングが特徴。 -
Christian Martucci (クリスチャン・マルトゥッチ)
担当: リードギター、バックボーカル
在籍期間: 2014-2020
役割: Jim Rootの後任。パンク・ロックやクラシック・ロック (Dee Dee Ramone のバンドなど)のバックグラウンドを持ち、バンドにルーズでロックンロールなフィーリングをもたらした。
旧メンバー
-
Jim Root (ジム・ルート)
担当: リードギター (1995-1997, 2000-2014)
脱退理由: バンド側からの解雇。SLIPKNOT とのスケジュールの兼ね合いや音楽的相違が原因とされる。 -
Shawn Economaki (ショーン・エコノマキ)
担当: ベース (1992-1997, 2000-2011)
脱退理由: 個人的な問題(詳細は非公表)により脱退。初期の楽曲制作に大きく貢献した。 -
Joel Ekman (ジョエル・エクマン)
担当: ドラムス (1992-1997, 2000-2006)
脱退理由: 息子の脳腫瘍闘病を支えるため脱退。
サポート・ゲストメンバー
Rachel Bolan (レイチェル・ボラン): Skid Row のベーシスト。『House of Gold & Bones』 2部作のレコーディングでベースを担当。
4. 『House of Gold & Bones』の詳細分析
STONE SOUR のキャリアにおけるハイライトと言えるのが、2枚組コンセプト・アルバム 『House of Gold & Bones』である。
ストーリーの概要
この作品は、Corey Taylor が執筆した短編小説を基にしている。主人公である「The Human (ザ・ヒューマン)」が、自身の内面世界を具現化した異世界で目覚め、Allen (アレン)という謎の案内人や、Black John (ブラック・ジョン) という敵対者、そしてNumbers (ナンバーズ)と呼ばれる群衆と対峙しながら、自己の崩壊と再生(あるいは破滅)に向き合う物語である。
コミックとの連動
この物語は音楽だけでなく、Dark Horse Comics から出版された全4巻のコミック・シリーズ (作:Corey Taylor/画:Richard Clark) によって視覚的にも補完された。コミックでは、アルバムの歌詞に登場する抽象的な概念 (Red City、Blue Smokeなど)が具体的なヴィジュアルとして描かれている。
音楽的構造
- Part 1: 主人公の葛藤や怒りを反映し、アグレッシブでストレートなメタル・ナンバー ("Gone Sovereign", "Absolute Zero")が多い。
- Part 2: ストーリーの解決や深層心理への潜行を描き、ピンク・フロイド (Pink Floyd) やアリス・イン・チェインズ (Alice in Chains) を彷彿とさせるプログレッシブでダークな楽曲("The Conflagration", "Blue Smoke") が展開される。
5. 将来の展望
STONE SOURは、デモインのローカル・バンドからスタートし、SLIPKNOT という巨大な存在の陰に隠れることなく、独自のアイデンティティを確立することに成功した稀有なバンドである。STONE SOURは「静」と「動」、「メロディ」と「ヘヴィネス」を自在に行き来する音楽性で、世界中のロック・ファンを魅了してきた。
2020年以降の「無期限活動休止」は、Corey Taylor のソロ・キャリアへの集中や、メンバー個々の活動の充実を意味しているが、解散(Breakup) という言葉は使われておらず、将来的な再集結の可能性は完全に閉ざされてはいない。しかし、Jim Root との決別や、Taylor の現在のソロ活動の充実ぶりを鑑みると、STONE SOURが近いうちに再始動する可能性は低いと見られる。それでもSTONE SOURが残した6枚のアルバム、特に『House of Gold & Bones』という金字塔は、21世紀のハードロック史における重要な遺産として残り続けるだろう。