『Come This Madness』は、北欧ハード・ロックらしい大きな歌を軸に、EUROPEの魅力を伝える2026年の作品だ。長いキャリアを経てもなお、バンドの持つリフ、歌、アレンジの個性は健在である。派手な代表曲だけに耳を奪われず、音の重心、コーラスの置き方、曲間の流れを追うと、アルバム単位の豊かな表情が見えてくる。
時代背景の変化を受けながらも、バンドの核にある手触りは少しも失われていない。再結成後に深めてきた70年代ハード・ロックの厚みと、北欧メロディの感覚が、ここでも巧みに結び付いている。デビューから四半世紀以上、そして劇的な再結成からも20年以上を経てもなお、バンドの創作意欲は少しも衰えていない。ジョーイ・テンペスト、ジョン・ノーラム、ミック・ミカエリ、ジョン・レヴェン、イアン・ホグランドというクラシック・ラインナップは驚くべき安定感を保っており、北欧メロディック・ロックの伝統と成熟したハード・ロックの深みが融合した、EUROPEの現在の充実を鮮やかに伝える一枚だ。ジョーイ・テンペストの歌声と、ジョン・ノーラムをはじめとするメンバーの演奏は、円熟の域に達している。ディスコグラフィ全体の流れの中で、バンドの現在地を確認できる、充実した一枚である。