FROZEN CROWN トリビア 全112件
FROZEN CROWNにまつわる事実を、出典付きで112件掲載しています。
Trivia
デビュー作の日本盤は、世界のどこよりも先に店頭に並んだ。マーキー・インコーポレイティド/アヴァロン・レーベルから2018年1月24日発売、品番 MICP-11393、税込2,860円。国際盤の発売日は同年2月9日だから、日本が二週間ほど先行したことになる。以後『War Hearts』まで、日本盤は毎回、国際盤より数日から二週間早く出ている。
三度目の来日は、日本での興行としては最大の規模になった。招聘元のマーキー/アヴァロンは、バンド史上初の東京2デイズと初の大阪公演を含む、キャリア最大のジャパン・ツアーと銘打っている。2025年9月25日と26日が代官山 SpaceOdd、28日が Osaka RUIDO。単発の公演を二度重ねてきたバンドが、初めて複数日程を回ったことになる。
東京の二夜は、別々の公演ではなく一続きの物語として組まれた。初日は「-戦乙女(いくさおとめ)の夜-」と題され、ジャーダ・エトロのクリーン・ヴォイスによるパワー・メタル曲を中心に据える。二日目は「-覇王の夜-」、グロウル・ヴォイスによる攻撃的な曲を中心に据える。二日間で一つの物語が完成するパッケージ、というのが招聘元の説明である。初開催となった大阪公演は「-竜王の夜-」と題され、東京のどちらとも異なる特別なセットリストが組まれた。
2026年5月18日に公開された「On Silver Wings」のビデオは、この来日公演の映像で作られている。撮り下ろしのカットだけでなく、2025年9月の日本公演の映像が使われており、クレジットの謝辞にはマーキー・アヴァロン、BURRN! マガジン、そして高梨康治の名が並ぶ。ジャーダ・エトロはこの曲を『War Hearts』のなかで自分の一番好きな曲だとし、このビデオでナパーム移籍第一作の周期を締めくくると述べている。
このバンドが生まれた場所は、イタリアではなく日本である。モンデッリはそう語っている。彼はハード・ロック・バンド BE THE WOLF の一員として来日した折に、当時まだソロ企画にすぎなかった構想をレーベルのアヴァロンへ持ちかけた。FROZEN CROWN はそこから始まった、というのが本人の説明で、「あの国から来た支援のおかげで自分たちは生まれた」とまで述べている。2023年の再来日を前にした取材での発言である。
その支援の中身についても、モンデッリは具体的に語っている。日本のマーキー/アヴァロンは、ヨーロッパのスカーレット・レコードにとっての姉妹レーベルにあたる。彼の説明では、FROZEN CROWN が形になり得たのはこの日本のレーベルのおかげで、彼らが企画を信じ、スタジオに入ってアルバムを録音できるだけの資金を出した。2019年、初来日を果たした年の欧州ツアー中に受けた取材での発言である。
その日本盤は、ボーナス・トラックが一曲多いだけの盤ではなかった。モンデッリの説明によれば、『The Fallen King』の日本盤はジャケットの絵柄もブックレットの中身も西洋盤と大きく異なっている。追加された一曲は「The Shieldmaiden」のアコースティック・ヴァージョン。彼はまた、この作品が日本で非常に良く迎えられたこと、BURRN! 誌と伊藤政則らの後押しがあったことにも触れている。
初来日公演は2019年4月12日(金)、東京・渋谷の TSUTAYA O-WEST で行われた。題して「CROWNED IN TOKYO」。19時ちょうどに場内が暗転し、「The Wolf And The Maiden」が SE として流れるなか、モンデッリ、メッザノッテ、ザワッターリ、ベラゼッカがステージに出て「Arctic Gales」から始まった。ジャーダ・エトロが姿を見せたのは、続く「Neverending」の頭である。全21項目、およそ2時間。同じ会場は四年後、Spotify O-WEST と名を変えて彼らを再び迎えることになる。
その初来日公演の中盤に、日本盤を買った客だけが気づく仕掛けがあった。ドラム・ソロが終わったあと、幕間の SE として流れたのが「The King's Rest」——日本盤のボーナス・トラックである。そこへモンデッリが一人で出てきて、BE THE WOLF が6月に来日することを客席に告げ、続けて X JAPAN のバラード「Tears」をほんの少しだけ弾いた。サビは会場の客と一緒に歌われている。
第6作の日本盤は2026年9月30日発売で、国際盤の10月2日より二日早い。二形態が予定されており、通常盤 CD が MICP-12030、完全生産限定盤の SHM-CD+CD が MICP-30244/5。この限定盤にはボーナス・ディスクが付く。収められるのは BLIND GUARDIAN「Mirror Mirror」のカヴァー、KAMELOT「Center Of The Universe」のアコースティック・カヴァー、そして「Reborn」と「Mirror Mirror」のアコースティック版の四曲。海外ではこの四曲は300個限定の木箱入り限定盤にしか入らないとされているので、日本盤の限定盤はそれと同じ内容を別の形で出すことになる。アルバム本編は両形態とも国際盤と同じ10曲で、日本盤だけのボーナス・トラックは無い。
彼女が FROZEN CROWN として最初に立ったのは、2025年5月10日(土)、ミラノのレジェンド・クラブ——バンド初のヨーロッパ単独ツアーの最終日である。ここは2018年2月9日にバンドが生まれて初めて演奏した会場でもある。バンドの声明によれば、彼女はごく短い準備期間でセットリスト全曲を覚え、そのまま完璧に演奏してみせた。二本目はプルゼニの METALFEST、そして8月の SUMMER BREEZE の時点で、彼女がバンドと立った舞台は五本目になっていた。
全10曲のうち5曲目は、彼らの曲ではない。GOO GOO DOLLS が1998年に全米で当てた「Iris」のカヴァーである。レーベルの資料は、ワルツ拍子のバラードから高速のドラムまでを行き来するパワー・メタルの編曲だと説明している。ファンタジー色の濃い曲名が並ぶなかに、オルタナティヴ・ロックのバラードが一曲だけ挟まっている格好になる。
バンド名は、意味よりも響きと構造から決められている。フェデリコ・モンデッリは、どの国の人間が見ても意味が取れて記憶に残る、力のある名前が欲しかったと述べ、条件のひとつに「二語でできていること」を挙げた。念頭にあった例として彼が並べたのが、CELTIC FROST、IRON MAIDEN、ICED EARTH、BLIND GUARDIAN である。FROZEN CROWN という組み合わせは、結成時に思い描いていた氷に覆われた荘厳な、しかし野蛮でもある情景にちょうど合っていたという。
『The Fallen King』の「倒れた王」とは誰なのか。この問いに対するモンデッリの答えは、登場人物の話ではなかった。倒れた王とはメタルそのものだ、というのである。彼はこのアルバムをパワー・メタルへの捧げ物と位置づけ、様式の面で新しいことは何ひとつやろうとしていないと明言している。
第2作の表題は、パワー・メタルの外から来ている。モンデッリによれば『Crowned in Frost』はスウェーデンのデス・メタル・バンド THE CROWN のアルバム『Crowned in Terror』を踏まえた名前である。同じ取材で彼は、表題曲ではなく「Winterbane」という曲が IMMORTAL のアバスから着想を得たものだとも述べている。
その JUDAS PRIEST のカヴァーを選んだのはジャーダ・エトロ本人だった。彼女は16歳から18歳にかけて最初のバンドでカヴァーを歌っていて、「Night Crawler」はその時期を思い出させる曲であり、歌手として、音楽家としての自分の成長のその部分を何らかの形で祝いたかったのだと語っている。歌いやすくするために、彼女はこの曲のキーを一音上げている。
『Call of the North』という表題の理由は、モンデッリ本人の出身にある。彼は南部の人間——プーリア州の出で、家族の半分はラツィオ州チヴィタヴェッキアにいる——で、昔から北の世界に惹かれてきた。海のある土地から見た北には、ずっと強い magnetism があったのだという。ジャケットについては、IMMORTAL『At the Heart of Winter』や OBITUARY『Frozen in Time』のような、氷の谷にぽつんと閉じた構造物が描かれた表紙から着想を得たと述べている。
なぜ三人目のギタリストなのか。バンドの説明は明快である。彼らは同期音源にギターを入れたことが一度も無く、これからも入れない。使うのは要所での鍵盤のシーケンスだけである。ところがスタジオでは何十層ものギターを重ねているため、二人ではライヴでハモリのリードを鳴らすと下のリズムが消えてしまい、曲を組み替えてパートを削るしかなかった。人を増やすというのは、その削り落としをやめるための選択だった。
表題曲が1曲目に置かれたのには、はっきりした理由がある。この曲でアレッシア・ランツォーネが最初のギター・ソロを弾いているからだ、とモンデッリは Guitar World に語っている。「War Hearts」はアルバムのために最初に書かれた曲であり、彼女のソロが入った最初の曲でもあった。新入りの演奏を、アルバムの入り口に置いたことになる。
第6作『The Legend Of The Six Kings』は2026年5月26日に発表され、10月2日発売とされた。ナパーム・レコーズでは二枚目にあたる。最大の趣向は、この作品がデビュー作『The Fallen King』を直接踏まえ、王たちと暴君の物語を引き継ぐと明言されている点である。第2作で氷の下に沈められたあの暴君が、八年を経て再び現れることになる。本稿の執筆時点でまだ発売前であり、以下は発表された内容にとどまる。
前史にあたる BE THE WOLF も、日本と切り離せない。モンデッリ本人の記述によれば、彼が同バンドを結成したのは2011年ごろ、マルコ・ヴェルドーネ、ポール・カネッティ、そして後に離れるフランチェスコ・プリオーロとの編成だった。2015年にスカーレット・レコードが彼らに目を留め、続いて日本のマーキー・アヴァロンが来日公演を実現させている。FROZEN CROWN が日本のレーベルに話を持ちかけられたのは、この関係があってのことである。
BE THE WOLF は日本で BURRN! 誌の読者投票「ブライテスト・ホープ」を獲得している。モンデッリはこれをきっかけに同誌から月一回のコラムの執筆を依頼され、本人の記述では今も続けている。コラムの題は「THE YOUNG WOLF FROM WEST」。イタリアのバンドのギタリストが日本のメタル専門誌に連載を持っているという状態が、彼と日本の距離をよく表している。
第2作『Crowned in Frost』の日本盤は2019年3月20日発売、品番 MICP-11475、税込2,860円。ボーナス・トラックとして12曲目に「The King's Rest」が加えられている。国際盤は同月22日発売だから、ここでも日本が二日先行した。
『Call of the North』の日本盤は2023年3月8日発売、品番 MICP-11760、税込3,000円、ボーナス・トラック1曲入り。国際盤は3月10日なので、ここでも日本が二日早い。なお、レーベル自身の商品ページはこの作品の発売日を「2023年3月1日」と表示しているが、同じレーベルの2023年3月の新譜一覧、公式インフォメーションを転載した告知、そして日本の小売各社はいずれも3月8日で一致している。
この夜の東京公演は、台風が来ているさなかに行われた。バンド自身は動画の説明文で、台風にもかかわらず開催され、「Call Of Tokyo」と題した2時間のセットリストを演奏したと書き、キャリアで最大かつ最も成功したコンサートだったと述べている。これはバンド自身による自分たちの公演の評価である。
第5作から、日本盤の慣例がひとつ途切れる。『War Hearts』の日本盤は2024年10月16日発売、品番 MICP-11870、税込3,100円。国際盤の10月18日より二日早いのは従来どおりだが、ボーナス・トラックが付かなかった。レーベル自身の2024年10月の新譜一覧では、掲載11作のうち8作に「★ボーナス・トラック1曲追加収録」の但し書きが並んでおり、FROZEN CROWN の欄だけそれが無い。
日本側は、この経緯をもう一歩踏み込んで伝えている。BURRN! の来日公演リポートによれば、FROZEN CROWN のそもそもの出発点は、モンデッリが BE THE WOLF での経験を経て、日本のファンへの感謝を示すために作り始めたソロ・アルバムだった。イタリアのバンドでありながら日本との結び付きが最初から強いのは、そのためである。
日本盤のボーナス・トラックは、第1作から第4作まで各1曲ずつ、合計四曲ある。そのうち二曲は現在も CD でしか聴けない。『The Fallen King』の「The Shieldmaiden」アコースティック・ヴァージョンと、『Call of the North』の「Acoustic Medley」である。残る二曲——『Crowned in Frost』の「The King's Rest」と『Winterbane』の「Blood On The Snow (Spooky Version)」——には日本盤仕様の配信版が用意されており、そちらでも聴くことができる。
その「The King's Rest」は、余りものの断片ではない。日本盤の製品データで演奏時間は3分54秒、録音区分はスタジオ。同じアルバムの序曲「Arctic Gales」が1分24秒、間奏曲「Enthroned」が1分3秒であることを考えれば、これは独立した一曲の長さである。作曲者としてフェデリコ・モンデッリの名が載る一方で作詞者の記載が無く、その形はこのアルバムのインストゥルメンタル三曲と同じで、歌のある九曲とは異なっている。
『Winterbane』の日本盤は2021年4月21日発売、品番 MICP-11610、税込2,970円。11曲目に「Blood On The Snow (Spooky Version)」が加えられている。日本盤の製品データによれば演奏時間は9分00秒で、アルバム版の8分43秒より17秒長い。作詞者のクレジットが残っているので歌のあるヴァージョンであることは分かるが、どこがどう「Spooky」なのかを説明した出典は見つかっていない。
その日本盤ボーナス・トラック「Acoustic Medley」は、11曲目に置かれた2分39秒の曲である。製品データ上は録音区分がスタジオ、演奏者は FROZEN CROWN、作曲と編曲がフェデリコ・モンデッリで、作詞者の記載は無い。ただし、これがどの曲とどの曲を繋いだメドレーなのかを書いた出典は見つからなかった。配信版にも入っていないため、曲目データから推測する手段も無い。
二度目の来日は一夜限りだった。2023年6月2日(金)、渋谷 Spotify O-WEST での「CALL OF THE NORTH JAPAN RELEASE SHOW ―CALL OF TOKYO―」、開場18時/開演19時。招聘はマーキー・インコーポレイティド。会場は四年前の初来日と同じ場所で、その間に名前が TSUTAYA O-WEST から変わっていた。
この日のセットは2時間を超えた。本編の最後に置かれたのは JUDAS PRIEST の「Night Crawler」——『Winterbane』に入れたあのカヴァーである。アンコールはさらに5曲プラスアルファ。ヤング・ギターが掲載したセットリストは、SE を含めて全19項目、最後は「The Shieldmaiden」で終わっている。
東京初日の前座を務めたのは日本のバンド Mana Diagram だった。BURRN! のリポートによれば、同バンドのヴォーカリスト UYU は、二年前の FROZEN CROWN の来日公演を観て、いつか一緒にライヴをやりたいと願ったのだと語っている。デビューから八年足らずのバンドが、日本の後進から追いかけられる側に回っていたことになる。
新しい二人のギタリストにとっては、これが初めての日本だった。BURRN! の取材によれば、アレクサンドラ・ライオネスもアレッシア・ランツォーネも来日自体が初めてで、バンドは月曜に到着し、取材時点で滞在五日目。観光らしい観光はあまりできなかったが、明治神宮と原宿には行き、原宿から渋谷までは歩いて帰ったという。ジャーダ・エトロは、メタルらしい服を置いている店でステージ衣装を買い足している。
モンデッリ自身のサイトでは、順序がはっきり書かれている。彼はまずソロ企画として日本のレーベルに話を持ちかけ、そのうえで、幅を出すために女性ヴォーカリストを迎えた——それがジャーダ・"ジェイド"・エトロである。つまりバンドは、歌い手を決めてから企画が動いたのではなく、企画が通ってから歌い手を探した順番で立ち上がっている。
結成年については、当のバンドとレーベルの言うことが揃わない。ナパーム・レコーズが2024年に配った経歴書は2017年結成とし、一方でバンド自身は2023年のナパーム移籍声明で「2018年に自分たちで立ち上げて以来」と書き、2025年の声明でも「2018年の最初のライヴ」と述べている。記録として残っている日付のほうは動かない。スカーレット・レコードが5人編成と完成済みのデビュー作を告知したのが2017年11月24日、先行シングル「The Shieldmaiden」の公開が同年12月20日、そして初めて人前で演奏したのが2018年2月9日、ミラノのレジェンド・クラブである。当サイトは結成年をひとつに決めず、この確認できる日付のほうを示す。
スカーレット・レコードが2017年11月24日に出した最初の告知は、バンドの全体像をいきなり公開している。作曲を担うのは BE THE WOLF のフェデリコ・モンデッリ(歌・ギター・鍵盤)、フロントに立つのがジャーダ・エトロ(ASHES YOU LEAVE、TYSTNADEN)。残る三人はギターのタリア・ベラゼッカ、ベースのフィリッポ・ザワッターリ、ドラムのアルベルト・メッザノッテで、告知はベラゼッカを17歳と紹介している。デビュー作『The Fallen King』の発売日は2018年2月9日と、この時点ですでに決まっていた。
2019年、バンドはヨーロッパの大型フェスに立つようになる。SABATON OPEN AIR ではスウェーデン・ファールンで8月17日土曜日の14時30分から演奏した。開場が14時だったから、その日の一番手、開門直後の枠である。同じ年にはチェコ・プルゼニの METALFEST OPEN AIR(5月31日〜6月2日)の出演者にも名を連ねている。
大きかったのは DRAGONFORCE との帯同である。2019年12月11日、DRAGONFORCE は自身の公式サイトで、2020年2月のヨーロッパ公演のスペシャル・ゲストに FROZEN CROWN を迎えると発表した(前座は ATHANASIA)。同じ告知は、その時点までの FROZEN CROWN の実績を、ヨーロッパ・ツアー2回、日本での単独公演1回、SABATON OPEN AIR と METAL FEST PLZEN を含む複数のヨーロッパ公演、とまとめている。
バンド自身は、この時期をもっと率直に振り返っている。2026年に公開した動画の説明文で、2020年の DRAGONFORCE 帯同が終わった時点で残っていたのは創設者のジャーダとフェデリコだけであり、当時17歳のドラマー、ニーゾ・トマシーニを迎え入れようとしていた最中で、バンドを一から立て直さなければならなかった、と書いている。
『Winterbane』には二つの寄り道がある。ひとつはヴォルトゥリアンのフェデリカ・ランナがゲスト参加した「Angels In Disguise」、もうひとつは JUDAS PRIEST のカヴァー「Night Crawler」。レーベルは2021年2月12日の告知の時点で「『Painkiller』からの一曲」とだけ伝えており、曲名は同時に公開された曲目で明らかになった。
先行シングル「Far Beyond」の歌詞には、二つの出所がある。レーベルによれば、ディラン・トマスの詩と、クリストファー・ノーランの映画『インターステラー』である。同じ曲についてモンデッリは別のところで、サビ前に出てくる「No, no!」という掛け声をイングヴェイ・マルムスティーンの「I'll See The Light Tonight」から意識的に借りたと明かしている。
新編成のお披露目には、思わぬ場が用意された。「Far Beyond」のビデオ公開時の告知によれば、新加入のシーナとフェデリコは DRAGONFORCE のギタリスト、ハーマン・リが配信する Twitch に出演することになっていた。この配信はジェイソン・ベッカーのための募金を目的としたものだった。前年に彼らを帯同させたバンドのギタリストが、編成を組み直したばかりの彼らに場所を用意した形である。
そのシングルの映像には、ひとつ注意がいる。「Victorious」はミュージック・ビデオではなく公式のヴィジュアライザーで、2023年1月18日にスカーレット・レコードのチャンネルへ2曲目のシングルとして公開された。説明文に監督・撮影・編集のクレジットは無く、記載されているのは音源側のクレジットだけである。この作品からのシングル四本のうち、映像作品として監督が明記されているのは「Call Of The North」と「Fire In The Sky」で、いずれもルカ・モルセッリとモンデッリの共同名義。3曲目の「Black Heart」の公式映像には監督の記載が無い。
制作体制はここで変わる。『The Legend of the Six Kings』のプロデュースはフェデリコ・モンデッリ、録音はザ・セントラル・レコーディング・スタジオでアンドレア・サラ・ダンナ、ミックスとマスタリングがアンドレア・フジーニ。フジーニは前作『War Hearts』をプロデュース・録音・ミックス・マスタリングまで手がけていたので、プロデュースの名義がモンデッリへ移ったのはこの第6作からということになる。
そのボーナス・ディスクの中心にある BLIND GUARDIAN のカヴァーには、六年分の助走がある。バンドの説明によれば、「Mirror Mirror」の録音は2020年に始まったが、『Winterbane』の制作に押されて棚上げになった。仕上がって公開されたのは2026年2月4日。アコースティック・ギターを最大6層、ベース1本、ヴォーカルを最大12層重ねて作られており、ミックスとマスタリングはザ・セントラル・スタジオのアンドレア・サラ・ダンナが手がけた。
その曲を録りたいと言い出したのはジャーダ・エトロだった。バンドの説明では、これは彼女がずっとカヴァーしたいと願ってきた曲である。彼女自身は、音楽家としての成長という面でも、トールキンの読者としても、自分の人生で最も意味のある曲のひとつだと述べている。第6作がトールキンの世界を下敷きにしていることを思えば、この選曲は偶然ではない。
2026年、バンドは北米と欧州を続けて回る。KAMELOT の「Dark Asylum World Tour」北米編では全23公演の前座を務め、8月28日のオーランドから9月27日のシルヴァー・スプリングまで。直後の10月26日から11月25日にかけては、BEAST IN BLACK のヨーロッパ公演でサポートに就く(こちらのスペシャル・ゲストは SONATA ARCTICA)。2024年秋にも KAMELOT のヨーロッパ公演を回っているので、この二組との帯同は二度目になる。
モンデッリの活動は FROZEN CROWN だけではない。ヴォルトゥリアンは SLEEPING ROMANCE のフェデリカ・ランナと彼が2020年1月に立ち上げた企画で、当時の FROZEN CROWN のドラマー、アルベルト・メッザノッテとベースのマッシミリアーノ・ロッシが編成に加わり、ジャーダ・エトロもゲスト参加した。デビュー作『Crimson』は2020年4月24日発売で、ヨーロッパと米国はスカーレット・レコード、日本はマーキー・アヴァロン——FROZEN CROWN とまったく同じ流通の形である。
物販にも自前の看板がある。ジャーダ・エトロとフェデリコ・モンデッリは Ice Dragon という衣料ブランドを立ち上げており、これが FROZEN CROWN、NOCTURNA、VOLTURIAN、BE THE WOLF のマーチャンダイズをまとめて扱う傘になっている。ジャケットも映像も自分たちで作るバンドが、着るもののほうまで自分たちの会社に通しているということである。
去ったメンバーのその後も追える。タリア・ベラゼッカは自身のサイトで、2022年6月に ANGUS McSIX へ、その立ち上げの時点から加わったと記している。さらに2024年8月28日には、マグナス・カールソンとともに PRIMAL FEAR の新ギタリストとして正式加入した。彼女は2017年9月、17歳のときに FROZEN CROWN へ加わっており、ツアーやフェスに出られる最初のバンドがここだったとも書いている。
その二語の並べ方には、もう少し具体的な下敷きがある。モンデッリは、歌詞とイメージの面でバンドが最初に影響を受けたのは CELTIC FROST だと語り、彼らの言い回しをいくつか自分たちの曲の中で引いているとまで述べている。FROZEN CROWN という名前自体も、CELTIC FROST に、そして ICED EARTH に少し似た響きになるよう作った二語の組み合わせだという。
バンドへの転換を勧めたのはレーベル側だった。モンデッリの説明では、企画をスカーレット・レコードと日本のマーキー・アヴァロンに持ちかけたところ、両者がこれを気に入り、本物のバンドにしてはどうかと提案してきた。そこで彼はまず友人のベーシスト、フィリッポ・ザワッターリを呼び、続いてザワッターリのいとこにあたるドラマー、アルベルト・メッザノッテが加わり、最後にリード・ギタリストのタリア・ベラゼッカが決まった。
ヴォーカリスト選びは公募に近い形で行われた。モンデッリは複数の候補を試したうえでジャーダ・エトロを選んでいる。決め手は、応募してきた歌い手の多くがオペラティックな発声だったのに対し、彼女の声はより攻撃的だったこと。彼は彼女個人とは面識が無く、彼女が在籍していた TYSTNADEN と ASHES YOU LEAVE の名前を知っているだけだったという。
その声の質について、モンデッリは分かりやすい喩えを使っている。ジャーダはシーンの他の女性歌手に比べてオペラ的でなく攻撃的に歌う、そこにティモ・コティペルトの女性版を見た、というのである。同じ取材で彼は、自分たちの音楽を説明するのに「パワー」という語は使わないとも述べ、代わりに挙げたのが「クリーン・ヴォイスのメロディック・デス・メタル」という言い方だった。
モンデッリの言い方では、FROZEN CROWN は当初「単なるスタジオ企画」で終わるはずのものだった。ただし女性ヴォーカルを入れる必要は最初から感じていて、企画に陰影と可能性を足すためにジャーダをリード・シンガーに迎えた。本物のバンドにしようと決めたのは、そのあとのことだという。
モンデッリはこの作品を「変則的なコンセプト・アルバム」と呼んでいる。収録曲はひとつの物語を順に語るわけではなく、全体を束ねているのは叙事的な空気のほうで、その多くは北欧神話に着想を得ている。ただし勇壮な情景の背後で歌われているのは、ほとんどの場合、内面の戦いだと彼は述べている。
デビュー作の作曲はほぼモンデッリ一人の仕事だが、例外がある。バラード「Chasing Lights」はジャーダ・エトロが書いた曲で、彼女はほかに三曲分の歌詞も手がけている。残りを彼が書いたのは、編成が揃ったのが作業開始後だったからだと本人は説明している。ドラムのパートについては、アレンジも録音もアルベルト・メッザノッテが全て担当した。
代表曲「Kings」のミュージック・ビデオは、予算の無いところで撮られている。撮影はヴァレーゼのヴィデオ作家アンドレア・デ・タッデオ、撮影監督はヴァレリオ・サッケット、ドローン映像はミケーレ・マレスカ。ロケ地はマッジョーレ湖にほど近いフォルコラ峠とエリオ湖で、スタッフを雇う金が無かったため、バンドのメンバー自身も撮影を手伝ったとモンデッリは語っている。
「I Am The Tyrant」でリード・ヴォーカルを取っているのはモンデッリのほうである。ビデオで彼が仮面を被っているのには理由があって、当時はフロントに立つジャーダを食ってしまいたくなかった、というのが本人の説明だ。仮面の意匠を含め、このビデオの脚本・監督・編集・アート・ディレクションはいずれも彼自身が手がけている。
デビュー作のなかで、バンド全員が最も演奏したがる曲は「Queen Of Blades」だとモンデッリは述べている。ただし彼個人の一番は違っていて、「The Shieldmaiden」——アルバム中で最も良い曲だと本人は考えている。この曲は先行シングルにも選ばれており、彼と彼女の両方が歌う長尺のパワー・メタル・ナンバーであることが選定の理由だったという。
アルバムの流れにも仕掛けがある。モンデッリの説明では、「Queen Of Blades」は直前に置かれたバラード「Chasing Lights」の主題を引き受けて書かれており、作品全体はひとつの弧を描くように構成されている——「Chasing Lights」でいったん沈み、「Queen Of Blades」で再び持ち上がる、という設計である。
バンドが初めて人前で演奏したのは、デビュー作の発売日そのものだった。2018年2月9日、ミラノのレジェンド・クラブで開かれた『The Fallen King』のリリース・パーティである。モンデッリは会場が文字どおり満杯だったと述べ、集まったのは物見高い客と友人、そして先行シングルで掴んだファンだったと振り返っている。この会場は、七年後にもう一度この物語に出てくることになる。
デビュー作の反響は、次の一歩を早めた。2018年9月、FROZEN CROWN は国際的なブッキング・エージェンシー、ナイン・ライヴズ・エンタテインメントの所属となる。バンドが当時挙げた同社の所属先には STRATOVARIUS や HAMMERFALL の名が並んでいた。デビューから七か月で、彼らはヨーロッパを回るための足場を得たことになる。
第2作は、デビュー作の物語をひそかに引き継いでいる。モンデッリの説明では、「Winterfall」の冒頭で氷の下に閉じ込められている王とは、第1作で歌われた暴君その人である。しかもこれは物語上の都合だけではなかった。男声で歌われるその登場人物を凍らせることは、これから男声の比重を下げていくという意思表示でもあった——FROZEN CROWN は女性がフロントに立つバンドだから、というのが彼の理屈である。
第2作の中には、第1作の一行がそのまま埋め込まれている。「Neverending」の中に出てくる "fail no more" という言い回しは、デビュー作の1曲目「Fail No More」を意識して置かれた引用だとモンデッリは述べている。また彼は、アルバムの開幕曲の作り方を初期 SONATA ARCTICA の最初の二枚から学んだと語り、開幕曲は速くて技巧的であるべきで、バラードでも長尺曲でもあってはならないと考えている。
ジャケットにも続きがある。『Crowned in Frost』の表紙に描かれている女性は、『The Fallen King』の表紙にいたのと同じ人物だとモンデッリは説明している。ただし今度はより大きく、戦いを経て硬くなり、経験を積んだ姿として描かれている。ジャケットの絵はスカーレット期の四作とも彼自身の手によるものである。
第2作の録音は、実際にはほとんど二人の作業だった。モンデッリはギターも鍵盤もベースも自分で弾いており、そのため、このスタジオ盤で本当に演奏しているのは彼とジャーダ、それにドラマーだけになる。バンドはすでに5人編成として発表され、写真にも5人が写っていたが、盤の中身の分業はそうなっていなかった。
作曲の段階から、この作品は歌い手に合わせて作られている。モンデッリの説明では、『Crowned in Frost』の各曲は F、F#、B、E と調をばらけさせて書かれており、それぞれがジャーダの声に嵌まるように選ばれている。彼は自分の書きたいものではなく彼女の声で成立するものを書くと述べ、その理由として、バンドの顔は彼女だからだと語っている。
デビューから第2作までわずか一年余りだが、急ごしらえではないとモンデッリは言う。「Winterfall」と「Neverending」は『The Fallen King』がまだ未発売の段階ですでに完成していた。つまり第2作の骨組みは、第1作が世に出る前から用意されていたことになる。
2021年1月29日、バンドは5人のうち3人が去ったことを発表する。ドラムのアルベルト・メッザノッテ、ギターのタリア・ベラゼッカ、ベースのフィリッポ・ザワッターリ。声明は、三人が「昨年のうちにそれぞれ別の時期に」自分の活動へ専念するために抜けたと述べている。つまり一斉離脱ではなく、2020年の間に順に起きたことを、年が明けてからまとめて公表した形である。同時に公開されたのが『Crowned in Frost』からの「Battles In The Night」のビデオで、"クラシック" 編成に区切りをつける最後の映像として出された。
離脱の時期については、モンデッリがのちに具体的な順序を語っている。彼の説明では、まずドラマーが2020年の DRAGONFORCE 帯同直後に抜け、その後任として当時17歳のニーゾ・トマシーニがすぐ加わり、彼はその時点ですでに『Winterbane』の制作に加わっていた。ベーシストとギタリストが去ったのはずっとあとで、バンドがスタジオに入ろうとしていた時期だという。彼はまた、去った三人は作曲にも録音にも関わっていなかったとも述べている。バンドが2021年1月に出した声明のほうは「昨年のうちに別々の時期に」としか書いておらず、誰がいつ抜けたかには触れていない。
後任の三人が公表されたのは2021年2月18日。リード・ギターにファビオラ・"シーナ"・ベッローモ、ベースにフランチェスコ・ゾフ、ドラムにニーゾ・トマシーニ。バンドはパンデミック下で適任者を見つけるのが非常に難しかったと述べつつ、この三人はすでに未発表の『Winterbane』で演奏を終えていた。顔を出す前の紹介に使われたのは「Embrace The Night」の断片——同作の1曲目である。
新しいギタリストの見つけ方は、いかにも2020年らしい。モンデッリがファビオラ・"シーナ"・ベッローモを知ったのは SNS で、KILLSWITCH ENGAGE や BULLET FOR MY VALENTINE の曲を弾く動画を観たのが最初だった。連絡したのはリズムが正確だと思ったからで、しかも彼女は、彼が引っ越した先のすぐ近所に住んでいた。移動もままならない時期に遠方の人間を選ぶのは馬鹿げていた、というのが彼の説明である。女性ギタリストに限って探したわけではなく、腕の立つ男性の候補もいたが、そちらは遠くに住んでいた。
タリア・ベラゼッカがなぜ抜けたのかについて、モンデッリは分からないままだと語っている。彼の説明では、第3作の録音にあたって彼女にソロをいくつか弾いてほしいと伝えたところ嬉しそうにしていた。ところが彼女は脱退をレーベルのオーナーに伝えたそうで、彼自身は所属レーベル経由でそれを知ったのだという。この記事に彼女の側の説明は載っていない。
『Winterbane』はトリノのフューシックス・スタジオでアンドレア・フジーニがプロデュースした。ジャケットの絵はこれまでどおりモンデッリ自身の手によるもので、レーベルの説明によれば、そこに描かれているのはかつての自分と向き合うバンドの姿である。レーベルはこの作品を、シンフォニックな要素と鍵盤から距離を取り、直截な作りを選んだ、バンドで最も暗く最も重いアルバムだと位置づけた。
「The Water Dancer」を書いたのはジャーダ・エトロである。モンデッリはこの曲を、『氷と炎の歌』/『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界に公然と着想を得た一曲だと説明している。ただし彼は、バンド全体の参照先はむしろイタリアの民間伝承であり、ファンタジーとしてもエルフやオークではなくコナン風のソード・アンド・ソーサリー——魔女がいて、荒野に大きく醜く悪い連中がいる、もっと原始的な世界——のほうだとも述べている。
「The Water Dancer」のビデオでは、バンドは初めて外部の要素を招き入れている。ルカ・モルセッリとモンデッリの共同監督によるこの映像には、ダミアン・フォン・ドゥンケンヴァルトと彼のノーザン・ウルフドッグス・パックが連れてきた狼犬が登場する。それまで映像も含めて自前でやってきたバンドにとって、これは例外的な組み方だった。
この編成の入れ替わりが作曲に影響しなかった理由を、ジャーダ・エトロは単純に説明している。曲を書いているのは自分とフェデリコだから、というのである。同じ取材で彼女は、このバンドには必ず一曲、長い曲がある——「Blood On The Snow」がそれにあたる——と述べ、その曲ではギター、ベース、ヴォーカルの要素を最も実験的に扱ったと語っている。
第4作は、書かれた期間が最も長いアルバムだとモンデッリは言う。直近二年の新曲だけでなく、五、六年前——ちょうどデビュー作が形になりつつあった頃——に素描しておいた曲が入っている。寝かせておいて、本当に仕上がったと思えたときに初めて取り出した、というのが彼の説明である。
2022年11月26日の告知でバンドは、この作品には意図的にゲスト参加を一切入れなかったと述べている。狙いは「100% FROZEN CROWN」に聞こえること。そのうえで、それまで彼らがやっていなかった要素も持ち込むと予告しており、具体的に挙げられたのがアコースティックのバラードと壮大なクワイアだった。制作は前作に続いてトリノのフューシックス・スタジオ、アンドレア・フジーニ。
2曲目のシングル「Victorious」を出したとき、バンドは聴き手に注意を促している。イントロに騙されないでほしい、これは FROZEN CROWN がこれまで書いたなかで最も速い曲だから、というのである。
曲の作り方も、この時期に変わっている。モンデッリの説明では、旋律は彼が全部書くが、ドラマーであるニーゾ・トマシーニにはリズム面のアレンジで大きな裁量を与えており、それが結果として旋律そのものの形を変えていく。二人で曲の原型を組み上げ、そこへ歌い手が入る。曲は何よりも声を土台に作られ、彼はつねにジャーダに合わせて仕立てられるものを書こうとする。ベースとファビオラ・ベッローモのリードは、そのあとに装飾として足されていく。
同じ取材でモンデッリは、FROZEN CROWN がいつバンドになったのかを自分の言葉で線引きしている。最初の二枚と第3作の半分まではソロ企画であり、そこから本当のバンドへ移った。ニーゾ・トマシーニとベースのフランチェスコ・ゾフが、曲の最終的な姿を決めるうえで決定的な役割を果たしているというのがその理由である。
その公演は、危うく形にならないところだった。サウンド・チェックでモンデッリのジャクソン KV7 のブリッジ・ピックアップが不調になり、控えのギターにも彼は納得しなかった。今から新しいギターを買いに行くと言い出し、次にはもうギターは弾かず歌だけにすると言い、最終的にネック・ピックアップだけで乗り切ると決めて開演にこぎつけている。この日、彼とファビオラ・ベッローモは終始ジャクソンのシグネチュア・モデルだけで通した——彼はトリヴィアムのコリィ・ビューリュー・モデルの KV7、彼女は元メガデスのクリス・ブロデリック・モデルのソロイスト HT6。バンドがジャクソンのエンドーサーになったばかりだと彼が明かしたのも、この日である。
2023年6月26日、FROZEN CROWN はナパーム・レコーズとワールドワイド契約を結んだことを発表する。バンドの言い分は率直だった——ここまで全部を自分たちで、DIY の姿勢とごく小さな体制でやってきたが、もう一人では抱えきれないところまで大きくなった、というのである。ナパームのシニア A&R、セバスチャン・ミュンヒは、この五年に現れたパワー・メタル・バンドのなかで最も創造的な一組だと評した。移籍時点でバンドはまだ5人編成である。
2023年9月5日、バンドは6人目の正式メンバーとして三人目のギタリスト、アレッシア・ランツォーネを発表した。当時17歳。ニーゾ・トマシーニが加わったときと同じ年齢である。彼女はシーナ、フェデリコとリードとリズムを分担し、ライヴでもスタジオでもそうするとされた。初舞台は同月16日、ドイツのトゥットリンゲン、U.D.O. のサポートである。
発表までのあいだ、彼女の存在は伏せられていた。モンデッリはドイツの METAL HAMMER に、それが決して楽ではなかったと語っている。バンドがリハーサル室で自撮りを撮って投稿するたび、彼女はいつも後ろに引っ込んでいなければならなかった。
ランツォーネは初舞台のために、原盤に無いアレンジを自分で書いてきた。『The Fallen King』や『Crowned in Frost』の曲には、そもそも三本目のギターを必要とするパートが存在しない。それでも三本で演奏するために、彼女は古い曲へ足すパートを書き加えたのだとモンデッリは説明している。
若い演奏家を迎えることについて、モンデッリはよく訊かれると前置きしたうえで理由を述べている。実績のある演奏家のほうが当てになると考えるバンドは多いが、自分たちはその考えを取らない。欲しいのは FROZEN CROWN のために十分な時間を割ける同僚であって、経験の量ではない、というのである。彼はまた、自分が若かった頃に手を引いてくれる人がいたらどれほど有難かったか、とも述べている。
三人目を選ぶのにオーディションは行われなかった。モンデッリの説明によれば、アレッシア・ランツォーネは何年も前からのファンで、自分たちの曲を弾く動画をインスタグラムで送ってきていた。しかも彼女は数キロ先に住んでいる。2023年3月の『Call of the North』ツアーで、スタジオのギターがどれほどライヴで再現できていないかがはっきりしたとき、彼らは迷わず彼女を直接選んだ。
ランツォーネにとって、これは初めてのことだらけの仕事だった。彼女は Guitar World に、FROZEN CROWN の前はカヴァーを演奏する地元のバンドにいただけで、ツアーに出たことも曲を書いたこともなかったと語っている。
第5作の表題『War Hearts』は、CHILDREN OF BODOM への敬意から来ている。ナパームの資料は、この一組を FROZEN CROWN の若く荒く情熱的なメタルの姿勢に影響を与えたバンドとして挙げている。同じ資料はこの作品を、6人編成として作られた最初のアルバムであり、全員が録音に参加した最初のアルバムでもあると位置づけている。
9曲目「King Of The Sky」は、単独の曲というより仕掛けである。モンデッリの説明では、これは最後の曲「Ice Dragon」の導入部にあたり、繋げると一曲が長くなりすぎるので切り離した。もうひとつ理由があって、聴き手はイントロを飛ばすからだという。独立したトラックにしておけば、そこが飛ばされずに済む。
7曲目「Bloodlines」の題材については、複数の出所が挙げられている。ナパームの資料は『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』のボードゲームとビデオゲームの系列を挙げるが、モンデッリ自身は取材で、この曲がそれだけでなく『Legacy of Kain: Soul Reaver』にも、さらに1987年の映画『ロスト・ボーイ』にも着想を得ていると述べている。彼によれば、この曲の80年代風のシンセの音は映画のほうから来ている。
ビデオはいずれもイタリアの城で撮られている。先行シングル「Steel And Gold」はリグーリア州ドルチェアックアのドーリア城、表題曲「War Hearts」はアヴィリアーナの城址で、後者は後処理を一切かけずに撮られたとバンドは述べている。「Steel And Gold」については、忠誠と誠実さ、そして自分を高めることについての曲だと説明している。
アメリカでの初舞台は、サポート・ツアーではなくフェスティヴァルだった。2024年9月7日、アトランタのセンター・ステージで開かれた ProgPower USA 2024 である。モンデッリはのちに、この形で入れたのは客の大半がすでに自分たちを知っていたからだと語っている。
2025年5月16日、ファビオラ・"シーナ"・ベッローモの脱退が発表された。彼女自身の声明は、円満な別れで双方が穏やかに合意したものだと述べ、理由として、増えていく務めのために自分の企画や生活に集中できなくなったこと、そして別の音楽性に取り組みたいことを挙げている。バンド側の返答は、彼女とは三枚のアルバムを共にしたと振り返り、「別れではなく、さよならだ」と書いた。予定されているライヴはすべて履行するとも明言している。
その四日後、2025年5月20日に後任が発表される。アレクサンドラ・ライオネス——本名アレクサンドラ・スタメンコヴィッチ。セルビアのバンド JENNER を率いる人物で、リーダーであり作曲者であり歌手でありリード・ギタリストであり、さらにヴィデオ作家、プロデューサー、マネージャーとしても働いてきた。当サイトの表記が二通り現れるのはこのためで、ステージ名がライオネス、ナパームが2026年に出したクレジットが本名のほうである。
来日時の取材で、アレクサンドラ・スタメンコヴィッチは自分のヒーローとしてメガデスのデイヴ・ムステインと、イギリスのバンド ROCK GODDESS のジョディ・ターナーを挙げている。歌い始めたのはターナーの影響で、自分のバンドも彼女のバンドと同じ三人編成、最初はギターを弾くだけだったのが歌うようになった、と語った。同じ席でアレッシア・ランツォーネが挙げたギター・ヒーローは DREAM THEATER のジョン・ペトルーシで、ギターを手に取ったきっかけは、女の子がギターを弾いている動画をたまたま目にして、女の子でも弾けるなら自分もと思ったことだったという。
スタメンコヴィッチに最初に声をかけたのは、実は2025年ではなかった。モンデッリは BURRN! の取材で、2020年——後任の三人を決めるよりも前——にすでに彼女に接触していたと明かしている。ロックダウンで移動できず、アルバムを遠隔で作らねばならないのなら出身国は関係ない、それなら最良の人選をしようと考えたのだという。たまたま彼女のバンド JENNER の EP を見つけ、新曲の映像を YouTube で観て、このギタリストは FROZEN CROWN に完璧に合うと思った。当時はレーベルの事情や制作の急ぎで実現せず、五年後に順番が回ってきた形である。
この作品では、視覚面に外部の作り手が名指しで並ぶ。ジャケットの絵を手で描いたのはシェイラ・フランコ。ヴィデオとバンド写真はラウル・ノイズ。そして、玉座と、実物の「凍れる王冠」そのものを設計して作ったのがダリア・ジズロンである。ジャケットも映像もほぼ自前で回してきたバンドとしては、これは編成の外側が最も広がった作品ということになる。
先行シングル「The One」は2026年6月に公開された。バンドの説明では、この曲でジャーダ・エトロは悪役の側へ回る——玉座と、実物の氷の王冠を我がものとし、亡霊の王たちを率いて「The One」を探す、という筋である。デビュー作以来、彼女が演じてきたのは戦う側の役柄だったから、これは物語の反転にあたる。第2弾シングル「Reborn」は7月28日公開で、ドラマーのニーゾ・トマシーニによれば、これは「The One」で始まった弧の続きにあたる。
ジャーダ・エトロが自分の絶対的な憧れとして挙げるのはフロール・ヤンセンで、彼女には実際に歌のレッスンを受けている。方法は拍子抜けするほど単純だった——メールを一通書いたら返事が来たので、オランダまで会いに行った、というのである。ただし、その時期を彼女が語った内容は出典の中で整合していないため、当サイトでは年を記していない。
2019年に FROZEN CROWN が ELVENKING のヨーロッパ・ツアーに帯同したのは、まったくの新しい縁ではなかった。ジャーダ・エトロによれば、彼女はそれより十五年ほど前、ELVENKING の初期のアルバムでバック・ヴォーカルを歌っている。両バンドは住んでいる地域も近く、その頃からの付き合いだという。
このバンドの録音がどれほど重ねられているかについて、モンデッリは数字を挙げている。彼の見立てでは、FROZEN CROWN の曲には常時最低でも10層のギターが鳴っている——リズムが4本、リードが2〜4本、ソロにさらに2本。最も少なかったときでも2本だという。ライヴでギターを三人に増やしたのは、この積み上げを同期音源に頼らず鳴らすためだった。
三本のギターの役割分担も決まっている。モンデッリの説明では、彼が七弦で低いほうのリズムを弾き、残る二人が同じリズムを1オクターヴ上で弾く。ハモリのリードを二人に任せるのは、彼が同時に歌っているからである。ソロについては、スタジオで録った本人がそのままライヴでも弾く。
モンデッリが速い曲を書き続ける理由を、彼は一曲に帰している。イングヴェイ・マルムスティーンの「Never Die」である。高い声と新古典主義のリフを持つ速い曲を書くことに取り憑かれているのは、この曲のせいだと彼は自ら書いている。同じ文章で彼は、FROZEN CROWN の「Far Beyond」に出てくる「No, no!」を「I'll See The Light Tonight」から意識して取ったことも認めている。
パワー・メタルのバンドを率いる人物の出発点は、そこではなかった。モンデッリが14歳ごろに組んだ最初の本格的なバンドは、初期の ANATHEMA、MY DYING BRIDE、NOVEMBRE の影響を強く受けたメロディック・デス・メタルをやっていた。彼は最初からスクリームで歌っており、20歳でいったん完全にやめ、FROZEN CROWN のために再開している。
初期のリード・ギタリストにとって、この音楽はもともとの畑ではなかった。タリア・ベラゼッカはデビュー当時の取材で、自分はずっとスラッシュとヘヴィ・メタルを弾いてきたのでパワー・メタルは本来の分野ではないと述べ、ステージでは少し窮屈さも感じると語っている。パワー・メタルは自分が慣れ親しんだ速弾きよりも、リズムを刻むパートで大半ができているから、というのがその理由だった。
このバンドがどこの街のバンドなのかは、ひとつに定まらない。プレス資料や海外媒体はしばしばミラノのバンドとして紹介するが、モンデッリ自身は2024年の取材で、メンバーは全員ヴェネトとフリウリに住んでいると述べている。ドラマーのニーゾ・トマシーニだけは2時間半ほど離れており、アレッシア・ランツォーネは5分の距離だという。ただし彼は前年の別の取材では「5分の4がヴェネトとフリウリに住んでいる」とも述べており、数え方は揺れている。彼自身の出身はプーリア州である。