ARI KOIVUNEN
2007年、フィンランド (Finland) の音楽シーンは、ひとつの特異なリアリティ番組の結末によって大きく揺れ動いた。
Biography
アリ・コイヴネン (ARI KOIVUNEN)
フィンランドにおけるヘヴィメタルの大衆化とヴォーカリストとしての進化
1. コウヴォラから全国区へ-「ヘヴィ・アリ」現象の萌芽
2007年、フィンランド (Finland) の音楽シーンは、ひとつの特異なリアリティ番組の結末によって大きく揺れ動いた。英国発祥のフランチャイズ番組『アイドルズ (Idols)』のフィンランド版第3シーズンにおいて、ポップスターの原石を探すという番組の本来の趣旨を覆し、ヘヴィメタルとハードロックのみを歌い続けた22歳の青年、アリ・コイヴネン (ARI KOIVUNEN) が優勝を果たしたのである。この出来事は、単なる一人のシンガーの成功物語にとどまらず、フィンランドという国家がいかに「メタルの約束の地」であるかを世界に知らしめる社会現象となった。
2. 初期の経歴と音楽的ルーツ (1984-2006)
2.1 コウヴォラ (Kouvola) での成長とドラマーとしての背景
アリ・ミカエル・コイヴネン (Ari Mikael Koivunen)は、1984年6月7日、フィンランド南部の都市コウヴォラ (Kouvola)に生まれた。コウヴォラは、首都ヘルシンキ (Helsinki) から北東へ約130キロメートルに位置する工業都市であり、多くのロックミュージシャンを輩出してきた土壌がある。
幼少期より音楽に囲まれて育ったコイヴネンは、特に両親の影響や自身の探求を通じて、1970年代から80年代のクラシック・ロックやヘヴィメタルに強く惹かれていった。ARI KOIVUNENの音楽的アイデンティティを形成した主要なバンドとして、ディープ・パープル (Deep Purple)、レッド・ツェッペリン (Led Zeppelin)、アイアン・メイデン (Iron Maiden)、ホワイトスネイク (Whitesnake) などが挙げられる。これらのバンドが持つ劇的な構成美と力強いヴォーカルスタイルは、後のコイヴネンの歌唱法―――鋭いハイノート、感情豊かなヴィブラート、そして歌詞のドラマ性を重視する姿勢――の基礎を築いた。
特筆すべきは、ARI KOIVUNENのミュージシャンとしてのキャリアがヴォーカリストとしてではなく、ドラマーとして始まった点である。学生時代からドラムを叩き、バンド活動を行っていたARI KOIVUNENは、リズムに対する鋭敏な感覚を養っていた。この「ドラマーとしてのリズム感」は、後にアモラル (Amoral) のような変拍子や複雑なリズムパターンを多用するテクニカルなバンドでフロントマンを務める際、楽器隊と一体化するための重要な素養となったと分析できる。
2.2 カラオケ文化が生んだチャンピオン
本格的なヴォーカリストとしての才能が開花したのは、バンド活動と並行して親しんでいた「カラオケ」の場であった。フィンランドにおけるカラオケ文化は、日本のそれとは異なり、パブやバーで聴衆を前にして歌うスタイルが一般的であり、多くの優れたシンガーが腕を競う「草の根の登竜門」として機能している。
コイヴネンはこの文化の中で頭角を現し、2005年には「フィンランド・カラオケ選手権 (Finnish Karaoke Championships)」で見事優勝を果たした。この勝利により、ARI KOIVUNENは同年に開催された「カラオケ・ワールド・チャンピオンシップ (Karaoke World Championships)」への出場権を獲得し、世界第3位という輝かしい成績を収めた。
当時のARI KOIVUNENはラハティ (Lahti)に居住し、バーテンダーとして働きながら夜な夜なカラオケで喉を鍛えていた。この経験は、ARI KOIVUNENに二つの重要な武器をもたらした。一つは、どのような環境や音響設備であっても安定して歌声を響かせる「現場対応力」。もう一つは、メタルのみならずビリー・ジョエル (Billy Joel) のようなピアノ・バラードまで歌いこなす「レパートリーの柔軟性」である。しかし、ARI KOIVUNENの魂は常にロックとメタルにあり、カラオケ大会においてもその選曲は一貫してロック色の強いものであったとされる。
3. 『アイドルズ (Idols)』 2007における革命
3.1 「ヘヴィ・アリ (Hevi-Ari)」の誕生と審査員との対立
2007年、コイヴネンはフィンランドの人気テレビ番組『アイドルズ (Idols)』の第3シーズンに参加を決意した。サイモン・フラー (Simon Fuller) が創設したこの番組フォーマットは、通常、大衆受けするポップス歌手やR&Bシンガーを発掘することを主眼としており、メタルシンガーが勝ち進むことは極めて稀な例であった。
予選において、ARI KOIVUNENはソナタ・アークティカ (Sonata Arctica) の 「FullMoon」を歌唱した。透き通るようなハイトーンとパワーメタルの疾走感を体現したARI KOIVUNENのパフォーマンスは、視聴者に強烈なインパクトを与えた。しかし、審査員団の一部からは、ARI KOIVUNENの選曲が番組の「ポップ・アイドル」という趣旨に対してあまりにヘヴィメタルに偏っているとして、批判的なコメントも寄せられた。特に「メタルばかり歌うな」という圧力はシリーズを通してARI KOIVUNENに向けられたが、コイヴネンは「自分の好きなものを貫く。聴衆もそれを望んでいるはずだ」という姿勢を崩さなかった。
この頑固さと、それを裏打ちする圧倒的な歌唱力により、ARI KOIVUNENは視聴者の心を掴み、「ヘヴィ・アリ (Hevi-Ari)」 という愛称で親しまれるようになった。ARI KOIVUNENの存在は、フィンランド国民が潜在的に持っていたメタルへの愛着を呼び覚まし、番組の視聴率を牽引する原動力となったのである。
3.2 パフォーマンス詳細分析: 伝説のセットリスト
コイヴネンの『アイドルズ』でのパフォーマンスは、フィンランドのゴールデンタイムにおける「ヘヴィメタル名曲選」の様相を呈していた。以下に、ARI KOIVUNENが各ステージで披露した楽曲と、その背景および結果を詳述する。
表1: アリ・コイヴネン 『アイドルズ』パフォーマンス・リスト
| ステージ | テーマ | 選曲 (Original Artist) | 分析・備考 |
|---|---|---|---|
| 予選 | 自由曲 | FullMoon (Sonata Arctica) |
フィンランドを代表するメロディック・パワーメタルバンドの楽曲を選び、自身の方向性を明確に提示。 |
| 準決勝 | 公開投票 | Piano Man (Billy Joel) |
メタル以外の歌唱力を証明。視聴者投票の86%を獲得するという圧倒的な支持を得て決勝ラウンドへ進出。 |
| TOP 7 | 誕生年のヒット曲(1984) | Perfect Strangers (Deep Purple) |
自身が生まれた1984年の名曲。再結成パープルの重厚なリフと神秘性を表現。 |
| TOP 6 | 献呈 (Dedications) | The Evil That Men Do (Iron Maiden) |
ブルース・ディッキンソン (Bruce Dickinson)の難易度の高い楽曲を、原曲に忠実かつアグレッシブに歌唱。 |
| TOP 5 | 王と女王 (Kings and Queens) | Here I Go Again (Whitesnake) |
80年代アリーナ・ロックの金字塔。バラード導入部からハードな展開への移行を完璧にこなし、スタジアム級のスケール感を見せた。 |
| TOP 4 | 私のアイドル (My Idols) | Rock and Roll (Led Zeppelin) Hunting High and Low (Stratovarius) |
ストラトヴァリウスの選曲は国内メタルシーンへの敬意。審査員からは「メタル一辺倒」と酷評されたが、視聴者投票で救済された。 |
| TOP 3 | フィンランドのヒット曲 | You Break My Heart (Broadcast) Sielut Iskee Tulta (Kilpi) |
フィンランド語歌詞のヘヴィメタル (Kilpi)を歌唱し、母国語での表現力とアジテーション能力を証明。 |
| GRAND FINAL | 決勝戦 | FullMoon (Sonata Arctica) Black Hole Sun (Soundgarden) Still Loving You (Scorpions) On the Top of the World (Winner Song) |
審査員選曲のサウンドガーデンでグランジへの適応を見せつつ、スコーピオンズのバラードで感情を爆発させた。 |
3.3 勝利の瞬間とデビューへの道
2007年4月6日、ヘルシンキ・アイスホール (Helsinki Ice Hall) で行われたグランドファイナルにおいて、アリ・コイヴネンはアンナ・アブレウ (Anna Abreu) を破り、第3代「フィンランド・アイドル」の座に輝いた。優勝曲として用意された 「On the Top of the World」は、ヨルゲン・エロフソン (Jörgen Elofsson) らが作曲したパワーバラードであり、コイヴネンのハイトーンを生かすようにアレンジされていた。
優勝により、ARI KOIVUNENはソニーBMG (Sony BMG) とのレコーディング契約と30,000ユーロの前払い金を獲得した。この勝利は、メタルの国フィンランドを象徴する出来事として、国内外のメタルメディア (日本の『BURRN!』誌などを含む)でも大きく取り上げられた。
4. ソロキャリアの爆発的成功: メタル・アイドルの証明 (2007-2008)
4.1 デビューアルバム 『Fuel for the Fire』 (2007)
2007年5月30日にリリースされたデビューアルバム 『Fuel for the Fire』は、フィンランド音楽史上における商業的な記録を次々と塗り替える作品となった。このアルバムは発売初週でフィンランドの公式アルバムチャート1位を獲得し、その後12週連続でトップを維持するという快挙を成し遂げた。発売からわずか1週間でプラチナディスク認定を受け、最終的にはダブル・プラチナ (75,000枚以上)のセールスを記録した。
4.1.1 「フィンランド・メタル・オールスターズ」による楽曲提供
このアルバムの制作において特筆すべきは、フィンランドのメタル界を代表する巨匠たちが、こぞってコイヴネンのために楽曲を提供したことである。これは、ARI KOIVUNENが単なる「アイドル番組の勝者」としてではなく、「シーンを担う新たな才能」として業界全体から歓迎されたことを意味している。
主な楽曲提供者と提供曲:
- ティモ・トルキ (Timo Tolkki) / ストラトヴァリウス (Stratovarius):
- 楽曲: "Angels Are Calling" - 北欧メタルの王道を行くネオクラシカルな疾走曲。
- マルコ・ヒエタラ (Marco Hietala) / ナイトウィッシュ (Nightwish)、タロット (Tarot):
- 楽曲: "Our Beast" - 重厚なベースラインと演劇的な展開が特徴の楽曲。
- トニー・カッコ (Tony Kakko) / ソナタ・アークティカ (Sonata Arctica):
- 楽曲: "Losing My Insanity" - ソナタ・アークティカのデモにも存在した楽曲で、キャッチーなメロディが光る。
- ヤルッコ・アホラ (Jarkko Ahola) / テラスベトニ (Teräsbetoni):
- 楽曲: "Stay True" - マノウォー (Manowar) 的な真のメタル精神を歌うアンセム。
- ヤンネ・ヨウツェンニエミ (Janne Joutsenniemi) / サバーバン・トライブ (Suburban Tribe):
- 楽曲: "Fuel for the Fire" - アルバムタイトルトラック。
レコーディングメンバーにも、トゥオマス・ヴァイノラ (Tuomas Wäinölä / Kotipelto)、ニノ・ローレンヌ (Nino Laurenne / Thunderstone)、ミルカ・ランタネン (Mirka Rantanen / Thunderstone)、ヤンネ・ウィルマン (Janne Wirman / Children of Bodom) といった一流プレイヤーが参加した。プロデュースはニノ・ローレンヌとパシ・ヘイッキラ (Pasi Heikkilä)が担当し、ソニックス・ポンプ・スタジオ (Sonic Pump Studios) で制作された。
4.1.2 日本での成功とボーナストラック
日本においても 『Fuel for the Fire』は2007年10月にリリースされ、キャッチコピーとして「メタル・アイドル=メタドル」という造語が使われるなど話題を呼んだ。日本盤には、当時のライブ音源などのボーナストラックが追加収録された。
4.2 セカンドアルバム 『Becoming』 (2008)
デビュー作の成功を受け、2008年6月11日にはセカンドアルバム 『Becoming』がリリースされた。前作が「提供曲のコンピレーション」的な側面があったのに対し、本作はコイヴネン自身のライブバンドメンバーが作曲の中心となり、よりバンドとしての一体感を強めた作品となった。
4.2.1 ライブバンドによる結束と制作
『Fuel for the Fire』 リリース後のツアーのために結成されたバンドメンバーが、そのままレコーディングに参加した。主要メンバーは以下の通りである:
- エルッカ・コルホネン (Erkka Korhonen): ギター。後に「ラスカスタ・ヨウルア (Raskasta Joulua)」 のプロデューサーとしても活躍する人物。
- エルッキ・シルヴェンノイネン (Erkki Silvennoinen): ベース。
- ヴィリ・オッリラ (Vili Ollila) : キーボード。
- ルカ・ガルガノ (Luca Gargano) : リズムギター。
このアルバムもフィンランドチャートで初登場1位を獲得し、ゴールドディスクに認定された。音楽性はよりダークでヘヴィ、かつ叙情的な要素が増し、コイヴネンのヴォーカルも表現の幅を広げた。日本盤にはボーナストラックとして「Fight Forever」 が収録されている。
5. アモラル (Amoral) への加入: 賛否両論の転身 (2008-2017)
5.1 テクニカル・デスメタルからの劇的な転換
2008年11月、フィンランドのメタルシーンに衝撃が走った。それまで硬派なテクニカル・デスメタルバンドとして知られていたアモラル (Amoral)が、ヴォーカリストのニコ・カリオヤルヴィ (Niko Kalliojärvi) の脱退に伴い、後任として「アイドル」出身のアリ・コイヴネンを迎えると発表したのである。
アモラルは、複雑なリフとグロウル (デスヴォイス) を主体とするバンドであり、コイヴネンのメロディックなスタイルとは対極にあった。この加入劇は、従来のデスメタルファンからは「セルアウト (商業主義への転向)」として激しい批判を浴びた。しかし、バンドリーダーでありギタリストのベン・ヴァロン (Ben Varon)は、「ニコの脱退後、メロディックな方向へ進むことは自然な流れだった」と語り、数多くの応募者の中でコイヴネンこそが最も才能あるシンガーであり、グロウルもこなせる実力を持っていたと弁明した。
5.2 音楽性の進化とアルバムの変遷
コイヴネン加入後のアモラルは、デスメタルの攻撃性を維持しつつ、80年代ハードロックのグルーヴやプログレッシブ・ロックの構築美を取り入れた独自のスタイルを確立していった。
3rd Album: Show Your Colors (2009)
- 概要: コイヴネン加入後初のアルバム。劇的なスタイルチェンジを提示した作品。
- 音楽性: 「パワー・グルーヴ・メタル」とも称される、キャッチーなサビとテクニカルなリフの融合。
- 代表曲: "Year of the Suckerpunch" (シングルカットされ、ラジオヒットとなった)。
- チャート: フィンランド19位。
- 日本盤: スパインファーム (Spinefarm) / ユニバーサルより発売。ボーナストラックとしてミスフィッツ (Misfits) のカバー 「Dig Up Her Bones」を収録。
4th Album: Beneath (2011)
- 概要: 前作の方向性を深化させ、よりプログレッシブな要素を強めた作品。
- 音楽性: ベン・ヴァロンによれば、前作よりも成熟し、楽曲の尺も長くなった。コイヴネンはクリーンヴォーカルに加え、一部でグロウルも披露している。
- チャート: フィンランド30位。
- 日本盤: インペリアル・カセット (Imperial Cassette) / マーキー・インコーポレイティドより発売。ボーナストラック 「Staying Human」等を収録。
5th Album: Fallen Leaves & Dead Sparrows (2014)
- 概要: コンセプトアルバム的な構成を持つ、アモラルの音楽的頂点とも言える作品。
- 音楽性: ピンク・フロイド (Pink Floyd) 的な壮大さとメタルの融合。コイヴネンのヴォーカルは物語を語るような表現力を獲得した。
- チャート: フィンランド18位。
- 日本盤: ワードレコーズ (Ward Records) より発売。ボーナストラックとしてディープ・パープルの名曲 「Burn (紫の炎)」のカバーを収録。
6th Album: In Sequence (2016) と解散
- 概要: 初代ヴォーカルのニコ・カリオヤルヴィがギタリスト兼グロウル担当として復帰し、コイヴネンとのツイン・ヴォーカル体制となった意欲作。
- 音楽性: 初期アモラルのデスメタル要素と、後期のプログレッシブ要素が融合。3本のギターとキーボードを含む6人編成による分厚いサウンド。
- チャート: フィンランド29位。
- 日本盤: ワードレコーズより先行発売。ボーナストラックにオフスプリング (The Offspring)のカバー 「All I Want」を収録。
2016年7月、アモラルは「スケジュールの不一致」や「バンドとしてのサイクルの終了」を理由に解散を発表。2017年1月5日、ヘルシンキの伝説的なライブハウス「タヴァスティア・クラブ (Tavastia Club)」でのラストライブをもって、その歴史に幕を下ろした。
6. 舞台俳優およびその他のプロジェクト (2015-2025)
アモラルでの活動と並行して、また解散後も、コイヴネンは多彩なプロジェクトに参加し、表現者としての幅を広げている。
6.1 ラスカスタ・ヨウルア (Raskasta Joulua): ヘヴィなクリスマス
フィンランドには「ラスカスタ・ヨウルア (Raskasta Joulua / Heavy Christmas)」という国民的な音楽プロジェクトがある。これは、伝統的なクリスマスキャロルをヘヴィメタル・アレンジで演奏するもので、国内の一流メタルシンガーが一堂に会する大規模なスタジアムツアーが行われる。
コイヴネンは2007年のプロジェクト初期から主要メンバーとして参加しており、マルコ・ヒエタラやトニー・カッコらと共に、毎年冬の風物詩となっている。ARI KOIVUNENの持ち歌である「Sylvian Joululaulu (シルヴィアのクリスマスソング)」は、その透明感ある歌声が涙を誘うとして高い評価を得ている。
6.2 ミュージカル俳優としての挑戦
2015年以降、コイヴネンはタンペレの「ムシーッキテアッテリ・パラツィ (Musiikkiteatteri Palatsi / Finnish Music Theatre)」を中心に、ミュージカル俳優としても活躍している。ARI KOIVUNENが演じた役柄は、いずれもロック史に残るアイコン的な人物である。
- 『I Wanna Rock』 (2015):
- 内容: ハノイ・ロックス (Hanoi Rocks) などのロック史を描いた物語。
- 役柄: マイケル・モンロー (Michael Monroe)、アクセル・ローズ (Axl Rose)、スティーヴ・ペリー (Steve Perry) の3役を演じ分けた。特にマイケル・モンロー役では、その派手なステージアクションと独特の歌唱法を再現した。
- 『Autiotalossa』 (2016):
- 内容: 80年代フィンランドの伝説的ロックバンド、ディンゴ (Dingo)の物語。
- 役柄: 主役であるペルッティ・ネウマン (Pertti Neumann)。ディンゴのカリスマ的フロントマンを演じ、演技者としての評価を確立した。
- 『Raparperitaivas』 (2017):
- 内容: 70年代のフィンランド歌謡界を描いたレトロ・ロック・ミュージカル。
- 役柄: 主要キャストとして出演。
6.3 パワーレス・トリオ (Powerless Trio)
2017年、ラスカスタ・ヨウルアでの共演をきっかけに、マルコ・ヒエタラ (Nightwish)、JP・レッパルオト (Charon)、そしてアリ・コイヴネンの3人で「パワーレス・トリオ (Powerless Trio)」を結成した。
このユニットは、メタルやロックの名曲 (ジューダス・プリーストの 「Living After Midnight」など)をアコースティック・アレンジでカバーし、曲間に個人的なエピソードやユーモアを交えたトークを展開するという、親密なコンサート形式をとった。コイヴネンはこのトリオにおいて、ヴォーカルだけでなく、ドラムの演奏も披露し、かつてのドラマーとしての腕前を観客に見せつけた。2018年初頭にかけてフィンランド各地のコンサートホールを巡るツアーを成功させた。
6.4 現在の活動: アコースティック・デュオとディスクゴルフ
近年のコイヴネン (2024-2025年現在)は、大規模なメディア露出よりも、地域に根差したライブ活動を重視しているようである。ギタリストのマルコ・サロネン (Marko Salonen)と共に「ARI KOIVUNEN & Marko Salonen Duo」として、ヘルシンキ、タンペレ、ラハティなどのパブ (John Scott's Arkadia、Pub Cheri等) で定期的にライブを行っている。
セットリストには、R.E.M.の「Losing My Religion」、レディオヘッド (Radiohead)の「Creep」、ボン・ジョヴィ (Bon Jovi) の 「Bed of Roses」、イーグル・アイ・チェリー (Eagle-Eye Cherry) の 「Save Tonight」 といった洋楽カバーに加え、J.カルヤライネン (J. Karjalainen) の 「Mies, jolle ei koskaan tapahdu mitään」 といったフィンランドの古典も含まれている。
また、音楽以外の情熱として「ディスクゴルフ (Disc Golf)」 に没頭しており、PDGA (プロフェッショナル・ディスクゴルフ協会) の会員 (#182142) として公式大会にも出場している。2025年のグローバル・マスターズ・シリーズにランクインするなど、アマチュアながら本格的なプレイヤーとして活動している。
7. ディスコグラフィ (Discography)
以下に、アリ・コイヴネンの全キャリアにおける主要作品を、日本盤ボーナストラック情報を含めて詳述する。
7.1 ソロ・アルバム (Solo Albums)
1st Album: Fuel for the Fire
- 発売日: 2007年5月30日
- レーベル: Sony BMG
- チャート: フィンランド1位 (プラチナ認定)
| No. | タイトル (English) | タイトル (カタカナ) | 作曲者 (Songwriter) | 関連バンド |
|---|---|---|---|---|
| 1 | God of War | ゴッド・オブ・ウォー | T. Heikkinen, K. Blom | |
| 2 | Hear My Call | ヒア・マイ・コール | N. Laurenne, P. Heikkilä | Thunderstone |
| 3 | Fuel for the Fire | フューエル・フォー・ザ・ファイア | Janne Joutsenniemi | Suburban Tribe, Stone |
| 4 | Don't Try to Break Me | ドント・トライ・トゥ・ブレイク・ミー | P. Heikkilä, M. Kalaoja | |
| 5 | Angels Are Calling | エンジェルズ・アー・コーリング | Timo Tolkki | Stratovarius |
| 6 | I Fly | アイ・フライ | Nino Laurenne | Thunderstone |
| 7 | Our Beast | アワ・ビースト | Marco Hietala | Nightwish, Tarot |
| 8 | Losing My Insanity | ルージング・マイ・インサニティ | Tony Kakko | Sonata Arctica |
| 9 | Stay True | ステイ・トゥルー | Jarkko Ahola | Teräsbetoni |
| 10 | Stormwind | ストームウインド | Kyösti Salokorpi | |
| 11 | Heartstealer | ハートスティーラー | T. Heikkinen, K. Blom |
・ ボーナストラック (Bonus Tracks):
12. Hetki Lyö (原曲: The Gottehrer/Stroll "Beat The Clock", フィンランド語歌詞)
13. Piano Man (Billy Joel Cover)
14. On the Top of the World (Idols Winner Song)
・ 日本盤ボーナストラック (Japanese Edition Bonus Tracks):
15. Don't Try to Break Me (Live)
16. Angels Are Calling (Live)
※日本盤には歌詞対訳、解説、帯(Obi)が付属。
2nd Album: Becoming
- 発売日: 2008年6月11日
- レーベル: Sony BMG
- チャート: フィンランド1位 (ゴールド認定)
- 主な収録曲:
- Give Me a Reason (ギヴ・ミー・ア・リーズン)
- Tears Keep Falling (ティアーズ・キープ・フォーリング)
- Raging Machine (レイジング・マシーン)
- 日本盤ボーナストラック:
- 12. Fight Forever (ファイト・フォーエヴァー) - 日本盤のみ収録された疾走曲。後にデジタル配信された。
7.2 アモラル (Amoral) 在籍時のアルバム
3rd Album: Show Your Colors
- 発売日: 2009年5月6日
- レーベル: Spinefarm Records
- チャート: フィンランド 19位
- 日本盤: Spinefarm / Universal Music Japan
トラックリスト (抜粋):
1. Random Worlds
2. Release
3. A Shade of Grey
4. Year of the Suckerpunch (イヤー・オブ・ザ・サッカーパンチ) - 代表曲。
5. Gave Up Easy (ゲイヴ・アップ・イージー)
日本盤ボーナストラック:
Dig Up Her Bones (ディグ・アップ・ハー・ボーンズ) - ミスフィッツ (Misfits)のカバー。
4th Album: Beneath
- 発売日: 2011年10月26日
- レーベル: Imperial Cassette
- チャート: フィンランド 30位
- 日本盤: Marquee Inc. (Avalon Label)
トラックリスト (抜粋):
1. Beneath (ビニース) - 8分を超える大作。
2. Wrapped in Barbwire
3. Silhouette (シルエット) - アコースティックギターをフィーチャーした楽曲。
4. Same Difference
日本盤ボーナストラック:
13. Staying Human (ステイング・ヒューマン)
(※US盤等には"Sleeping With Strangers" が収録される場合がある)
5th Album: Fallen Leaves & Dead Sparrows
- 発売日: 2014年2月14日
- レーベル: Imperial Cassette
- チャート: フィンランド 18位
- 日本盤: Ward Records
トラックリスト (抜粋):
1. On the Other Side, Pt. I
2. No Familiar Faces
3. Prolong a Stay (プロロング・ア・ステイ)
4. Blueprints (ブループリンツ)
5. If Not Here, Where?
日本盤ボーナストラック:
9. Burn (バーン/紫の炎) - ディープ・パープルの名曲カバー。
6th Album: In Sequence
- 発売日: 2016年2月5日(日本盤は1月29日先行発売)
- レーベル: Imperial Cassette
- チャート: フィンランド 29位
- 日本盤: Ward Records
トラックリスト (抜粋):
1. In Sequence (Prologue)
2. Rude Awakening (ルード・アウェイクニング)
3. The Betrayal
4. Sounds of Home
日本盤ボーナストラック:
9. All I Want (オール・アイ・ウォント) - オフスプリングのカバー。
10. The Next One To Go (Edit)
7.3 その他の参加作品(Guest Appearances & Compilations)
- Idols 2007 (2007):
- 収録曲: "Pop-musiikkia" (ファイナリスト全員), "Piano Man" (ARI KOIVUNEN Solo)
- Raskasta Joulua (Heavy Christmas) シリーズ:
- Raskasta Joulua (2013) - "Sylvian Joululaulu" 等に参加。
- Ragnarok Juletide (2014) - 英語版アルバム。
- Raskasta Joulua 2 (2014)
- Raskasta Joulua IV (2017)
- Viides Adventti (2022) - 最新作への参加。
- Reversion (Band):
- 楽曲: "Siren's Call" (Guest Vocals) - フィンランドのプログ・メタルバンドへのゲスト参加。
8. アリ・コイヴネンの音楽的遺産
アリ・コイヴネンのキャリアを総括すると、ARI KOIVUNENが単なる「テレビ番組が生んだスター」の枠に留まらない、真の音楽家であることが浮き彫りになる。『アイドルズ』での勝利は、フィンランド国民のメタルに対する潜在的な渇望を可視化し、ティモ・トルキやマルコ・ヒエタラといったシーンの重鎮たちを巻き込む大きなうねりを生み出した。
アモラルへの加入というリスクある決断は、ARI KOIVUNENが常に進化を求めるアーティストであることを証明した。デスメタル・バンドにクリーン・ヴォーカルを持ち込み、プログレッシブな方向へとバンドを導いた功績は、賛否両論あれど、アモラルの音楽性を拡張したことは紛れもない事実である。
現在、ARI KOIVUNENは大規模なツアーからは距離を置いているが、ミュージカルの舞台やパブでのデュオ演奏を通じて、より親密な形で音楽を届け続けている。2007年に「Perfect Strangers」を歌い、フィンランド中を熱狂させた 「ヘヴィ・アリ」の魂は、形を変えながらも今なお息づいているのである。