SOILWORK TRIVIA
Trivia
SOILWORK が「本当の意味でのプロ」として初めて回ったツアーの舞台は、日本だった。ビョーン“スピード”ストリッドが激ロックの連載第1回に書いたところによれば、日本ツアーが決まったという電話を受けたとき、彼は信じられなかったという。日本で演奏するのはオジー・オズボーンやモトリー・クルー、イングヴェイ・マルムスティーンのような、武道館に立つバンドの話だと思っていたからである。初来日でただ圧倒され、すぐに日本を好きになった、というのが彼の説明だった。
SOILWORK は最初から SOILWORK ではなかった。日本盤の発売元であるワードレコーズの商品ページによれば、バンドはスウェーデン南西部の港湾都市ヘルシンボリの出身で、1995年に INFERIOR BREED という名前で活動を始め、翌1996年に SOILWORK と改名している。ビョーン“スピード”ストリッド(ヴォーカル)とピーター・ウィッチャーズ(ギター)を中心とする編成で本格化し、1998年にデビュー作『Steelbath Suicide』を出した。
ドラマーの交代は、辞める本人の推薦で決まった。ワードレコーズの商品ページによれば、2016年、『Stabbing the Drama』以来バンドのサウンドの基盤を担ってきたベルギー出身のダーク・ヴェルビューレンが MEGADETH に加入するため脱退した。同ページによれば、バンドは彼を快く送り出したうえで、後任として彼自身の推薦を受け入れている。選ばれたのはヴェルビューレンに師事していたこともあるデンマーク出身の若手、バスティアン・トゥアスガールドだった。
結成時の中心人物だったピーター・ウィッチャーズは、2度バンドを離れている。ワードレコーズの商品ページによれば、1度目は2005年の『Stabbing the Drama』発売後で、続く『Sworn to a Great Divide』(2007年)はオーラ・フレニングとダニエル・アントンソンのギター・コンビで作られた。ピーターは2008年に復帰し、2010年の『The Panic Broadcast』はピーターとフランス出身のシルヴァン・コードレーの2人体制で制作される。そして2012年、彼はアメリカに渡って始めていたプロデューサー/エンジニアとしての仕事に専念するため、再びバンドを離れた。
ピーター・ウィッチャーズの後任として正式加入したのは、それまで何度かライヴのサポートを務めていたデイヴィッド・アンダーソンだった。ワードレコーズの商品ページによれば、この編成で2013年に出した『The Living Infinite』は通算9作目にして、バンドにとって初めての2枚組アルバムである。中心メンバーが抜けた直後に規模を縮めるどころか広げた作品として、同ページはこれを意欲作と評している。
ビョーン“スピード”ストリッドがシンガーになったのは、偶然だった。彼が激ロックの連載に書いたところによれば、当時バンドを始めようとしていたピーター(ウィッチャーズ)は、彼が何者で何をしている人間かを知らないまま歌わないかと誘った。判断材料は外見だけで、黒い長髪、デス・メタルのロゴが入った革ジャン、細身のジーンズという格好である。ストリッドの返事は、ギターは弾くが歌ったことはない、それでもやってみよう、というものだった。以後30年近く、彼はこのバンドの声であり続けている。
ビョーン“スピード”ストリッドは、ヴォーカル・レッスンを一度も受けたことがない。2007年に激ロックが行ったインタビューで、歌唱がどう上達したのかを問われた彼はそう答えている。代わりに挙げたのが、『Stabbing the Drama』を携えたツアーで積んだ経験だった。実際にステージに立って演奏することから学べることは多い、というのが彼の説明である。グロウルとクリーンを1曲の中で行き来する歌い方は、そうやって身についたものだということになる。
ギタリストのデイヴィッド・アンダーソンは2022年9月に亡くなった。Blabbermouth が2026年に伝えたビョーン“スピード”ストリッドの説明によれば、彼は曲作りの大きな原動力だった人物で、その後の SOILWORK では作曲がより集団での作業になったという。ストリッドはバンドが新しい時代に入りつつあると述べ、長くサポート・ギタリストを務めてきたサイモン・ヨハンソンが正式に加わったことが、人としても曲作りの面でも新しい風を持ち込んだと語っている。
日本盤は、解説と対訳が付いた形で出ている。ワードレコーズによれば、11作目『Verkligheten』の日本盤は2019年1月11日発売、品番 GQCS-90671、税込2,750円で、日本語解説書と歌詞対訳が封入されている。12作目『Övergivenheten』の日本盤も2022年8月19日発売、品番 GQCS-91223、税込2,860円で同じ仕様。『Verkligheten』には直筆サインカードとTシャツが付く100セット限定盤も、『Övergivenheten』にはサインカード付きの別形態も用意された。
日本に頻繁に来るバンドになったのは、比較的早い時期からだった。ワードレコーズの商品ページによれば、SOILWORK は『The Chainheart Machine』から『Figure Number Five』にかけての時期に作品をコンスタントに発表しながら、頻繁に日本を訪れるようにもなり、進化を続ける創作と卓越したライヴの両面で人気を高めていった。デビューから数年のうちに、日本が定期的に回る国のひとつになっていたことになる。
ビョーン“スピード”ストリッドは、日本の音楽メディアで自分の連載を持っていた。激ロックに掲載された「SOILWORK BjornのSTABBING THE COLUMN」がそれで、2008年7月号の第1回から2013年1月の第26回まで続いている。第1回で彼は、自分が日本に特別な結び付きを感じる理由として妻が日本人であることを挙げ、その時点でバンドや妻とともに10回ほど日本を訪れていると書いた。ツアーの日常を超えたところまで日本を知ることになった、というのが彼の言い方である。
2019年の来日公演は、一度中止になってから同じ年のうちに実現している。激ロックによれば、2019年3月18日から20日にかけて東京・名古屋・大阪で予定されていた「Soilwork Japan Tour 2019」は、アーティスト側の事情によりアジア公演ごと中止となり、招聘元の Evoken de Valhall Production が2018年12月に発表した。ところが約2か月後の2019年2月、同じ名前のツアーが11月4日の大阪、5日の名古屋、6日の東京として改めて発表される。サポート・アクトはスペインの RISE TO FALL と日本の BLOOD STAIN CHILD だった。
サビをクリーン・ヴォーカルで歌うという型は、3作目からのものである。ワードレコーズの商品ページによれば、SOILWORK は『A Predator's Portrait』でヘヴィ・ロック的な要素を大幅に導入し、ビョーンがデス・メタル型のシャウトだけでなくクリーンな声でのメロディアスな歌唱も聴かせるようになった。同ページはこれを一つの様式美の完成と位置づけ、以後バンドの音楽性は作を重ねるごとに多彩になっていったとしている。
ベースが抜けたまま作られたアルバムが2枚ある。ワードレコーズの商品ページによれば、デビュー作『Steelbath Suicide』の制作前からバンドにいたベーシストのオーラ・フリンクが2015年に離脱し、『The Ride Majestic』はギタリスト2人がベース・パートを兼任する形でレコーディングされた。2019年の『Verkligheten』でも、シルヴァン・コードレーがベースを兼任している。その間、ツアーではマーカス・ウィボムがベースを務めていた。
ビョーンとデイヴィッド・アンダーソンには、SOILWORK 以外にも一緒にやっていたバンドがある。ワードレコーズの商品ページによれば、ビョーンのクリーン・ヴォーカルへの取り組みは別プロジェクトの THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA でも発揮されており、同ページはまた、『Verkligheten』をプロデュースしたトーマス・ヨハンソンがデイヴィッドとともに MEAN STREAK というトラディショナル・ヘヴィ・メタル志向のバンドでギターを分け合っていたとも記している。Blabbermouth が伝えたビョーンの説明では、THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA は彼にとってヴォーカル面での挑戦で、その経験から自分の声を大きく知ることになったという。
12作目『Övergivenheten』は、1年をかけて3回のセッションで録音された。バンド公式サイトのアルバム紹介によれば、録音場所はスウェーデン・スカーラの Nordic Sound Lab、プロデューサーは前2作も手掛けたトーマス“プレック”ヨハンソンで、作曲と録音は2021年1月から12月にかけての3つのセッションに分けて行われた。急いで仕上げる必要がなかったことが、自分たちの音楽を振り返り、制作の過程そのものを味わう余裕につながった、というのが同ページの説明である。
近年の SOILWORK は、アルバムの題名にスウェーデン語をそのまま使っている。バンド公式サイトによれば、『Övergivenheten』は英語にすれば The Abandonment、つまり「見捨てられていること」を意味し、それがアルバム全体の主題でもある。見捨てられるという思いに囲まれること、あるいは自分が誰かを見捨てることについての作品だという。その前の11作目『Verkligheten』も、ワードレコーズの解説によればスウェーデン語で「現実」を意味する語である。
『Övergivenheten』で目指されたのは、できるだけオーガニックな音だった。バンド公式サイトによれば、そのために曲にはアコースティックな要素が組み込まれており、聴き手にバンドの創作の場のただ中にいるような感覚を与えることが狙いだったという。同ページは、その体験を組み立てるにはバランスが必要で、当時の世界の状況がそれを難しくしていたとも書いている。
ベーシストのラスムス・エーンボーンが正式メンバーとして発表されたのは、『Övergivenheten』の時期である。バンド公式サイトによれば、彼はそれ以前、EP『A Whisp of the Atlantic』の頃からすでにバンドと録音を共にしていた。同ページはこの時点のラインナップを、デイヴィッド・アンダーソン、ビョーン、ドラムのバスティアン・トゥアスガールドに加え、長年在籍するキーボードのスヴェン・カールソンとギターのシルヴァン・コードレーで構成されると記している。
SOILWORK は最初の2枚をフランスの Listenable Records から出している。Blabbermouth によれば、『Steel Bath Suicide』と『The Chainheart Machine』の2作を同レーベルから出したのち、バンドは2001年に Nuclear Blast の所属となった。ワードレコーズの日本語解説も、Nuclear Blast からの第1弾が3作目『A Predator's Portrait』だったとしている。以後のスタジオ作はすべて同じレーベルから出ている。
『Sworn to a Great Divide』のヴォーカルを録ったのは、5年ぶりに戻ってきたデヴィン・タウンゼントだった。2007年の激ロックのインタビューでビョーン“スピード”ストリッドが語ったところによれば、彼は『Natural Born Chaos』を一緒に作って以来ずっとまたヴォーカル・パートをやりたいと思っていたが、間の2作ではタウンゼントのスケジュールが合わなかった。今回ようやく都合がついたという。ヴォーカル以外は地元のスタジオ NOT QUITE STUDIO で録音し、プロデュースは DARKANE のクラスとピーターと共同で行っている。
自分たちでアルバムを作れるようにするため、バンドは機材を買い込んだ。2007年の激ロックのインタビューでビョーン“スピード”ストリッドが語ったところによれば、『Sworn to a Great Divide』の制作では将来セルフ・プロデュースができるよう多くの機材を購入しており、その結果としてサウンドは大きくヘヴィになり、以前よりライヴ感のある荒い質感になったという。この見立ては後年になって形になり、2026年時点で準備中の新作は、ほぼセルフ・プロデュースで作られる予定だと伝えられている。
初めてのツアーは、真冬のヨーロッパをバンで回るものだった。ビョーン“スピード”ストリッドが激ロックの連載に書いたところによれば、SOILWORK の最初のツアーはブラジルのデス・メタル・バンド KRISIUN との欧州ツアーで、1998年12月、ものすごく寒かったという。会場はかなり怪しいものもあった。あるショウはフランス料理店で、オーナーはブラジルのサンバ・バンドが来ると思ってブッキングしていた。別のショウは誰かの居間で行われた。
音楽をやる前のビョーン“スピード”ストリッドは、アイスホッケーの選手だった。彼が激ロックの連載に書いたところによれば、16歳か17歳で辞めるまで最も熱を入れていたのがホッケーで、アメリカの NHL でプロになるのが夢であり、実際うまくやっていたという。スウェーデンのジュニア・ナショナル・リーグの資格を得るのもそう遠くはなかった。彼はまた、当時のチームメイトの1人がのちにデトロイト・レッドウィングスの一員としてスタンレー・カップを獲得したことにも触れている。
2011年の夏、ビョーン“スピード”ストリッドは工場で働きはじめている。彼が激ロックの連載第17回に書いたところによれば、地元スウェーデンで友人が社長を務める会社に入り、食用油を精製する仕事に就いた。音楽以外の「普通の」仕事をするのは2003年以来のことで、平日は工場、週末はステージという生活になった。彼はこれを、両方の世界からいちばん良いところを得るようなものだと書いている。
SOILWORK には、16分の曲を表題曲にした EP がある。Blabbermouth によれば、『Övergivenheten』の前に出ていた最新作は EP『A Whisp Of The Atlantic』で、16分に及ぶ表題曲を収めていた。ベーシストのラスムス・エーンボーンがバンドと録音を始めたのもこの作品からである。メロディック・デス・メタルの枠で語られてきたバンドが、EP という形式で長尺曲に踏み込んだことになる。
2000年代の SOILWORK は、毎年のように作品を出しながら世界中を回っていた。Blabbermouth によれば、その時期の目立った舞台には、ブラック・サバスとアイアン・メイデンがヘッドライナーを務めたオズフェストへの出演や、ラム・オブ・ゴッドとキルスウィッチ・エンゲイジとのアリーナ・ツアーがある。回った先は北米、ヨーロッパ、オーストラリア、そして日本だった。
『Verkligheten』の初回盤には、もう1枚分の EP が入っていた。Blabbermouth によれば、11作目にあたるこのアルバムの初回デジパックとヴァイナル各種には、4曲を収めた『Underworld』EP が独占収録されている。収録されたのは「Summerburned And Winterblown」「In This Master's Tale」「The Undying Eye」、そして本編に入っている「Needles And Kin」のオリジナル・ヴァージョンの4曲だった。この作品はドラマーがバスティアン・トゥアスガールドに替わってから最初のアルバムでもある。
『Verkligheten』には3人のゲスト・ヴォーカリストが参加している。Blabbermouth が公開した曲目によれば、「Stålfågel」にアリッサ・ホワイト=グラズ、「Needles And Kin」にトミ・ヨーツセン、「You Aquiver」にデイヴ・シェルドンがそれぞれ名を連ねる。ワードレコーズの日本語解説も、アモルフィスのトミ・ヨーツセンが「ニードルズ・アンド・キン」にゲスト参加していると記している。「Stålfågel」はスウェーデン語で「鋼鉄の鳥」を意味する語である。
『The Ride Majestic』は、制作中にメンバーそれぞれが身近な人を亡くしたことに大きく影響を受けた作品である。Songfacts によれば、ビョーン“スピード”ストリッドはビルボード誌に対し、このアルバムがその1年に起きた出来事から強く影響を受けたものであり、歌詞は存在することの意味と、すべてに終わりがあるという事実を受け入れることを扱っていると説明している。表題曲については、死への恐れと、生きているうちに正気を保つ技術についての曲であり、失った人たちへの捧げものでもあると述べている。
2002年のアルバムに入っていたスウェーデン語の曲が、21年後に配信で出し直された。激ロックによれば、SOILWORK は2023年12月に「Kvicksilver」を配信リリースしている。この曲は『Natural Born Chaos』にボーナス・トラックとして収録されていたもので、同作の「Mercury Shadow」をスウェーデン語でアレンジしたものである。曲名の Kvicksilver はスウェーデン語で水銀を指す語で、英語の題名をそのまま置き換えた形になっている。
2024年10月のシングル「Spirit Of No Return」は、サイモン・ヨハンソンが正式加入して最初の曲である。激ロックによれば、この曲はバンドの進化にとっても重要な節目にあたる楽曲として発表された。ビョーン“スピード”ストリッドはこの曲について、過去を思い起こさせる激しい曲であると同時に、SOILWORK の新しい時代の始まりを告げる曲でもあると述べている。Blabbermouth に載る彼の説明では、初期のスラッシュ寄りの側面に新しく重い衣を着せたもので、歌詞は帰属や適合を求める衝動と、それが本来の自分を手放すことにつながる危うさを扱っているという。
次のアルバムは、ほぼ自分たちだけで作られる。Blabbermouth が2026年に伝えたところによれば、SOILWORK はこれまで何人ものプロデューサーと組んできたが、新作についてはほぼセルフ・プロデュースで、録音はサイモン・ヨハンソンのスタジオで行う予定だという。ビョーン“スピード”ストリッドによれば、狙いは『A Predator's Portrait』や『Natural Born Chaos』、それに『Stabbing the Drama』にあったヘヴィさを呼び戻し、近年の壮大な雰囲気と混ぜ合わせることである。ヨハンソンは、すでにアルバム1枚を超える量の曲が書けているが、2枚組にはしないと述べている。
2016年、SOILWORK はレア音源と未発表音源を集めた作品を出している。Blabbermouth によれば、この『Death Resonance』は Nuclear Blast からのリリースだった。同じ年にはベーシストのマーカス・ウィボムが他の仕事の都合で年末に脱退し、バンドは5人編成となって、THE ABSENCE のテイラー・ノードバーグがツアーでベースを務めるようになる。編成が動いた年に、過去の音源をまとめた1枚が出たことになる。